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珈琲とかたつむりと、泡沫の赤
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「ハルさん、おはようございます。あぁ、ごめんなさい、洗濯物……寝過ごしちゃって」
二階のベランダで洗濯物を干していると、葉子さんが起きていらっしゃいました。
「大丈夫ですよ。もうすぐ終わりますから、ゆっくりしていてください。まぁまぁ、ぽんすけ。洗濯物、引っ張っちゃ駄目よ」
いま干したばかりの葉子さんのトレーナーをめがけて、あぐぅあぐぅ、と飛び跳ねるぽんすけ。
運動会のパン食い競争みたいに、何やら必死の形相に思わず吹き出してしまいます。
夢中で上を向いて飛び跳ねるものですから、眼はひん剥いて、牙はむき出し。
せっかくの愛くるしい顔が台無しです。
まぁ、これはこれで可愛いのですけれど。
その時、びょう、と吹き抜けた風が、干した洗濯物を大きくはためかせました。
「ひぃー、寒いっ。今日ゴミの日だから、各部屋のゴミ、集めてきますね。その後、珈琲淹れますから。それ、終わったら一緒に温まりましょ」
「ありがとうございます。すぐ行きますね」
両腕で身体をぎゅっと抱えて縮ませながら葉子さんが階段を降りていくのを見送って、私は残りのバスタオルを竿に干していきました。
白く、ふわふわのバスタオルが、木枯らしに大きく揺れて。
ベランダの手すりに寄りかかって見下ろすと、田んぼの脇や土手が白く色付いています。
霜が降りているのでしょう。
虫の音も聞こえない、十一月も終わる日。
どこまでも続く青い空には、綿を小さくちぎったような雲が、ぽこぽこと漂っています。
ようやく、娘への手紙を書く事が出来た私の心は、少し前へ進めたような気がして、自然と目元も緩んで。
柵の隙間から鼻だけ出して、私と同じ景色を見ているぽんすけの小さな茶色い頭をそっと撫でました。
駅から続く山沿いの道を視線で辿って――あそこは空き地です。
以前、駅前で迷子になっていた沙世ちゃんとお父さんに教えた、コスモスや金木犀がある空き地。
といっても、小さな公園みたいになっていて、遊具こそありませんが丸太ベンチがあって、水飲み場もあります。
村の方々がボランティアで植え込みの管理をしているのだとか。
少し距離があるので最近はあまり行けていませんが、この時期にでも何か植物に出会えるかも。
そう思うと、私の足は疼いて。
近頃時々感じる膝の痛みや軋みへの不安もどこへやら。
すっかり私の気持ちはあの小さな公園へと向いてしまいました。
幸い、早くに家事も済んだ事です。
今日のお料理のメニューを決めたら、行ってみる事にしましょう。
「今日は何を作ります?」
一文字も書いていないA4用紙を、こつ、こつ、と鉛筆の芯で叩きながら葉子さんが唸っています。
基本的に材料があれば何でも作りますよ、というのがうちのやり方ですが、唯一あるおにぎり定食というものは、その日のおススメ料理を作るという事になっているのです。
そして葉子さんが前にしているあの紙は、そのおにぎり定食のお料理を書くメニュー。
いつも葉子さんがメニューを書いて、その周りに可愛らしい絵を描いてくださるのです。
これが結構、お客様からも評判なんですよ。
「そうですねぇ」と冷蔵庫の野菜室を開けてみました。
エリンギ。バター炒めなんて良いかもしれません。
手で裂いて――ちょっと贅沢に大きめに裂いても良いですね。
あぁ、そうそう。子持ちししゃもがあるんですよ。
ししゃもはシンプルに焼くのが美味しいですね。
じゃあ、お味噌汁はじゃがいもと玉ねぎにでもしましょうか。
「良いですねぇ、ししゃも」
私が提案したメニューを書いてくださる葉子さん。
周りの余白には、柔らかな曲線のタッチでししゃもや、エリンギの絵を描いています。
あら、エリンギにもぱっちりおめめが。
おにぎりの絵と、ご飯を炊く土鍋の絵なんかも描いていますよ。
食堂の前の掃き掃除を済ませ、グレーのロングコートを羽織った私は、食堂脇から田んぼのあぜ道に降り、細くゆるやかに蛇行する道を進んで行きます。
朝いちは寒かったですが、これが十時も近くなると随分と暖かく、ついコートを脱いで腕にかけてしまいました。
冷涼な風が私のマスタードイエローのロングスカートをなびかせながらも、ぽかぽかとすら感じるお日様の光を背中に受けながら、次第に足取りも軽くなります。
膝の痛みなんて、これっぽちも感じません。
「あら、たんぽぽ」
空き地に入って真っ先に目に入ったのはたんぽぽ。
それも、白い綿毛のたんぽぽです。
ひとつ摘んで、空にむかって、ふぅ、と息を吹きかけると――
ふわり、ふわり
もうすぐ終わる秋の、束の間のぽかぽか日和の風に乗って。
どこまでも、どこまでも、天高く昇る綿毛が、時折陽の光を反射してきらり、と閃いています。
白く細長い花びらのノコンギク、ノコンギクよりも細い花びらをもつヒメジョオン、青い小さな二枚の花びらが可愛いツユクサ――実は青い花びらが目立つので二枚に見えるだけで、本当は三枚の花びらがあるというのは、先日植物図鑑で知りました。
白いビワの花、ハートの葉っぱのムラサキカタバミ……空き地をぐるりと一周歩くだけでも、名前のわからないお花も加えたら、優に十種類は咲いていました。
「ぽんすけ、ただいま」
食堂の前で尻尾を振っていたぽんすけの頭を撫で、ふと顔を上げると、食堂の脇に白い車の一部――黒い車体とヘッドライトが見えます。
「おばさん、こんにちは。おさんぽ?」
「まぁ奈子ちゃん、来てたのね。こんにちは。そうなの。ちょっとお散歩に行ってたのよ」
食堂の脇に停めてあったのは、佐野さんの車だったようです。
窓辺に身を乗り出している奈子ちゃんは、今日は首元から覗く白い丸襟にワインレッドのセーター。
ボブの黒髪は、以前よりもまた艶があるように見えます。
頬も唇もほんのり紅葉色。
右の耳のすぐ上には、ベージュのチェックのヘアピンが、奈子ちゃんの表情に、落ち着いた秋らしさを添えています。
パチッ パチッ
網の上で銀色の皮が焼けて、こんがり色がついて。
芳ばしい香りで食堂が一杯になります。
卵でぱんぱんに膨らんだししゃも。
美味しいこと間違いなしです。
「奈子ちゃん、本当にメニュ―変えなくて良かった?」
食器棚からお皿を取り出しながら、葉子さんが訊きます。
「うん、初めてだけど食べてみたい」
「まぁ、ししゃもは骨も気にしなくて良いし食べやすいからね――」
「違うよ、ししゃもだけじゃなくて今度から他の魚も食べるの。鮭も鯖も。奈子、もうお十歳だもん。もう姉さんでしょ」
「そうよ、雅紀君、いつまでも子ども扱いしちゃ駄目よ。女の子はあっという間にお姉さんになるんだから。今度から、家でもお魚料理しようか」
「うん、ありがとう。私、ママのお手伝いする」
その言葉に、葉子さんもハッとしたように盛り付けていた手を止めて顔を上げ、同じく顔を上げた私と視線が合いました。
――ママ。
美香さんをママと呼んだ奈子ちゃんは、とても自然で。
そんな奈子ちゃんに対して、美香さんも雅紀さんも、彼女を「奈子」と呼んでいて。
私も葉子さんも何も言わないまま、でもとても暖かいものに心が満たされながら、おにぎり定食の準備をしていました。
「おばさん、これって頭は取れば良いの?」
「取っても良いけど、頭も食べられるのよ。尻尾もね。どっちでも良いわよ、好きなように食べてみて」
