妖精王の伴侶はおっさんドワーフ

モスマンの娘

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10.元妖精王候補

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エルフの長とドワーフ王の後に壇上に上がってきたのは、己を世界樹に選ばれた者だと固辞し、他種族を見下している目をしている。


いやらしく歪んだ口元に俺を蔑むような目で見てくるが、膝をつき胸に手を当てピッペにはしっかりと妖精王への礼を尽くしている。


髪色は黒混じりの赤色で、恰幅はよく昔はさぞや立派な体だったのだろう、ただ今ははっきり言えば腹の出たデブだ!ギラギラの金の糸と宝石を縫い付けたジャケットは悪趣味だ、本当にこの見た目で妖精なのだろうか?


ただ後ろに立っている方は、ピッペよりは線が細いが、立派な体格をしながらも俺と似たような白いワンピースに金の糸の刺繍をし、胸には綺羅びやかなエメラルドのネックレスをつけている。
俺とよく似た服装に少し引っかかりを感じるが、あちらの方が断然に似合っているのはたしかだ!


まず顔立ちから妖精特有の中性的で切れ長のまつ毛バシバシなのだ、体格は男だが背丈がありピッペより小柄なので十分に中性的に見える。背中にはキラキラとした幾重にも生える立派な羽がある。
きっと力の強い妖精なのだろう
黒黒としたヒゲのおっさんドワーフとは比べるまでもない!!




「これはこれはご機嫌いかがでしょうか?陛下、こたびは婚姻おめでとうございます。それにしても、婚姻相手が…ははっ、ドワーフとは、陛下らしく奇抜なお相手ですなぁ、よくお似合いだ」

「これは驚きだ、リシュテンリッヒ候、そなたから祝の言葉をもらえるとは思わなかった。
似合いという言葉は嬉しいが、奇抜なはいただけない…ドボスほど愛らしいお嫁ちゃんはそういないだろう?」

「はははっ…まぁ愛玩するにはいい趣味とは言えないが、ドワーフごときなら問題ないでしょう
して、本題ですが…婚姻の祝として、我が息子セルジオを献上いたします。準備もできております。どうぞすぐにでも、お使いくださいませ」

「ほう…いろいろと引っかかる言葉が多々あるが、それはいい者をもらった。セルジオ殿は我と最後まで妖精王を競ていたからな、きっと大変に有能に働いてくれるだろう、ふむ…騎士でも従者でも筆頭にすぐになれそうだ」



ピッペ…たぶんセルジオ様の姿からして違うと思う、ほらっ…リシュテンリッヒ候があからさまに舌打ちしたい顔をしている。
それにしても、とんでもないことを言い出したな



「はぁ、本当に殿下は…お戯れを…違いますよ、そちらのドワーフではとても子はできますまい、どうぞセルジオを使ってくださいませ!セルジオと殿下の子でしたら、次代の妖精王に間違いありません!」

「はっ?我とセルジオが…子を??はっ?ありえない、リシュテンリッヒ候…貴様!なんという愚弄を…我はドボス以外を愛することも、抱くことも、する気はない!!
セルジオ!貴様も、それでいいのか?なんだその格好はまったく似合わん、昔の貴様の方がずっと美しかったぞ!!」



ピッペがまた激昂しだしているが、俺も今回は止めようがない…
まず婚約発表に愛人を献上しにくるとは常識的になしだ、更にそれが妖精王を競い合ったライバルとか…ピッペの様子からピッペの中ではセルジオ様は競い合っていたとはいえ、悪い印象は感じられない…
話し方から、実力をかなり認めている相手なのだろう



「リシュテンリッヒ候、貴様の顔は二度と見たくはない!即刻に立ち去れ、セルジオ…貴様、今のままでいいのか身の振り方をよく考えよ!」

「ちっ!陛下…我が家がどれ程に妖精族を支えてきたか、おわかりですか?そのリシュテンリッヒ家を敵に回すことをしっかりとお考えください、フン!失礼いたします。セルジオ!行くぞ…」



ピッペの言葉はリシュテンリッヒ候への怒りより、セルジオ様への心配の方が色濃く感じる。
最後までセルジオ様に声をかけていたが、当のセルジオ様は真っ白な顔に虚ろな目をして、一回もピッペとは目を合わせることすらなかった。この方は…痛々しいな……


それからも次々に妖精族の良家が挨拶を受けながら、沈んだ気持ちは晴れることはなかった。
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