デルモニア紀行

富浦伝十郎

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帝都デリドール

アサシンの本領

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 屋上から屋上へ大通りから離れる方向で進み北の城壁が近くなって来た。
この辺りが今日予定している第二ポイントイベント発生場所だ。

前回は会話が成り立ったが今回は話は通じない。 純然たるバトルになる。
( 問答無用で殺しに来るからな )


 両側が壁になった20m程の路地の行き止まりにドア一枚の入り口がある。
そのドアの前に小柄な体格の男が立っている。 勿論見張り役だ。
路地に入って歩いて行くだけで攻撃してくる。 火球を放って来るのだ。
”近接戦闘” を想定して油断して近付くとヤラレてしまう事もある。
( 左右を壁に挟まれているので火球を躱すことが出来ないからだ )


 俺は屋根の上を回り込んで ”入口” の真上まで到達した。
入口を背にしてアプローチを見張っている男のバックを取った形だ。

 男の背後の頭上から音もなく飛び掛かる。
左踵で男の左肩に降りるなりゴブリンの長い趾で鎖骨をがっしり掴む。
同時に引付けていた右の爪先で男の頸椎と頭蓋の接合部を蹴り抜いた。

 『野田流暗殺術 降下断頭蹴』

 ”アサシン” の固有スキル、”不意打ち初撃クリティカル” を生かすために考案した技だ。
投石レールガンで仕留めても良かったが物音で 中の連中に気付かれても困るからな)
俺が着地した時には既に路上には男の装備だけが並んで残されていた。
超スピードで回収する。 
( 一般的な衣服上下、靴、帽子が揃った! )


 俺は再び屋根の上に飛び乗ると装備の転換に取り掛かった。
”兄貴” のチュニックとスカーフを収納し見張りの男の装備を全て身に着ける。
(割と強力な)火炎魔法を使う見張りは小柄な男だったので化けてみたのだ。
”火魔法強化(5%)” の指輪もあったのだが嵌める指が分からなかった。
適当に左の薬指に嵌めてみた。 ( ヨッシーなら詳しいんだろうが )


( 人間の )死体や血が残らない というFQの仕様はアサシンには都合がいい。
見張りの男の格好をした俺は暫く入口前を歩き回って衣服装備を体に馴染ませた。
超高級品ではないが普及品、という程でもない。(火炎魔法の使い手だしな)
靴なんかは中々イイ感じだ。ソフトで足音が立たない。
帽子を被り、スカーフを口元に巻いて眼鏡グラサンを掛ければ街中も歩けるだろう。

 俺は入口の方に近付いて中を覗き込んでみた。( 内部の構造は勿論知っている)
ドアの内側から直ぐ地下に降りる階段になっている。 人影はない。
見張りの男の声色(当然聴いたことはある)を真似て階下に呼び掛けた。


「お~い、ちょっと来てくれるか?」


 緊張感に欠けた声で呼び掛けると、階段を上がって来る足音が聞こえた。
入口に背中を向けて待つ。
足音は一人だ。

「どうしたんスかぁ」
上がって来た男が気の抜けた声を掛けて来た。
喧嘩に明け暮れて来たような感じの若い声。

「…それ」
左手で戸口を出て来た男の足元の地面を指差す。
「え?」
視線を下げた男の右テンプルに右のバックハンドブローを叩き込む。
「・・・」
意識を刈り取られた男が前のめりに倒れていく。
男が倒れ伏す前にその後頭部に左フックを打ち下ろした。
( どちらの手にもペレットを握り込んである )


 俯せに地面に倒れると直ぐに男の体(躯)は消え装備だけが残った。
上下の衣服の他にブラスナックルとアームガード。 ちゃんと武装していた。
拳闘士だ。
正面から殴り掛かっていたらどうなっていたか分からない。
しかしスキルの恩恵か最初の一撃が致命傷になっていた感触があった。
再び超速でアイテムを回収する。
服と靴は普通に街を歩いても違和感のないものだった。
( ただし明色系なので夜間のミッションには適さない )
指輪やピアスもあったが単なるアクセだった 。





 最初に倒した見張りの衣服を着たまま2番目の男のブラスナックルを装備する。

 俺はFQではモンクや拳闘士などの近接DPS職の経験はない。
しかし格ゲーの ”ナックルファイター”(KF) では "拳聖" まで上ったことがある。
( 流石に "拳神" までは届かなかった  )
1on1のVR格闘ゲームの頂点と言われるKFもTFの作品だ。
レンダリングエンジンが共通なら(共通だが)応用は効くはずだ。
( KFでもFQでもパンチやキックは同じなんだからな )

 昔は格ゲーもRPGもゲームは全て ”コマンド選択制” だったという。
正直コントローラのボタンやスティックでよく闘えたものだな、と思う。
( アケコン使うような昔の格ゲーでは親父に勝てないからな )

 数少ないFQの近接DPS職プレヤーは殆どがKF経験者だ。
ギルドの誘い文句は ”連撃爽快”。( ソレKFのキャッチコピーだろw )
死亡率は一番高い。 タンクみたいに装甲が厚くないからだ。
逆にそれが彼らのプライドにもなっている。
( 今のゴブリンの俺には合ってるかもしれない )



 ・・・物は試しだ。
俺は入口に入ると一挙に階段を下の階まで飛び降りた。





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