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水たまりに浮かぶ
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いつもより早くに目が覚めた日の朝の散歩は、とても気持ちが良いものです。
店の裏にある細やかな畑の世話を終え、プランターの花たちに水をやり。
お料理の下ごしらえだけを済ませた私は、朝から元気なぽんすけと、こうして誰もいない田舎道を歩いています。
あ、ちなみに葉子さんは昨夜遅くまで起きていらっしゃったのか、熟睡中のようですよ。
瑞々しい朝の空気も、雲間から覗く青空も。
連なる山々に霧のベールが掛かる風景は、思わず溜息を吐いてしまうほど幻想的。
ゆっくり息を吸い込むと、私の心の中にある深くて暗い闇に一筋の澄んだ空気が流れ込むよう。
時には意図的にでも自然の広さや風をじっくり味わうと言うのも大切なのかもしれません。
そして、この小さな小さな、私の前を歩くお散歩仲間との出会いも、今日の「幸せ」のひとつ。
「ねぇ、あなたはどこに行くのかしら」
食堂を出てすぐ、土手の草影からぴょん、と飛び出してきたのは一匹の雨蛙です。
ぴょん、と跳ねては大きな大きな世界をまん丸の目で見渡し、そしてまた跳ねます。
私が蛙に合わせて歩くと、ぽんすけも自然と歩幅を合わせてくれます。
葉子さんと一緒の時は、それはもう大興奮で走り出してしまうのですが、私は走れないのをわかってくれているのか、いつもちゃんとペースを合わせてくれる優しい子なのです。
雨蛙は私の隣を歩くぽんすけの足元――つま先ぎりぎりの所で座り込み、きょろきょろ見渡してじっとしています。
ぽんすけはと言うと、黒く湿った鼻をふんふん鳴らしながら蛙の様子を伺い、
「ねぇ、この子動かないんだけど」
とちょっぴり困ったように、人間でいう眉のあたりをハの字にして私を見上げるのです。
「あら」
ふと気配を感じて村の方を振り返ると、自転車が一台こちらにのんびりと向かってきました。
「ハルさーん、おーはよーございまーす」
私に気付き、片手を上げて頭の上で振りながらスピードを上げたまどかさんが、満面の笑みで近付いてきます
「あっ、まどかさんストップです、ストップ」
まどかさんは「えっ?」と慌ててブレーキをかけると「どうかしました?」と両足で地面を蹴りながらちょこちょこと前進します。
まどかさんが私の前で自転車から下りると、ぽんすけのつま先で動こうとしなかった蛙はぴょん、ぴょん、とまどかさんの前を横切り、向かいの田んぼに飛び込んだのです。
「まぁ、もしかして自転車に気付いて止まっていたのかしら」
「あの蛙ですか?えー、そんなことあります?いや、あるのかな。蛙だって賢いですもんね」
あの小さい体で色々考えてるんだと思うと、生き物って不思議ですよね。
でも、そんな事言ったら、私たちなんかよりずっと大きなゾウやキリンだって「人間はあんなに小さい頭で色んな道具を作ったり、考えたり、悩んだりしてるんだなぁ」と不思議に思ってるかもしれません。
そう思うと、やっぱり生き物に上下や優劣なんて無いのでしょうね。
それは勿論、今目の前に広がる植物にだって同じことが言えるのだと思います。
言葉が話せるから、表情に出るから――そういう生き物だけが感情や考えを持っているわけでは無いのでしょう。
雨蛙が消えた当たりの草を見つめてそんな思いにふけっていると、まどかさんが思い出したように声を上げました。
「おっと。この村にいると時間の感覚が鈍くなっちゃいますね」
ぽんすけの顎をうにうにと撫でながら「また遊んでねぇ」と甘い声で言うと、自転車に跨りペダルに片足を乗せました。
「最近、お休みになるとまどかさんが泊まりに来てくれるから、栗原さん達も喜んでらっしゃるんじゃない?」
「そうなんですよ。もう毎回これでもかってくらい食べ物が出て来るんです。今朝なんて金曜の夜より二キロ太ってました。じゃ、電車も来ちゃうので、そろそろ行きますね」
「えぇ、いってらっしゃい。気を付けてね」
山の向こうにある町のホテルで働くまどかさんの背中を見送り、尻尾をぶんぶん振りながら口を開けて嬉しそうに見上げて来るぽんすけと一緒に再び歩き始めました。
食堂に戻り、かぶの皮を剥いていると、なんだか視線が。
もしかして、と奥の部屋がある方を振り返ると、変わらず扉は閉まったまま。
でもよーく見て見ると、黒光りしたまん丸のお鼻がドアの隙間から覗いています。
大根と包丁を置いてからドアを開けてやると、ぽんすけが「すっきりしました」と言う表情でふさふさの尻尾を振っていました。
「ふふっ、ぽんすけ気持ち良かった?葉子さん、ありがとうございます。毛並みもすっかり綺麗になって良かったです」
「いえ、私こそぐっすり寝させてもらいましたから。まさかお散歩帰りのびしょ濡れぽんすけに飛び掛かられると思ってなかったけど」
葉子さんは「ほら。お料理するから、あっち行こうね」とぽんすけを玄関へと誘導します。
ちょうどお散歩から帰ると、様子を見に出て来た葉子さんとばったり。
それが相当嬉しかったらしく、水溜りに飛び込み、背中から転げまわったびしょ濡れの身体で、葉子さんに飛び掛かってしまいました。
寝起きの葉子さんが、雨水と足裏についた砂利にまみれてしまったのは言うまでもありません。
日毎パワーアップするぽんすけと、年々――どころか日々衰えを痛感する私。
飛び掛かる前に制止しきれなかった事は反省です。
「かぶですかぁ、昨日河田さんと栗原さんから頂いたものですね。まさか二人が同じものを持って来るなんて。相変わらず、俺のが美味いって喧嘩してましたけど」
「ふふっ、頂けるお野菜はどれも美味しいんですけどね。まぁ、あのお二人の言い争いは仲の良い証拠と言いますか。お元気の証ですから」
栗原さんと河田さんは、お互いが顔を合わせると「うちの野菜のが美味い」「うちの犬の方があっちの犬より利口」と言い合っていますが、実はとても仲が良いのは周知の事実なのです。
二・三日相手の姿を見なかったら、互いのお家の前をうろうろしては様子を伺っているのです。
なんだかそういう仲というのも貴重なような気がして、私は羨ましいとも思ってしまいます。
片栗粉をまぶした鶏肉を、だし汁・醤油・みりん・お酒を入れた鍋の中に入れ、葉子さんが何のお料理になるのか夢を膨らませていると――
「こんにちは。良い匂いですね」
「日下部さん、こんにちは」
小型の植物図鑑を小脇に抱えた日下部修治さんが「散歩帰りにこっちを通ったら良い匂いがしてきて、釣られてきました」と、穏やかに頬を緩ませました。
彼は奥様を亡くし、三年前にこの村にやって来ました。
今は栗原さんのお宅の離れに住んでいます。
お散歩が好きな日下部さんとは、時々私もご一緒することもあるんですよ。
「今日はリンドウが咲いていました。あっちの桜の木がある丘にはコスモスが群生していて綺麗でしたよ」
窓に近い席に腰を下ろした日下部さんは、デジカメをテーブルに置いてからお水の入ったグラスに口をつけます。
「おにぎり定食で、具はそうだなぁ。鮭でお願いします」
デジカメの液晶画面に視線を落としながら
「これは良い具合に撮れたんですよ」
「ほら、コスモスと空のコントラストが綺麗でしょ」
と嬉しそうに葉子さんに見せています。
葉子さんも「わぁ」「ピンクと水色の組み合わせが綺麗」「こんな趣味があるのも素敵」と終始目が垂れ下がっています。
私は、そんな和やかなお二人の声を聞きながら鍋にかぶと椎茸を入れ、鮭を網に乗せて焼きます。
パチッ パチパチッ
皮が弾ける音と芳ばしい香り。さつま芋もあるので、こちらは天ぷらにしましょうか。
衣をつけて油でカラリと、中はほくほくに揚げていきます。
敷紙に乗せて、お塩を添えましょう。
ほら、さっきのお鍋から、お出汁の良い香りがしてきましたよ。
「はい、どうぞ。本日のおにぎり定食は、治部煮とさつま芋の天ぷら、お味噌汁の具はお豆腐とわかめです。鮭のおにぎりもどうぞ」
とろりとしたお出汁がよく染みた治部煮の具は、かぶと鶏肉、肉厚の椎茸です。
温かいお茶もお出しして、私と葉子さんはキッチンに戻りました。
「ハルさんは休んでてください。洗い物は私がしますから」
「ありがとうございます」
葉子さんが袖を捲り上げてスポンジに洗剤を垂らすのを横目に、私は窓辺に腰かけ、すっかり太陽が昇った雨上がりのしっとりとした風を胸に吸い込みました。
