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魔界暦975年 一の月
勇者気取りの弱者
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魔王城はアフレイド城とも呼ばれている。そこを拠点に、その城下町と近郊の街を直轄領として治めている。直轄領内は忠臣サルトルが眼を光らせているので、あらゆる情報が直ぐに魔王城に届くようになっていた。
領内に侵入した人間たちの情報も逐一報告された。その情報を元に、ラウナスと彼のメイドであるマナミは南の小さな村に向かった。
その村は獣人たちの村であった。
「陛下、ようこそおいでくださいました」
獣人のリーダーであるドグラが仰々しく言った。村の獣人全てが平伏していた。
「楽にせよ。肩が凝る、そんなに平伏されたら」
ラウナスは笑った。隣にいるマナミは無表情だ。彼女はラウナス以外に微笑むことがない。
獣人たちから人間たちの情報を聞き、近くの水源でキャンプをしていることが分かった。
「私にお任せ頂ければ。わざわざ陛下の手を煩わすことなどありません」
「それでは面白くない」
ドグラは言葉を失った。
「ドグラよ、私にその場所を案内してくれるか?」
「もちろんでございます」
ラウナスとマナミはドグラに案内されて、水源のある場所へと向かった。
平原を進み、森の中を歩いて行く。
「この森には魔物はいないのか?」
ドグラに尋ねた。
「いえ、それなりの数がいますが、凶暴な魔物はいないはずです」
魔界の樹々は人間界とは違い太陽光を必要としない。空気中の魔素と呼ばれる魔力の素となる成分を吸収し、放出する。
「この先のはずです」
ドグラが先頭を歩き、水源の傍の木陰に隠れた。
マナミが久しぶりに言葉を発した。
「何故に陛下が隠れないといけないですか?」
その口調は明らかに不満そうである。
ドグラは瞬きをしながら、言葉を探す。
「構わぬ。人間どもの様子を見よう」
水源の傍にテントが張ってある。二人の若い男の姿が見えた。一人は重装備である。もう一人はローブを纏っている。魔道士なのだろう。人間界にも魔力を持つ者がいると聞いていた。
テントの中にも誰かいるようだ。
「四人のパーティなはずです。残り二人はメスかと」
ドグラが言った。
「強そうではないな」
ラウナスは少しがっかりした。
「仰る通りで、魔力を持つ人間もいるようですが、微々たるものです」
ラウナスは溜息を吐いてから、テントに向かって歩き始めた。
「陛下」
慌ててドグラが追い掛ける。マナミは静かに付き従っていた。
テントの前にいた戦士と魔道士がラウナスに気付いて、身構えた。
「何者だ?」
戦士の男が剣を構えている。
ドグラが先手の攻撃しようとするのを制して、ラウナスは言った。
「人間どもよ、何しにこの魔界に来たのだ?」
魔道士の男が答える。
「魔王を討伐する為だ」
ラウナスがそれを聞いて大きな声で笑った。
テントの中から二人の女性が出て来た。一人はローブを纏い、もう一人は軽鎧で短剣の二刀流だ。
「私は魔王ラウナスだ」
人間四人は息を呑んだ。
「馬鹿な。魔王が自らこんな場所に来るはずがない」
戦士の男が叫ぶ。
ドグラが歯軋りをしている。ラウナスは彼をまだ制している。
「では、私が雑魚の魔物だと?それならば、掛かって来い。いつでも良いぞ」
ラウナスは一歩前に出た。
戦士の男がこちらに向かって来る。勢い良く剣を振りかざしながら。
遅い。
あまりにも動きが緩慢である。
その男は剣を振り回すが、ラウナスに切り付けることができない。
「どうした?」
「これならどうだ」
戦士の男が大きく振りかぶって正面から飛び掛かって来た。
それと同時に魔道士が呪文を詠唱した。杖を振りかざすと、火の球が放たれる。
「連携攻撃か。面白いな。だが、弱過ぎるな。ドグラ、殺れ」
ラウナスが命じると、ドグラは戦士の攻撃を受けつつ、火の魔法を片手で防いだ。
次の瞬間、ドグラの剣が戦士の首を飛ばした。人間の女二人が悲鳴を上げた。戦士の名前を叫んだようにも思うが、上手く聞き取れなかった。魔道士は次の呪文を放とうとしたが、その前にドグラに距離を詰められる。短剣の女戦士が駆け出し、斬りかかろうとしたが、急に動きを止めた。
マナミが魔法を行使して、彼女の動きを封じたようだ。ラウナスは彼女がちゃんと魔術の訓練に励んでいることを微笑ましく思った。
「女二人は殺すな」
「はい」
ドグラとマナミは同時に返事をした。
ドグラは一撃で魔道士を斬り捨てる。
マナミはもう一人の女魔道士の動きを止めた。
人間の女二人は恐怖で顔が歪んでいるが、二人とも身体の自由が利かない。悲鳴を上げることも出来なかった。
領内に侵入した人間たちの情報も逐一報告された。その情報を元に、ラウナスと彼のメイドであるマナミは南の小さな村に向かった。
その村は獣人たちの村であった。
「陛下、ようこそおいでくださいました」
獣人のリーダーであるドグラが仰々しく言った。村の獣人全てが平伏していた。
「楽にせよ。肩が凝る、そんなに平伏されたら」
ラウナスは笑った。隣にいるマナミは無表情だ。彼女はラウナス以外に微笑むことがない。
獣人たちから人間たちの情報を聞き、近くの水源でキャンプをしていることが分かった。
「私にお任せ頂ければ。わざわざ陛下の手を煩わすことなどありません」
「それでは面白くない」
ドグラは言葉を失った。
「ドグラよ、私にその場所を案内してくれるか?」
「もちろんでございます」
ラウナスとマナミはドグラに案内されて、水源のある場所へと向かった。
平原を進み、森の中を歩いて行く。
「この森には魔物はいないのか?」
ドグラに尋ねた。
「いえ、それなりの数がいますが、凶暴な魔物はいないはずです」
魔界の樹々は人間界とは違い太陽光を必要としない。空気中の魔素と呼ばれる魔力の素となる成分を吸収し、放出する。
「この先のはずです」
ドグラが先頭を歩き、水源の傍の木陰に隠れた。
マナミが久しぶりに言葉を発した。
「何故に陛下が隠れないといけないですか?」
その口調は明らかに不満そうである。
ドグラは瞬きをしながら、言葉を探す。
「構わぬ。人間どもの様子を見よう」
水源の傍にテントが張ってある。二人の若い男の姿が見えた。一人は重装備である。もう一人はローブを纏っている。魔道士なのだろう。人間界にも魔力を持つ者がいると聞いていた。
テントの中にも誰かいるようだ。
「四人のパーティなはずです。残り二人はメスかと」
ドグラが言った。
「強そうではないな」
ラウナスは少しがっかりした。
「仰る通りで、魔力を持つ人間もいるようですが、微々たるものです」
ラウナスは溜息を吐いてから、テントに向かって歩き始めた。
「陛下」
慌ててドグラが追い掛ける。マナミは静かに付き従っていた。
テントの前にいた戦士と魔道士がラウナスに気付いて、身構えた。
「何者だ?」
戦士の男が剣を構えている。
ドグラが先手の攻撃しようとするのを制して、ラウナスは言った。
「人間どもよ、何しにこの魔界に来たのだ?」
魔道士の男が答える。
「魔王を討伐する為だ」
ラウナスがそれを聞いて大きな声で笑った。
テントの中から二人の女性が出て来た。一人はローブを纏い、もう一人は軽鎧で短剣の二刀流だ。
「私は魔王ラウナスだ」
人間四人は息を呑んだ。
「馬鹿な。魔王が自らこんな場所に来るはずがない」
戦士の男が叫ぶ。
ドグラが歯軋りをしている。ラウナスは彼をまだ制している。
「では、私が雑魚の魔物だと?それならば、掛かって来い。いつでも良いぞ」
ラウナスは一歩前に出た。
戦士の男がこちらに向かって来る。勢い良く剣を振りかざしながら。
遅い。
あまりにも動きが緩慢である。
その男は剣を振り回すが、ラウナスに切り付けることができない。
「どうした?」
「これならどうだ」
戦士の男が大きく振りかぶって正面から飛び掛かって来た。
それと同時に魔道士が呪文を詠唱した。杖を振りかざすと、火の球が放たれる。
「連携攻撃か。面白いな。だが、弱過ぎるな。ドグラ、殺れ」
ラウナスが命じると、ドグラは戦士の攻撃を受けつつ、火の魔法を片手で防いだ。
次の瞬間、ドグラの剣が戦士の首を飛ばした。人間の女二人が悲鳴を上げた。戦士の名前を叫んだようにも思うが、上手く聞き取れなかった。魔道士は次の呪文を放とうとしたが、その前にドグラに距離を詰められる。短剣の女戦士が駆け出し、斬りかかろうとしたが、急に動きを止めた。
マナミが魔法を行使して、彼女の動きを封じたようだ。ラウナスは彼女がちゃんと魔術の訓練に励んでいることを微笑ましく思った。
「女二人は殺すな」
「はい」
ドグラとマナミは同時に返事をした。
ドグラは一撃で魔道士を斬り捨てる。
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