128 / 131
73、嫁の不安と我慢
しおりを挟む「アル様・・・」
「なんだ?」
「あんまりくっつかないでください」
リシェリアは、妊娠がわかった事でさらに過保護が進んだアリエルの膝に乗せられていた。
「・・・とうとうキスだけじゃなく、俺を拒否し始めたか・・・そろそろ覚悟が必要か・・・」
「何の覚悟か知りませんが、困るのです」
「・・・オッサンにべったりされたら困るのか・・・」
「そうです、べったりされたら困るんです」
「そんなにハッキリ言う事ないじゃないか・・・」
「だって、我慢できなくなるじゃないですか!」
「・・・何を・・・だ?」
アリエルは、親子ほど歳の離れたリシェリアが、自身を遠ざけたいのだと思っているが、リシェリアは違う事を考えていた。
「もう!アル様が離れてくれないから、したくてしたくて・・・我慢してるんですからね!」
「・・・何をしたいのだ?俺にできる事はなんでもするぞ?言ってみろ!なんだ?嫁の望みを叶えられん夫など、夫失格だ!早く言え!何を我慢してるんだ?俺が離れないとできないことか?リシェ・・・教えてくれ・・・」
アリエルは、リシェリアに縋り付くように胸に顔を寄せる。
「お医者様を呼んでください」
「なんだ!?体調が悪いのか?どこか痛むか!?フローラ!医者を呼べ!今すぐだ!」
「アル様・・・どこも悪くありませんが、聞きたい事があるのです」
「・・・そうか・・・何を聞くんだ?・・・教えてくれんのか?俺には言えない・・・もしかして・・・他に男が・・・うっ・・・そんな、ぐずっ、そんなのっ、い、いやだ!無理だ!!」
思考を巡らせ始めたアリエルだったが、勝手に想像して涙を流して、リシェリアの胸に抱きついて泣いている。そこへ医者が訪ねてきた。
「陛下、妃殿下、お待たせし・・・?」
「お医者様、お呼び立ててしまってすみません」
「いいえ、構いませんが・・・陛下はどうなされたのです?」
「わかりませんが、勝手に何かを思い詰めて泣き出しましたわ」
「ほぉ・・・そう、ですか・・・」
医者は困惑している。
「聞きたい事があるのです」
「何でしょう?私がお答えできる事であれば良いのですが」
胸に甘えるアリエルの頭を撫でながら、リシェリアは医者の顔を見る。
「妊娠中は・・・その・・・どこまで行って良いのです?」
顔を赤らめて聞いてくるリシェリアに、医者は驚くも、聞きたい事の意図を理解した。
「へっ!?あ、あぁ・・・そうですね。安定期にも入りましたし、お腹に強い衝撃がこない程度なら構いませんよ?」
「リシェ、どこまでって、何をするんだ?何をしたいのだ?俺では叶えてやれんのか?俺では・・・役にたたんか・・・」
「アル様でないとできない事ですのよ?」
リシェリアの胸に顔を埋めてボソボソ話していた涙目のアリエルが顔を上げる。
「陛下、妃殿下が聞かれているのは・・・その・・・」
「なんだ?リシェは何をしたいのだ・・・俺しかできないってなんだ・・・俺は何をすればいいんだ?リシェは何を望んでるのだ?」
「アル様、妊娠中、気が気じゃありませんのよ?」
「何を気に病んでいるんだ?」
「・・・不安なのです!」
「何が不安なのだ?俺が不安にさせているなら謝る・・・悪いところは直す・・・だから、嫌わないでくれ・・・」
「アル様、さっき聞きましたでしょう?強い衝撃でなければいいと」
「・・・?それがなんだ?」
「だから・・・したいんです!もう、数ヶ月してないんですよ?他の女の人にアル様が取られてしまいます!!」
「・・・リシェ、何言ってるんだ?他の女にとられる?俺がか?ありえんぞ?俺はリシェしか・・・したい?したいって・・・まさか、抱いて欲しいと・・・言ってるのか?」
「はい」
「いや、しかし・・・本当に大丈夫なのか?俺は嬉しいが・・・」
「陛下、独りよがりにならなければ大丈夫です。妃殿下を気持ちよくさせてあげられる事を考えましょう」
「そ、そうか・・・その・・・触れていいという事だよな?その・・・リシェを感じさせてもいいんだよな?リシェの可愛い声と、顔と・・・いいのか・・・そうか・・・リシェ・・・俺、夫としてまだ・・・その・・・求めてもいいのか?」
