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Hellogood-by
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最初は、小さな嘘だった。
ふたりで、食事をしただけ。
ふたりで、カラオケに行っただけ。
* * *
彼女をこれでもかというくらい傷つけた後は、僕が苦しむ番だった。
リョウコが妊娠したきっかけは、3ヶ月前のあの夜のこと。
泥酔した僕は、一夜の過ちを犯す。
たった一度。
それも殆ど記憶にない。
目が覚めると僕はリョウコの1Rにいて、シングルベッドに彼女とすし詰めのように眠っていた。
ピンク色の見慣れない布団カバーをはげば、僕もリョウコも生まれたままの姿だったのだ。
いくら記憶にないとはいえ、状況証拠はそろっていた。
もしも僕が芸能人で「一晩同じ部屋にいて、本当になにもなかったのですか?」と記者に聞かれるとする。「話しただけです。なにもありませんでした」と言って、お茶の間の視聴者は信じるだろうか?いわずもがな。
そんな言い訳をする芸能人が時折いるが、僕だって鼻で笑ってしまう。
「…マジか」
まだぐっすりと眠っているリョウコの身体を、布団をかけて覆い隠す。そんなことをしたって事実は隠れないのに。
僕とリョウコは同じサークルの先輩と後輩の関係にあたる。
リョウコは三つ年下の大学2年生で、先日二十歳になったばかりだ。
僕はと言えば、就職先も決まり、バイトにゼミにとのんびり将来を構えている気ままで平凡な大学生。
気が緩んでいた、といえばそうだった。
陰鬱な気分で、脱ぎ散らかしている衣服を身につける。
リョウコには悪いが、最悪の気分だった。
―浮気だけは許さないから
いつも温厚で優しい‘ひより’さんの柔らかな声が、今は、ただひたすらおそろしかった。
ふたりで、食事をしただけ。
ふたりで、カラオケに行っただけ。
* * *
彼女をこれでもかというくらい傷つけた後は、僕が苦しむ番だった。
リョウコが妊娠したきっかけは、3ヶ月前のあの夜のこと。
泥酔した僕は、一夜の過ちを犯す。
たった一度。
それも殆ど記憶にない。
目が覚めると僕はリョウコの1Rにいて、シングルベッドに彼女とすし詰めのように眠っていた。
ピンク色の見慣れない布団カバーをはげば、僕もリョウコも生まれたままの姿だったのだ。
いくら記憶にないとはいえ、状況証拠はそろっていた。
もしも僕が芸能人で「一晩同じ部屋にいて、本当になにもなかったのですか?」と記者に聞かれるとする。「話しただけです。なにもありませんでした」と言って、お茶の間の視聴者は信じるだろうか?いわずもがな。
そんな言い訳をする芸能人が時折いるが、僕だって鼻で笑ってしまう。
「…マジか」
まだぐっすりと眠っているリョウコの身体を、布団をかけて覆い隠す。そんなことをしたって事実は隠れないのに。
僕とリョウコは同じサークルの先輩と後輩の関係にあたる。
リョウコは三つ年下の大学2年生で、先日二十歳になったばかりだ。
僕はと言えば、就職先も決まり、バイトにゼミにとのんびり将来を構えている気ままで平凡な大学生。
気が緩んでいた、といえばそうだった。
陰鬱な気分で、脱ぎ散らかしている衣服を身につける。
リョウコには悪いが、最悪の気分だった。
―浮気だけは許さないから
いつも温厚で優しい‘ひより’さんの柔らかな声が、今は、ただひたすらおそろしかった。
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