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終章.それからの聖女
完.勇者と聖女
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わたし達は腕を絡め合わせ祭壇に向き合った。今回の結婚を取り仕切る神官は何とエルディスである。あの国王が気を利かせ手配してくれたらしい。たまにはいいことをするじゃないのとちょっとだけ見直した。あくまでちょっとだけれども。
エルディスは聖典を開き、一度きりとなるその言葉を述べた。
「さて、ではフェレイド・アーシアン殿、あなたは女神の定めし縁に従い、この女性と夫婦となろうとしています。いついかなる時も彼女を愛し、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
フェレイドは真っ直ぐにエルディスを見るとはっきりと言った。
「誓います」
「では、サーヤ殿、あなたも女神の定めし縁に従い、この男性と夫婦になろうとしています。いついかなる時も彼を愛し、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
わたしは何気なく隣のフェレイドに目を向け、ふとあることに気が付き噴き出しそうになるのを必死に堪えた。
「サーヤ殿?」
「……誓います」
「では、誓いの口付けを」
わたしは体の向きを変えフェレイドと向き合い、口づけの代わりにその襟元に向かい手を伸ばした。
「さ、サーヤ?」
今日のこの日のこの瞬間のこの幸福な気持ちを、きっと一生忘れることはないのだろう。このバカ、と泣き笑いでフェレイドを見上げる。
「またボタン、留めていないわよ?」
その後フェレイドは魔物の討伐の功績により、爵位を時の国王ドゥランド二世より賜り、アーシアン公爵家の開祖となった。三年後にはわたし達には二人の男の子が生まれ、長男は公爵家の跡継ぎに、次男は宮廷に仕え近衛騎士の団長となる。アーシアン家からはこれ以降も優れた騎士が排出され、また時折生まれる黒髪の子女には癒しの力が備わり国をよく助けた。
これはめでたしめでたしで終わる物語――ところで代々のアーシアン家の当主の婚儀では、なぜだか二人の誓いの口づけの代わりに、花嫁が花婿の第一ボタンを留める習わしになった。その由来を巡って数百年後に歴史学者が喧々諤々の論争をし、結局解明できないまま終わるのはまた別のお話しになる。
(完)
本編はこれをもって完結です。ありがとうございました。お気に召しましたら、感想などいただければ幸いです
エルディスは聖典を開き、一度きりとなるその言葉を述べた。
「さて、ではフェレイド・アーシアン殿、あなたは女神の定めし縁に従い、この女性と夫婦となろうとしています。いついかなる時も彼女を愛し、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
フェレイドは真っ直ぐにエルディスを見るとはっきりと言った。
「誓います」
「では、サーヤ殿、あなたも女神の定めし縁に従い、この男性と夫婦になろうとしています。いついかなる時も彼を愛し、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
わたしは何気なく隣のフェレイドに目を向け、ふとあることに気が付き噴き出しそうになるのを必死に堪えた。
「サーヤ殿?」
「……誓います」
「では、誓いの口付けを」
わたしは体の向きを変えフェレイドと向き合い、口づけの代わりにその襟元に向かい手を伸ばした。
「さ、サーヤ?」
今日のこの日のこの瞬間のこの幸福な気持ちを、きっと一生忘れることはないのだろう。このバカ、と泣き笑いでフェレイドを見上げる。
「またボタン、留めていないわよ?」
その後フェレイドは魔物の討伐の功績により、爵位を時の国王ドゥランド二世より賜り、アーシアン公爵家の開祖となった。三年後にはわたし達には二人の男の子が生まれ、長男は公爵家の跡継ぎに、次男は宮廷に仕え近衛騎士の団長となる。アーシアン家からはこれ以降も優れた騎士が排出され、また時折生まれる黒髪の子女には癒しの力が備わり国をよく助けた。
これはめでたしめでたしで終わる物語――ところで代々のアーシアン家の当主の婚儀では、なぜだか二人の誓いの口づけの代わりに、花嫁が花婿の第一ボタンを留める習わしになった。その由来を巡って数百年後に歴史学者が喧々諤々の論争をし、結局解明できないまま終わるのはまた別のお話しになる。
(完)
本編はこれをもって完結です。ありがとうございました。お気に召しましたら、感想などいただければ幸いです
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「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!
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え~~話や~~!
癒されました。
ありがとう~~!
とても面白かったです!
勇者が頼りないままの王子様じゃなく、戻って来ないかもしれない聖女の為に守れる男になる為に戦っているような素敵な男性で良かったです。
事故で短命な運命&過去の恋愛で傷付いた聖女が幸せになれて嬉しい。
出来ればクズ男だった元カレのその後が気持ちいいくらいの「ざまぁ展開」なら更に喜べたかも( ̄_ ̄)笑
感想ありがとうございます( ^o^)ノ
ヒーローを素敵と言ってくれて嬉しいです。男は強く優しくストイックで誠実じゃないと!(自論ですw)
元カレざまあについては、確かに書かれなかったですね;
けど、たぶんヒロインが目の前で消えて地球では行方不明扱いになったあとで、「ヒロインが行方不明になった」→「捜索願がでる」→「そう言えばあいつが付きまとってた」→「まさか…あいつが…」って具合で会社の皆様に疑惑の目で見られて大変だったと思われますw(゚Д゚;)
はじめまして。面白くて一気読みしてしまいましたm(_ _)m
よくまとまっていて、読みやすい文章で、するする(?)読めました!
素敵なお話、ありがとうございました!
感想ありがとうございます(・∀・)
初異世界トリップものの作品だったので、そう言っていただけると大変嬉しいです!