妖精王の伴侶はおっさんドワーフ

モスマンの娘

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17.暗雲

昨日は悶々とした気分で夜を明かしてしまった。
もう自分でイジってみようとすら考えたが、やはり恐怖心が勝ってしまって…結局、悶々とした朝を迎えてしまったのだ


そんな不機嫌なドボスが工房につくと、更に酷い気分にさせられる。
リシュテンリッヒ候の親戚の良家が、注文した大量のミスリルソードをキャンセルしてきたのだ、納品三日前にだ…


細々としたキャンセルやクレームは来るのは仕方ないが、明らかにリシュテンリッヒ候関係者からのものが増えてきていた。
しかしここまで大量のキャンセルはなかった…



「はぁ…ムスカさん、この契約書は公正証書にしてありますか?キャンセル料は…50%か…材料費にはなるな、損失は手間賃くらいで済むかな」

「はい、しっかりと証書にしてありますので、すぐにキャンセル料の請求書を送らせていただきます!商業ギルドにも報告しておきましょうか?」

「あぁ、そうしてくれ、これだけ大量で三日前にキャンセルは悪質だ…はぁ、まったく作り手の気持ちをなんだと思ってるんだよ!」



ドボスの工房だけではとても間に合わず他の仲の良い工房と協力してもらって、これだけのミスリルソードを打ったのだ…そちらにも連絡をしなければいけない


ドワーフにとって道具を作るのは使命のようなものだ、より良い魔道具を、より安全な防具を、より強い武器を…
それこそ心血を注いで作るのだ、注文品であれば相手の体格や力や特性などを考えて作る。


あれば妖精族用に作ったものだから刀身が長くて細く、斬るよりも魔力を流しやすく作ってある。
とても人間族には扱えない、エルフか力ある妖精か、かなり使い手を選ぶソードなのだ…
作り手にとって、自分達が作った物が使われずに倉庫で朽ちていくことほど悲しいことはないのに…


工房の者たちもしょんぼりと肩を落としながら、梱包していたミスリルソードを皆で倉庫に移していく、あの中の一本は見習いのリボルズが初めて研ぎをやらせた物もある。本当に気持ちが落ちてしまう


「ドボスさん大変です!移転装置の開通ができません!!」

「あっ?どういうことだ?まずは落ち着いて、大丈夫だから、詳しく教えてくれ」


まったく今日は次から次ぎと悪い報告があがってくる。
転移装置はドワーフが作るが、転移先を開通するには魔法を使う、いつもは商業ギルドで紹介してもらった妖精にお願いしていたのだが…


「いつもやってもらう妖精が、うちの工房の装置にはもう魔法をかけられないって、他も当たってみましたが、軒並み断られて…これじゃあ転移装置が作れません!」

「クソッ!リシュテンリッヒ候が噛んでいるだろうな…あそこの家は雷魔法と光魔法だったな…なるほど転移系が強い家系か…とりあえず商業ギルドには発注はかけといてくれ!」


調べればリシュテンリッヒ候はかなりの人数の妖精を囲って転移魔法の仕事をしていた。リシュテンリッヒ候自身は商業ギルドに登録していないみたいだが、すれば大業者となるほどの人数を有している…さぁ困ったな…


転移装置で今受注している仕事は三軒ある。一件はもう工期があまりないのだ、工期が遅れればそれだけ客に迷惑がかかってしまう…


一瞬ピッペの顔が思い浮かんだが、すぐにかき消した。ダメだ…妖精王のピッペの力を借りれば、妖精王の笠を着た工房のようになる。それは本意じゃない…



「手分けして転移魔法をかけれる妖精を探すぞ!
あぁ、確か……引退したと言っていたが、ピシュマル家の奥様が以前は転移魔法が使えたはずだ…風魔法の転移だから繋げる工期が長くなるが、雷魔法より安全に繋げれるはずだ、当たってみよう!
あとは…マッケイン家の親戚の奔放な甥が転移魔法が得意とかなんとか…、あぁ…とりあえず当たってみよう!」


あとは仲の良い工房に頼んでやってもらえる妖精を紹介してもらうか…とりあえず工期に時間がないのだ、その日はバタバタと方々に連絡したり、頼れそうな妖精の家を訪れたりで日が暮れてしまった。



「あぁ…疲れた、今日は本当にまいったよ…」

「ドボス…すいません、私とリシュテンリッヒ家との軋轢に貴方を巻き込んでしまって…」



いつものように食後の香草茶を楽しみながら、今日はピッペに膝枕をしてもらっている。
ソファで横になりピッペに促されるままに膝に頭を乗せれば、筋肉が硬すぎずムニッとしてて…なんだこれ?最高に気持ちいい枕だな!


ピッペの部屋のソファがでかいのか、ドワーフの俺が小さいのか、足を伸ばしても優に寝られてしまう。行儀が良いとは言えないが、今日は風呂に入ることも億劫なほど疲れてしまったのだ…許してもらおう


「別にピッペが悪いんじゃないんだから謝らなくていいよ
でも、リシュテンリッヒ候は商売人としては駄目だな!嫌がらせをしたいだけで、その後の商売のことなんか考えてないんだろうな…」

「そうですね、実は妖精族の武器や武具のメンテナンス代も大幅に値上げすると言ってきました。年間予算があるのて、はぁ…困ってしまいます。」


聞けばリシュテンリッヒ家は三代前から妖精族の武器のメンテナンスを請け負っているらしい、確かに光魔法で清浄魔法クリーンはお手の物だろうな


「それって他の妖精の良家に頼めないのか?っというか、その話は俺にして大丈夫なのか?予算とか機密情報じゃないか?」

「ドボスだから大丈夫なんですよ!妖精王の次に強い決定権を有するのは妖精王の伴侶ですよ?それに…私のことを少しずつ知っていってくださるんでしょ?」



愛しそうに俺のゴワゴワの髭を撫でているが…ピッペ、今ものすごく大事なことを言わなかったか?
妖精王の次ぎの決定権って…俺にか?一貫のドワーフの俺にそんな権限があるのか?そんなこと急に言われても困るぞ!!



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