「頭から食べてみる――美味しい。ねぇ、このお魚美味しい。私、これ好き」
「わぁ、良かったね、奈子。沢山食べて。ほら、私のもあげるから」
「あ、僕のも。でもこれ、ほんと美味しい。卵がいっぱい詰まってて。エリンギもこりこりしてて良いですね」
「ありがとうございます。ししゃも、まだ焼けますから言ってくださいね」
「そうなんですか、嬉しいな。奈子、ししゃもまだあるって」
雅紀さんが言うと奈子ちゃんは「やった」と短く言って胸の前でガッツポーズを作りました。
「そうだ奈子ちゃん。今日もクッキー作らない?この前は何の準備も出来てなかったから、今回はいつ来ても良いように材料も用意してたのよ」
「良いの?えー、嬉しい」
「子供用のエプロンも準備してるんだよー。ほら、これ。ハルさんが刺繍もしてくれてたんだよ。どう?奈子ちゃんの好きな猫。なんかね、こういうロゴの喫茶店があったんだって。前に来たお客さんの男性がお店のカードを見せてくれてね。本が沢山置いてあるお店で、その栞代わりのカードだったんだよ」
葉子さんが「ね、ハルさん」とエプロンを広げました。
「えぇ。とても素敵なデザインだなぁって思って、覚えていたの。今はもう無いお店なんですって」
カウンターの下に仕舞ってあったパステルブルーのシンプルな子供用エプロン。
胸の所には、私が刺繍した黒猫。
黄色い玉状の花を付けたミモザを見上げている、春らしい落ち着いたデザインです。
「わぁ、可愛い。凄い、こんなの出来るんだ。おばさん、ありがとう」
「いえいえ、気に入って貰えて良かったわ」
薄力粉や粉ふるいを準備している私の隣で、奈子ちゃんがエプロンを頭からかぶり、葉子さんが腰紐を結んであげます。
「さっき食事したナプキンの刺繍もハルさんのなんだよ。凄いよねぇ、私のこのカーディガンもハルさんが編んでくれたものなの。良い色でしょ?柄も凄い凝ってるんだよ」
「うん、明るい青色が葉子ちゃんに似合ってる。あ、型増えてる。買い足してくれたの?」
食器棚の小さな引き出しから道具を出していた奈子ちゃんが、後ろ足で立ち上がった猫の型を顔の前に掲げました。
「えぇ、こういうのって一度買うと、つい色々と可愛いものを集めたくなっちゃうのよね。ほら、蝶々もあったでしょう?あと何買ったかしら」
がさごそと金物がぶつかり合う音がして、
「蝶々あるよ。あと桜と、これは梅かなぁ。四つ葉もあるし。あっ、これ犬だ。ぽんすけだ」
真っ先に反応したのは、玄関のクッションで丸くなっていたぽんすけ。
耳をぴくっと動かし、切れの良い動きで顔を上げて、らんらんとした瞳でこちらを見つめて満面の笑みです。
「ふふっ、そうなの。なんとなく全体的にふっくらした体で、くるんと巻いた尻尾がぽんすけに似てて買っちゃったのよ。蝶々が好きだから、一緒に衝動買いしちゃったわ」
シルエットだけなのに、その空洞の向こうに円らな瞳と口角の上がった可愛い笑顔が見えてしまったのだから仕方ありませんね。
「今日はこれ全部使っちゃおう。ね、ママも一緒に作ろうよ」
まさかそう言われることを予想していなかったのでしょう。
雅紀さんとのんびりお茶を飲みながら私たちの様子を見ていた美香さんは「え――」と言葉に詰まってしまいました。
「あ、もしかして身体つらい?」
「ううん、そんな事ないの。凄く元気だけど、私、相変わらず料理は下手だし、お菓子なんて失敗ばかりで……」
「大丈夫だよ、奈子が教えてあげるから」
よほど嬉しかったのか、美香さんの白い頬がほんのり赤く色付いて「嬉しい。やりたい」と、まるで彼女の方が幼い子供のように無邪気な笑顔になって奈子ちゃんの隣に並びました。
「ママ、小麦粉計れた?」
冷蔵庫からバターを出しながら、奈子ちゃんが訊きます。
美香さんは「うん、出来たと思う」と、満足気に小麦粉の袋のチャックを指でつまみながら答えました。
「あれ、なんか少なくない?」
「そ、そうかな?ちゃんと言われた通りにしたと思うんだけど……」
「あ、もしかしてこの器の重さまで一緒に計ったんじゃない?」
「え――」
チチチッ
窓辺にやってきた、冬の羽毛を蓄えてふっくら丸々としたスズメが囀りながら小首を傾げています。
ぶしゅん
沈黙の中、盛大なぽんすけのくしゃみが食堂に一際大きく響き渡ります。
その時です。勢いよく玄関が開きました。
さっきのスズメも驚いて飛び立っていきました。
「おばちゃーん、葉子ちゃーん、ぽんすけーっ」
「あら、沙世ちゃん。いらっしゃい」
「すみません、騒々しくて。みなさん、こんにちは。ほら、沙世。手袋外して。あぁ、佐野さん達もいらしてたんですね」
佐野さんが「良かったらこっちのテーブルに一緒にどうぞ」と隣のテーブルから椅子を二脚、自分のテーブルへと運びました。
「ありがとうございます。奈子ちゃんにも会えて良かったなぁ、沙世」
「んーっ、お父さんチャック噛んでる。開けてぇ」
「あーあ、乱暴に閉めるからやん。ほら、じっとして」
「早く早く」
三島さんはテーブルの横にしゃがみこみ、奈子ちゃんの赤いジャンパーのファスナーを外して脱がせています。
「うんっ。あれ、もしかして何か作ってんの?沙世もやりたい」
「もちろん。一緒にやろう。ママ、小麦粉計り直そう。ほら、こうやって先に器を乗せておいてから、計量器のボタンを押すんだよ。そしたらほら、ゼロって表示されるでしょ。こうしないと器の重さも一緒に計っちゃうんだよ。はい、小麦粉」
「ありがとう。うん、もう間違ええない。大丈夫」
美香さんは再び小麦粉の袋からスプーンですくいながら、今度はきちんと器の重さを引いた計りの数字を見つめています。
「はい、沙世ちゃんのエプロンね」
葉子さんが沙世ちゃんにも着せて腰ひもを結ぶと「わぁ、奈子ちゃんとお揃い」と、はにかみながら胸元のミモザを見上げる黒猫の刺繍を指さしました。
奈子ちゃんを中心としたクッキー作り。
手際の良い奈子ちゃんに、私の出番は無さそうなので、雅紀さんと三島さんのテーブル席から見守る事にしました。
途中、生地を冷蔵庫で寝かせるという事で、二時間ほど二人はお外遊びに出ていました。
葉子さんと美香さんも、もちろんぽんすけも行かないわけがありません。
鬼ごっこに、けんけんぱ。だるまさんが転んだは、まさかのぽんすけも参加。
みんなが立ち止まるとぽんすけもちゃんと止まって、ちゃっかり遊びに参加する姿は思わず笑いがこみ上げてくるものでした。
「妻が――沙世の母親なんですけど。病気でずっと入院してて、もう駄目かもしれないってくらい悪かったんです。沙世には伝えませんでしたが、担当医ももう次の手術で回復できないと厳しいかもって。上手くいく可能性も五分五分、というか上手くいく可能性の方が低いって言われてたんです。体力的に手術に耐えられないかもしれないって。そうなったらもしかしたら……」
三島さんが、窓の向こうで走り回る沙世ちゃんを見つめて目を細めました。
佐野さんも私も、静かに次の言葉を待ちます。
「沙世が母親に言ったんです。元気になったら、一緒にそよかぜさんに行こうって。めっちゃ楽しい所で、可愛いわんちゃんもおって、お母さんにも見て欲しいって。わんちゃん好きやろ、美味しいご飯、一緒に食べよって。この前のクッキーは食べられへんかったけど、元気になったら焼きたてのクッキー食べさせてあげるって。泣きたくなるのを堪えるみたいに目もほっぺたも真っ赤にして。入院ベッドのシーツを握り締めながら言ったんですよ」
それはまるで願うように。
