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34.女神降臨
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逃走劇って、メイシー様ってば王宮から逃げてきたの?
不安になる私の横で、メイシー様は「ねぇ、聞いてくれる? ロバートったら酷いのよ」っと、友達に彼氏の愚痴を言うレベルのテンションで話し始めた。
「まぁ、何があったんですか?」と優雅に笑うサブリナ様も、メイシー様の事を心配しているというよりは面白がっているように見える。
「ロバートってば最近読書に夢中だったの」
サブリナ様は珍しいこともあるものだと、驚いた顔をしている。
どうやらロバート様は私の薦めた本を読んでくれたようだ。私が選んだのは子供向けの探偵小説だった。子供用なんてロバート様に対して失礼かなとも思ったけれど、読書嫌いならこのレベルからスタートした方が無難だろう。
「本嫌いなロバートが読み終えたくらいだからきっと面白いのだろうと思い、わたくしも読んでみたの。そうしたら想像以上に面白くって……犯人が知りたくてつい一気に読んじゃったわ」
ふふっと目を細めてメイシー様が笑った。元々ウィルバートの母親だなんて信じられないくらい若く見えるけれど、笑うと一段と可愛らしさが増し、まるで少女のようだ。
ロバート様だけではなく、メイシー様まで気に入ってくれたなんて。嬉しさが胸に込み上げてくる。感無量とはこのことだ。自分の選んだ本を褒められると、まるで自分が褒められたかのように思えるから不思議だ。
「それで……その本と今回の逃走とはどんな関係があるんですか?」
「それはね……」
メイシー様の眉間に微かだがシワがよった。
「ロバートったら夜遅くまで夢中で読んでいるわたくしに、犯人が誰だかを教えたのよ。色々推理しながら読んでいたのに、台無しだわ。許せると思って?」
「まぁ、それは酷いですね」
言葉に怒りが滲むメイシー様とは対照的に、サブリナ様の口調はのほほんとしている。
って、ちょっと待ってよ……
それってつまり、メイシー様が家出したのは私のお薦めした本が原因ってこと? いや、この場合住んでるのは王宮だから王宮出の方がいいのかも。っていうかそんなことよりとにかく、メイシー様がロバート様にご立腹な原因を作ったのは私ってことだ。
さっきまでの嬉しい気分が跡形もなく消えていく。
「申し訳ありませんでした。私が本をすすめたばっかりに……」
「あら、アリスちゃんが謝ることなんて何もないのよ。悪いのは全部ロバートなんですから」
「でも……」
メイシー様は気にするなと言ってくれるけれど、残念ながら、気にするなと言われて気にするのをやめられるような性格をしていない。
ロバート様に他の本をすすめるべきだった。
後悔が頭の中を占領していく。そんな私の様子を気にしてか、サブリナ様が紅茶のおかわりを用意するよう命じた。すぐに私のカップがさげられ、新しい紅茶が私の前に置かれた。
「アリス様知ってらして? メイシー様がこのような形で王宮を出られたのは今回が初めてではないんですよ」
口元を隠し、ふふっと上品に微笑んだサブリナ様がメイシー様を見た。メイシー様は記憶を呼び起こすかのような表情で左斜め上を見ている。
「前回わたくしがロバートと喧嘩して王宮を出たのはいつだったかしらね?」
「たしか……4年ほど前じゃありませんか? ほら、ウィルバート様が小学部をご卒業される時でしたから」
「そうそう、そうだったわ」っとメイシー様がパンっと手を合わした。
「あの時はそう、ウィルバートの卒業パーティーの前だったわね。髪型を変えたのに、ロバートったら全く気づかないんですもの。あー、思い出したらまた腹が立ってきたわ」
「ふふっ。あれからもう4年もたつんですね……」
二人の婦人は「時がたつのは早いものだと」顔を見合わせて微笑みあっている。
髪型を変えた事に気づかれないから家出なんて……正直そんな理由で家出なんかしちゃう? っとは思ってしまうけど、メイシー様の行動力は羨ましい。
私なんて髪型を変えたからって誰かに気付いてもらったことなんかないのに。何となく寂しい気持ちになりながら紅茶に口をつけた。
あら? どうしたのかしら?
