流星姫は平凡騎士をご所望です

agapē【アガペー】

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12、素直に喜べ

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その日バージルは稽古にも参加しなかった為、体が疲れていないせいか中々寝付けずにいた。

「はぁ・・・ミーティア王女殿下・・・婚約・・・」

天井を見つめながら、頭の中に考えを巡らせてみても答えは出ない。

結局、空が明るんでくるまで眠りにつけなかった。

翌日、騎士団の稽古場。

「おいバージル、なんか本調子じゃないな」

騎士団の仲間が声をかけてくる。

「ああ、悪い」

「体調でも悪いのか?」

「いや、そういうわけではないんだが・・・寝不足なだけだ」

「なんか悩み事か?もしかしてあの姫さんのことか?」

「・・・いや・・・そう・・・そうだな」

「いやー、俺驚いたぜ」

「何がだ?」

「いつの間に虜にしたんだ?まさか姫さんを魅了してたなんてなー」

「み、魅了って!!」

「だってよ、底辺貴族の俺らや平民なんかにゃ手の届かない高貴なお方だぜ?

どうにかすると顔も拝めないような方だ。三の姫の幻の姫様ならなおさらだな!」

(こいつ、絶対面白がってやがる・・・)

「悩む事なんかあるか?素直に喜べばいいじゃないか」

「・・・」

「俺なら嬉しいけどなぁ、あんなに素直に好きって表現してくれてるんだぜ?」

「嬉しい・・・か・・・」

「でもなぁ、仮に結婚を考えたとして、お嬢さんを僕に下さいって言いに行く相手が国王陛下だからなぁ」

(何も知らないから気軽にそんな事が言えるんだよな・・・)

「あり得ない仮の話をしないでくれよ。子爵家の次男ごときが、王女様を娶るなんて聞いた事がないだろ」

「まあ確かにな。でももしそんな事になれば、ある意味英雄だな、はははは!」

「面白がりやがって・・・」

自分で言っててなんだかむなしくなってきたバージルは、模擬刀を持って素振りを始めた。

何も考えず、ただひたすらに素振りをし、倒れるまで無心に模擬刀を振った。どれだけの時間が経っただろう。体力が尽き倒れ込むように稽古場の地面に仰向けに寝転んだ。

大の字に空を仰ぎ目を瞑った、頬をまだ寒さの残る3月の冷たい風がかすめていく。

「ねぇ、バージル、何してるのぉ?」

いつものゆるい感じでトーマスが話しかけてくる。

「星見てんの」

「ふーん、曇ってるけどぉ?」

「・・・」

「なんだっていいけど、風邪引くよぉ?」

「ご心配どうも」

「じゃあ先行くからねぇ」

「あぁ」

(これは、考える時間が伸びるといけないなぁ・・・報告しなくちゃねぇ)

立ち去りつつも、トーマスはそんな事を考えていた。

この国の社交シーズンは、4月から夏の暑さが出始める6月末までと、暑さが和らぐ9月から寒さが厳しくなる前の11月末までの期間の2回開催される。

ミーティアがデビュタントを行う夜会は、4月に入ってすぐの春の社交期間がスタートする初めの夜会である。

夜会まで残り2週間と迫っていた。

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