幼い女の子の小さな心で、難しい事はわからないなりにも、目の前のお母さんの姿を受け止めて。
それでも尚、願うように。
大好きなお母さんに、そんな姿を想像してしまって、私の心もぎゅっと締め付けられるようです。
「妻もずっと悩んでいたんです。上手くいくかわからない。最悪のケースもあり得る手術を受けて、万が一そのまま……なんて事になるのを怖がっていました。それなら残された時間を目いっぱい生きた方が良いんじゃないかって。でも、沙世のその言葉を聞いて、手術を受けたいって。それで――」
湯呑のお茶を口に含み、ゆっくりと息を吐きました。
「上手くいったんです。担当医も、正直驚いたって言ってました。術後、かなりしんどかったはずなんですけど、食事も少しずつとれるようになって、今は筋肉が落ちてしまって歩行も難しいですがリハビリも頑張っています。沙世と私と一緒に来たいって」
「わぁ、良かったですね。その時はお祝いに色んな食材持って来ますから、ここでパーティしましょうよ。ね、ハルさん」
「えぇ、そうですね。沙世ちゃんとお母さまと三島さんの大好きな物、たくさん作りましょう。葉子さんも大賛成だと思いますよ」
元気になったお母さんと一緒にお店に来る沙世ちゃんは、きっと今よりもずっと幸せな笑顔でしょう。
以前来た時は、どこか頑張って背伸びをしていた沙世ちゃん。
そう言えば、今日はどことなく無邪気というか、年相応の子供らしさが垣間見れるような気がします。
「あぁ、転んだ」
鬼ごっこで逃げる途中、慌てて方向を変えた途端に足が絡まって、盛大に転んでしまった沙世ちゃん。
むくっと起き上がると、みるみる表情が歪んでいきます。
「冬用の厚手のズボン履いてるから、大したこと無いと思うんですけど……。すみません、ちょっと行ってきます」
窓を閉めていても聞こえてくる沙世ちゃんの泣き声に、三島さんが席を立ちました。
心配そうにぽんすけが沙世ちゃんの周りを右往左往。
どうしよう、と不安そうにこちらを見つめ、やってきた三島さんに嬉しそうに尻尾を振っています。
「おっ、沙世ちゃん良いね。何か職人さんみたい」
流しの前で、私がいつも座っている丸椅子に腰かけた葉子さんが感心して言います。
「怪我してなくて良かったね」
奈子ちゃんがそう言うと、雅紀さんと三島さんも顔を見合わせて「本当に」と苦笑い。
派手に転んだようでしたが、ふかふかの手袋と、分厚い生地のズボンに守られていた沙世ちゃんは傷ひとつ無かったみたいです。
踏み台に乗った沙世ちゃんが、綿棒を手に生地を伸ばし、美香さんは見守りながら「沙世ちゃんも上手」と優しい笑顔を浮かべました。
沙世ちゃんが伸ばした生地を、今度は三十分冷蔵庫で冷やします。
その間、私たちは皆でテーブルを囲んでお茶にしました。
「今のお家に来る前、クッキー作った事あるって言ったでしょ?最初にクッキーの作り方を教えてくれた喫茶店の店長さんが凄く上手でね。昔、高校の家庭科の先生だったんだって。だから教えるのも凄く上手で、本当に学校で教わってるみたいで楽しかった。あ、オーブンの予熱しなきゃ。あれ――」
オーブンの前に立った沙世ちゃんが、隣の棚のガラス戸の向こうを見つめて手を止めました。
「おばさん、これ。このお店知ってるの?」
ガラス戸を開けて、手にしたのは「雨の日珈琲店かたつむり」のドリップ珈琲が入った紙袋です。
店名とかたつむりのデザインのスタンプを見て、私を見て。信じられない、と言った表情です。
「それは葉子さんが見つけたお店なのよ。私は行った事無いんだけど、その珈琲凄く美味しいの」
葉子さんに視線を送ると「うんうん」と頷いています。
「私にクッキーの作り方を教えてくれた人、チトセさんって言うんだけど……その人のお店なんだよ、ここ。えー、すごい。こんな事あるんだ。ここでこのマーク見られると思わなかった」