部屋の入り口がなんだか騒がしい。
「娘が学園から帰って来たのでしょう。すぐに挨拶に来ますわ」
へー、サブリナ様には娘さんがいたんだ……と思っている私の目に一人の少女がうつる。その顔を真正面から見た瞬間、思わず持っていたクッキーを落っことしてしまいそうになった。
な、なんて綺麗な人なの……ううん、綺麗なんて言葉じゃ表せないくらいに美しい。白く透明感のある肌にほんのりと赤みのある頬はまるでお人形さんのようだ。
長い金色の髪の毛は歩くたびにサラサラと揺れて光り輝いている。少し潤んだエメラルドグリーンの瞳は、慈愛のこもったような眼差しで私達を見つめている。
「久しぶりね、キャロライン。学園生活は順調?」
「はい、メイシー様。毎日有意義な時間を過ごさせていただいております」
少女は見た目だけでなく、声もとても美しかった。高く澄んだその声は、たった一言だけで私の心をぐっと掴んだ。
なんて優雅で上品な……あれ? この感じ、どこかで……
「アリス様紹介いたしますね。娘のキャロラインです」
丁寧な仕草で挨拶をする少女を見て、私も慌てて頭を下げた。
キャロラインの名前を聞いた時驚きはしたが、同時にやっぱりとも思った。前にウィルと行ったレストランで聞いた声と同じだったからだ。
こんな素敵な声の主なんだから、きっと本人も素敵なんだろうとは思ってはいたが、ここまで美しい人だったなんて。
「キャロラインはアリス様と年も近いですし、是非仲良くしていただければと……」
サブリナ様の声がどこか遠くで聞こえるような気がする。
まさかこんなに風にキャロラインに出会うなんて全く想像していなかった。
キャロライン デンバー
私は彼女とウィルバートを結婚させる手伝いをするためこの世界に呼ばれた。
この人がウィルと結婚する女性かぁ。
目の前の少女は天使か女神かというほどキラキラしている。ウィルとは美男美女でお似合いだ。そう思うと胸がチクリと痛んだ。
すぐ席が用意され、キャロラインはサブリナ様の隣に腰をおろした。座ってお茶を飲む、ただそれだけのことがまるで絵画のように美しい。キャロラインの動きに魅了され、目が離せない。
「アリス様の事はウィルバート様からお聞きしています。年忘れの夜会にはご一緒されるんですよね?」
改めて聞いても、惚れ惚れしてしまう程に魅力的な声だ。
「ウィルバート様はアリス様とご一緒できる事を、とても喜んでらっしゃいましたよ」
「そうなんですか……」
何故だろう。キャロラインの言葉を素直にうけとれない。それどころかキャロラインの口からウィルの名前を聞いた途端、もやもやしたものが胸の中を渦巻き始めた。
「アリスちゃんは夜会に向けての勉強をしてるのよね? あんまりにも優秀だから、ルーカスがいじめがいがないと悔しがっているらしいじゃない」
ははっ。何でもよく知ってらっしゃる。
思わず苦笑いが漏れた。
メイシー様の言うとおり、夜会に向けての勉強は毎日かかさず行っている。というか自分で学ぶと言った以上、やらないわけにはいかなかった。失敗して人前で目立つのは嫌だし、私のせいでウィルに恥をかかすのはもっと嫌だ。
それに、絶対に諦めるだろうと思っているルーカスにぎゃふんと言わせてやりたいという気持ちもある。ルーカスから夜会までに読めと言われた本は台車3台分もあったが、なんとか3日で読み切ってやった。
「本当に全部読んだんですか?」
懐疑的な表情を浮かべるルーカスに、読み終えた本から重要そうなところを抜粋してわかりやすくまとめたノートを見せた。
あれだけ大量の本でも、同じようなことばかり書いてあるんだから、要約なんて簡単だ。ノートの出来が良かったことはルーカスの顔を見れば明らかだった。
「ルーカスのおかげで知識は頭に入ったんですが、それを実践するとなるとやはり難しくって……」
