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一章
見えない明日
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「ねぇエリザ。私はとうとう、いらなくなったのかしら」
オズワルドは、マリーの代わりに、父親が見つけてきたブライス家の跡取りでした。
オズワルドは、とても優秀で、品行方正な青年でした。
マリーより9つも歳上で、父親の会社で働いているそうです。
その働きぶりが目にとまり、オズワルドは、ブライス家の養子となったそうです。
夕食でもオズワルドの話題で持ちきりで、父親も母親もマリーには目もくれませんでした。
オズワルドは、アルベルトとは違った種類の、人を惹きつける人でした。
豊富な話題に、よく変わる表情。
そして、時折まざる軽口で、人の緊張を解きほぐすのでした。
あの生真面目なケイトでさえ、1週間で籠絡してしまいました。
ここ数日のケイトは、マリーの髪を解きほぐしながら、オズワルドの話ばかりです。
「オズワルド様は、素晴らしい方ですわね。まだお若いのに、外国をいくつも旅して回ったそうですよ。外国語をみっつも話せるんだとか。それに、お話がお上手で、ちっとも飽きませんの。自分が喋るばかりじゃなくて、私どもにも色々と尋ねて下さるんですのよ」
「へぇ」
「お父様が夢中になられるのも無理はありませんね」
オズワルドは、マリーにもしょっちゅう話しかけてくれました。
「マリー、流行りのドレスだよ」
とか
「マリー、ベストセラーの小説だよ」
とか。
「好きな子はいるの?」
とか。
オズワルドは、マリーにもとても優しくしてくれました。
だけど妙に素直になれず、マリーはいつまでもオズワルドによそよそしい態度をとるしかありませんでした。
「マリーは、僕のことが嫌いなのかな」
ある日、困り顔をしたオズワルドにそう言われてしまい、マリーはおどおどと首を横に振りました。
「…そんな事ありません」
「そう?本当かい?だけどマリーは僕の贈った服を着てくれないし、本の感想もまだだ」
「…すみません」
「えっとね、マリー、顔を上げてごらん?君を困らせたいわけじゃないんだ。妹が出来て、僕もとっても嬉しい。仲良くしたいんだよ」
「…はい」
「迷惑なら言ってくれていいし、欲しいものがあるなら頼っておくれよ」
口をつぐんでしまったマリーに代わり、隣についていたケイトが「オズワルド様、お嬢様は、あんまり素敵なお兄様が突然出来たので、恥ずかしがっていらっしゃるんですわ」と擁護してくれました。
しかし、オズワルドとの距離は縮まらないまま、時だけが過ぎて行きました。
そうしてオズワルドがブライスの中心になればなるほど、マリーは自分がいらない子なんじゃないかと思うようになっていったのです。
オズワルドは、マリーの代わりに、父親が見つけてきたブライス家の跡取りでした。
オズワルドは、とても優秀で、品行方正な青年でした。
マリーより9つも歳上で、父親の会社で働いているそうです。
その働きぶりが目にとまり、オズワルドは、ブライス家の養子となったそうです。
夕食でもオズワルドの話題で持ちきりで、父親も母親もマリーには目もくれませんでした。
オズワルドは、アルベルトとは違った種類の、人を惹きつける人でした。
豊富な話題に、よく変わる表情。
そして、時折まざる軽口で、人の緊張を解きほぐすのでした。
あの生真面目なケイトでさえ、1週間で籠絡してしまいました。
ここ数日のケイトは、マリーの髪を解きほぐしながら、オズワルドの話ばかりです。
「オズワルド様は、素晴らしい方ですわね。まだお若いのに、外国をいくつも旅して回ったそうですよ。外国語をみっつも話せるんだとか。それに、お話がお上手で、ちっとも飽きませんの。自分が喋るばかりじゃなくて、私どもにも色々と尋ねて下さるんですのよ」
「へぇ」
「お父様が夢中になられるのも無理はありませんね」
オズワルドは、マリーにもしょっちゅう話しかけてくれました。
「マリー、流行りのドレスだよ」
とか
「マリー、ベストセラーの小説だよ」
とか。
「好きな子はいるの?」
とか。
オズワルドは、マリーにもとても優しくしてくれました。
だけど妙に素直になれず、マリーはいつまでもオズワルドによそよそしい態度をとるしかありませんでした。
「マリーは、僕のことが嫌いなのかな」
ある日、困り顔をしたオズワルドにそう言われてしまい、マリーはおどおどと首を横に振りました。
「…そんな事ありません」
「そう?本当かい?だけどマリーは僕の贈った服を着てくれないし、本の感想もまだだ」
「…すみません」
「えっとね、マリー、顔を上げてごらん?君を困らせたいわけじゃないんだ。妹が出来て、僕もとっても嬉しい。仲良くしたいんだよ」
「…はい」
「迷惑なら言ってくれていいし、欲しいものがあるなら頼っておくれよ」
口をつぐんでしまったマリーに代わり、隣についていたケイトが「オズワルド様、お嬢様は、あんまり素敵なお兄様が突然出来たので、恥ずかしがっていらっしゃるんですわ」と擁護してくれました。
しかし、オズワルドとの距離は縮まらないまま、時だけが過ぎて行きました。
そうしてオズワルドがブライスの中心になればなるほど、マリーは自分がいらない子なんじゃないかと思うようになっていったのです。
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