バース伯爵夫人の結婚とその後

東 万里央(あずま まりお)

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8.修羅場だ修羅場

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 今日はやっぱりクルー家の別荘にて隣国の王子との逢引である。最近私に会いたいがために頻繁にこの国に来るようになり、留学を考えていると言うまでになった。んー。そろそろ切り時かな。離婚して結婚してくれと言われそうな勢いだし、そこまで思われても困るのよね。

 そんなことを考えながら寝椅子に寝転がっていると、がちゃりと扉を開ける音が響き男が一人入って来た。私はてっきり王子なのかと思い優雅にその場に立ち上がる。

「いらっしゃいませアレクシス王子、今宵はどのようなプレイを――」

 ところが扉の傍に立っていたのは隣国の王子ではなかった。金の髪に緑の目のまあ割とイケメンである。どこかで見たことがあるのだがいまいち思い出せない。

「ユージェニー……」

 イケメンは苦し気な声で私を呼んだ。私は可愛らしく首を傾げ、頬に人差し指を当てる。

「あー……どちら様でしたか?」

 男は信じられないと言ったように目を見開き、やがて声をどうにか抑え「エムリスだ」と名乗った。そう、イケメンは何と夫のエムリスだったのだ!顔を見るのは何年ぶりだろうか?

 エムリスは私を睨みつけるように見つめる。

「今日アレクシス王子はいらっしゃらない。妃のカトリーナ様に刺されたのだそうだ」

 何!?刺された!?それはえらいこっちゃ。来られなくても仕方がない。

「カトリーナ様は現在拘束され、処分を待つ身となっている。さすがに公衆の面前での刃傷沙汰となれば、無罪というわけにはいかないだろう」

 エムリスの眼差しがギラリと光った。

「ユージェニー、次から次へと男を弄んで、君には真心がないのか?昔の君はそんな最低な女じゃなかったはずだ。もっと一途な女だっただろう?」

 私はその発言にさすがに呆れ返り腕を組んだ。

「ふぅん、真心ねえ? あなたからその言葉を聞くなんて、明日は槍でも降るのかしら?」

 まったくこいつは説教できるような立場だろうか。

「第一そんな女云々以前にあなたは私のことは何も知らないでしょ。まあ、私もあなたのことなんてほとんど忘れ……知らないけど」

 それに、と誰もが目を奪われる艶やかな微笑みを浮かべる。

「好きにしてもいいと言ったのは他でもないあなたよ?どうして今更この私に愛だの恋だのと言って突っかかって来るのかしら。ああ、まさか愛しのマリアちゃんにフラれた?」

 人がムキになる理由にはいろいろあるけれども、その中の一つに自分がこれまで信じていたものが、揺れ動いて不安になっているっていうのがあるのよねえ。そういう時には人を論破することで安心しようとするのよ。

 エムリスはぐっと押し黙り拳を握り締めた。ははは、どうやら図星らしいわよ。と言うことは、召使い達の噂は本当だったのか。真実の愛(笑)ももろいものね?
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