「子どもは、もう一人くらいは欲しいですもの。まだ頑張ってもらいますわよ?」
「・・・よがっだ・・・ぐずっ・・・リシェ・・・俺・・・オッサンだがらっ・・・男とじで・・・拒否ざれだ・・・どおもっだっ・・・うっ・・・」
「でしたら誰が私を愛してくださいますの?」
「誰でもないっ!俺だけだ!」
アリエルはリシェリアの胸に再度顔を埋めるとわんわんと泣き出した。
「あんなに威厳がおありの陛下も、妃殿下だけには敵いませんな」
「えぇ、アル様は、私にベタ惚れだとおっしゃいましたもの。あの時は嬉しかったんですのよ。それに私は猛獣使いだそうですので、ふふっ」
リシェリアは嬉しそうに笑った。
2
あなたにおすすめの小説
王命って何ですか? 虐げられ才女は理不尽な我慢をやめることにした
まるまる⭐️
恋愛
【第18回恋愛小説大賞において優秀賞を頂戴致しました。応援頂いた読者の皆様に心よりの感謝を申し上げます。本当にありがとうございました】
その日、貴族裁判所前には多くの貴族達が傍聴券を求め、所狭しと行列を作っていた。
貴族達にとって注目すべき裁判が開かれるからだ。
現国王の妹王女の嫁ぎ先である建国以来の名門侯爵家が、新興貴族である伯爵家から訴えを起こされたこの裁判。
人々の関心を集めないはずがない。
裁判の冒頭、証言台に立った伯爵家長女は涙ながらに訴えた。
「私には婚約者がいました…。
彼を愛していました。でも、私とその方の婚約は破棄され、私は意に沿わぬ男性の元へと嫁ぎ、侯爵夫人となったのです。
そう…。誰も覆す事の出来ない王命と言う理不尽な制度によって…。
ですが、理不尽な制度には理不尽な扱いが待っていました…」
裁判開始早々、王命を理不尽だと公衆の面前で公言した彼女。裁判での証言でなければ不敬罪に問われても可笑しくはない発言だ。
だが、彼女はそんな事は全て承知の上であえてこの言葉を発した。
彼女はこれより少し前、嫁ぎ先の侯爵家から彼女の有責で離縁されている。原因は彼女の不貞行為だ。彼女はそれを否定し、この裁判に於いて自身の無実を証明しようとしているのだ。
次々に積み重ねられていく証言に次第に追い込まれていく侯爵家。明らかになっていく真実を傍聴席の貴族達は息を飲んで見守る。
裁判の最後、彼女は傍聴席に向かって訴えかけた。
「王命って何ですか?」と。
✳︎不定期更新、設定ゆるゆるです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】幼な妻は年上夫を落としたい ~妹のように溺愛されても足りないの~
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
この人が私の夫……政略結婚だけど、一目惚れです!
12歳にして、戦争回避のために隣国の王弟に嫁ぐことになった末っ子姫アンジェル。15歳も年上の夫に会うなり、一目惚れした。彼のすべてが大好きなのに、私は年の離れた妹のように甘やかされるばかり。溺愛もいいけれど、妻として愛してほしいわ。
両片思いの擦れ違い夫婦が、本物の愛に届くまで。ハッピーエンド確定です♪
ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/07/06……完結
2024/06/29……本編完結
2024/04/02……エブリスタ、トレンド恋愛 76位
2024/04/02……アルファポリス、女性向けHOT 77位
2024/04/01……連載開始
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中
余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~
流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。
しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。
けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる