デルモニア紀行

富浦伝十郎

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帝都デリドール

思い付くゴブリン

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「ノーラが居なくなったって?」
「逃げたのか?」
「逃げられる訳ねぇだろ。外に三人もいるんだからよ」
「その三人もいねぇってよ?」

 俺が最初の部屋のドアを開けて入ると中の連中はそんな話をしていた。
( ”アサシン” が気配を絶つと見えなくなるのか? )

 話し込んでるのは六人。 (二段)ベッドに寝てるのが三人。
俺はダッシュしてその六人に次々と ”腹パン” を( 死なない程度に )決めて行く。
「 ~~~ !」
六人はその場で蹲り”行動不能”になった。
( 次はベッドで寝てる奴やな!  )

 室内は兵舎?みたいな感じで(入口から見て)奥行きがある長方形。
両側に二段ベッドが二つずつ、突き当りに一つの計五つ。 十人部屋だ。
・・ベッドに寝てる奴には  首チョップだ。
( 死なない程度に加減して )ペシペシ とチョップを入れて行く。

 あんまり(てか全く)手応えがない。
何だかんだ言って外に出てる奴等の方が戦闘職なんだろう。
部屋にいるのは只の ”溢れ者” という感じだ。
「…そのまま大人しくしてろ」
動けなくなった九人に言い残して部屋を出た。

 他の部屋も大体同じような感じだった。
( ”アサシン” のスキルが凄いのか ガルドス一味がショボいのか良く分からん )
対人戦闘ではパワーや装備よりもスピードが肝心だ と改めて認識させられた。
( 先手必勝、てやつだな ! )

 食堂(酒場)に戻ると全員が裸で待機していた。
床の上に綺麗に装備が並べられている。 
六つの部屋を次々と制圧して廻って来た俺を化物を見るような目で見ている。
( 2分も掛からなかったからな )


「・・待たせたな!」
そう一声掛けてから例の早業で床上の装備を回収する。

「安心しろ。部屋にいた奴等は殺してない」
( そもそも俺に攻撃態勢を取るところまで行く奴がいなかった )
跪いて待機している男達の緊張度が少し下がった。

「…いい事を思い付いた」
回収を終えた俺は部屋を見渡して言った。
「お前らにこれから大事な話がある。 少し楽にして待っていろ」
「???」
男達の怪訝そうな視線を浴びながら食堂の奥、上階に向かう階段に足を向ける。
( ・・・これは我ながら秀逸なアイデアかもだな! )


「今、ガルドスを連れて来る。 お前等は外の五人を連れて来い」







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