35 / 160
帝都デリドール
身上説明
しおりを挟む立ち上がった俺は歩み去っていく二人に向かって頭を下げた。
「ありがとーございましたーっ!」
大きな声で礼を言う。
( 人としての基本だものな )
頂いたチュニックに袖を通し、スカーフをバンダナのように頭に巻いた。
高級品だと分かる。( そもそも庶民が身に着けるモノじゃない )
スカーフもチュニックも濃いネイビーだから忍者みたいな見た目になった。
間近の軒先に跳び上がる。
屋根の上に屈んで周囲を伺う姿は傍から見れば忍者そのものだろう。
ゴブリンの肌は褐色系だから露出した四肢もそれ程目立たない。
”次の場所” を目指して屋根の上を音もなく走る。
街中で身に纏う衣服を確保するのが第一の課題だった。
有無を言わせずボコりに来るのをボコり返して身包み剥いでやる心算だった。
それが、図らずもお恵み頂いてしまった。
此方から”お願い”する前にこの身を憐れんで向こうから譲ってくれたのだ。
・・・”太っ腹”というか、”漢” ?
何だか任侠映画に出演しているかのような感覚を味わってしまった。
あの兄貴の為なら鉄砲玉でもコソ泥でもやってやる、て気に一瞬なったもんな。
( ホントにNPCだったのか? )
どうもゴブリン(PC)になってこのADサーバーに来てから、NPCに対する見方が変わったような気がする。 …というか此処のNPCは明らかにおかしい。
従来のオンラインプレイではプレイヤー同士の掛け合いや連携(戦闘)が主だった。
NPCはイベント上の流れで定型的なやりとりをする者 くらいの認識だったのだが此処で出会うNPCは妙に生々しいのだ。
”台本通り” 演じているようなあの ”人形臭” が感じられなくなっている。
大人数のログインプレイヤーが活動する通常サーバーと違ってこのADサーバーにはプレイヤーは俺一人しかいないらしい。
それが本当なら膨大な余剰リソースがNPCに割り振られていても不思議ではない。
( その辺りはもっと調査・検証が必要だな )
”もう一つの課題” も上手くいったと言えるだろう。
『悪い人にゴブリンにされちゃいました』 作戦だ。
コワモテ系のNPCに通用したのだから成功と言って良いだろう。
人間と接触して会話をするには ”自分の立場” を説明する必要がある。
「ボランティアでエコノミープランって最底辺のテスターやってます」
と話す訳にはいかないからな。
他には、
『偉大な召喚士の使い魔として来ました』
『凄腕のテイマーの従魔として来ました』
作戦がある。
『僕、悪いゴブリンじゃないよ!』
作戦は、 何処か長閑な田舎に行った時に試してみようと思っている。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる