9 / 117
9.デートの準備
しおりを挟む
「着てください」
「絶対に着ないからね」
アナベルと何度も押し問答した末、なんとかスケスケドレスではなく、露出がやや抑え気味のものを着ることで決着がついた。
それでも裾はふわりと広がって歩きにくいし、胸元のレースは無駄にヒラヒラしすぎて私的には不満が残っている。
不満があるのはアナベルも同様のようで、「これじゃあウィルバート様を誘惑することなんてできませんよ」っと、ぶつくさ小言が止まらない。
「だから誘惑なんかしたくないんだって!!」
私の心からの叫びは完全にスルーされ、アナベルには全く響かない。
っていうか、生まれて初めてのデートなのよ。ベッドうんぬんの話になんかなるわけないじゃない。
恋愛初心者の私でも、カップルにおけるスキンシップの一般的な流れは知っている。
まずは『手を繋ぐ』でしょ。それから『抱擁』『キス』して『ベッド』へ……
『手を繋ぐ』は、今日腕を組んで歩いたから終わったとしても、ベッドまでの道のりはまだまだよ。
「アリス様のおっしゃる、スキンシップの流れとやらについても言いたい事がありますが、今は一旦おいておきましょう。それより先程、『手を繋ぐ』は済んだとおっしゃいましたよね?」
「ええ。今日ウィルバート様と腕を組んで歩いたわよ」
「まさかと思いますが、『抱擁』も『キス』もまだってことは……ないですよね?」
「もちろん、まだに決まってるじゃない」
アナベルが信じられないものを見るような目で私を見た。
「アリス様!? アリス様は先程までウィルバート様と二人きりでしたよね? お二人で一体何をしていたんですか?」
「何って……お茶を飲みながら庭を眺めてたのよ。紅茶もアップルパイも美味しかったわ」
「それだけですか?」
アナベルが「信じられない」と小さな声で呟いたのを私は聞き逃さなかった。
「何のために二人っきりにしてあげたと思ってるんですか? 密着できるよう、わざわざ小さめのソファーまで用意したのに。キッスすらしてないってあり得ませんよ!!」
「あのねぇ、二人きりだからってキスすると思ってる方がおかしいのよ」
私とウィルバートは知り合ってから、まだそんなにたってないのよ。まぁ今は一応仮の恋人ってことにはなっているけど、心も通い合ってないのにキスなんてできますか!!
それにしても、あのソファーに私達を密着させるという意図があったとは。たしかに二人で腰かけると膝が触れあう距離ではあったけど……
アナベルはそういうことまで考えてあのテーブルをセッティングしていたのね。恋愛マスターというのか策士というのか……恐ろしい人だ。
「アリス様、聞いてるんですか?」
顔をあげると、アナベルの真面目な顔が目の前にあった。
「聞いてるわよ。でもね、とにかく私は誘惑なんかしないから!! ウィルバート様だってそんなの望んでないだろうし、二人で散歩しながらおしゃべりするだけで充分なの」
「散歩しながらおしゃべりって……そんなのデートって言うんですか?」
アナベルが心から驚いているような声をあげた。
「いいですか。よく聞いてくださいね」
真顔でそう前置きし、アナベルの恋愛講義が始まった。
「夜の庭に出たら、アリス様はまず寒そうなフリをしてください。ウィルバート様が抱きしめて温めてくださるはずです。もし万が一にも抱きしめられない場合は、アリス様からほっぺにキスしたらいいんですよ。そうすればウィルバート様の理性もふっとんで、いちゃつきまくりのスタートです」
いや、グーじゃないでしょ、グーじゃ。親指でいいねポーズを決めるアナベルに、心の中でつっこんだ。
「だいたい、いちゃつきまくりって……」
恋愛初心者の私と、おそらく肉食系であろうアナベルとは、どうも恋愛に対するスタンスが違いすぎるみたいだ。
「何度も言ったけど、ウィルバート様と私はそんないちゃつくような関係じゃないわよ」
「何言ってるんですか? 夜の庭園なんて、薄暗くって最高ですよ。貪りまくるにはもってこいじゃないですか」
「貪りあうって、一体何の話をしてるのよ?」
「キッスの話に決まってるじゃありませんか。ウィルバート様の唇を味わいつくして来てください」
唇を味わいつくす?
私がウィルバート様の唇を?
