金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語

紗々置 遼嘉

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第一章 始まりの館

Chapter221 数え歌

 夕方には洗濯物をしまって、放牧していた4頭のミュージをしまった。
「ミュージのお腹怪我してたよ」
クリストフが報告に来ると、マリアンナとアルシャインがミュージ小屋に行く。
「あら本当…枝でこすったのかしら…」
幸いにも血は出ていなかったので、2人で呪文を唱える。
回復ヒール!」
シュワァと音を立ててミュージの怪我が消えて毛が生えた。
「良かった。ミュージのお乳絞っとくね」
マリアンナはそのまま夕方の乳搾りをする。
ミュージは健康だと朝と夕方に乳搾りが出来るのだ。
このミュージ達はとても健康でいいミルクを出してくれる。
しかし、ミルクもよく使うので、少し足りなくなっていた。
「ねえアイシャママ、ミルク足りなくない?」
アルベルティーナが聞くと、アルシャインは苦笑する。
「そうねぇ…4頭じゃ少ないかしら…」
「明日買いに行くか?」とカシアン。
「賛成!お金出すよ!」
そうルーベンスが言うと、アルベルティーナも頷く。
「みんなで出し合えばいいのよ!」
「待って待って!お金はいいのよ?金の羊亭のミュージなんだから」
そうアルシャインが止めると、みんながブーイングをする。
「みんなのミュージなのに~」とティナジゼル。
「だからマスターである私が払うのよ」
そう言われてもみんなは納得していない様子だった。
「じゃあ…みんなにはお肉を買ってもらおうかしら?ラム肉の野菜炒めを作ってみたいのよね~…」
そう言うと、ルーベンスが目を輝かせる。
「任せて!」
「あたしも出す!」とティナジゼルとベアトリス。
「みんなでお金を持っていこうよ!」とアルベルティーナ。
「ラム肉ってどんな味かな?!」とリナメイシー。
そこにユスヘルディナとリュカシオンが帰ってくる。
「なになに?」とユスヘルディナ。
「明日ラム肉をみんなで買うの!」とマリアンナ。
「そうなの?じゃあお金の用意しないとな…」
ユスヘルディナはリュカシオンと共に給金の入った手提げ袋を受け取って伝票にグリーンティーと書いて払ってから2階に行く。
ルベルジュノーとオルランドとマティスが早々とやってきたパン目当ての人の注文を聞く間に、リナメイシーはパンを焼く。
「ディナーはピッツァでどうかしら?」とフィナアリス。
「いいね!」
ノアセルジオが答えてアルシャインも頷いた。
フィナアリスとクローディアとルーベンスとアルベルティーナはそれぞれにピッツァを広げる役とトマトソースやホワイトソースを塗る役と具材を乗せる役とチーズを乗せる役に分かれて連携して作った。
ディナーも持ち帰りにしているので暇があればみんなはテーブルで人形を作る。
「いただきまーす!」
いち早くルベルジュノーが焼き立ての角ウサギとコーンのホワイトソース掛けピッツァを食べる。
「ジュドー!みんなが座ってからにしなさいよ!」
マリアンナが怒るとリュカシオンが苦笑して席に着いて食べる。
「まあまあ固い事言うなよ。パンの行列が出来てて注文取ってるんだから」
「リオンはそうやって弟分を庇うんだから」
フィナアリスがピッツァの皿を並べながら言う。
「まあまあ」
ノアセルジオが間に立つと、女の子達はため息をつきながらも料理を運んだ。
みんなでピッツァを食べてから、持ち帰りのお客の対応をする。
カシアンは片付け、ノアセルジオとリュカシオンとルベルジュノーが注文を取り、オルランドとマティスがティナジゼルとベアトリスとクリストフとメルヒオールと共に箱に入れた料理を紙袋に入れたりそのまま渡したりする。
レオリアムは客室の掃除をしに行き、ルーベンスはアルシャインとアルベルティーナとフィナアリスとクローディアと共に料理を作り、セシリアとマリアンナはかまどの番をしてリナメイシーがずっとパンを焼いたり発酵させたりしている。
ユスヘルディナは受け付けと商品の手渡しだ。
「コロコロドーナツ揚げて~!」とクリストフ。
「はいはーい」
答えてアルシャインがぱぱっとボウルに材料を入れていく。
「ボーロもなくなった~!」とメルヒオール。
「もう売り上手なんだから!」
アルベルティーナが言いながらボーロを作る。
「あ、キャンディがピンチ!」
気が付いたマリアンナがキャンディの補充をする為に砂糖を水で溶かす。
8時にはお客がいなくなったので、戸締りをしてお風呂に入る。
「ピアノ弾いてていい?」とマリアンナ。
「いいわよ!」
答えてアルシャインはお風呂に入った。
するとマリアンナがピアノの用意をして丸椅子に座る。
最初はぎこちなく弾いてみていたが、その内に聞いた事のあるメロディーになる。
「いちにっいちにっ、鳩の行進いちにっさん!いちにっ、いちにっ、いちにのさん!」
それは教会で教えて貰った数え歌だった。
「いちにっ、いちにっ!」
真似をしてティナジゼルが歌うと、ベアトリスも手拍子をしながら歌う。
するとクリストフとメルヒオールが腕を組んでクルクルと踊り出した。
アルシャイン達がお風呂から上がってくると、みんなは数え歌で踊っていた。
「あら楽しそうね!」
アルシャインはリズムに乗りながら、みんなのおやつを小皿に分けていく。
「オシャレな小皿とか欲しいな…贅沢かな…」
ボソリと呟くと、ノアセルジオが側に来る。
「いいと思うよ、お客さんも喜ぶだろうし…欠けたりしたのも捨てないといけないからね」
「そうよね、揃えないとね!」
アルシャインは笑顔になってグリーンティーを注いでロッキングチェアに座って飲む。
「今日はおしまい!」
マリアンナが笑ってピアノを片付けて、みんなでおやつを手にして2階に行ったりその場で食べたりする。
アルシャインはピッチャーのトレイを2階から持ってきて水を入れて持っていく。
みんなもピッチャーに水を注いで持っていった。
〈水道管が出来たら便利よね…〉
アルシャインがそう考える。
確か、伯爵家ではキッチンにシンクと水道の蛇口があった。
アレが2階に出来るようになれば、こうして下まで来なくても済むのだ。
〈高いかな…井戸水を引くんだもんね…一箇所でも作れたらいいな…〉
明日、商業ギルドで調べてみればいい。
そう思いながら、アルシャインは自分の部屋のソファーに座って金の羊亭用のコースターを編んだ。
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