デルモニア紀行

富浦伝十郎

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ゲルブ平原

補給作業

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 俺は岩の上から残った狼のいる方向に跳躍した。
10mくらい飛んで着地。 ( 俺の"立ち幅跳び"の記録は2m70だった )
岩の高さを入れても大したジャンプ力だ。
着地からそのまま四匹目の狼に向かってダッシュする。

 狼が俺に気付いた。
俺に向かって走り出した。 ( 狼はレベルを問わず必ずプレヤーを襲って来る )
一挙に距離が詰まる。
狼が俺に向かって飛び掛かって来た。 狙いは俺の喉だ。
( そう来ると思ってたぜ )
凄い勢いの筈なのに空中の狼の様子が詳細に分かる。 
"対獣格闘"の効果だろう。

「ゴブリンキック!」
狼の下顎を右足で蹴り上げる。
腹を見せてひっくり返る狼の肛門にすかさず左のトゥーキックを叩き込む。
・・・ここまではシミュレーション通り。
起き上がれないでいる狼の腹に右のサッカーボールキック。
それなりの手応えはあったが"吹っ飛ぶ"ところまではいかない。
( 爪先で蹴った方が良かったか? )
腹に左のトゥーキックを追加。 そして右でもトゥーキック。
( なんだか"動物虐待"みたいになってきたな )
狼の動きが鈍い。 ・・・アレをやるか。

 頭上に掲げた両手に収納から直径50㎝程の大石を呼び出す。
それをありったけの力を込めて狼の体に向かって投げ下ろした。
ゴシャッ
肋骨が拉げる音とともに石は狼の胸郭を圧し潰した。
狼の口から血泡が吐き出される。 もう動けまい。



 ・・・勝つことは勝てたが "まだまだ"だな。
"対獣格闘"の為に敢えて投石を使わずに狼を仕留めてみたが今一つパッとしない。
もう少し洗練させたい。  
『流れるような必勝パターン』 が欲しい。

 初回のように石で頭を潰したり指で眼球→脳を破壊したりすれば良いのだが、
それらの方法は狼に自分が噛み付かれてからでないとやり難い。
リスクが高いのだ。
( チョーカーやトラウザーとかの防具があれば少しはマシなんだろうが )
特に複数の狼と戦う時は "ドーム送り" になりかねない。



 ・・・場数を踏むしかないのかな。





 動かなくなった(最後の)狼の体から大石を持ち上げる。
これ以上大きいとゴブリンの指でもホールドが難しくなるギリギリのサイズだ。
その大石を『ゴブリンロック』と定義してコモンアイテム化した。
倒れている狼などにトドメをさす手段の一つとして検証を続けるつもりだ。

 そして、あの "小ジョッキサイズ" の石を収納から取り出す。
最初の狼戦で2匹の狼の頭蓋を破壊した円筒形楕円形かもの "使える" 石だ。
こいつも( "予備"をストックできるように)コモンアイテム化しておこう。
『ゴブリンハンマー』 と定義した。

 あとは討伐報酬の回収作業だ。
四匹の狼の躯を "毛皮"に変えて収納する。   "狼の毛皮"は9個になった。



 四匹を倒した直後だから近辺に狼はいない筈だが 一応周囲を確認する。
( 常に安全は確保しておかないとな )
狼が昼寝?をしていた砂地は日当たりが良い。
人間だったらリゾートのビーチ宜しく横になって肌を焼きたくなるくらいだ。
足元の砂を手で掬ってみる。
・・・・
( これ、使えるんじゃないかな? )
右手の中の砂を『ゴブリンサンド』として定義、収納しようと試みた。
できなかった。
砂や水は容器に入れないと収納できないのだろう。
( "目潰し"にしたかったんだけど )


 ダッシュで岩場に戻り『ゴブリンロック』と『ゴブリンハンマー』を収集する。
大きさが同じくらい(倍は違わない)なら同じカテゴリとして収納できるようだ。
ゴブリンロックを8個、ゴブリンハンマーは12個を収納した。
割れなければ回収・再利用するので、当面はこれだけあれば良いだろう。
…そして肝心の『ペレット』。
これは"消耗品"だから数を持っておきたい。 
( 沼地や砂漠では拾えないからな )


 地道なw 収集作業の結果 取り敢えず600個を確保した。

 これで "重量ゼロ" なんだからつくづく "収納" ってチートだと思う。




 ・・・ VRの真骨頂、ってところだな !





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