金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語

紗々置 遼嘉

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第一章 始まりの館

Chapter219 買い物

 街に着くとすぐに商業ギルドに行く。
「じゃあみんなのお金を預けるわよ~」
アルシャインを先頭に、みんなでギルドの奥に行くと、すぐにあの男性が中に通してくれた。
「奥の部屋にどうぞ」
「どうも」
みんなでゾロゾロと奥の部屋に入っていき、以前のように一人ずつ預けていく。
まずは女の子達からやっていくと、ティナジゼルが預けてから合計額を見て言う。
「あたしのお金、千G降ろしたい」
「どうしたのナージィ、何か買うの?」
そう聞くとティナジゼルは笑って頷く。
「宝石の目を買い占めるの!」
「あそこの露店の?…それならあたしも…」
ベアトリスが言い掛けると、ティナジゼルが小さな手のひらを向ける。
「駄目!が買い占めるの!」
どうやら、みんなにおごれないうっぷんを、そこで晴らしたいようだ。
「買い占めるには全財産の3倍は使わなきゃならなくなるぞ」
そうカシアンが言うと、ティナジゼルはビックリして固まった。
「そんなに?!…買い…買い占めるのは……今度にする………」
諦めたようなので、アルシャインはホッとする。
全員の貯金をしてから、カシアンは金塊のボストンバッグをテーブルに乗せる。
それを開けて男性が驚くが、すぐに冷静に秤を持ってきて測る。
「今の相場ですと、1キロ辺り25万ですが、宜しいでしょうか?もしかしたらまだ上がる傾向にはあるのですが…」
「構いません。これを置いといたら強盗が来そうで怖いんです」
「…確かに。では計算して参りますので、少々お待ち下さい」
そう言って男性がボストンバッグを2つ持って奥に行くと、入れ替わりに女性が紅茶のセットを乗せたワゴンを運んできた。
「おはようございます。あ、イスもお持ちしますね」
女性は外に伝えてから紅茶を注いでテーブルに置いていく。
「時間が掛かって喉が渇くでしょうから、どうぞ」
「ありがとうございます」
お礼を言ってアルシャインは紅茶を頂く。
するとみんなもお礼を言って飲んだ。
後から足りないイスが運ばれてきて、みんなが座って待つ。
みんなはじーっとドアを見つめる。
どれ程のお金になるのか見当も付かないが、すごいのは分かった。
「アイシャママ、今のは怖いお金なの?」
ティナジゼルが聞くと、アルシャインはコクコクと頷く。
「持ってる事が広まったらどんな窃盗団が現れるか恐ろしいから、言っちゃ駄目よ?!」
「うん!」
それはそれはとても恐ろしいのだと分かった。
インゴットの金額はアルシャインの口座に振り込まれた。
アルシャインはカードを見てため息をついて、みんなと共に部屋を出た。

