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白い月と猫とうたた寝〜前編〜
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風に舞う黄金色の木の葉が、乾いた秋の香も一緒に巻き上げます。
モカ色のショールを肩にきゅっと巻き付け、頬に付いた髪を避けて。
歩幅を広く、一歩一歩。
ザクッ ザクッと落ち葉を踏むたびに鳴るのも風情がありますね。
駅の裏手にある林道にお散歩に出ていました。
鳥の囀り、羽音、さわさわと森がざわめく葉擦れ、樹々の間から漏れる白い陽光、濃厚な緑と土の匂い。
朝の寒さで縮こまっていた身体中の筋肉も、どこかぼんやりしていた頭も、すっきりとして気持ちが良いのです。
ここ最近、私のお散歩コースに仲間入りした場所です。
さて。ゆるやかな長い坂道を下れば、食堂のある通りに出ます。
霜が降りた田舎の村は、繊細な光を纏ってなんとも綺麗。
村を囲む山々は秋色に染まり、私の頭上も朝陽に照らされ、葉を透かして黄金色の柔らかな光となって降り注ぎます。
所々に丸く虫食われた葉っぱが枝先で踊るように揺れるのも、この時期ならでは。
夏と違った、しっとりとセンチメンタルな季節も良いものです。
どんぐりとか落ちてるかしら。
ふんふん、と懐かしの歌謡曲を鼻歌混じりにしゃがみこみ、手で葉っぱを軽く払いながら探していると、地面を這う私の視界に小さな可愛らしいピンク色のスニーカーが。
マジックテープの先の、にこにこ顔のお星さまと目が合いました。
「あら?」
顔を上げると、そこにはむっちりほっぺを桜色に染めた小さな女の子が。
中央にペガサスのイラストがプリントされた白いトレーナーと、デニム調の長ズボンを履いていました。
「こんにちは」
まんまるの瞳で見つめられていたので挨拶してみると、女の子は羽二重餅のような柔らかな頬を小さな人差し指で掻きながら、少し恥ずかしそうに唇をすぼめて「こんにちは」と囁きます。
「いくつ?」
尋ねると、女の子はぎこちない動きで指を立てたり折ったり。
二歳……?それとも三歳?あら、今度は手のひらをパーにして、五歳かしら。
ようやく納得した堂々たる表情で、顔の前に立てた指は四本。
「そっかぁ、四歳なのね。教えてくれてありがとう。こんな所で何してるの?お母さんは?」
「おらん」
「おらん?」
女の子はこくんと頷き
「おらんくなってん。でも、しょうがないねん」
さっきの挨拶よりはっきりとした口調の立派な関西弁が。
はぐれてしまったのでしょうか。
「それは困ったわねぇ。確かにはぐれちゃったものは仕方ないけれど……。とりあえずおばさんと駅の方に出ようか。こっちは林道に入ってしまうから迷子になっちゃうし」
もみじ饅頭のような愛らしい形のもちもちの手を握り、さっきよりもずっと小さな歩幅で坂道を下りました。
この年頃の吸いつくようなしっとりとしたおてては、無条件に可愛いものです。
地面に石の出っ張りを見付けて女の子が転んでしまわないようしっかり手を握り直すと、女の子も私と繋ぐ手にきゅっと力を込めました。
金色に染まった樹々のトンネルの坂道を下り、二手に分かれた道の左に駅があります。
石階段を一歩ずつ上り、駅舎の中に入りました。
とりあえず券売機の前で辺りを見渡しましたが、お客さんはいない様子。
「ちょっと駅員さんに聞いてみようか。ここの駅員さん、おばさんのお友達なの。とっても良い人よ」
女の子は唇をきゅっと噛みしめ、不安そうに頷きました。早くお母さんを見付けないといけません。
改札の隣にある駅員室の窓をノック。
木製の事務机に備え付けられたパイプ椅子に、木ノ下拓海さんの後ろ姿がありました。
「ハルさん。おはようございま――あぁっ、沙世ちゃん!三島さん、沙世ちゃんいましたよ」
えぇっ、と木ノ下さんの背で見えなかった椅子に座っていた人が声を上げました。
でもその声は女性ではなく。
「おとうさぁん」
さっきまでの不安そうな表情は一瞬で吹き飛び、笑顔も声も弾けました。
「あら、お父さんと来てたのね」
てっきりお母さんだと思い込んで探していました。もっとちゃんと話を聞くべきでしたね。
「沙世っ!すみません、娘を保護して頂きありがとうございます。あぁ、良かった。駅員さんも、ありがとうございました」