リン
日下部さんが座る席の窓に吊るした南部鉄の風鈴が、そよ風に音を奏でています。
雨上がり。
娘を最後に見送ったあの日も、雨上がりの朝でした。
「今日、傘要らないかなぁ。ねぇ、お父さん天気予報どう?」
「もう降らないって言ってたから大丈夫だろう。ほら、遅刻するぞ」
居間でスーツに着替えていた夫も、いつものように玄関まで見送りに出てきました。
「そっか。じゃ、行ってきます」
「行ってらっしゃい、気を付けてね」
「お母さん、帰ったらクッキー作ろうね」
「良いわよ、材料もあるし」
「じゃーね」
記憶にある娘の笑顔は、陽光に照らされて、眩しくて、眩しくて。思い出すだけで、胸が張り裂けそうになる。
あの日、もっと早くに帰っていれば良かった。
買い物は、娘が帰ってから一緒に行けばよかったんじゃないか。
後悔は尽きなくて。
大きな水溜りの上を、黄色い蝶がひらり、ひらり、と楽し気に舞っています。
さわさわと葉擦れの音が耳をくすぐる。
レモンイエローの陽光が水溜りに注ぎ、白く反射しています。
私の人生を大きく変えたあの災害が起こった時、私は買い物に出ていました。
娘は学校から帰っている途中で、どれほど怖かったでしょう。
それでもようやく辿り着いた家。
きっと私がいると思って帰ったのに――家には誰もいなかった。
それで終わりだと、誰もが思っていたのです。
なのに、本当の恐怖はそれからでした。
娘はたったひとり、自宅で命を落としました。
仕事先にいた夫も、そのまま帰らぬ人となりました。
どれだけ待っても、泥に塗れて探し回っても、遺体すら帰って来なかった。
まだまだ一緒に行きたいところ、話したいこと、見たい景色があったのです。
子供の成長、夫と共に老いていく私。
ずっとずっと、家族と歩む道は果てしなく続いていて、三人で手を繋いで歩いて行けると思っていた、あの頃。
なのに、なのに。
私ひとりが、ある日突然、この世界に取り残されてしまった。
当たり前に帰って来ると思っていた。
当たり前に夕方になって、夜になって、三人で食卓を囲むものだと。
そしてあの日、食事の後には九歳になる娘の誕生日ケーキに蝋燭を立てて――。
「ハルさん」
「え――、あ、はい。ごめんなさい、気付かなくて」
いつのまにかお会計を済ませていた日下部さんが、カウンター越しに「ちょっと、散歩に行きませんか」と玄関を指しました。
「でもまだお店が……それにお散歩は朝にも行きましたし――」
「大丈夫ですよぉ、私がちゃんといますから。ちょっとくらい良いじゃ無いですか。日下部さん、よろしくお願いします」
葉子さんが日下部さんに丁寧に頭を下げます。
あぁ、なんという事でしょう。お客様に気を使わせてしまうなんて。
「ほら、行きましょう。何か羽織るものがあった方が良いかな」
日下部さんが言うと「はい、ハルさん」と、すかさず葉子さんが私のカーディガンを肩に掛けてくださいました。
「ありがとうございます。じゃあ、少しだけ。すぐに戻りますから」
「ごゆっくりー」とにこやかに送り出してくれた葉子さんに手を振って、不思議そうに私たちを見上げるぽんすけにも見送られながら店を出ました。
「ハルさん、足元気を付けてください。水溜りがありますから」
「ありがとうございます」
田んぼの中を通る畦道の途中、土のくぼみに溜まった大きな水溜り。
日下部さんの手を取って、スカートの裾を片手で持ち上げながら歩幅を大きくして跨ぎます。
「昨日の雨が嘘みたいに晴れてきましたね。長靴を履いて来ても良かったかもしれません」
「長靴ですか?」
私達を中心に八方に広がる田園風景。
うんと両手を空にかざして背筋を伸ばして。
空を仰げば、薄く透けるような雲がぽつぽつとだけ残った青空に、飛行機が一本の筋状の雲をすぅっと引いていました。
「娘が小さい時。幼稚園に行く道すがら、水溜りを見付けると嬉しそうに入ってたなぁって思い出して。あんまり楽しくて、ばしゃばしゃと足踏みするものですから、長靴の中にまで水が入っちゃって。でもそれが楽しくて、嬉しそうに私を見上げるんです。お母さんもやってみたら?って」
「へぇ。ハルさんも一緒になってやるんですか?」
「最初は躊躇ったんですけど、子供に手を引かれて恐る恐るやってね。一度やったらもう勢いが付いちゃって、ふたりでばしゃばしゃやってました。そしたら、子供がふと足を止めて慌てて水溜りから出たんです。何かなぁって思ったら――」
何となく振り返って、連なる山々に視線を向けた私は、思わず子供のように「あっ」と声を上げて、隣にいる日下部さんの背中をとん、と叩いてしまいました。
「見てください、虹です」
「え?わっ、本当だ」
瑞々しい風がそよぐ午後。
私の指さす先には、山から山へ掛かる大きな虹の橋が架かっていました。
「娘が慌てて水溜りから出たのは、そこに虹が映っていたからなんです」
私の足元にある水溜りにあの虹が映る事はありません。
でもこうして見ていると、今も遠い記憶のなかにある、あの日、幼い娘と見た虹が水溜りに浮かんでいるような。
そんな気がしてしまいます。
「ハルさん」
日下部さんの声に、視線を水溜りから離して顔を上げました。
その手には綺麗に折り畳まれたハンカチが。
「良かったらどうぞ」
ハッとして右手の甲で頬を拭うと涙が。
「す、すみません。気付かなくて、私……」
日下部さんからハンカチをお借りして涙を拭いているあいだ、彼は虹を見上げ、眩しそうに目を細めていました。
「ハルさんは、もう少し心の力を抜いても良いと思います」
「心の力?」
山の方から田んぼの上を駆け抜けて来た土と葉っぱの青々とした風が、日下部さんの白髪交じりのグレーの髪をさらりと持ち上げました。
「ハルさんは穏やかに、ゆったりと生きているように見えて、実は心の中は僕たちには見えない何かに縛られているような気がします」
「縛られている……」
まだ結婚する前。夫に言われた言葉が、耳元をかすめたそよ風に蘇ります。
『君が今いる場所が全てじゃない。君が常識だと思っている事が、必ずしもそうとは限らない。君は身動きがとれないと思っているかもしれないが、君を縛り付けているのは他の誰でもない、君自身だ』
当時はまだ友人のひとりだった夫が言ってくれたこと。
私を縛り付けているのは他の誰でもない、私自身。
「僕はいつもハルさんの穏やかな雰囲気や人柄に癒されています。ひとりで鬱々としてしまう事があっても、食堂に行けば心がすっと軽くなる。だから――」
日下部さんは虹を背にして、私をまっすぐに見て。
ふっと、表情を緩めました。
「ハルさんも、元気が無い時は無理に笑わなくて良いんです。話して楽になるなら話してくれたら良いんです。さっきの娘さんの話も、僕はとても嬉しかった。涙を流すのも恥ずかしい事じゃありません。悲しい時には泣いて、楽しい時には笑って。それが人間の感情なんですから。人は泣くことで辛い感情を昇華するんです。時間だけでは解決できない。抱いた感情を噛みしめながらでしか、人は自分の心と向き合えない。そうすればまた一歩前に進める。だから申し訳なく思う必要も無いんです」
どこからかやってきたスズメが二羽、私と日下部さんの間に降り立って、不思議そうにくりくりの瞳で首を傾げて見上げています。
「娘さんの話をして無意識に涙を流したハルさんは、それだけ娘さんを想っているという事です。誰かを想う涙が恥ずかしいなんて、絶対に無いんですよ」
ふいに日下部さんが「あっ」と声を漏らしました。
仄かに甘くて、優しい香り。
「金木犀の香りだ」
日下部さんは少し上を向いて目を閉じます。
気持ちよさそうに、香りを全身に感じるように。
金木犀は日下部さんご夫婦にとって大切な想い出だと教えて頂いた事があります。
亡くなった奥様との懐かしい記憶に想いを馳せているのでしょう。
「やっぱりここに引っ越して良かったなぁ」
口角を少し上げて空に向かって噛みしめる日下部さんの胸元には、奥様の写真が入った雫型のロケットペンダントが銀色に光っていました。
「日下部さん、ありがとうございます」
「いえ。お互い様ですから」
にっこりと微笑んだ日下部さんの向こうに架かる虹の橋はまだくっきりとした形をしていて。
私の大切な人たちも、空の上からこの虹を見下ろしているのかしら、と想うと自然に笑みが浮かんで。
私も、ここに来て良かった。
心に浮かんだ言葉は私のなかに温もりとなって広がりました。
虹の向こうにいる私の愛する人たちは、どんな表情でこの景色を見ているでしょう。
店の裏にある細やかな畑の世話を終え、プランターの花たちに水をやり。
お料理の下ごしらえだけを済ませた私は、朝から元気なぽんすけと、こうして誰もいない田舎道を歩いています。
あ、ちなみに葉子さんは昨夜遅くまで起きていらっしゃったのか、熟睡中のようですよ。
瑞々しい朝の空気も、雲間から覗く青空も。
連なる山々に霧のベールが掛かる風景は、思わず溜息を吐いてしまうほど幻想的。
ゆっくり息を吸い込むと、私の心の中にある深くて暗い闇に一筋の澄んだ空気が流れ込むよう。
時には意図的にでも自然の広さや風をじっくり味わうと言うのも大切なのかもしれません。
そして、この小さな小さな、私の前を歩くお散歩仲間との出会いも、今日の「幸せ」のひとつ。
「ねぇ、あなたはどこに行くのかしら」
食堂を出てすぐ、土手の草影からぴょん、と飛び出してきたのは一匹の雨蛙です。
ぴょん、と跳ねては大きな大きな世界をまん丸の目で見渡し、そしてまた跳ねます。
私が蛙に合わせて歩くと、ぽんすけも自然と歩幅を合わせてくれます。
葉子さんと一緒の時は、それはもう大興奮で走り出してしまうのですが、私は走れないのをわかってくれているのか、いつもちゃんとペースを合わせてくれる優しい子なのです。
雨蛙は私の隣を歩くぽんすけの足元――つま先ぎりぎりの所で座り込み、きょろきょろ見渡してじっとしています。
ぽんすけはと言うと、黒く湿った鼻をふんふん鳴らしながら蛙の様子を伺い、
「ねぇ、この子動かないんだけど」
とちょっぴり困ったように、人間でいう眉のあたりをハの字にして私を見上げるのです。
「あら」
ふと気配を感じて村の方を振り返ると、自転車が一台こちらにのんびりと向かってきました。
「ハルさーん、おーはよーございまーす」
私に気付き、片手を上げて頭の上で振りながらスピードを上げたまどかさんが、満面の笑みで近付いてきます
「あっ、まどかさんストップです、ストップ」
まどかさんは「えっ?」と慌ててブレーキをかけると「どうかしました?」と両足で地面を蹴りながらちょこちょこと前進します。
まどかさんが私の前で自転車から下りると、ぽんすけのつま先で動こうとしなかった蛙はぴょん、ぴょん、とまどかさんの前を横切り、向かいの田んぼに飛び込んだのです。
「まぁ、もしかして自転車に気付いて止まっていたのかしら」
「あの蛙ですか?えー、そんなことあります?いや、あるのかな。蛙だって賢いですもんね」
あの小さい体で色々考えてるんだと思うと、生き物って不思議ですよね。
でも、そんな事言ったら、私たちなんかよりずっと大きなゾウやキリンだって「人間はあんなに小さい頭で色んな道具を作ったり、考えたり、悩んだりしてるんだなぁ」と不思議に思ってるかもしれません。
そう思うと、やっぱり生き物に上下や優劣なんて無いのでしょうね。
それは勿論、今目の前に広がる植物にだって同じことが言えるのだと思います。
言葉が話せるから、表情に出るから――そういう生き物だけが感情や考えを持っているわけでは無いのでしょう。
雨蛙が消えた当たりの草を見つめてそんな思いにふけっていると、まどかさんが思い出したように声を上げました。
「おっと。この村にいると時間の感覚が鈍くなっちゃいますね」
ぽんすけの顎をうにうにと撫でながら「また遊んでねぇ」と甘い声で言うと、自転車に跨りペダルに片足を乗せました。
「最近、お休みになるとまどかさんが泊まりに来てくれるから、栗原さん達も喜んでらっしゃるんじゃない?」
「そうなんですよ。もう毎回これでもかってくらい食べ物が出て来るんです。今朝なんて金曜の夜より二キロ太ってました。じゃ、電車も来ちゃうので、そろそろ行きますね」
「えぇ、いってらっしゃい。気を付けてね」
山の向こうにある町のホテルで働くまどかさんの背中を見送り、尻尾をぶんぶん振りながら口を開けて嬉しそうに見上げて来るぽんすけと一緒に再び歩き始めました。
食堂に戻り、かぶの皮を剥いていると、なんだか視線が。
もしかして、と奥の部屋がある方を振り返ると、変わらず扉は閉まったまま。
でもよーく見て見ると、黒光りしたまん丸のお鼻がドアの隙間から覗いています。
大根と包丁を置いてからドアを開けてやると、ぽんすけが「すっきりしました」と言う表情でふさふさの尻尾を振っていました。
「ふふっ、ぽんすけ気持ち良かった?葉子さん、ありがとうございます。毛並みもすっかり綺麗になって良かったです」
「いえ、私こそぐっすり寝させてもらいましたから。まさかお散歩帰りのびしょ濡れぽんすけに飛び掛かられると思ってなかったけど」
葉子さんは「ほら。お料理するから、あっち行こうね」とぽんすけを玄関へと誘導します。
ちょうどお散歩から帰ると、様子を見に出て来た葉子さんとばったり。
それが相当嬉しかったらしく、水溜りに飛び込み、背中から転げまわったびしょ濡れの身体で、葉子さんに飛び掛かってしまいました。
寝起きの葉子さんが、雨水と足裏についた砂利にまみれてしまったのは言うまでもありません。
日毎パワーアップするぽんすけと、年々――どころか日々衰えを痛感する私。
飛び掛かる前に制止しきれなかった事は反省です。
「かぶですかぁ、昨日河田さんと栗原さんから頂いたものですね。まさか二人が同じものを持って来るなんて。相変わらず、俺のが美味いって喧嘩してましたけど」
「ふふっ、頂けるお野菜はどれも美味しいんですけどね。まぁ、あのお二人の言い争いは仲の良い証拠と言いますか。お元気の証ですから」
栗原さんと河田さんは、お互いが顔を合わせると「うちの野菜のが美味い」「うちの犬の方があっちの犬より利口」と言い合っていますが、実はとても仲が良いのは周知の事実なのです。
二・三日相手の姿を見なかったら、互いのお家の前をうろうろしては様子を伺っているのです。
なんだかそういう仲というのも貴重なような気がして、私は羨ましいとも思ってしまいます。
片栗粉をまぶした鶏肉を、だし汁・醤油・みりん・お酒を入れた鍋の中に入れ、葉子さんが何のお料理になるのか夢を膨らませていると――
「こんにちは。良い匂いですね」
「日下部さん、こんにちは」
小型の植物図鑑を小脇に抱えた日下部修治さんが「散歩帰りにこっちを通ったら良い匂いがしてきて、釣られてきました」と、穏やかに頬を緩ませました。
彼は奥様を亡くし、三年前にこの村にやって来ました。
今は栗原さんのお宅の離れに住んでいます。
お散歩が好きな日下部さんとは、時々私もご一緒することもあるんですよ。
「今日はリンドウが咲いていました。あっちの桜の木がある丘にはコスモスが群生していて綺麗でしたよ」
窓に近い席に腰を下ろした日下部さんは、デジカメをテーブルに置いてからお水の入ったグラスに口をつけます。
「おにぎり定食で、具はそうだなぁ。鮭でお願いします」
デジカメの液晶画面に視線を落としながら
「これは良い具合に撮れたんですよ」
「ほら、コスモスと空のコントラストが綺麗でしょ」
と嬉しそうに葉子さんに見せています。
葉子さんも「わぁ」「ピンクと水色の組み合わせが綺麗」「こんな趣味があるのも素敵」と終始目が垂れ下がっています。
私は、そんな和やかなお二人の声を聞きながら鍋にかぶと椎茸を入れ、鮭を網に乗せて焼きます。
パチッ パチパチッ
皮が弾ける音と芳ばしい香り。さつま芋もあるので、こちらは天ぷらにしましょうか。
衣をつけて油でカラリと、中はほくほくに揚げていきます。
敷紙に乗せて、お塩を添えましょう。
ほら、さっきのお鍋から、お出汁の良い香りがしてきましたよ。
「はい、どうぞ。本日のおにぎり定食は、治部煮とさつま芋の天ぷら、お味噌汁の具はお豆腐とわかめです。鮭のおにぎりもどうぞ」
とろりとしたお出汁がよく染みた治部煮の具は、かぶと鶏肉、肉厚の椎茸です。
温かいお茶もお出しして、私と葉子さんはキッチンに戻りました。
「ハルさんは休んでてください。洗い物は私がしますから」
「ありがとうございます」
葉子さんが袖を捲り上げてスポンジに洗剤を垂らすのを横目に、私は窓辺に腰かけ、すっかり太陽が昇った雨上がりのしっとりとした風を胸に吸い込みました。
リン
日下部さんが座る席の窓に吊るした南部鉄の風鈴が、そよ風に音を奏でています。
雨上がり。
娘を最後に見送ったあの日も、雨上がりの朝でした。
「今日、傘要らないかなぁ。ねぇ、お父さん天気予報どう?」
「もう降らないって言ってたから大丈夫だろう。ほら、遅刻するぞ」
居間でスーツに着替えていた夫も、いつものように玄関まで見送りに出てきました。
「そっか。じゃ、行ってきます」
「行ってらっしゃい、気を付けてね」
「お母さん、帰ったらクッキー作ろうね」
「良いわよ、材料もあるし」
「じゃーね」
記憶にある娘の笑顔は、陽光に照らされて、眩しくて、眩しくて。思い出すだけで、胸が張り裂けそうになる。
あの日、もっと早くに帰っていれば良かった。
買い物は、娘が帰ってから一緒に行けばよかったんじゃないか。
後悔は尽きなくて。
大きな水溜りの上を、黄色い蝶がひらり、ひらり、と楽し気に舞っています。
さわさわと葉擦れの音が耳をくすぐる。
レモンイエローの陽光が水溜りに注ぎ、白く反射しています。
私の人生を大きく変えたあの災害が起こった時、私は買い物に出ていました。
娘は学校から帰っている途中で、どれほど怖かったでしょう。
それでもようやく辿り着いた家。
きっと私がいると思って帰ったのに――家には誰もいなかった。
それで終わりだと、誰もが思っていたのです。
なのに、本当の恐怖はそれからでした。
娘はたったひとり、自宅で命を落としました。
仕事先にいた夫も、そのまま帰らぬ人となりました。
どれだけ待っても、泥に塗れて探し回っても、遺体すら帰って来なかった。
まだまだ一緒に行きたいところ、話したいこと、見たい景色があったのです。
子供の成長、夫と共に老いていく私。
ずっとずっと、家族と歩む道は果てしなく続いていて、三人で手を繋いで歩いて行けると思っていた、あの頃。
なのに、なのに。
私ひとりが、ある日突然、この世界に取り残されてしまった。
当たり前に帰って来ると思っていた。
当たり前に夕方になって、夜になって、三人で食卓を囲むものだと。
そしてあの日、食事の後には九歳になる娘の誕生日ケーキに蝋燭を立てて――。
「ハルさん」
「え――、あ、はい。ごめんなさい、気付かなくて」
いつのまにかお会計を済ませていた日下部さんが、カウンター越しに「ちょっと、散歩に行きませんか」と玄関を指しました。
「でもまだお店が……それにお散歩は朝にも行きましたし――」
「大丈夫ですよぉ、私がちゃんといますから。ちょっとくらい良いじゃ無いですか。日下部さん、よろしくお願いします」
葉子さんが日下部さんに丁寧に頭を下げます。
あぁ、なんという事でしょう。お客様に気を使わせてしまうなんて。
「ほら、行きましょう。何か羽織るものがあった方が良いかな」
日下部さんが言うと「はい、ハルさん」と、すかさず葉子さんが私のカーディガンを肩に掛けてくださいました。
「ありがとうございます。じゃあ、少しだけ。すぐに戻りますから」
「ごゆっくりー」とにこやかに送り出してくれた葉子さんに手を振って、不思議そうに私たちを見上げるぽんすけにも見送られながら店を出ました。
「ハルさん、足元気を付けてください。水溜りがありますから」
「ありがとうございます」
田んぼの中を通る畦道の途中、土のくぼみに溜まった大きな水溜り。
日下部さんの手を取って、スカートの裾を片手で持ち上げながら歩幅を大きくして跨ぎます。
「昨日の雨が嘘みたいに晴れてきましたね。長靴を履いて来ても良かったかもしれません」
「長靴ですか?」
私達を中心に八方に広がる田園風景。
うんと両手を空にかざして背筋を伸ばして。
空を仰げば、薄く透けるような雲がぽつぽつとだけ残った青空に、飛行機が一本の筋状の雲をすぅっと引いていました。
「娘が小さい時。幼稚園に行く道すがら、水溜りを見付けると嬉しそうに入ってたなぁって思い出して。あんまり楽しくて、ばしゃばしゃと足踏みするものですから、長靴の中にまで水が入っちゃって。でもそれが楽しくて、嬉しそうに私を見上げるんです。お母さんもやってみたら?って」
「へぇ。ハルさんも一緒になってやるんですか?」
「最初は躊躇ったんですけど、子供に手を引かれて恐る恐るやってね。一度やったらもう勢いが付いちゃって、ふたりでばしゃばしゃやってました。そしたら、子供がふと足を止めて慌てて水溜りから出たんです。何かなぁって思ったら――」
何となく振り返って、連なる山々に視線を向けた私は、思わず子供のように「あっ」と声を上げて、隣にいる日下部さんの背中をとん、と叩いてしまいました。
「見てください、虹です」
「え?わっ、本当だ」
瑞々しい風がそよぐ午後。
私の指さす先には、山から山へ掛かる大きな虹の橋が架かっていました。
「娘が慌てて水溜りから出たのは、そこに虹が映っていたからなんです」
私の足元にある水溜りにあの虹が映る事はありません。
でもこうして見ていると、今も遠い記憶のなかにある、あの日、幼い娘と見た虹が水溜りに浮かんでいるような。
そんな気がしてしまいます。
「ハルさん」
日下部さんの声に、視線を水溜りから離して顔を上げました。
その手には綺麗に折り畳まれたハンカチが。
「良かったらどうぞ」
ハッとして右手の甲で頬を拭うと涙が。
「す、すみません。気付かなくて、私……」
日下部さんからハンカチをお借りして涙を拭いているあいだ、彼は虹を見上げ、眩しそうに目を細めていました。
「ハルさんは、もう少し心の力を抜いても良いと思います」
「心の力?」
山の方から田んぼの上を駆け抜けて来た土と葉っぱの青々とした風が、日下部さんの白髪交じりのグレーの髪をさらりと持ち上げました。
「ハルさんは穏やかに、ゆったりと生きているように見えて、実は心の中は僕たちには見えない何かに縛られているような気がします」
「縛られている……」
まだ結婚する前。夫に言われた言葉が、耳元をかすめたそよ風に蘇ります。
『君が今いる場所が全てじゃない。君が常識だと思っている事が、必ずしもそうとは限らない。君は身動きがとれないと思っているかもしれないが、君を縛り付けているのは他の誰でもない、君自身だ』
当時はまだ友人のひとりだった夫が言ってくれたこと。
私を縛り付けているのは他の誰でもない、私自身。
「僕はいつもハルさんの穏やかな雰囲気や人柄に癒されています。ひとりで鬱々としてしまう事があっても、食堂に行けば心がすっと軽くなる。だから――」
日下部さんは虹を背にして、私をまっすぐに見て。
ふっと、表情を緩めました。
「ハルさんも、元気が無い時は無理に笑わなくて良いんです。話して楽になるなら話してくれたら良いんです。さっきの娘さんの話も、僕はとても嬉しかった。涙を流すのも恥ずかしい事じゃありません。悲しい時には泣いて、楽しい時には笑って。それが人間の感情なんですから。人は泣くことで辛い感情を昇華するんです。時間だけでは解決できない。抱いた感情を噛みしめながらでしか、人は自分の心と向き合えない。そうすればまた一歩前に進める。だから申し訳なく思う必要も無いんです」
どこからかやってきたスズメが二羽、私と日下部さんの間に降り立って、不思議そうにくりくりの瞳で首を傾げて見上げています。
「娘さんの話をして無意識に涙を流したハルさんは、それだけ娘さんを想っているという事です。誰かを想う涙が恥ずかしいなんて、絶対に無いんですよ」
ふいに日下部さんが「あっ」と声を漏らしました。
仄かに甘くて、優しい香り。
「金木犀の香りだ」
日下部さんは少し上を向いて目を閉じます。
気持ちよさそうに、香りを全身に感じるように。
金木犀は日下部さんご夫婦にとって大切な想い出だと教えて頂いた事があります。
亡くなった奥様との懐かしい記憶に想いを馳せているのでしょう。
「やっぱりここに引っ越して良かったなぁ」
口角を少し上げて空に向かって噛みしめる日下部さんの胸元には、奥様の写真が入った雫型のロケットペンダントが銀色に光っていました。
「日下部さん、ありがとうございます」
「いえ。お互い様ですから」
にっこりと微笑んだ日下部さんの向こうに架かる虹の橋はまだくっきりとした形をしていて。
私の大切な人たちも、空の上からこの虹を見下ろしているのかしら、と想うと自然に笑みが浮かんで。
私も、ここに来て良かった。
心に浮かんだ言葉は私のなかに温もりとなって広がりました。
虹の向こうにいる私の愛する人たちは、どんな表情でこの景色を見ているでしょう。
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