顔がかぁっと熱くなってくる。想像しただけで頭がオーバーヒートしそうだ。
「ななななな、何言ってんのよ」
動揺しすぎて声が震えてしまう。
「キ、キスなんてするわけないでしょ」
アナベルがやれやれという様に首を横に振った。
「たかがキッスくらいで大袈裟すぎですよ」
大袈裟なもんですか!! 今から人生初デートに向かおうという女子高生が、キスで動揺して何が悪い。
「とにかく私は誘惑もしないし、キスもしないから!!」
「アリス様が奥手でいらっしゃることはよーく分かりました。ここはもうウィルバート様に期待しましょう」
期待してくれなくていいんだけど……
アナベルのおかげで今夜のデートに対する不安がどんどん増してきた。
私の心を散々掻き乱したアナベルはというと、「いいですねぇ、暗闇デート……」っと、見ているこちらが不安になるほどニマニマした顔で、口からグフフっという不気味な音を発している。
「ア、アナベル?」
心配して様子を伺う私に、
「アリス様とウィルバート様のデートのことを想像したら、つい興奮してしまって……」
そう言うアナベルの口から再びグフっという音が漏れた。
一体どんな想像してるのかしら?
気にはなるけれど、恐ろしいので尋ねるのはやめておいた。
「アリス様、お戻りになったらデートのお話詳しく教えてくださいね」
私の髪の毛の仕上げをしながらアナベルが言った。
「アナベルが喜ぶような話は絶対にないからね」
鏡にうつるアナベルの、期待でキラキラと輝く瞳を見て思わず苦笑してしまう。まぁアナベルの期待するような展開にはならないでしょうけどね。
「最低でもウィルバート様の唇の感触くらいは聞きたいですね。今夜の侍女会が最高に盛り上がること間違いなしです」
アナベルがグフっと笑った瞬間にドアをノックする音が聞こえた。
侍女会って女子会みたいなものかしら? もしかしてアナベルみないなガツガツ系がたくさんいるの?
そんな場所で私の初デートのことがネタになるなんて……ダメ出しのオンパレードが目に見えるようだ。
慌ててドアをあけるアナベルを見ながら、デートの感想は、絶対に絶対にぜーったいに教えてあげないわっと心に誓った。
☆ ☆ ☆
「寒くないかい?」
隣を歩くウィルバートの微笑みに胸がトクンと大きな音を立てた。こんな風に並んで歩くのって緊張しちゃう。
「大丈夫です。しっかり着込んで来ましたから」
きっとアナベルがいたら、私のこの返答にダメ出しするだろうな。着込んで来たなんて、色気がなさすぎることは分かっている。
まだ秋とはいえ夜の庭園はとても寒い。アナベルは不満そうだったが、ドレスの下に保温素材で出来たロングインナー、上にはコートを着てきたのだ。白いプードルファーコートは丈が短いけれどとても可愛くて暖かい。
「そのコート、よく似合っていて可愛いよ」
ウィルバートに褒められると、素直に嬉しい。
「お昼にテラスから見えたお庭を歩くんですか?」
黙っていると緊張が増す気がして口を開いた。
「そうだよ。喜んでもらえるといいんだけど」
テラスでお茶を飲みながら眺めた庭園は秋の装いでとても美しかった。
「コスモスが満開でしたね。楽しみです」
楽しみなのは嘘ではないが、本音を言えばこんなに暗くなってからじゃなく、明るいうちに歩きたかった。日の入りはすでに早くなり、外は真っ暗だ。草花の美しさも半減してしまうに違いない。
そう思いながら城の警備をする騎士達の前を通り抜け外へ出る。
「これって……」
目の前に広がる景色に思わず足を止めた。
なんて綺麗なの……
真っ暗な庭園には数え切れないほど多くのキャンドルが置かれていた。
「行こうか」
目の前の幻想的な風景に言葉をなくした私に向かってウィルバートが微笑んだ。
揺らめくキャンドルの優しい光で照らされるレンガ路をウィルバートと並んで歩く。
「……本当に素敵ですね……夜の庭園がこんなに美しいなんて知りませんでした」
「喜んでもらえて嬉しいよ」
ウィルバートが幸せそうな顔を見せる。その笑顔がなんだか可愛らしくて胸がキュンと音を立てた。
どうしよう緊張しちゃう。
こんな時って何を話したらいいのかしら?