「いえ、僕は何も」
お父さんは、四十代くらいでしょうか。
グレーのアーガイル柄のセーターにベージュのチノパン姿。
全体的にふっくらとしていて、少し気弱そうな雰囲気と、とても優しそうな雰囲気を兼ね備えた男性です。
抱き上げられた沙世ちゃんは、小さな両手をお父さんの背中に回して力いっぱい抱き着いています。
「電車を降りてから、僕がどうしてもお手洗いに行きたくなって……待ってもらってる間にいなくなっちゃったんです。駄目ですね、ほんと。沙世ごめんなぁ、父さんもう沙世の手離さへんからな」
「お父さんはすーぐ迷子になるんやから、気を付けなさい」
「えぇっ、父さんトイレに行くから待っててなって……いや、せやなぁ。ごめん、気つけるわ」
再開を果たした親子に、私も木ノ下さんもほっとひと息。
「じゃあ僕はこれで」
一礼する木ノ下さんに、三島さんはもう一度深く頭を下げました。
「観光ですか?」
観光地といえば、この山を越えた向こうにありますが、いつからかこの村にも時々観光の方がいらっしゃるようになりました。
と言うのも、三年前にここで撮ったゲンさんの写真に感動したという女優さんがその事をテレビで話し。
その話題はSNSを通じで拡散され、ゲンさんは写真好きな方や自然が好きな方の世界ではちょっとした有名人になっているのです。
それでも特にこれと言って遊ぶ場所も無いので、本当にぽつりぽつりといらっしゃる程度なのですけれど。
「まぁ、観光と言うか。昔、祖母がこの近くに住んでたんですよ。もう家は無いんですけど、夏休みに来た記憶が色濃く残ってて、懐かしいなぁなんて。目的も無いんで、適当にくるっと見て回ろうかと思ってます」
すると沙世ちゃんが三島さんのズボンを掴み「お父さん」と拗ねたように見上げます。
「喉乾いた」
「水筒あるよ。ほら、お茶」
三島さんが肩に掛けていた黄色い子供用の水筒の蓋を開けると、それを両手で抱え込み、空を仰ぐように、ぐいと傾けます。
「この辺りってコンビニは無いですか?お昼を買ってくるの忘れちゃって」
「村に行けば小さな雑貨店があってパンやおにぎりなんかは買えますよ。それかもう少し量が食べたいという事であれば、うちが食堂をやっていますから、良かったらいらしてください。村に続くあの道をまっすぐ進めば左手にありますから。雑種のわんちゃんが店の前にいるのですぐにわかると思います」
沙世ちゃんは「わんちゃん!沙世そこがいいっ」とぐいぐい三島さんのズボンを引っ張ります。
「わかったわかった。じゃあ少し見て回って、お昼頃に伺います。では」
「えぇ。沙世ちゃん、またね。楽しんできてね」
「おばちゃん、またね。駅員さんもまたねぇ」
沙世ちゃんは駅員室の窓の前まで走って行くと、届かない窓に向かってぴょんぴょんと飛び跳ねて。
その度に二つに結んだ毛量の少ない艶々の髪がうさぎみたいに跳ねています。
「またね、沙世ちゃん。そうだ、ちょっと待ってね。はい、これあげる」
木ノ下さんは駅員室に戻ると、事務机の引き出しから何かを取り出し、沙世ちゃんの小さな手のひらに乗せました。
「わぁ、ラムネ。お父さん、ラムネ貰った。イチゴの味~」
「すみません、ありがとうございます。良かったなぁ、沙世。良い人に出会えて」
リスやクマのアニメ調のイラストが描かれたラムネの小袋を握り締め、沙世ちゃんと三島さんは駅を出て左側――田んぼ沿いにぐるっとなだらかなカーブとなった道へ歩いて行きました。
あの先は遊具は無いけれど走り回れるくらいの広場があり、イチョウやコスモス、金木犀もある、とても綺麗な場所です。
ふたりの背中を見送り、私も帰路に着きました。
「ぽんすけ、ただいま。今日はお外でご飯食べてたの?ふふっ、良い天気で気持ちが良いものねぇ。お昼頃にお客様がいらっしゃるかもしれないから、よろしくね」
ぱたんぱたん、と尻尾を地面に叩きつけてお座りするぽんすけを撫でてから、木製のドアを押し開けます。
カラン コロン
三年前、この食堂の奥の部屋から見つかったベルが軽やかで繊細な音を奏でます。
これはここで昔喫茶店をしていた女性が置いて行ったものなのだそう。
村の方にとっても大切な想い出になっているようで、こうして今も使わせて頂いているのです。
この音が鳴ると、誰かが来てくださった証。私の心が躍る瞬間でもあります。
「ハルさん、おはようございます」
カウンターに所狭しと並べられたネギやじゃがいも、玉ねぎやゴボウにレンコン。
それを持って来てくださったのは、佐野雅紀さんです。
「お久し振りです、お邪魔してます」
「まぁ、美香さん。お久し振りです。お元気そうで良かったです」
長かった黒髪は、会わなかった間にばっさりとショートカットまで短くなっていました。
目鼻立ちのはっきりした顔立ちの美香さんは、ショートカットになると顔周りがすっきりとして美人が際立ちます。
窓からの光が後光みたいで、なんだか見惚れてしまいそうです。
「あら、雅紀さんは相変らずですねぇ。ふふっ、仲が良いのは素晴らしい事です」
野菜を運んできた箱を畳みながら、どこかぼーっと美香さんの方をに気を取られている雅紀さん。
「え、いやいや、あぁ、まぁ僕は今も美香さんが大好きですけど、これは別に見惚れてたとかそうじゃなくて、えっと――」
「雅紀君、焦りすぎ。ハルさん、あっちです。雅紀君が見てたのは」
細くしなやかな美香さんの人差し指は、窓の向こうを指しています。
村の方へと続く道の田んぼ沿いにいるのは葉子さん――と、その隣の茂みにしゃがみこんでいた少女がすっくと立ちあがって、嬉しそうにクローバーを掲げています。
さっき出会った四歳の沙世ちゃんよりもずっとお姉さん。
背中までの長い髪を耳に掛け、健康的に焼けた肌に、切れ長の涼し気な目の大人っぽい顔立ち。
ほっそりとした長い手足がターコイズブルーの綺麗なワンピースからすらりと伸びています。
背は高くとも幼さとあどけなさも残るその子は、小学校の三・四年生くらい、といったところでしょうか。
この村には小さな子供がいませんから、夏休みでもないこの時期に、一日でふたりも出会えるなんて珍しいものです。
私が窓から身を乗り出して見ている事に気付いた葉子さんが、頭の上で片手を振り、女の子と手を繋いで戻って来ました。
「ハルさん、おかえりなさい。すみません、気付かなくて」
「いえ。それよりも葉子さん、その子は?」
葉子さんの隣で少し緊張した面持ちの女の子は、クローバーの茎を摘まむようにして胸に当てながら、恐る恐る口を開きました。
「奈子です。佐野奈子、です……」
「奈子ちゃんね。あれ、でも佐野って」
え?と美香さんと雅紀さんを交互に見て、でもこの子の年齢を考えてもそんな訳が無いという事実に頭が混乱してしまいます。
どういうことでしょう?
でも、奈子ちゃんの前でこういうのを詮索するのは良くない気がして
「私は桜井ハルって言います。四つ葉のクローバー見つけたのねぇ」
奈子ちゃんは黙ったまま頷きます。
緊張しながらも、そっとクローバーを差し出してちょっぴりはにかんで「葉子さんが一緒に探してくれたの」と言います。
「そっかあ、良かったわねぇ。そうだ奈子ちゃん、喉乾いてない?オレンジジュースがあるんだけど、どうかな」
「飲みたい、です」
「ふふっ、ここでは敬語は使わなくて良いわよ。楽にしててね、ジュース持って来るから」
美香さんの隣の椅子を引いて奈子ちゃんを座らせ、私は大人用に珈琲を。
葉子さんは奈子ちゃんにジュースを用意しました。
奈子ちゃんと佐野さんご夫婦の関係は聞かないまま、のんびりとした時間が流れていきました。
ぽんすけは店先で横倒れ状態で、ぐでーんと伸びています。
年々ぽんすけは無防備になっていて、見る度に笑いそうになってしまいます。
外で仰向けになって寝ている時は驚きました。
もうここに敵など無い、と安心しきっているかのよう。
「雅紀さんはこの後はまだお仕事があるんですか?」
キッチン越しに訊ねると「いえ、今日はこれで終わりです」と、手焼きの醤油煎餅を音を立ててかじりました。
「両親がまだまだ元気で農業も現役なんですけど、たまには家族三人で出掛けて来いって言ってくれたんです。最初は遊園地とかも考えたんですけど、奈子ちゃんがここに来たいって言って」
「あら、そうなの?おばさんは嬉しいけど、遊園地の方が楽しかったんじゃないかしら。ごめんね、本当にここ何も無いのよ。期待外れだったんじゃないかしら」
すると奈子ちゃんは首を横に振りました。
「ここに野菜を届けて帰って来る雅紀君の話を聞いてるうちに、行ってみたくなったらしいんです。今日のお昼はハルさんのご飯を食べたとか、村の人が来ていて賑やかだったとか、ぽんすけが可愛かったとか」
