デルモニア紀行

富浦伝十郎

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赤土帯

ファイアボール

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 森を出たら北の山脈を越える前にしようと思っていた事がある。
魔法と弓の鍛錬だ。
FQをプレイし始めた当初から俺は剣士ジョブのレベルを上げるのに専念して来た。
かなり位階が上がってから魔導士のサブキャラを作ったりした事もあったけれども
タンク業務が忙しくなって来ていた為に入れ込んで鍛錬したという事は無かった。
弓も同じ様なものだ。

 所属するパーティも無いフリーな身となった今は幾らでも鍛錬に時間を割ける。
大森林ではヨーコも指摘した様に視界が狭く( 射撃 )距離が確保できなかったので
樹上機動訓練に専念し魔法を撃つのは控えていた。
( 森の中で樹を燃やしたり倒したりするのは気が引けた、ということもある)
しかし 植生も殆ど無いこの赤土地帯ならば 火も水も、風も土も撃ち放題だ。

 ・・・やってやる。
ゴブリンメイジにでもゴブリンウィザードにでもなってやろうじゃないか。
( 実際のFQにはそういう "上級種ゴブリン" は存在しないのだが )




「ファイアボール!」

 俺は目の前の赤土の荒野に向けて炎系Lv1魔法を唱えた。
ヴォン!
ビーチボール大の火球が差し出した俺の右手掌から前方に向かって射出された。
大リーグのピッチャーのストレート並みのスピードで飛んで行く。
60m程飛翔して音もなく消えた。

「?」

 ・・・ファイアボールてこんなんだっけ。
何かイメージと違うんだが。

 ファイアボールは魔導士が最初に覚える( 使用する )攻撃魔法だ。
俺も撃った事はある。
その時は確か、オレンジ色の卓球玉みたいな火球が10m程飛んだのだった。
スピードは温泉卓球の球速と同じくらい。
『こりゃ使えんわ』 
・・と思ったのを覚えている。

 Lv20 程度の魔導士のファイアボールはテニスボールくらいの大きさだったが
スピードは俺の初玉と大して変わらなかったように記憶している。
ビーチボール大のファイアボールなんて見たことない。
( 上級魔導士なら撃てるのか? )
俺と一緒に戦っていた魔導士達はファイアボールなんて撃たなかったからな。
最低でも 『イフリート召喚』 とかからだったし。

・・・魔法 てのも中々分からんものだな。

『魔法も奥が深いのよ』 
とヨッシーは言ってたけどその通りなんだろう。
『魔法も剣と同じだと思ったら良いのよ』
とも言ってたっけ。
例えば何も知らない子供が何処かで俺の "デュランダル" を見つけたとする。
その辺の地面に落ちていたとしてもまず持ち上げられないだろう。
この世界で最も強力な剣も子供には "武器" として使えない。
その子供がゴブリンと闘わなければならなくなったとしよう。
持ち上げられない大剣よりも俺の "スティック" の方がまだ役に立つ筈だ。
両手に持ってゴブリンの目でも鼻の孔でも突いてやればいい。
上手くすればそれでゴブリンを屠る事だってできるかもしれない。
( ”装備”には載らないが スティックは子供でも使える"武器"なのだ )

 剣を持った事のない男が落ちていた剣を拾ったとしよう。
ゴブリンに襲われてその剣で戦わなければならない。
大剣を持てない子供と違って剣を振ることはできるだろう。
だが、歴戦の剣士のように戦えるだろうか?
否、だ。

 慣れない呪文スペルで火球を放つ俺も似たようなものだ。
スペルを知っていて、それを撃てるMPもたっぷりある。
力自慢の素人が剣を持っているのと同じような状況と言えるだろう。
確かに威力はそこそこあるかもしれない。
だけど魔法に関する俺のスキルレベルは1だ。

・・ああ、ヨッシーにもっと色々教わっとくんだった。






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