自分で作ったノートを繰り返し読み、必要な知識はほぼ頭に詰めこんだ。だからといってそれが使えるかといえば、そう簡単にはうまくいかない。特に優雅さというものは、そう簡単に身につくものではない。
「それでしたらキャロラインがお役に立てるかもしれません」
サブリナ様の言葉に、メイシー様がそれはいい考えだと声をあげる。
「キャロラインは年頃の令嬢の中でもとびぬけてすばらしい女性ですよ。アリスちゃん、キャロラインに特訓してもらいなさい」
「そんな……キャロライン様にご迷惑をおかけするわけにはいきません」
キャロラインが素晴らしい女性なのは私にも分かっている。でも特訓してもらったからといって、私がキャロラインのようになれるわけじゃない。キャロラインの貴重な時間を使わせるなんて申し訳ない。
「迷惑だなんて。是非お手伝いさせてくださいませ」
あぁ、なんて有難い笑顔……
私なんかには勿体ないほど輝かしい女神の微笑みに、思わず脳内で両手を合わせて拝んでしまう。
「アリス様も夜会までのひと月をこちらで過ごされるんですよね?」
はい??
女神の一言に脳内の私の動きが止まった。
驚く私を見たメイシー様が、「わたくしのロバートに対する怒りは夜会までおさまらないでしょうね」っと笑った。だから夜会までここで過ごすということか。
「ではキャロライン、夜会までにアリスちゃんを完璧なレディーに仕上げてね」
「お任せください」
なんかいい具合に話がまとまったね的に、皆して微笑んでるけど大丈夫なんだろうか?
メイシー様、簡単に言いますけど、私が完璧なレディーになるのは一か月じゃ無理ですよ。キャロライン様もそんなに安請け合いして後悔しないでくださいよ。
なーんて事、言えるわけもない。私にできるのはただ皆に合わせて愛想笑いを浮かべる事だけだった。
不安になる私の横で、メイシー様は「ねぇ、聞いてくれる? ロバートったら酷いのよ」っと、友達に彼氏の愚痴を言うレベルのテンションで話し始めた。
「まぁ、何があったんですか?」と優雅に笑うサブリナ様も、メイシー様の事を心配しているというよりは面白がっているように見える。
「ロバートってば最近読書に夢中だったの」
サブリナ様は珍しいこともあるものだと、驚いた顔をしている。
どうやらロバート様は私の薦めた本を読んでくれたようだ。私が選んだのは子供向けの探偵小説だった。子供用なんてロバート様に対して失礼かなとも思ったけれど、読書嫌いならこのレベルからスタートした方が無難だろう。
「本嫌いなロバートが読み終えたくらいだからきっと面白いのだろうと思い、わたくしも読んでみたの。そうしたら想像以上に面白くって……犯人が知りたくてつい一気に読んじゃったわ」
ふふっと目を細めてメイシー様が笑った。元々ウィルバートの母親だなんて信じられないくらい若く見えるけれど、笑うと一段と可愛らしさが増し、まるで少女のようだ。
ロバート様だけではなく、メイシー様まで気に入ってくれたなんて。嬉しさが胸に込み上げてくる。感無量とはこのことだ。自分の選んだ本を褒められると、まるで自分が褒められたかのように思えるから不思議だ。
「それで……その本と今回の逃走とはどんな関係があるんですか?」
「それはね……」
メイシー様の眉間に微かだがシワがよった。
「ロバートったら夜遅くまで夢中で読んでいるわたくしに、犯人が誰だかを教えたのよ。色々推理しながら読んでいたのに、台無しだわ。許せると思って?」
「まぁ、それは酷いですね」
言葉に怒りが滲むメイシー様とは対照的に、サブリナ様の口調はのほほんとしている。
って、ちょっと待ってよ……
それってつまり、メイシー様が家出したのは私のお薦めした本が原因ってこと? いや、この場合住んでるのは王宮だから王宮出の方がいいのかも。っていうかそんなことよりとにかく、メイシー様がロバート様にご立腹な原因を作ったのは私ってことだ。