ロマンティックな雰囲気にピッタリの話題なんて何も思いつかない。
「……なんだか緊張するね」
照れたような、それでいて少し申し訳なさそうな顔を見せるウィルバートに、「私もです」と口早に答えた。
「私も生まれて初めてのデートなので、すごく緊張してます」
人生初のデートっていうだけでも緊張しちゃうのに、そのデート相手が超イケメン王子なのだから緊張しまくって当然だ。
右隣を歩くウィルバートの横顔をチラリと見上げる。その硬い表情に思わず口元が緩んだ。私相手にそんなに緊張しなくてもいいのに……
こんなステキな人が私なんかとのデートで緊張してるなんて。なんだかとっても不思議な気分。
そうよ!! いつまでも緊張してたらもったいないわ。こんな素敵な人とデートなんてもう一生ないかもしれないんだから楽しまなきゃ。
ふふっと小さく笑みを浮かべる私に気づいたウィルバートが、不思議そうに、ん? っといった顔で私を見た。
「本当に綺麗ですね」
完全に緊張がとけたわけじゃないけど、とにかく楽しむと決めたら心が少し軽くなった気がする。それと同時に足取りまでも軽くなってくる。
目の前には沢山のキャンドルで形作られた大きなハートがいくつもありとてもロマンチックだ。
「少し座らないかい?」
ウィルバートの視線の先には白いソファーが置かれていた。
「絶対に着ないからね」
アナベルと何度も押し問答した末、なんとかスケスケドレスではなく、露出がやや抑え気味のものを着ることで決着がついた。
それでも裾はふわりと広がって歩きにくいし、胸元のレースは無駄にヒラヒラしすぎて私的には不満が残っている。
不満があるのはアナベルも同様のようで、「これじゃあウィルバート様を誘惑することなんてできませんよ」っと、ぶつくさ小言が止まらない。
「だから誘惑なんかしたくないんだって!!」
私の心からの叫びは完全にスルーされ、アナベルには全く響かない。
っていうか、生まれて初めてのデートなのよ。ベッドうんぬんの話になんかなるわけないじゃない。
恋愛初心者の私でも、カップルにおけるスキンシップの一般的な流れは知っている。
まずは『手を繋ぐ』でしょ。それから『抱擁』『キス』して『ベッド』へ……
『手を繋ぐ』は、今日腕を組んで歩いたから終わったとしても、ベッドまでの道のりはまだまだよ。
「アリス様のおっしゃる、スキンシップの流れとやらについても言いたい事がありますが、今は一旦おいておきましょう。それより先程、『手を繋ぐ』は済んだとおっしゃいましたよね?」
「ええ。今日ウィルバート様と腕を組んで歩いたわよ」
「まさかと思いますが、『抱擁』も『キス』もまだってことは……ないですよね?」
「もちろん、まだに決まってるじゃない」
アナベルが信じられないものを見るような目で私を見た。
「アリス様!? アリス様は先程までウィルバート様と二人きりでしたよね? お二人で一体何をしていたんですか?」
「何って……お茶を飲みながら庭を眺めてたのよ。紅茶もアップルパイも美味しかったわ」
「それだけですか?」
アナベルが「信じられない」と小さな声で呟いたのを私は聞き逃さなかった。
「何のために二人っきりにしてあげたと思ってるんですか? 密着できるよう、わざわざ小さめのソファーまで用意したのに。キッスすらしてないってあり得ませんよ!!」
「あのねぇ、二人きりだからってキスすると思ってる方がおかしいのよ」
私とウィルバートは知り合ってから、まだそんなにたってないのよ。まぁ今は一応仮の恋人ってことにはなっているけど、心も通い合ってないのにキスなんてできますか!!
それにしても、あのソファーに私達を密着させるという意図があったとは。たしかに二人で腰かけると膝が触れあう距離ではあったけど……
アナベルはそういうことまで考えてあのテーブルをセッティングしていたのね。恋愛マスターというのか策士というのか……恐ろしい人だ。
「アリス様、聞いてるんですか?」
顔をあげると、アナベルの真面目な顔が目の前にあった。
「聞いてるわよ。でもね、とにかく私は誘惑なんかしないから!! ウィルバート様だってそんなの望んでないだろうし、二人で散歩しながらおしゃべりするだけで充分なの」
「散歩しながらおしゃべりって……そんなのデートって言うんですか?」
アナベルが心から驚いているような声をあげた。
「いいですか。よく聞いてくださいね」
真顔でそう前置きし、アナベルの恋愛講義が始まった。
「夜の庭に出たら、アリス様はまず寒そうなフリをしてください。ウィルバート様が抱きしめて温めてくださるはずです。もし万が一にも抱きしめられない場合は、アリス様からほっぺにキスしたらいいんですよ。そうすればウィルバート様の理性もふっとんで、いちゃつきまくりのスタートです」
いや、グーじゃないでしょ、グーじゃ。親指でいいねポーズを決めるアナベルに、心の中でつっこんだ。
「だいたい、いちゃつきまくりって……」
恋愛初心者の私と、おそらく肉食系であろうアナベルとは、どうも恋愛に対するスタンスが違いすぎるみたいだ。
「何度も言ったけど、ウィルバート様と私はそんないちゃつくような関係じゃないわよ」
「何言ってるんですか? 夜の庭園なんて、薄暗くって最高ですよ。貪りまくるにはもってこいじゃないですか」
「貪りあうって、一体何の話をしてるのよ?」
「キッスの話に決まってるじゃありませんか。ウィルバート様の唇を味わいつくして来てください」
唇を味わいつくす?
