金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語

紗々置 遼嘉

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第一章 始まりの館

Chapter208 モビール

 アルシャインとカシアンが戻ったのはランチの混雑時だった。
「すいませーん、通して~」
並んでいる人達をかき分けてカシアンとアルシャインが帰ってくる。
「おかえりなさい!」とみんな。
「ただいま~、待っててね」
アルシャインとカシアンはすぐに2階に行って荷物や上着を置いてから、下に戻って手伝う。
「大丈夫だった?」
「なんとか!前より早く出来るのよ!」とフィナアリス。
頼もしい事だ。
ランチの混雑もすぐに解消されて、後は優雅にティータイムを楽しむ時間へと変わった。
アルシャインは買ってきた紙をみんなに見せる。
「これ、キャンディを包むのにくっつかなくていいと思って買ってきたの」
「わあ、ツルツルしてる!」
「早速切らないとね!」
マリアンナが2階に行って定規とカッターを持ってくる。
もうどんな大きさかは分かっているので、それに合わせて切っていく。
それをリナメイシーとセシリアも手伝う。
「じゃあ森に行ってきます」
ユスヘルディナが出掛ける準備をして森に行く。
「あ、いってらっしゃい、気を付けてね!」
「はーい!」
ユスヘルディナは笑って走っていく。
その後ろ姿を見送ってから、アルシャインは買ってきた本に盗難防止のシールを貼って本棚にしまっていく。
最後に、呪文書をテーブルの上に置いて言う。
「これね、僧侶アポストルの呪文書よ。本屋にあったから買ってきたの!」
そう言うと、みんなが周りを囲んで見つめる。
「これがあれば呪文が使えるの?」とリナメイシー。
「練習すれば、きっとね」
「魔法書もあるの?」
メルヒオールがそう聞くと、お守り匂い袋を作っていたカシアンが言う。
「魔法書は魔術師ギルドじゃないと売ってないんだ。それに、一つの呪文で一億なんて本もあるんだぞ!」
「なにそれ!無理だよ!」とクリストフ。
「魔術師は無いな」
ルベルジュノーが言い、木彫りの動物を作る。
レオリアムとマリアンナとリナメイシーはテーブル席に座って呪文書をめくっている。
クローディアとマティスが代わりに紙を切り、他のみんなは人形作りや飾り作りにいそしんだ。
「あ、僕らも作らないと」
レオリアムが言い、本を閉じてまじまじと表紙を見て言う。
「これ…もしかして高かった?」
「ええ、まあ…どうして?」
「キラキラ光る紙で作られてるし、丈夫で重たいから…ありがとうマスター」
レオリアムが真面目に言うと、みんなもお礼を言う。
「ありがとう!」
「どういたしまして!じゃあそれは書斎に置いて来てくれる?」
そう言いアルシャインがレオリアムに鍵を渡して言うと、レオリアムは頷いて本を手に2階に行く。
そこに布屋のカイルとアデレードがやってきた。
「いらっしゃいませ~」
「はいこれ」
カイルがカウンターにボストンバッグを置いてからテーブル席に着く。
ボストンバッグはノアセルジオが2階に運んだ。
「肉マンジュウってのは、デザートじゃないんだね」とカイル。
「食べ応えがあるわよ!」
「じゃあ肉マンジュウとグリーンティーを」とカイル。
「私はパウンドケーキとパンケーキのクリームとフルーツ添えと紅茶ね!」とアデレード。
「はーい!」
答えてアルシャインとフィナアリスとルーベンスがキッチンに入る。
そこに雑貨屋のジルダもやってきた。
「こんにちは~!はい、これね」
ジルダはカウンター席に座ってボストンバッグを置く。
「あ、はーい!」
アルシャインがパンケーキをフィナアリスに任せてボストンバッグを手に2階に上がった。
「えっとね…肉マンジュウとアップルパイと紅茶ね!」とジルダ。