さっきまでの嬉しい気分が跡形もなく消えていく。
「申し訳ありませんでした。私が本をすすめたばっかりに……」
「あら、アリスちゃんが謝ることなんて何もないのよ。悪いのは全部ロバートなんですから」
「でも……」
メイシー様は気にするなと言ってくれるけれど、残念ながら、気にするなと言われて気にするのをやめられるような性格をしていない。
ロバート様に他の本をすすめるべきだった。
後悔が頭の中を占領していく。そんな私の様子を気にしてか、サブリナ様が紅茶のおかわりを用意するよう命じた。すぐに私のカップがさげられ、新しい紅茶が私の前に置かれた。
「アリス様知ってらして? メイシー様がこのような形で王宮を出られたのは今回が初めてではないんですよ」
口元を隠し、ふふっと上品に微笑んだサブリナ様がメイシー様を見た。メイシー様は記憶を呼び起こすかのような表情で左斜め上を見ている。
「前回わたくしがロバートと喧嘩して王宮を出たのはいつだったかしらね?」
「たしか……4年ほど前じゃありませんか? ほら、ウィルバート様が小学部をご卒業される時でしたから」
「そうそう、そうだったわ」っとメイシー様がパンっと手を合わした。
「あの時はそう、ウィルバートの卒業パーティーの前だったわね。髪型を変えたのに、ロバートったら全く気づかないんですもの。あー、思い出したらまた腹が立ってきたわ」
「ふふっ。あれからもう4年もたつんですね……」
二人の婦人は「時がたつのは早いものだと」顔を見合わせて微笑みあっている。
髪型を変えた事に気づかれないから家出なんて……正直そんな理由で家出なんかしちゃう? っとは思ってしまうけど、メイシー様の行動力は羨ましい。
私なんて髪型を変えたからって誰かに気付いてもらったことなんかないのに。何となく寂しい気持ちになりながら紅茶に口をつけた。
あら? どうしたのかしら?
部屋の入り口がなんだか騒がしい。
「娘が学園から帰って来たのでしょう。すぐに挨拶に来ますわ」
へー、サブリナ様には娘さんがいたんだ……と思っている私の目に一人の少女がうつる。その顔を真正面から見た瞬間、思わず持っていたクッキーを落っことしてしまいそうになった。
な、なんて綺麗な人なの……ううん、綺麗なんて言葉じゃ表せないくらいに美しい。白く透明感のある肌にほんのりと赤みのある頬はまるでお人形さんのようだ。
長い金色の髪の毛は歩くたびにサラサラと揺れて光り輝いている。少し潤んだエメラルドグリーンの瞳は、慈愛のこもったような眼差しで私達を見つめている。
「久しぶりね、キャロライン。学園生活は順調?」
「はい、メイシー様。毎日有意義な時間を過ごさせていただいております」
少女は見た目だけでなく、声もとても美しかった。高く澄んだその声は、たった一言だけで私の心をぐっと掴んだ。
なんて優雅で上品な……あれ? この感じ、どこかで……
「アリス様紹介いたしますね。娘のキャロラインです」
丁寧な仕草で挨拶をする少女を見て、私も慌てて頭を下げた。
キャロラインの名前を聞いた時驚きはしたが、同時にやっぱりとも思った。前にウィルと行ったレストランで聞いた声と同じだったからだ。
こんな素敵な声の主なんだから、きっと本人も素敵なんだろうとは思ってはいたが、ここまで美しい人だったなんて。
「キャロラインはアリス様と年も近いですし、是非仲良くしていただければと……」
サブリナ様の声がどこか遠くで聞こえるような気がする。
まさかこんなに風にキャロラインに出会うなんて全く想像していなかった。
キャロライン デンバー
私は彼女とウィルバートを結婚させる手伝いをするためこの世界に呼ばれた。
この人がウィルと結婚する女性かぁ。