沙世ちゃんが「もう型抜いちゃうでっ」と、わくわくした瞳で犬のクッキー型を手にしています。
美香さんも「私も」と、蝶々とうたた寝猫の型を手にしています。
「あ、うん。ごめんごめん。予熱するから、抜いちゃって良いよ」
沢山の生地が出来たようで、三回にわけてクッキーを焼き、そのあいだ甘く香ばしい匂いが食堂をたっぷりと包み込みました。
バターと、お砂糖。甘くて、しあわせな香り。
こんがりと焼き上がったクッキーは心躍るほどの出来栄え。
「うん、美味しい。これからは家でもクッキーが焼けるね」
雅紀さんも、もちろん三島さんも大絶賛。
食べきれるかと思うほどのクッキーは、あっという間に温かいミルクティーと一緒に皆さんのお腹と心を満たしました。
「ほんと、世間って狭いって言うけど。こんな事もあるんですねぇ」
お湯を沸かしている間、葉子さんがキッチンにもたれかかって雨の日珈琲店かたつむりの紙袋を裏、表と返してしみじみ呟きました。
「そうですね。奈子ちゃんの作るクッキーは、甘すぎず優しい味わいで、珈琲や紅茶にも合いますから、納得ではありますね。ありがとうございます。クッキーの残りも一緒に頂きましょうか」
沢山作った残りのクッキーをお供に、葉子さんと一日の終わりの珈琲です。
今日も一日お疲れさまでした、と口を揃えてカップを掲げて――ほろ苦くもコクの深い珈琲が、喉を通り、身体をじんわりと温めてくれます。
「でも家族って良いですねぇ。私、子供が産めない身体だったけど、ああやって養子を迎えたりすれば、今頃はもしかしたら……」
そこまで言った葉子さんは「いや、それは無いか」と自嘲気味に顔をしかめました。
「前の夫と私の関係じゃ、迎えた子供がもっと可哀相な事になっちゃいます。でも、奈子ちゃんは、佐野さん夫婦の元なら、絶対この先も幸せに過ごせますよ。沙世ちゃんも、お母さんとお父さんと一緒に、これからもずっと。うん、絶対そう。そうに決まってます」
「えぇ、そうですね」
これから続く毎日を必ず。大切な人の隣で、笑顔で過ごしていて欲しい。
私にはもう叶えられない家族との道。
その幸せの道は閉ざされてしまったけれど、優しいそよ風が流れる穏やかな道を、こうして葉子さんやぽんすけ、村の方々やお客様たちと歩いているのですから。
「ごちそうさまでした」
最後のひと口となった珈琲を口に含み、空になったクッキーのお皿に手を合わせました。
「後片付け、私がやりますから。ハルさんはお風呂、お先にどうぞ。そろそろ沸いてると思いますから」
「ありがとうございます。お言葉に甘えて、先に入らせて貰いますね」
珈琲カップと空いたお皿を流しに置いて、お風呂の支度をする為に二階への階段を上っている時、葉子さんが「そうそう」と思い出したように洗い物をしながら声を上げました。
「かたつむりって珈琲店ね、不思議なポストがあるんですよ」
「ポストですか?」
階段の半ばで足を止め、手すりに身体を預けて葉子さんを見下ろす形で訊ねました。
「普通のポストとは違うんですって。亡くなった人に手紙を届けてくれるって言われてるみたいです」
「亡くなった人……」
私の呟きは、勢いよく流れる水の音にかき消されてしまいました。
葉子さんは泡の付いたお皿を流し、カップを流し、水切りラックに次々と逆さまに置いて行きます。
「私が行った時も、年配の紳士がポストにお手紙を入れてました。何だか良いですよね、そういうの。お店も結構空いてて、っていうかはっきり言うとガラガラで。店主のチトセさん曰く、このお店は心に穴を抱えている人にしか見つけられないって話です。私には難しくてよくわかんなかったですけど、凄くお店の雰囲気は素敵だったので、ハルさんも一度行ってみると良いですよ」
