デルモニア紀行

富浦伝十郎

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ゲルブ平原

狼狩り2

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 敵性生物から認識される距離より投石の射程の方が遥かに長いのならば、身を隠して進むより、良好な視界を確保する事を優先するべきだろう。
俺は手近にあった岩に跳び上った。 
ゴブリンの胸ぐらいの高さの岩だが思い切ってジャンプしたら天辺に載れた。
本来の身長よりも高い視点からだと流石に遠くまで良く見える。

 目を凝らすと北西方向500m程の砂地に狼の群れを見つけた。
三匹、いや、四匹いる。 日光浴でもしているのか皆伏せてじっとしている。
( 流石に遠いか ? )
300mはスキルレンジ内だった。 
しかしスキルを獲得したのは100mだ。 しかも百回近く投げてから。
通常の投石は20mで獲得し60mまで有効(100mは圏外)だったっけ。
・・・500mはレンジ外、てことになるな。
冷静に計算してみるとそうなる。
500m超の投石必中には新たなステージ * が必要になるんだろう。
リアルの世界では2000m超の狙撃を成功させるスナイパーもいるらしい。
だったら当然このFQにも同等以上のスキルレベルは存在している筈だ。
( 100m級のスキルに"レールガン"て付けたのは尚早だったかな )

 一匹目には当たっても動き出した他の三匹は難しいだろう。
いや、こちらに向かって来る(距離が詰まる)ならそこで当てればいいのか?
( 接近されたら"対獣格闘"もあるしな )

 楽観的な考えが優勢になってくる。   …しかし俺は本来"慎重派"だ。
石橋は叩いて渡る。  ラスボスはカンストしてから倒す w



・・・300mまで接近しよう。


 俺は静かに岩から飛び降りた。





 ざっと200m以上をダッシュで移動した。
"超長距離スキル" は後でゆっくり獲得すればいい。
狼には一度ドーム送りにされている。 まだ俺にとって"安全牌"だとは言えない。
これは"作業"ではなく"戦闘"だ。  戦闘で肝心なのは 『確実に勝つ』 ことだ。

 ( この辺りだな )
先程と同じくらいの高さの岩に飛び上がる。 
天辺にふわっと着地。  (さっきより余裕だな あ そうか… )
件の狼の群れが見える。 完全に"射程内" だ。

 石は右手に一つ、左手に4つ、そして"ポケット"に36個。
ポケットの36個は 『ペレット投石用』 とカテゴライズしたコモンアイテムだ。
アイテムには "コモン" と "ユニーク" の区別がある。
コモンアイテムはどれを取っても同じ。 ポーションや討伐報酬がそれにあたる。
一品毎の"個性"は存在しない。 データ量を節約するためだ。
ポーションや毛皮は定まったテンプレデータでレンダリングされる。
拾った全ての石の形状を個別に保存していたらデータ量は膨大になってしまう。
そうすることも可能だが 収納から取り出す時に個別に指定しないといけなくなる。
( "連投"に適さない )
コモンアイテムは最初の一つをテンプレートとして 定義カテゴライズすることが出来る。 
だから俺は、手に馴染む"投げ易い"石を厳選しそれをテンプレートにした。
後は似たような石を"ペレット"として拾って行けば同じデータで取り出せる訳だ。
( 残弾数も把握しやすい )
ちなみに最初に収納した "小ジョッキサイズ" はユニークアイテムだ。




 群れの中で一番奥にいる狼を"撃"った。
撃たれた狼が向こう側に吹っ飛ぶのを確認しつつ俺はもう次弾を撃っていた。
同じようにして三匹目も仕留める。 あっけない。 
( やっぱレールガン凄ぇ )
…これで十分じゃないの ???
果たしてこれ以上の射程延長が必要なのか、 という考えも過る。
( さっきまで"作業"じゃなくて"戦闘"だと思ってたけど そうでもないかもな )



 最後に残った一匹が立ち上がってキョロキョロしている。


・・・さあ ここからは"戦闘"ぽくなるかな ?



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