「はーい」
すぐにセシリアとアルベルティーナが手伝いに入った。
「角を使ったモビールも音が綺麗って評判よ。木のモビールもい音だって!」
ジルダが言うと、みんなは嬉しそうにする。
「提案なんだけど、モビールをもう少し作らない?」
そう言うと、クリストフがカゴからモビールを出して見せる。
「もう作ってあるよ!これはルース兄ちゃんが作ったので、これは僕の作ったビーズとどんぐりのモビールで、これはナージィが作った虹色貝とビーズのモビールでしょ…あと…」
「たくさんあるのね!嬉しいわ」
ジルダはそれらを受け取って丁寧にカバンにしまっていく。
「あ、これお守り匂い袋です」
マリアンナがアデレードにお守り匂い袋がたくさん入った紙袋を渡す。
「ありがとう~!こんなにたくさん…あ、そうそう、これ差し入れね」
アデレードは持ってきた紙袋をマリアンナに渡す。
中には端切れ布がたくさん入っていた。
「わあ!」
「マスターがね、これでたくさん作ってって!」
笑いながらアデレードが言い、マリアンナは笑って受け取る。
「ありがとう!ほら、こんなに色んなのがある!」
マリアンナはみんなに端切れ布を見せてから2階の書斎に行く。
そしてノックしてから入る。
「アイシャママ、これアデレードさんからもらったの!」
「あら、端切れ布がたくさん…綺麗な柄も高価そうなのまであるわね!あ、ミシン部屋の鍵ね」
アルシャインはミシン部屋の鍵をマリアンナに渡す。
マリアンナはミシン部屋にその端切れ布を置いてからまた鍵を掛けて、アルシャインに返しにいく。
「ちょうどいいわ、はいこれアンヌのね!」
そう言いアルシャインはマリアンナに給金の入った手提げ袋を渡す。
「ありがとう!」
マリアンナは5Gをポケットに入れて部屋に行く。
みんなの部屋のベッドには数百Gが入っている袋が置かれていた。
それにまたお金を入れて、自分の部屋用の袋にもお金を入れておく。
部屋のクローゼットにも、貯金を百G程入れてあった。
みんなも2階に来てカシアンに預けるお金と手元に置くお金を分けていた。
ついでに銀行カードもしまって、みんなは下に行く。
「ボーロ予約ね」とセシリア。
数は20個だ。
「じゃあ栗マンジュウ5個!4等分でみんなに!」とオルランド。
おーっと声が上がる。
もうそろそろ栗が無くなるから、思い切って買ったのだ。
みんなはグリーンティーの代金を払っておく。
今飲んだり、夜の楽しみにしたり様々だ。
「そうそう、ペットの犬と猫も好評よ!それだけ買う人も居てね、種類があるといいな~なんて言ってたわ」とアデレード。
するとアルシャインが本棚にしまった本の中から型紙のある本を取り出して見てみる。
「あ、あったあった!耳の垂れた犬とか…小鳥もあるわよ」
「ほんと?」
みんなが見れるように真ん中のテーブルに置くと、みんなが型紙と見本のイラストを見る。
「丸い形だ…作れるかな?」
早速リナメイシーが型紙を切り取ってみる。
立体的なぬいぐるみの作り方だったので早速作ってみる事にした。
その間にジルダは飾りをカバンに詰め込んで街に帰っていく。
「また明日ね~!」
「気をつけて!」
そう見送ると、カイルも立ち上がる。
「そのぬいぐるみの完成、楽しみにしてるよ!」
「無理はしないでね」とアデレード。
2人もお土産を買って帰った。
ふとお土産コーナーを見ると、何も無い事に気付く。
「あら、補充しないと!」
アルシャインは慌てて穀物倉に置いてあるみんなが作った紙やビーズのガーランドやモビールを並べて、冬に合わせて毛糸で作ったコースターも並べた。
値段付けはフィナアリスの役目だ。
フィナアリスは伝票を見ながら盗難防止シールに値段を書いて貼っておいた。
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