私がウィルバート様の唇を?
顔がかぁっと熱くなってくる。想像しただけで頭がオーバーヒートしそうだ。
「ななななな、何言ってんのよ」
動揺しすぎて声が震えてしまう。
「キ、キスなんてするわけないでしょ」
アナベルがやれやれという様に首を横に振った。
「たかがキッスくらいで大袈裟すぎですよ」
大袈裟なもんですか!! 今から人生初デートに向かおうという女子高生が、キスで動揺して何が悪い。
「とにかく私は誘惑もしないし、キスもしないから!!」
「アリス様が奥手でいらっしゃることはよーく分かりました。ここはもうウィルバート様に期待しましょう」
期待してくれなくていいんだけど……
アナベルのおかげで今夜のデートに対する不安がどんどん増してきた。
私の心を散々掻き乱したアナベルはというと、「いいですねぇ、暗闇デート……」っと、見ているこちらが不安になるほどニマニマした顔で、口からグフフっという不気味な音を発している。
「ア、アナベル?」
心配して様子を伺う私に、
「アリス様とウィルバート様のデートのことを想像したら、つい興奮してしまって……」
そう言うアナベルの口から再びグフっという音が漏れた。
一体どんな想像してるのかしら?
気にはなるけれど、恐ろしいので尋ねるのはやめておいた。
「アリス様、お戻りになったらデートのお話詳しく教えてくださいね」
私の髪の毛の仕上げをしながらアナベルが言った。
「アナベルが喜ぶような話は絶対にないからね」
鏡にうつるアナベルの、期待でキラキラと輝く瞳を見て思わず苦笑してしまう。まぁアナベルの期待するような展開にはならないでしょうけどね。
「最低でもウィルバート様の唇の感触くらいは聞きたいですね。今夜の侍女会が最高に盛り上がること間違いなしです」
アナベルがグフっと笑った瞬間にドアをノックする音が聞こえた。
侍女会って女子会みたいなものかしら? もしかしてアナベルみないなガツガツ系がたくさんいるの?
そんな場所で私の初デートのことがネタになるなんて……ダメ出しのオンパレードが目に見えるようだ。
慌ててドアをあけるアナベルを見ながら、デートの感想は、絶対に絶対にぜーったいに教えてあげないわっと心に誓った。
☆ ☆ ☆
「寒くないかい?」
隣を歩くウィルバートの微笑みに胸がトクンと大きな音を立てた。こんな風に並んで歩くのって緊張しちゃう。
「大丈夫です。しっかり着込んで来ましたから」
きっとアナベルがいたら、私のこの返答にダメ出しするだろうな。着込んで来たなんて、色気がなさすぎることは分かっている。
まだ秋とはいえ夜の庭園はとても寒い。アナベルは不満そうだったが、ドレスの下に保温素材で出来たロングインナー、上にはコートを着てきたのだ。白いプードルファーコートは丈が短いけれどとても可愛くて暖かい。
「そのコート、よく似合っていて可愛いよ」
ウィルバートに褒められると、素直に嬉しい。
「お昼にテラスから見えたお庭を歩くんですか?」
黙っていると緊張が増す気がして口を開いた。
「そうだよ。喜んでもらえるといいんだけど」
テラスでお茶を飲みながら眺めた庭園は秋の装いでとても美しかった。
「コスモスが満開でしたね。楽しみです」
楽しみなのは嘘ではないが、本音を言えばこんなに暗くなってからじゃなく、明るいうちに歩きたかった。日の入りはすでに早くなり、外は真っ暗だ。草花の美しさも半減してしまうに違いない。
そう思いながら城の警備をする騎士達の前を通り抜け外へ出る。
「これって……」
目の前に広がる景色に思わず足を止めた。
なんて綺麗なの……
真っ暗な庭園には数え切れないほど多くのキャンドルが置かれていた。
「行こうか」
目の前の幻想的な風景に言葉をなくした私に向かってウィルバートが微笑んだ。
揺らめくキャンドルの優しい光で照らされるレンガ路をウィルバートと並んで歩く。
「……本当に素敵ですね……夜の庭園がこんなに美しいなんて知りませんでした」
「喜んでもらえて嬉しいよ」
ウィルバートが幸せそうな顔を見せる。その笑顔がなんだか可愛らしくて胸がキュンと音を立てた。
どうしよう緊張しちゃう。
こんな時って何を話したらいいのかしら?
