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グリュン大森林
世界を創る
しおりを挟むヨーコが諭すように言う。
コイツはずっと俺のエージェントだったし 今は俺のアシスタントだ。
しかしさっきまではFQ開発チームの一員でもあった訳で。
今の台詞は其処から出てきたものという感じもする。
俺だって只一人のADテスターとしてその辺りは弁えているつもりだったけれど。
「・・・分かってるよ」
自分に言い聞かせるように呟く。
「 ”変える" というより "創る" 、くらいの覚悟でやってやるさ」
"上"がそこまでしてるなら、俺も半端じゃいられない。
「お前の責任も重大だぞ、ヨーコ」
俺もヨーコに説き返す。
「FQ世界に初めて外からやって来たAIなんだからな!」
「及ばずながら精一杯務めさせていただきます」
殊勝な返事と共に頭を下げるヨーコ。
VRではあるがTF本社に次いでこのデルモニアで実体化を遂げたAIである彼女は
同じくVR環境で生きる俺に匹敵し得る技術的意義を負っているのかもしれない。
勿論このADサーバーで改変を受けつつあるNPC達もそうなのだろうが。
「そういえば」
俺はふと思い付いた。
「ホセとフリオはどうなんだ。 NPCはフリーズしてるんじゃないのか」
あの密猟者達は俺がデリドールを出てから襲って来たぞ。
「彼等は ”試作調整体” です 」
ヨーコが答える。
「死亡時以外でリセットルーチンが起動しないよう設定されています」
ヨーコの喋りは完全に”製作者サイド” だ。
「行動範囲の制約が解除されシーン終了時の拠点復帰機能も実装されました」
( お おぅ )
「マスターが指示されましたので基本拠点は 第一支部 になるでしょう」
( ほうほう )
「…私がお話しできるのは此処までです。 彼等の直後に参りましたので」
( いや~ 開発室で働いてたってのはホントなんだな )
しかしこれってどうなん?
テスターはオンラインでトップクラスだったカンストプレイヤーのPC。
アシスタントはテスターの元エージェントで制作にも関わっていたAI。
・・・そうだよ。
確かに俺はADサービスのテスターだ と自分を認識していた。
当初は 『底辺モンスターから這い上がるADライフ』 て感じだった。
それが次第に変わってきている。
なんだかFQ世界の ”リフォーム作業” をしているように感じるんだが。
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