デルモニア紀行

富浦伝十郎

文字の大きさ
37 / 160
帝都デリドール

地下室のゴブリン

しおりを挟む







( ”慎重派” という自己認識は改めた方がいいのか? )

20段程の階段を飛び降りながら空中で俺は自問する。
両手に ”凶器ブラスナックル” を装備しているのでBT バレットタイムが発動している。
普段ならあのまま入口の上に陣取って、出て来る人間を待ち伏せで倒していた。
投石スキルを使えば労せずに全ての敵を倒せただろう。
突入するにしても姫さんやシュトロハイムの剣を携えていた筈だ。
二人の剣と今の俺ゴブリンならスキル補正が無くても室内の敵は制圧出来る。
( それがナックル装備だけで突っ込んでいってるんだからなw )

 BTで引き延ばされた時間経過の中で階下の床が迫って来る。
その床面に人影が映っている。 誰かが出て来るのだろう。
俺は両手を揃え頭上に翳した。 ”ナックルボム” の体制だ。
厳つい体格の男が顔を出した。
”捕まれると終わる” 強力な格闘士グラップラーだ。
男が空中の俺を視認した刹那、その顔面に俺のナックルボムが炸裂した。
凶器 ブラスナックルの威力に一階分の落下エネルギーが加わった一撃はクリティカルだ。

 まだ接地していない俺のBT バレットタイムは続いている。

 部屋の奥に話し込んでいる男が二人。
親玉ボス用心棒剣士だ。 用心棒の方はかなり腕が立つ。
俺は格闘士の両肩に手を置いて両脚を引き付け階段口の壁に当てた。
二人は何か言い争っているようだ。
( 階段の上からも口論する声が聞こえていた )
二人共まだ此方を向いていない。

 俺は力を貯めた両脚で壁を蹴り 用心棒に向けてほぼ水平に跳んだ。
弾丸の如きスピードで迫る。
YMS中だが普通に速い。
音で気付いたのか用心棒が此方に顔を向けようとしている。
( 右手が剣に伸びようとしているのは流石だ )
しかしもう遅い。
親玉と向き合っている用心棒は俺に左半身を晒しているのだ。
( 用心棒の顔が悔悟に歪んだように見えたのは気のせいか )

「ゴブリンパンチ!」

 剣に手が届くより早く用心棒の左テンプルに俺の右ストレートが炸裂した。
20世紀の古典的ヒーローみたいな一撃。
当然クリティカルだ。

 着地して立ち上がる俺の足元に用心棒の装備が積み重なる。
BT バレットタイムは解除されている。
まあまあ、というよりラッキーな流れだったと言えるだろう。
用心棒に剣(刀!)を抜かれていたら今の装備では危なかった。




「だ、誰だ貴様! ど 何処の者だ !? 」
顔を引き攣らせて親玉が叫ぶ。
俺はそれを無視して ゆっくりと床から用心棒の剣を拾い上げた。
両手のブラスナックルを解除、収納する。

「誰なんだ、と訊いてるんだ!」
強がって叫ぶ親玉。 でも投げ出した脚が震えている。

 しゃらん、と俺は剣を鞘から抜いた( ホントにこんな音がするんだな! )
凄い業物だ。
マジでヤバかったかもしれん。( 俺がココに来たのは中級後期だったからな )
俺は抜いた剣を親玉に向けた。

「喧しい。クズが。 少し黙ってろ」
軽く剣を一振りする。
親玉の前髪がハラハラと落ちた。
( "剣術" のスキル補正がなくともこのくらいは朝飯前だ )

「今度勝手に喋ったら耳を落とす」
( こいつは耳の一つくらい先に落としても構わないくらいのクズだ )

「俺は優しいからな。言う通りにすれば生きて朝日を拝めるかもしれんぞ?」






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

処理中です...