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失意と苛立ちと
泣き止んでもまだ目は赤いままだが、ローゼリアが帰るということでマリアンヌは執事のモリスと共に見送りに出る。
「マリアンヌ様、折角頂いたのに、すぐ使うことになるなんて・・・」
少しだけ申し訳なさそうに胸元に目を落とす。
「いえ!使っていただけるなんて光栄ですわ!」
「ありがとうございます。大事にしますわね」
「はい、私も」
ローゼリアが馬車に向かって歩きだす。乗り込もうとした瞬間、待ち伏せしていたらしいリチャードに声をかけられた。
「ローゼリア嬢」
ローゼリアはピタリと動きを止め、後ろを向いたまま次の言葉を待った。
「先ほどは本当にすまなかった。貴女にそんな表情をさせたいわけではなかった」
「だったら意地悪も程ほどにですわね」
そこへ玄関先で見送っていたマリアンヌが駆け付ける。
「お兄様!ローゼリアお姉様はもう帰られるのです!お引き留めしてはいけませんわ!」
そう叫ばれ、話は終わりとばかりにマリアンヌはリチャードの腕を引っ張る。
「お、おいっ!離すんだ。大事な話がある。ローゼリア嬢の今後に関する話だ」
「お姉様の、今後?」
「あぁ」
リチャードは、ローゼリアに向き直ると言葉を放った。
「侯爵家に大量の花が贈られてきているね?」
ローゼリアはその言葉にピクリと反応する。
「その花は王宮から届けられている」
「だから何ですの?」
「・・・陛下から贈られてきているのではないか?」
「・・・だったらなんだと言うのです」
「陛下には愛妾がいるようだ」
「・・・陛下は一国の主です。王族には一夫多妻が認められています。愛妾がおられてもおかしくないのではありませんか?」
ローゼリアは冷静に言葉を返してはいるが、内心はバクバクと脈を打っていた。あんなにも優しく接してくれていたレイドルートに愛妾がいる。その事が受け入れられないのだ。
「そ、そうだな・・・だが、最近は陛下は頻繁に離宮に出入りしていらっしゃる。離宮に女性を囲っていると王宮内で噂が広がっている」
「・・・」
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「・・・そうですか」
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その言葉にローゼリアの心のどこかにトドメを差してしまったらしい。
「縁談など受ける気もございませんわ!失礼致します!」
「ロ、ローゼリア嬢!」
慌てたリチャードは、ローゼリアの手を掴もうとしたが、ローゼリアが馬車に乗り込むのが一足早かった。結局一度もリチャードの顔を見ることなくローゼリアの乗った馬車は進んでいった。本当はたった一言を言いたかっただけ。俺と婚約しないかと。消去法でもいい、じゃあリチャードにしておこうと選んで欲しかっただけなのだ。ここにも不器用で、伝え方を間違う男がいた。
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