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赤土帯
ファイアボール 2
しおりを挟む勿論、ヨッシー先生からは何も教わらなかった訳じゃない。
「アッキーが魔法を 修練する 時が来たらね… 」
「ほぅほぅ」
教室で交わした何気ない会話。
二度と戻らないあのひと時、あの数分に。
肝心な事は教えて貰っている。
覚えているとも。
「ありがとう。やってみるよ」
心の中で感謝の言葉を呟いた。
数多いる魔導士達を追い抜いて彼女のいた高みに至る道が俺には見えている。
行くよ 俺も。 その道を。
「お前も撃ってみろ」
ヨーコに声を掛けた。
彼女のファイアボール( FB )も見ておこう。
実戦での連携をイメージするには必須だからな。
同レベルの魔導士が同じスペルを使っても結果は同じではない。
ヨッシーの言う 『魔法も剣と同じ』 てのは剣士だった俺にも良く分かる。
同じ剣を持った同じレベルの剣士が必ずしも同じ強さにはならないって事だ。
「了解しました」
俺が放ったのと同じ方向へヨーコがFBを撃った。
テニスボール大の火球が俺の時と同じくらいの速度で飛翔する。
飛距離も大体同じくらいだった。
初めてにしては上出来だ。
昔俺が放ったFBに比べたら雲泥の差がある。
狼ぐらいなら一発で仕留められるんじゃないか。
但し距離が近ければ, だな。 数十m離れたら躱されてしまうだろう。
「よ~し、ヨーコ。 実戦的にやるぞ!」
俺はヨーコと20m程の距離を置いて向かい合って立った。
「俺を狙って撃て。 休むなよ。 倒す気でやるんだ」
「了解」
簡潔に応えるヨーコ。 空気を読んでか余計なコトは口にしない 。
「俺はお前の頭上1mを狙う。 左右方向に回避してみろ」
「了解」
「MPの心配は無用だ。 ガンガン来い!」
「了解!」
「では開始!」
赤土の大地で俺とヨーコのFBの撃ち合いが始まった。
「おぅ!」
ヨーコの放つ火球が次々と俺を襲う。( 相変わらず容赦ない )
ピッチャーとバッターの距離に近いから狙って投げて来る死球を躱す感じだ。
今のヨーコのMPは100くらいだからFBにブーストは掛けられない。
素のFBなら50発くらい撃てる。
俺のMPを枯渇させるのが本当の目的なのだが、かなり時間が掛かりそうだ。
ヨーコのFBのリキャストタイムは約2秒。
ジャストで撃って来るけれどもMP枯渇まで1分近く掛かる。
しかも俺のMPは彼女を200回以上満タンに出来るくらいある。
「うぉっ!」
危ねぇ。 ヨーコの火球が掠めそうになった。
最初は余裕で躱せていたのに。
俺の回避機動を解析・学習してるのかヨーコの撃ち方がイヤラシクなって来ている。
( これじゃ3時間は持たないぞ )
俺もヨーコの頭上をターゲットにFBを撃っているが、彼女は余裕で回避している。
俺の射撃パターンを完全に読んでいる感じだ。 ( AI 恐るべし )
・・・いい訓練になっていると思う。
しかしこれではMPを使い切る前に俺が被弾してしまう。
町人装備が燃えてしまう。
・・・仕方ねぇな。
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