目の前の少女は天使か女神かというほどキラキラしている。ウィルとは美男美女でお似合いだ。そう思うと胸がチクリと痛んだ。
すぐ席が用意され、キャロラインはサブリナ様の隣に腰をおろした。座ってお茶を飲む、ただそれだけのことがまるで絵画のように美しい。キャロラインの動きに魅了され、目が離せない。
「アリス様の事はウィルバート様からお聞きしています。年忘れの夜会にはご一緒されるんですよね?」
改めて聞いても、惚れ惚れしてしまう程に魅力的な声だ。
「ウィルバート様はアリス様とご一緒できる事を、とても喜んでらっしゃいましたよ」
「そうなんですか……」
何故だろう。キャロラインの言葉を素直にうけとれない。それどころかキャロラインの口からウィルの名前を聞いた途端、もやもやしたものが胸の中を渦巻き始めた。
「アリスちゃんは夜会に向けての勉強をしてるのよね? あんまりにも優秀だから、ルーカスがいじめがいがないと悔しがっているらしいじゃない」
ははっ。何でもよく知ってらっしゃる。
思わず苦笑いが漏れた。
メイシー様の言うとおり、夜会に向けての勉強は毎日かかさず行っている。というか自分で学ぶと言った以上、やらないわけにはいかなかった。失敗して人前で目立つのは嫌だし、私のせいでウィルに恥をかかすのはもっと嫌だ。
それに、絶対に諦めるだろうと思っているルーカスにぎゃふんと言わせてやりたいという気持ちもある。ルーカスから夜会までに読めと言われた本は台車3台分もあったが、なんとか3日で読み切ってやった。
「本当に全部読んだんですか?」
懐疑的な表情を浮かべるルーカスに、読み終えた本から重要そうなところを抜粋してわかりやすくまとめたノートを見せた。
あれだけ大量の本でも、同じようなことばかり書いてあるんだから、要約なんて簡単だ。ノートの出来が良かったことはルーカスの顔を見れば明らかだった。
「ルーカスのおかげで知識は頭に入ったんですが、それを実践するとなるとやはり難しくって……」
自分で作ったノートを繰り返し読み、必要な知識はほぼ頭に詰めこんだ。だからといってそれが使えるかといえば、そう簡単にはうまくいかない。特に優雅さというものは、そう簡単に身につくものではない。
「それでしたらキャロラインがお役に立てるかもしれません」
サブリナ様の言葉に、メイシー様がそれはいい考えだと声をあげる。
「キャロラインは年頃の令嬢の中でもとびぬけてすばらしい女性ですよ。アリスちゃん、キャロラインに特訓してもらいなさい」
「そんな……キャロライン様にご迷惑をおかけするわけにはいきません」
キャロラインが素晴らしい女性なのは私にも分かっている。でも特訓してもらったからといって、私がキャロラインのようになれるわけじゃない。キャロラインの貴重な時間を使わせるなんて申し訳ない。
「迷惑だなんて。是非お手伝いさせてくださいませ」
あぁ、なんて有難い笑顔……
私なんかには勿体ないほど輝かしい女神の微笑みに、思わず脳内で両手を合わせて拝んでしまう。
「アリス様も夜会までのひと月をこちらで過ごされるんですよね?」
はい??
女神の一言に脳内の私の動きが止まった。
驚く私を見たメイシー様が、「わたくしのロバートに対する怒りは夜会までおさまらないでしょうね」っと笑った。だから夜会までここで過ごすということか。
「ではキャロライン、夜会までにアリスちゃんを完璧なレディーに仕上げてね」
「お任せください」
なんかいい具合に話がまとまったね的に、皆して微笑んでるけど大丈夫なんだろうか?
メイシー様、簡単に言いますけど、私が完璧なレディーになるのは一か月じゃ無理ですよ。キャロライン様もそんなに安請け合いして後悔しないでくださいよ。
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