美香さんが「そうなのよね」と奈子ちゃんに微笑むと、うんうん、と頷いて――私と葉子さんのいるキッチン周りに視線を巡らせました。
「お昼頃にお客さんが来ると思うの。四歳の女の子よ」
「四歳……」
奈子ちゃんは何かを思うように呟くと「私、その子と仲良くなれるかなぁ」と、声を大きくして言いました。
「きっとなれるわよ。関西弁を喋る女の子でね。お昼ごはんを食べにお父さんと来る予定だから」
「そっかぁ。お父さんか。ねぇ、おばさん」
「ん?」
「おやつの時間に、その子と一緒にクッキー作りたい」
雅紀さんも美香さんも「クッキー?」と突拍子の無い奈子ちゃんの希望に不思議そうにしています。
「良いわねぇ。クッキーなんていつぶりかしら。じゃあ、その時はおばさんもお手伝いするわね」
「私、材料買ってきますね。クッキーならココアパウダーとかもあった方が良いですよね。村のお店にちょこっとだけ製菓コーナーがあるので行ってきますよ」
葉子さんが青色のカーディガンに袖を通し、鞄に財布を入れていると――
「猫の型ってある?」
「猫?」
玄関を出ようとした葉子さんが聞き返します。
ぽんすけはその声に気付いて起き上がり、葉子さんの後ろで首を傾げています。
「猫のクッキーが作りたい」
「猫は無いわねぇ。葉子さん、猫の型も見てきて頂けます?」
葉子さんは顔の前で指で丸を作り「了解です」と満面の笑みで店を出て行きました。
午後十一時過ぎ。
どんどん気温が上がって来て、陽射しも十月も終わりにしては強くなってきました。
キッチンの窓から外に目を向けると、葉子さんらしき人が自転車に乗ってこちらに走ってくるのが見えます。
「ハルさんのお料理する姿って絵になりますよね。ね、奈子ちゃん。良い匂いだね」
「うん」
奈子ちゃんは私の方を見たまま短く答えます。
今日のおにぎり定食はハンバーグにしましょう。
大人は和風、子供はトマトソースの煮込みハンバーグです。
まずは子供用。
小判型のハンバーグをフライパンで焼き、火が通りきる前に一度取り出しましょう。
バターでしめじを炒め、トマト缶を入れます。
コンソメ、ケチャップとお砂糖も入れたらハンバーグを煮込んでいきます。
大人は大根おろしと紫蘇を乗せた和風ハンバーグにするので、また後で焼くことにします。
あら、ふっくらハンバーグの焼けた匂いと、トマトソースでぐつぐつと煮込む匂いに、ちょうど買い物から帰った葉子さんのお腹が鳴りましたよ。
「猫の型、見つかったんですね。あら、可愛い」
「ね、良いですよね。猫がお昼寝してる形で。ほら、奈子ちゃんも見て」
葉子さんが袋から出したクッキーの型に、奈子ちゃんも嬉しそう。
椅子に座って嬉しそうに「葉子さん、ありがとう」と足をぱたつかせています。
お次はポテトサラダです。
じゃがいもは皮ごと茹でて潰して。キュウリ、ハム、コーンと混ぜ、マヨネーズと少しだけ牛乳、お塩、レモン汁も加えてさっぱりと。
大人用は黒コショウを仕上げに。
彩に乾燥パセリをかけるのも良いですね。
「ハンバーグ美味しいっ。ねぇ、奈子ちゃん」
「うん。美味しい」
満面の笑みでハンバーグを頬張る沙世ちゃんと、その隣で目を泳がせながらはにかむ奈子ちゃん。
子供同士では人見知りをしないらしい沙世ちゃんは、躊躇うことなく奈子ちゃんに話しかけています。
あらあら、トマトソースの付いた手で口元を触ってしまい、沙世ちゃんの唇の端からほっぺが真っ赤。
「これ、良かったら使ってください」
「すみません、ありがとうございます。ほら沙世。こっち向いて」
新しいおしぼりを受け取った三島さんは、沙世ちゃんの顔をそっと拭き取ります。
「今日のランチも本当に美味しい。おにぎりの梅干しも、ハルさんが漬けたのは食べやすくて大好き。ずっと恋しかったんです、ここのお料理。久しぶりに来たらまた通いたくなっちゃう」
向かいの席でポテトサラダを食べていた雅紀さんも
「また三人で来ようよ。何なら配達の時に着いてきても良いしさ。奈子ちゃんが学校が休みの時に来よう。ね、良いよね」
と美香さんの隣にいる奈子ちゃんに声を掛けると、「嬉しい」と頷いてぱくぱくとハンバーグを食べます。
でもなんだか表情がぎこちないというか、どこかよそよそしく、体中の筋肉がきゅっと縮こまっているような――奈子ちゃんとご挨拶をしてから何となく感じるその違和感は気のせいでしょうか。
その違和感は皆さんが食事を終えるまで消えず、美味しく食べてくださる風景をキッチンから楽しむという私の大好きな時間は、一見楽しそうに見えながらも、少しの不安にも似た感情を抱きながら過ぎて行ったのでした。
モカ色のショールを肩にきゅっと巻き付け、頬に付いた髪を避けて。
歩幅を広く、一歩一歩。
ザクッ ザクッと落ち葉を踏むたびに鳴るのも風情がありますね。
駅の裏手にある林道にお散歩に出ていました。
鳥の囀り、羽音、さわさわと森がざわめく葉擦れ、樹々の間から漏れる白い陽光、濃厚な緑と土の匂い。
朝の寒さで縮こまっていた身体中の筋肉も、どこかぼんやりしていた頭も、すっきりとして気持ちが良いのです。
ここ最近、私のお散歩コースに仲間入りした場所です。
さて。ゆるやかな長い坂道を下れば、食堂のある通りに出ます。
霜が降りた田舎の村は、繊細な光を纏ってなんとも綺麗。
村を囲む山々は秋色に染まり、私の頭上も朝陽に照らされ、葉を透かして黄金色の柔らかな光となって降り注ぎます。
所々に丸く虫食われた葉っぱが枝先で踊るように揺れるのも、この時期ならでは。
夏と違った、しっとりとセンチメンタルな季節も良いものです。
どんぐりとか落ちてるかしら。
ふんふん、と懐かしの歌謡曲を鼻歌混じりにしゃがみこみ、手で葉っぱを軽く払いながら探していると、地面を這う私の視界に小さな可愛らしいピンク色のスニーカーが。
マジックテープの先の、にこにこ顔のお星さまと目が合いました。
「あら?」
顔を上げると、そこにはむっちりほっぺを桜色に染めた小さな女の子が。
中央にペガサスのイラストがプリントされた白いトレーナーと、デニム調の長ズボンを履いていました。
「こんにちは」
まんまるの瞳で見つめられていたので挨拶してみると、女の子は羽二重餅のような柔らかな頬を小さな人差し指で掻きながら、少し恥ずかしそうに唇をすぼめて「こんにちは」と囁きます。
「いくつ?」
尋ねると、女の子はぎこちない動きで指を立てたり折ったり。
二歳……?それとも三歳?あら、今度は手のひらをパーにして、五歳かしら。
ようやく納得した堂々たる表情で、顔の前に立てた指は四本。
「そっかぁ、四歳なのね。教えてくれてありがとう。こんな所で何してるの?お母さんは?」
「おらん」
「おらん?」
女の子はこくんと頷き
「おらんくなってん。でも、しょうがないねん」
さっきの挨拶よりはっきりとした口調の立派な関西弁が。
はぐれてしまったのでしょうか。
「それは困ったわねぇ。確かにはぐれちゃったものは仕方ないけれど……。とりあえずおばさんと駅の方に出ようか。こっちは林道に入ってしまうから迷子になっちゃうし」
もみじ饅頭のような愛らしい形のもちもちの手を握り、さっきよりもずっと小さな歩幅で坂道を下りました。
この年頃の吸いつくようなしっとりとしたおてては、無条件に可愛いものです。
地面に石の出っ張りを見付けて女の子が転んでしまわないようしっかり手を握り直すと、女の子も私と繋ぐ手にきゅっと力を込めました。
金色に染まった樹々のトンネルの坂道を下り、二手に分かれた道の左に駅があります。
石階段を一歩ずつ上り、駅舎の中に入りました。
とりあえず券売機の前で辺りを見渡しましたが、お客さんはいない様子。
「ちょっと駅員さんに聞いてみようか。ここの駅員さん、おばさんのお友達なの。とっても良い人よ」
女の子は唇をきゅっと噛みしめ、不安そうに頷きました。早くお母さんを見付けないといけません。
改札の隣にある駅員室の窓をノック。
木製の事務机に備え付けられたパイプ椅子に、木ノ下拓海さんの後ろ姿がありました。
「ハルさん。おはようございま――あぁっ、沙世ちゃん!三島さん、沙世ちゃんいましたよ」
えぇっ、と木ノ下さんの背で見えなかった椅子に座っていた人が声を上げました。
でもその声は女性ではなく。
「おとうさぁん」
さっきまでの不安そうな表情は一瞬で吹き飛び、笑顔も声も弾けました。
「あら、お父さんと来てたのね」
てっきりお母さんだと思い込んで探していました。もっとちゃんと話を聞くべきでしたね。
「沙世っ!すみません、娘を保護して頂きありがとうございます。あぁ、良かった。駅員さんも、ありがとうございました」
「いえ、僕は何も」
お父さんは、四十代くらいでしょうか。
グレーのアーガイル柄のセーターにベージュのチノパン姿。