ロマンティックな雰囲気にピッタリの話題なんて何も思いつかない。
「……なんだか緊張するね」
照れたような、それでいて少し申し訳なさそうな顔を見せるウィルバートに、「私もです」と口早に答えた。
「私も生まれて初めてのデートなので、すごく緊張してます」
人生初のデートっていうだけでも緊張しちゃうのに、そのデート相手が超イケメン王子なのだから緊張しまくって当然だ。
右隣を歩くウィルバートの横顔をチラリと見上げる。その硬い表情に思わず口元が緩んだ。私相手にそんなに緊張しなくてもいいのに……
こんなステキな人が私なんかとのデートで緊張してるなんて。なんだかとっても不思議な気分。
そうよ!! いつまでも緊張してたらもったいないわ。こんな素敵な人とデートなんてもう一生ないかもしれないんだから楽しまなきゃ。
ふふっと小さく笑みを浮かべる私に気づいたウィルバートが、不思議そうに、ん? っといった顔で私を見た。
「本当に綺麗ですね」
完全に緊張がとけたわけじゃないけど、とにかく楽しむと決めたら心が少し軽くなった気がする。それと同時に足取りまでも軽くなってくる。
目の前には沢山のキャンドルで形作られた大きなハートがいくつもありとてもロマンチックだ。
「少し座らないかい?」
ウィルバートの視線の先には白いソファーが置かれていた。
0
あなたにおすすめの小説
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
【完結】家族に愛されなかった辺境伯の娘は、敵国の堅物公爵閣下に攫われ真実の愛を知る
水月音子
恋愛
辺境を守るティフマ城の城主の娘であるマリアーナは、戦の代償として隣国の敵将アルベルトにその身を差し出した。
婚約者である第四王子と、父親である城主が犯した国境侵犯という罪を、自分の命でもって償うためだ。
だが――
「マリアーナ嬢を我が国に迎え入れ、現国王の甥である私、アルベルト・ルーベンソンの妻とする」
そう宣言されてマリアーナは隣国へと攫われる。
しかし、ルーベンソン公爵邸にて差し出された婚約契約書にある一文に疑念を覚える。
『婚約期間中あるいは婚姻後、子をもうけた場合、性別を問わず健康な子であれば、婚約もしくは結婚の継続の自由を委ねる』
さらには家庭教師から“精霊姫”の話を聞き、アルベルトの側近であるフランからも詳細を聞き出すと、自分の置かれた状況を理解する。
かつて自国が攫った“精霊姫”の血を継ぐマリアーナ。
そのマリアーナが子供を産めば、自分はもうこの国にとって必要ない存在のだ、と。
そうであれば、早く子を産んで身を引こう――。
そんなマリアーナの思いに気づかないアルベルトは、「婚約中に子を産み、自国へ戻りたい。結婚して公爵様の経歴に傷をつける必要はない」との彼女の言葉に激昂する。
アルベルトはアルベルトで、マリアーナの知らないところで実はずっと昔から、彼女を妻にすると決めていた。
ふたりは互いの立場からすれ違いつつも、少しずつ心を通わせていく。
二度目の初恋は、穏やかな伯爵と
柴田はつみ
恋愛
交通事故に遭い、気がつけば18歳のアランと出会う前の自分に戻っていた伯爵令嬢リーシャン。
冷酷で傲慢な伯爵アランとの不和な結婚生活を経験した彼女は、今度こそ彼とは関わらないと固く誓う。しかし運命のいたずらか、リーシャンは再びアランと出会ってしまう。
宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~
紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。
そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。
大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。
しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。
フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。
しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。
「あのときからずっと……お慕いしています」
かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。
ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。
「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、
シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」
あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?
藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。
結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの?
もう、みんな、うるさい!
私は私。好きに生きさせてよね。
この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。
彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。
私の人生に彩りをくれる、その人。
その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。
⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。
⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる