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 王家の使者は意気消沈したフィリップと、「放してよ~」と喚くちょいブスを馬車に押し込め、戻って来たアディと俺に深々と頭を下げた。

「ジェラール様、アデライード様、ご迷惑をかけて申し訳ございませんでした」

 俺はちらりと馬車の中に目を向ける。

「あいつらはこれからどうなるんだ?」        

 使者は帽子を直しつつこう答えた。

「は。まず、アネットの実家である男爵家は、西の地に領地替えとなります」

 西の地と言えばど田舎の代名詞だ。これと言った産業もない。ちょっと男爵に同情するな。見る目がなかった自分を恨んでもらおう。

「また、フィリップ様とアネット嬢は婚約をしていたため、予定通りに結婚していただき、フィリップ様には男爵家の婿となっていただきます」

 この辺もだいたい予想通りだった。こうしてフィリップとアネットを、田舎に封じ込めるつもりなんだろう。

 これからバカップルは娯楽も、イケメンも、美味いものもない辺境で、一生を終えることになる。だが、何といっても真実の愛があるのだから、不満なんてないはずだよな?

 使者は説明を終えると「それでは」と告げ、バカップルと馬車とともに場を去った。

 あとには俺とアディが残される。

「アディ」

 俺が名前を呼んで手を差し伸べると、アディも微笑みながらその手を取った。お互いにしっかりと握り締める。

 これからも二人で頑張って行こう。二人ならきっと頑張れるはずだから。
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