全体的にふっくらとしていて、少し気弱そうな雰囲気と、とても優しそうな雰囲気を兼ね備えた男性です。
抱き上げられた沙世ちゃんは、小さな両手をお父さんの背中に回して力いっぱい抱き着いています。
「電車を降りてから、僕がどうしてもお手洗いに行きたくなって……待ってもらってる間にいなくなっちゃったんです。駄目ですね、ほんと。沙世ごめんなぁ、父さんもう沙世の手離さへんからな」
「お父さんはすーぐ迷子になるんやから、気を付けなさい」
「えぇっ、父さんトイレに行くから待っててなって……いや、せやなぁ。ごめん、気つけるわ」
再開を果たした親子に、私も木ノ下さんもほっとひと息。
「じゃあ僕はこれで」
一礼する木ノ下さんに、三島さんはもう一度深く頭を下げました。
「観光ですか?」
観光地といえば、この山を越えた向こうにありますが、いつからかこの村にも時々観光の方がいらっしゃるようになりました。
と言うのも、三年前にここで撮ったゲンさんの写真に感動したという女優さんがその事をテレビで話し。
その話題はSNSを通じで拡散され、ゲンさんは写真好きな方や自然が好きな方の世界ではちょっとした有名人になっているのです。
それでも特にこれと言って遊ぶ場所も無いので、本当にぽつりぽつりといらっしゃる程度なのですけれど。
「まぁ、観光と言うか。昔、祖母がこの近くに住んでたんですよ。もう家は無いんですけど、夏休みに来た記憶が色濃く残ってて、懐かしいなぁなんて。目的も無いんで、適当にくるっと見て回ろうかと思ってます」
すると沙世ちゃんが三島さんのズボンを掴み「お父さん」と拗ねたように見上げます。
「喉乾いた」
「水筒あるよ。ほら、お茶」
三島さんが肩に掛けていた黄色い子供用の水筒の蓋を開けると、それを両手で抱え込み、空を仰ぐように、ぐいと傾けます。
「この辺りってコンビニは無いですか?お昼を買ってくるの忘れちゃって」
「村に行けば小さな雑貨店があってパンやおにぎりなんかは買えますよ。それかもう少し量が食べたいという事であれば、うちが食堂をやっていますから、良かったらいらしてください。村に続くあの道をまっすぐ進めば左手にありますから。雑種のわんちゃんが店の前にいるのですぐにわかると思います」
沙世ちゃんは「わんちゃん!沙世そこがいいっ」とぐいぐい三島さんのズボンを引っ張ります。
「わかったわかった。じゃあ少し見て回って、お昼頃に伺います。では」
「えぇ。沙世ちゃん、またね。楽しんできてね」
「おばちゃん、またね。駅員さんもまたねぇ」
沙世ちゃんは駅員室の窓の前まで走って行くと、届かない窓に向かってぴょんぴょんと飛び跳ねて。
その度に二つに結んだ毛量の少ない艶々の髪がうさぎみたいに跳ねています。
「またね、沙世ちゃん。そうだ、ちょっと待ってね。はい、これあげる」
木ノ下さんは駅員室に戻ると、事務机の引き出しから何かを取り出し、沙世ちゃんの小さな手のひらに乗せました。
「わぁ、ラムネ。お父さん、ラムネ貰った。イチゴの味~」
「すみません、ありがとうございます。良かったなぁ、沙世。良い人に出会えて」
リスやクマのアニメ調のイラストが描かれたラムネの小袋を握り締め、沙世ちゃんと三島さんは駅を出て左側――田んぼ沿いにぐるっとなだらかなカーブとなった道へ歩いて行きました。
あの先は遊具は無いけれど走り回れるくらいの広場があり、イチョウやコスモス、金木犀もある、とても綺麗な場所です。
ふたりの背中を見送り、私も帰路に着きました。
「ぽんすけ、ただいま。今日はお外でご飯食べてたの?ふふっ、良い天気で気持ちが良いものねぇ。お昼頃にお客様がいらっしゃるかもしれないから、よろしくね」
ぱたんぱたん、と尻尾を地面に叩きつけてお座りするぽんすけを撫でてから、木製のドアを押し開けます。
カラン コロン
三年前、この食堂の奥の部屋から見つかったベルが軽やかで繊細な音を奏でます。
これはここで昔喫茶店をしていた女性が置いて行ったものなのだそう。
村の方にとっても大切な想い出になっているようで、こうして今も使わせて頂いているのです。
この音が鳴ると、誰かが来てくださった証。私の心が躍る瞬間でもあります。
「ハルさん、おはようございます」
カウンターに所狭しと並べられたネギやじゃがいも、玉ねぎやゴボウにレンコン。
それを持って来てくださったのは、佐野雅紀さんです。
「お久し振りです、お邪魔してます」
「まぁ、美香さん。お久し振りです。お元気そうで良かったです」
長かった黒髪は、会わなかった間にばっさりとショートカットまで短くなっていました。
目鼻立ちのはっきりした顔立ちの美香さんは、ショートカットになると顔周りがすっきりとして美人が際立ちます。
窓からの光が後光みたいで、なんだか見惚れてしまいそうです。
「あら、雅紀さんは相変らずですねぇ。ふふっ、仲が良いのは素晴らしい事です」
野菜を運んできた箱を畳みながら、どこかぼーっと美香さんの方をに気を取られている雅紀さん。
「え、いやいや、あぁ、まぁ僕は今も美香さんが大好きですけど、これは別に見惚れてたとかそうじゃなくて、えっと――」
「雅紀君、焦りすぎ。ハルさん、あっちです。雅紀君が見てたのは」
細くしなやかな美香さんの人差し指は、窓の向こうを指しています。
村の方へと続く道の田んぼ沿いにいるのは葉子さん――と、その隣の茂みにしゃがみこんでいた少女がすっくと立ちあがって、嬉しそうにクローバーを掲げています。
さっき出会った四歳の沙世ちゃんよりもずっとお姉さん。
背中までの長い髪を耳に掛け、健康的に焼けた肌に、切れ長の涼し気な目の大人っぽい顔立ち。
ほっそりとした長い手足がターコイズブルーの綺麗なワンピースからすらりと伸びています。
背は高くとも幼さとあどけなさも残るその子は、小学校の三・四年生くらい、といったところでしょうか。
この村には小さな子供がいませんから、夏休みでもないこの時期に、一日でふたりも出会えるなんて珍しいものです。
私が窓から身を乗り出して見ている事に気付いた葉子さんが、頭の上で片手を振り、女の子と手を繋いで戻って来ました。
「ハルさん、おかえりなさい。すみません、気付かなくて」
「いえ。それよりも葉子さん、その子は?」
葉子さんの隣で少し緊張した面持ちの女の子は、クローバーの茎を摘まむようにして胸に当てながら、恐る恐る口を開きました。
「奈子です。佐野奈子、です……」
「奈子ちゃんね。あれ、でも佐野って」
え?と美香さんと雅紀さんを交互に見て、でもこの子の年齢を考えてもそんな訳が無いという事実に頭が混乱してしまいます。
どういうことでしょう?
でも、奈子ちゃんの前でこういうのを詮索するのは良くない気がして
「私は桜井ハルって言います。四つ葉のクローバー見つけたのねぇ」
奈子ちゃんは黙ったまま頷きます。
緊張しながらも、そっとクローバーを差し出してちょっぴりはにかんで「葉子さんが一緒に探してくれたの」と言います。
「そっかあ、良かったわねぇ。そうだ奈子ちゃん、喉乾いてない?オレンジジュースがあるんだけど、どうかな」
「飲みたい、です」
「ふふっ、ここでは敬語は使わなくて良いわよ。楽にしててね、ジュース持って来るから」
美香さんの隣の椅子を引いて奈子ちゃんを座らせ、私は大人用に珈琲を。
葉子さんは奈子ちゃんにジュースを用意しました。
奈子ちゃんと佐野さんご夫婦の関係は聞かないまま、のんびりとした時間が流れていきました。
ぽんすけは店先で横倒れ状態で、ぐでーんと伸びています。
年々ぽんすけは無防備になっていて、見る度に笑いそうになってしまいます。
外で仰向けになって寝ている時は驚きました。
もうここに敵など無い、と安心しきっているかのよう。
「雅紀さんはこの後はまだお仕事があるんですか?」
キッチン越しに訊ねると「いえ、今日はこれで終わりです」と、手焼きの醤油煎餅を音を立ててかじりました。
「両親がまだまだ元気で農業も現役なんですけど、たまには家族三人で出掛けて来いって言ってくれたんです。最初は遊園地とかも考えたんですけど、奈子ちゃんがここに来たいって言って」
「あら、そうなの?おばさんは嬉しいけど、遊園地の方が楽しかったんじゃないかしら。ごめんね、本当にここ何も無いのよ。期待外れだったんじゃないかしら」
すると奈子ちゃんは首を横に振りました。
「ここに野菜を届けて帰って来る雅紀君の話を聞いてるうちに、行ってみたくなったらしいんです。今日のお昼はハルさんのご飯を食べたとか、村の人が来ていて賑やかだったとか、ぽんすけが可愛かったとか」
美香さんが「そうなのよね」と奈子ちゃんに微笑むと、うんうん、と頷いて――私と葉子さんのいるキッチン周りに視線を巡らせました。
「お昼頃にお客さんが来ると思うの。四歳の女の子よ」
「四歳……」
奈子ちゃんは何かを思うように呟くと「私、その子と仲良くなれるかなぁ」と、声を大きくして言いました。
「きっとなれるわよ。関西弁を喋る女の子でね。お昼ごはんを食べにお父さんと来る予定だから」
「そっかぁ。お父さんか。ねぇ、おばさん」
「ん?」
「おやつの時間に、その子と一緒にクッキー作りたい」
雅紀さんも美香さんも「クッキー?」と突拍子の無い奈子ちゃんの希望に不思議そうにしています。
「良いわねぇ。クッキーなんていつぶりかしら。じゃあ、その時はおばさんもお手伝いするわね」
「私、材料買ってきますね。クッキーならココアパウダーとかもあった方が良いですよね。村のお店にちょこっとだけ製菓コーナーがあるので行ってきますよ」
葉子さんが青色のカーディガンに袖を通し、鞄に財布を入れていると――
「猫の型ってある?」
「猫?」
玄関を出ようとした葉子さんが聞き返します。
ぽんすけはその声に気付いて起き上がり、葉子さんの後ろで首を傾げています。
「猫のクッキーが作りたい」
「猫は無いわねぇ。葉子さん、猫の型も見てきて頂けます?」
葉子さんは顔の前で指で丸を作り「了解です」と満面の笑みで店を出て行きました。
午後十一時過ぎ。
どんどん気温が上がって来て、陽射しも十月も終わりにしては強くなってきました。
キッチンの窓から外に目を向けると、葉子さんらしき人が自転車に乗ってこちらに走ってくるのが見えます。
「ハルさんのお料理する姿って絵になりますよね。ね、奈子ちゃん。良い匂いだね」
「うん」
奈子ちゃんは私の方を見たまま短く答えます。
今日のおにぎり定食はハンバーグにしましょう。
大人は和風、子供はトマトソースの煮込みハンバーグです。
まずは子供用。
小判型のハンバーグをフライパンで焼き、火が通りきる前に一度取り出しましょう。
バターでしめじを炒め、トマト缶を入れます。
コンソメ、ケチャップとお砂糖も入れたらハンバーグを煮込んでいきます。
大人は大根おろしと紫蘇を乗せた和風ハンバーグにするので、また後で焼くことにします。
あら、ふっくらハンバーグの焼けた匂いと、トマトソースでぐつぐつと煮込む匂いに、ちょうど買い物から帰った葉子さんのお腹が鳴りましたよ。
「猫の型、見つかったんですね。あら、可愛い」
「ね、良いですよね。猫がお昼寝してる形で。ほら、奈子ちゃんも見て」
葉子さんが袋から出したクッキーの型に、奈子ちゃんも嬉しそう。
椅子に座って嬉しそうに「葉子さん、ありがとう」と足をぱたつかせています。
お次はポテトサラダです。
じゃがいもは皮ごと茹でて潰して。キュウリ、ハム、コーンと混ぜ、マヨネーズと少しだけ牛乳、お塩、レモン汁も加えてさっぱりと。
大人用は黒コショウを仕上げに。
彩に乾燥パセリをかけるのも良いですね。
「ハンバーグ美味しいっ。ねぇ、奈子ちゃん」
「うん。美味しい」
満面の笑みでハンバーグを頬張る沙世ちゃんと、その隣で目を泳がせながらはにかむ奈子ちゃん。
子供同士では人見知りをしないらしい沙世ちゃんは、躊躇うことなく奈子ちゃんに話しかけています。
あらあら、トマトソースの付いた手で口元を触ってしまい、沙世ちゃんの唇の端からほっぺが真っ赤。
「これ、良かったら使ってください」
「すみません、ありがとうございます。ほら沙世。こっち向いて」
新しいおしぼりを受け取った三島さんは、沙世ちゃんの顔をそっと拭き取ります。
「今日のランチも本当に美味しい。おにぎりの梅干しも、ハルさんが漬けたのは食べやすくて大好き。ずっと恋しかったんです、ここのお料理。久しぶりに来たらまた通いたくなっちゃう」
向かいの席でポテトサラダを食べていた雅紀さんも
「また三人で来ようよ。何なら配達の時に着いてきても良いしさ。奈子ちゃんが学校が休みの時に来よう。ね、良いよね」
と美香さんの隣にいる奈子ちゃんに声を掛けると、「嬉しい」と頷いてぱくぱくとハンバーグを食べます。
でもなんだか表情がぎこちないというか、どこかよそよそしく、体中の筋肉がきゅっと縮こまっているような――奈子ちゃんとご挨拶をしてから何となく感じるその違和感は気のせいでしょうか。
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