ギルドではまだ魔石レンジが展示されていて、みんなが見ている。
「あ、ちょっとギルドカード変更してくる!」とマリアンナ。
「私も!」とユスヘルディナ。
するとアルベルティーナとリナメイシーもカウンターに並ぶ。
苗字を〝オロアウレア〟にする為だ。
「まあ!いい名前ですね!」
マルレーネがそう言って変更手続きを行なってくれる。
「あたしもやりたいな…」とベアトリス。
「あたしも…」とティナジゼル。
「僕だってやりたいよ」とメルヒオール。
「何になろうか…」とクリストフ。
おチビ4人組はまだ将来が決まっていないから、カードを作れないのだ。
「じゃあ外で待ってましょうか」
アルシャインがみんなを連れて外に出る。
しばらくしてみんなが出てきたので、荷馬車の横を歩いて布屋に向かった。
「おはようございます!」
「おや、おはよう」
店主のポーラが出迎えてくれる。
みんなはフェルトを見に行った。
アルシャインは飾られている人形を見る。
「あれ?もう2つだけですか?」
「朝早くに買いに来る客が多くてね。作り手でも雇わないかい?」
「雇ったら〝金の羊亭の人形〟じゃなくなっちゃいますよ」
「確かに」
ポーラはふふっと笑ってアルシャインを見る。
「…人形の値上げを」
「しませんよ?」
アルシャインはにっこり笑って言い、みんなの所に行った。
みんなは、ペットのフェルトの色を決めていた。
「緑や黄色の犬や猫が居ても可愛いよ!」とアルベルティーナ。
「変じゃないかな…」とマリアンナ。
色を増やしたいのだが、どうすればいいか悩んでいるのだ。
「それなら、原色より薄めの色を使えばいいんじゃないかしら?パステルトーンとか、水色や黄色なんかは?」
アルシャインが手に取りながら言うと、ユスヘルディナとリナメイシーは頷く。
「それなら…チェック柄のクマさんとかも…可愛いよね…」
マリアンナがボソリと呟くと、クリストフが笑顔で言う。
「それいいね!」
「そうね、フェルトじゃなくてもいいかもしれないわね…厚手の生地はどうかしら?」
「賛成!」
みんなはワクワクしながら厚手の生地を見る。
みんなでたくさんの生地を選んでカウンターに置いて行くと、カイルとアデレードが測って切っていく。
「2メートルでいいの?」
「ええ、とりあえず!」
そう言ってアルシャインは毛糸を全色、5個ずつカウンターに置いていく。
「持って帰れる~?」とアデレード。
「大丈夫よ!」
そう言いみんなの選んだフェルトと生地を置く。
カイルは布を紙袋に入れていき、ポーラが計算をする。
「あ、それは寄付でいいわ。そうそう、この端切れ布も持っていってね」
ポーラが溜めた端切れ布の紙袋を3つカウンターに置いた。
カシアンがそれらを外の荷馬車に運んでいく。
選び終わって暇になったみんなが荷馬車の側に立って見張りをした。
会計が済むと、みんなで露店を見る。
天然石のビーズをたくさん選んだ。
モビール用にも選び出した。
天然石を使ったモビールなども人気があるのでたくさん必要となるのだ。
リュカシオンやルベルジュノーなどは、木を使ったドアベルにも天然石を使っている。
「四角いのもあるよ!」
アルベルティーナが奥の方に隠れていた四角い天然石のビーズを見つけ出す。
「ひし形もあるね!」
リナメイシーも同じく見付けて選んでいく。
中には欠けたりしているのもあるので、そういう物を選ばないように注意した。
たくさん買ってから荷馬車に行くと、アルシャインが話す。
「桶を買いたいから木工屋に寄っていい?」
「桶?何するの?」とクリストフ。
「みんなの部屋に置いて、朝に顔を洗えるようにするのよ。夜に持っていったピッチャーの水を入れて顔を洗って、それを捨てに持ってくれば寒い中で顔を洗わないで済むでしょう?」
そう説明すると、ユスヘルディナが聞く。
「その水を窓から捨てたら早くない?」
「下が水浸しになるわよ?」
「雨どいに流せばいいんじゃないかな?」
そうレオリアムが言うと、みんなが頷いた。
「それもそうね!じゃあ桶を買いに行きましょうか」
みんなで木工屋に行き桶を探していると、木をくり抜いて作られた洗面器を見つけた。
一つ百Gなのでそう高くもない。
「これいいわね」
「桶やめるの?」とメルヒオール。
「これの方が良くない?」
言われてみればいい気もするので、12個選んでカウンターに運ぶ。
ついでに手洗い用の深い木製ボウルも買った。
これはキッチン用と解体場の物だ。
みんなが荷馬車に戻ると、留守をしていたカシアンが馬を引いて歩き出す。
「どこ行くの?!」
「そこの肉の串焼き!1個だけ!」
そう言うとみんなも歩いてついて行く。
「それならランチの分も買いましょうよ。魔石レンジで温められるし!」
「それはいいな!そうしよう!おごるよ!」
そう言ってカシアンは串焼きをたくさん注文した。
肉ばかり頼むので、慌ててアルシャインが野菜の串焼きも注文する。
20人分頼んで荷馬車に詰め込んで、みんなも乗り込む。
「よし、帰るぞ~!」
カシアンが御者をして馬を走らせる。
帰りはみんなで聖歌を歌った。
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