デルモニア紀行

富浦伝十郎

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ゲルブ平原

魔王誕生?

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「本当に申し訳ない」
進藤が更に頭を低くする。
「やっぱりそのパターンが王道だよね」
でもそれが不可能な仕様だった訳で。
落胆から絶望を経て ”闇落ち”  するプレイヤーが続出するのは必至だろう。
特に俺のようにKCキーキャラからゴミのように射殺されたりしたら。

「ほぼ”常識”でしょう(棒」
「…だけど、『無料の方が楽しいのはオカシイ』 て意見も多くてね」
( それは分からんでもない )
「まずはEクラスエコノミープレイヤーのみでテストしよう、ということになった訳なんだ」
( そこでゴブリンが登場、  となる訳か ・・)

「・・後はご存じの通りだよ」

進藤が顔を起こす。 目が死んでいる。
「君はFQ界デルモニアに現れてまだ初日だというのにあろうことかKCマルグリッドに殺されてしまう。
更にあり得ない事にその直後にマルグリッドをシュトロハイム諸共瞬殺,ときた。
日も暮れない内にLv80ゴブリンが出現してしまったんだ。 もう滅茶苦茶だよ」

( ゴブリンのLv80、てのはヤバいなw )
人間(プレヤー)はレベル1が初期値だが、モンスターは必ずしもそうではない。
例えば(成体の)ドラゴンなら最初から60以上だ。 強さグレードに見合った値が付く。
通常はレベルアップしていくということもない。
進藤の話ではモンスターにはEXP経験値 というものが無いんだそうだ。
だからシンプルに倒した敵と同じ値に上がるようにしたんだとか。(ヤッパリ)
各諸元パラメーターの上昇率は高めとして、必要なSPスキルポイントも1/10にした。
これらは意外にもEクラス無料プレイヤーを討伐対象とするのに反対した開発員が決めたらしい。
『…だったら強くなって貰った方が面白いでしょ?』 と言ったとか。
あの ” YMS バレットタイム”を実装したスタッフだって。
俺のYMSを見て狂喜乱舞したらしい。( 豹を倒した時の動画は広報に使うとか )

・・進藤が淡々と ”開発秘話” みたいなんを話してくれる。(非常に興味深いw)

「 MP値なんか〇×▲超えだもの。こんなモンスターどうしようもないよ !」


 結局、俺の予想24話参照は初日に現実となってしまった訳だ。
FQの運営ADサーバー担当は慌てて俺のパラメーターをロックして対策を検討したらしい。
そして、仮に俺が ”魔王コース” を選んだら ”対処のしようがない”  事が判明した。

 これからカンストプレイヤーを何人送り込もうがもう倒せない。
第一 ”PCの生前起動”を了承してくれるプレミアム会員を確保できるか。
新しい ”無敵キャラ” を作って投入すれば倒せるが、直ぐ”聖堂”で復活してしまう。
『もう垢BANしかない』  という意見も出たとか。
 

( …あの時のイヤな予感はマジだったんだな )






「それで、僕の処にまで話が上がって来たわけよ」
進藤は自分を指さした。
PCFQウチに降ろしてもいいか、て野田君にお願いしたのは僕だからね」

・・オレ野田明に面識があるのは分かってたが、社長自身がちょっと感心テスターを依頼したのか。

「僕はちょっとPC・AD関連技術には思い入れが強くてね」
進藤は続ける。
TFテクノフロンティアを立ち上げてFQVRMMORPGを造ったのもその研究開発に資する為なんだ」

 TFはぶっちぎりの業界トップだけれど、ただのゲーム制作会社ではない。
スマホのエージェントのシェアでも世界トップの企業に肉薄して来ている。
IT業界全般で多彩な事業を展開しているのだ。 
( …FQのADオプションも伊達や酔狂じゃない って事か )

「だからテスターは厳選したよ。Eクラスエコノミーの登録者の中で既にPC作成要件を満たしていたプレイヤーのログをチェックしたんだ」
( それはまあ、当然のことだよな )
「誰でもイイ て訳じゃないからね。 マナーは勿論だけど他にも色々、ね」
( 解析用のAIとかもあるのか? )
「君は正に ”FQプレイヤーの鑑” といって過言でなかったよ!」
進藤が笑顔を見せた。
( 俺ヲ指差スノヤメテクレマセンカ )

「…他にも数名いたんだけど、生きてる内のPC作成には抵抗があるみたいでね」
進藤が再び下を向く。
「自分でもその気持ちは分かるんだ。 ”もしPCの側になったら?”  てね」

 ・・俺だって”今は”分かる。 ( だが後悔はしていない )

「会った時の野田君はPCに関して僕のような”思い入れ” は無いように見えた。
『PCはデータの一形態』と言い切ってた。『何人でも作ってくれてOK』 と」

虚空を見る進藤。 思い出すような遠い目。

「僕は訊いたよ。『もしPCになって”意識”があったらどうする?』 と 」

その応えを当然俺は知っている。



『”PCも生きている” と身を持って知れるならラッキーじゃないですか! 』






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