デルモニア紀行

富浦伝十郎

文字の大きさ
49 / 160
帝都デリドール

女神の使徒

しおりを挟む


 "抱っこ走り" は2回目だ。
一人目の ”会頭のお嬢” はホントに軽かった( 20㎏ 代くらいの印象)。
今度の "半盲少女" は 普通(40㎏代)だったが今回の方が楽だったように感じる。
*  の恩恵だろう。

 軽く流してもあっと言う間に例の教会の裏に着いた。
FQ世界には ”病院” というものがない。
病気やケガは教会で聖職者が治すことになっている。
( プレヤーやNPCが ”病気に罹る” などという事は稀なのだが )
但し失明の回復は帝都の最高位聖職者でも容易ではないらしい。
( プレヤーとして世話になったことは無いので詳しい設定は分からない )

 俺は "収納" からエリクサーを取り出した。
如何なる身体損傷・機能障害も回復させる万能の霊薬だ。
誘拐屋一味の倉庫から失敬して来たものだ。(コレは見逃せなかった )
何の病気か知らないが後遺症での視力低下くらい楽勝だろう。

 (・・おっとその前にする事があったな!)
少女の視力が回復する前に ”着替え” ておかないと。
俺はマルグリッドのプレートメイルを纏い、スカーフで頭と耳を覆い、神金と聖銀のマスクを着けてコイフを被った。 ( ゴブリン・ナイト形態フォーム! )


「これを飲めば目が見えるようになる」
少女の右手にエリクサー(の小瓶)を渡す。
「御両親が君に飲ませようとしていたお薬だ」
しっかり受け取られるのを確かめて手を放す。( なモノだからな! )

「・・父が話していました。帝都には私の目を治せる霊薬がある、と」
両手で包むように小瓶を持つ少女。
「これがそうなのですね」
そう呟いて前に立つ俺の方に顔を上げる。

「よろしいのですか? とても貴重なお薬だと聞いています」
「案ずるな。 まだ沢山ある」
( あと3個もな! )
・・・まったく、誘拐団の親玉はどんだけ稼いでた、っちゅう話やね。

「貴方様は何故私にそこまで親切にして下さるのですか?」
少女が更に訊いて来る。


「さっき言っただろう。 神託を受けたのだ。 賊を討ち君を救え、と」
少女の頭をそっと撫でる。
「そして賊を倒す力と君の目を治す薬を授かった」
俺は彼女の耳元に口を寄せて囁く。
「・・俺の事はいいが、”女神様”のことは秘密だぞ?」
( 嘘だけど、真実ホントよりは”本当ぽい”よな )

「さあ、を飲むがいい」
俺が促すと少女は顔を更に上げてエリクサーを口に注いだ。
一息に飲み込む。

 タンクだった俺は激しい戦闘で何度もエリクサーの世話になったことがある。
の効果は "強烈" だ。


「あああ!」
少女が小さな叫び声を上げた。 
両目は固く閉じられ、両手は強く握り締められている。
聖堂の女神像が纏うのと同じ燐光が一瞬少女を包んだ。

「・・・・・」
空になった小瓶を両掌に載せて見詰る少女。


「・・見える。 はっきりと見えます! 」

 歓喜に震える彼女の声が夜の路地に木霊した。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

処理中です...