金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語

紗々置 遼嘉

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第一章 始まりの館

Chapter209 お風呂

 夕方になると、ユスヘルディナとリュカシオンが帰ってくる。
「ただいま~!」
「おかえりなさい!」
出迎えるとすぐに2人にお給金と銀行カードを渡した。
リュカシオンは疲れた様子で2階に行き、ユスヘルディナは伝票に栗団子4つと書いてお金を払っておく。
「栗団子1個ずつおごりね!」
そう言うと、みんながやったぁ!と喜ぶ。
ディナーはパスタとミートパイにした。
みんながディナーを食べ終わる頃に、増築をしていた大工さん達がテーブル席に着く。
そして親方が来て言う。
「風呂場は完璧だ!明日からは2階の部屋を作るから…まあ見てくれ」
そう言われてアルシャイン達は早速お風呂場を見に行く。
2つのお風呂場を真ん中で区切って男女別々に入れるように、ドアも同じ色にしてあった。
「わあ!」
女の子用のお風呂場には大きめの猫足バスタブが2つと浅めの猫足バスタブが一つ。
男の子用のお風呂場にはワイン樽と同じ構造の大きな風呂と浅めの木のバスタブだ。
どちらにもポンプ式井戸が2つずつ新たに設置されていた。
「こっちの井戸のパイプにはヒートメタルが仕込んであるから、あったかいお湯がすぐに出るようになってるんだ。熱い時は隣の井戸の水で冷やしてくれ」
「わあ!助かります!楽にお湯が張れますね!」
よく見れば、桶や木のスツールまである。
今すぐにでも入りたい気持ちをグッとこらえて、アルシャイン達はダイニングに戻って注文を受ける。
「これが風呂場の鍵だ」
鍵を掛けてから親方が風呂場の鍵を渡してくれる。
「ありがとうございます!」
「頑丈に作ってあるから、安心してくれ」
「はい!」
「煙突はたまに掃除すればいいから」
「…掃除道具はリサイクル屋さんにありますか?」
「あるよ、モップみたいなやつがな」
そう言って親方も席に着く。
「今日は持ち帰りだけ受けて、早めに閉めない?」
そうアルベルティーナがアルシャインに言う。
「そうね…そうしましょうか!」
アルシャインが言うと、ノアセルジオが小さな黒板に〝本日のディナーは持ち帰りのみ〟と書いて外に置いて、食べにきた人達はうろたえる。
「持ち帰りって事は、遠方の人だけかい?」
近所に住む夫婦が尋ねる。
「今日は早じまいにするので、誰でも持ち帰り可能ですよ!」
アルシャインが言うと、夫婦は喜んでレジスターの所で注文をして店内で待った。
持ち帰りは先払いなのでレジスターで注文を受けてから番号札を渡す。
「足りなくなりそうだな…」
ゾロゾロとくるお客を見てリュカシオンが焦って31以降の番号札を作り始める。
それをルベルジュノーも手伝った。
宿泊客達もディナーなので、店内が満席となり、待つ人達はガゼボなどで待機した。
作る量はいつもと変わらないので、キッチンはてんてこ舞いだ。
「待ってる間にコロコロドーナツはいかが~?」
クリストフがコロコロドーナツのカゴを手に外を回ると、メルヒオールがボーロのカゴを手にして続く。
「ボーロはいかが~?」
するとマティスがクッキーとスコーンの入ったカゴを手にして同じく回る。
「クッキーとスコーンもあるよー」
それの後から伝票と小銭入れと小皿を持ったレオリアムとオルランドがついていき、注文を取ってお金を払ってもらってから品物を渡した。
「このままでいいよ」
ほとんどの人がそのまま受け取って食べる。
いつもなら8時過ぎまでお客さんが居るが、今日は8時前に門を閉める事が出来た。
片付けと戸締りをして、アルシャイン達はみんなでお風呂に入る準備をする。
店内にはカシアンが見張りで残り、みんなで入った。
買っておいた石鹸は男の子用の所にはノアセルジオに渡して置いてもらう。
「さあ、ここで服を脱いだら、たたんで棚に置いてね。バスタオルは出入り口のカゴの中で、タオルは持ってね」
「はーい!」
お風呂場もヒートメタルが埋め込んであって暖かかった。
アルシャインがまずは桶にお湯を入れて温度を確かめる。
「結構熱いのね…水を足して使いましょうか」
みんなでお湯をバスタブに入れてから、スツールに座って体を洗う。
「体を洗ってから入らないと、お風呂がすぐに汚れるからね」
「はーい!」
ティナジゼル達も石鹸をタオルに付けて体を洗う。
「いい匂い!」
「気持ちいいね!」とベアトリス。
髪と体を洗ってから交代でお湯に浸かった。
「ちゃんとあったまってね」
アルシャインも言いながら久し振りのお湯を堪能する。
「気持ちいい~……疲れが取れるわ…」
いつも部屋の中で、タオルで拭くだけの作業だったのでみんな楽しそうだった。
のぼせるといけないので、アルシャインは先に上がって着替えてから、ティナジゼル達をバスタオルで拭いてあげる。
「こんな時に風魔法が使えたら、髪の毛もすぐに乾かせるわね」
「私も手伝うわ」
フィナアリスも着替えてベアトリスを拭いてあげる。
「みんな髪の毛をちゃんと拭いてね~?」
「はーい」
返事をしてマリアンナ達も上がって着替えてから、お風呂の栓を抜いて掃除をする。
お風呂掃除の道具が棚の横にあったのだ。
「これは床かな?」
硬そうなブラシを見つけたので床掃除をしてお湯などを排水口に流した。
みんなで掃除をしてから出ると、男の子は髪の毛が濡れたまま出て来た。
「ちゃんと拭かないと風邪引くわよ!」
そう叱るとみんなは慌ててタオルで髪の毛を拭く。
するとカシアンが入りに来た。
「ちょっとは掃除したんだ、偉いな」
「お湯がぬるいから足して入ってね。あ、入れ替えた方が良かった?」
そうノアセルジオが聞くとカシアンは笑って言う。
「大丈夫だって!」
そう言い入っていき、みんなはダイニングで髪を拭く。
フィナアリスがティナジゼルの髪を拭いて、クローディアがベアトリスの髪を拭くのを手伝う。
ノアセルジオがクリストフの髪を拭いて、リュカシオンがメルヒオールの髪を拭いた。
その間にアルシャインがみんなのおやつを用意しておく。
髪の毛が短めな男の子達はすぐに乾いて用意したおやつを手に2階に上がっていく。
大体乾かせたので女の子達もおやつを手に2階に行くと、カシアンが掃除をして上がってきた。
「いやぁまいった…騎士団と変わらない汚れだったぜ」
そう言いながら髪を拭いて座り、止まる。
カウンター席で髪を拭いているアルシャインが居たからだ。
「ちゃんと体と髪の毛を洗ってからお湯に浸かるっていうのを伝えて無かったわね。カシアン、明日からはそうするんだってみんなに伝えてね?」
「あ、ああ、うん…」
「?どうかした?」
「いや、何でもないよ…」
濡れ髪のアルシャインが綺麗だ、などとは言えずにカシアンはおやつを手に2階に上がった。
「どうしたのかしら…」
アルシャインは不思議がりながらも水を飲んで、おやつを手に2階に上がった。
みんなはいつものように過ごしてから、早めに眠りについた。
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