丁寧に拭いた食器を片付けながら、葉子さんが「ね」と笑顔で私を見上げました。
「えぇ、そうですね。教えてくださってありがとうございます」
階段を上り、自室のドアを開け、正面の文机の前に座って、これまでに書いた手紙を取り出しました。
先日、ようやく書く事が出来た手紙も一緒に。
暗い部屋に、薄いカーテンから漏れる優しい月明りが、手紙をぼうと照らしています。
心に穴を抱えている人に見つけられるお店。
亡くなった人に手紙を届けるポスト。
行き場を失って、ただ溜まっていくだけだった家族へ宛てた手紙。
私の心が僅かに震えて、封筒の端に小さな皺が寄り。
一番上の白い封筒に丸い染みがひとつ。
指でそっと触れると、それはひとつの涙で、無意識に私の頬を伝い落ちたものだったようです。
「駄目ね。もう、本当。歳を取ると涙腺が緩むっていうけれど――」
ここ最近は酷いものです。呆れるほどに、酷いものです。
以前、日下部さんは、悲しみは時間だけでは解決できない。
抱いた感情を噛みしめながらでしか、人は自分の心と向き合えない。
そうすればまた一歩前に進めると教えてくださいました。
「本当に。時間だけではどうにもならないのね」
もう十一年にもなるというのに、悲しみは薄れるどころか増すばかり。
ここに私の居場所がある。
それだけで充分だというのに、ふと気が緩むとこうです。
泣いたり、また前を向いたり、また落ち込んだり。
抑えきれない感情と、溢れ出る哀しい想いと、だけど、これをもしかしたらあの人たちに届けられるかもしれない希望と喜びと。
小さな額縁の中のもう逢えない人たちにそっと触れながら。
「私の、十一年の想いを込めた手紙。あなた達に届けられるかもしれないのね」
か細く震える声は、時計の針の音に流れて、たゆたい、消えてしまいました。
二階のベランダで洗濯物を干していると、葉子さんが起きていらっしゃいました。
「大丈夫ですよ。もうすぐ終わりますから、ゆっくりしていてください。まぁまぁ、ぽんすけ。洗濯物、引っ張っちゃ駄目よ」
いま干したばかりの葉子さんのトレーナーをめがけて、あぐぅあぐぅ、と飛び跳ねるぽんすけ。
運動会のパン食い競争みたいに、何やら必死の形相に思わず吹き出してしまいます。
夢中で上を向いて飛び跳ねるものですから、眼はひん剥いて、牙はむき出し。
せっかくの愛くるしい顔が台無しです。
まぁ、これはこれで可愛いのですけれど。
その時、びょう、と吹き抜けた風が、干した洗濯物を大きくはためかせました。
「ひぃー、寒いっ。今日ゴミの日だから、各部屋のゴミ、集めてきますね。その後、珈琲淹れますから。それ、終わったら一緒に温まりましょ」
「ありがとうございます。すぐ行きますね」
両腕で身体をぎゅっと抱えて縮ませながら葉子さんが階段を降りていくのを見送って、私は残りのバスタオルを竿に干していきました。
白く、ふわふわのバスタオルが、木枯らしに大きく揺れて。
ベランダの手すりに寄りかかって見下ろすと、田んぼの脇や土手が白く色付いています。
霜が降りているのでしょう。
虫の音も聞こえない、十一月も終わる日。
どこまでも続く青い空には、綿を小さくちぎったような雲が、ぽこぽこと漂っています。
ようやく、娘への手紙を書く事が出来た私の心は、少し前へ進めたような気がして、自然と目元も緩んで。
柵の隙間から鼻だけ出して、私と同じ景色を見ているぽんすけの小さな茶色い頭をそっと撫でました。
駅から続く山沿いの道を視線で辿って――あそこは空き地です。
以前、駅前で迷子になっていた沙世ちゃんとお父さんに教えた、コスモスや金木犀がある空き地。
といっても、小さな公園みたいになっていて、遊具こそありませんが丸太ベンチがあって、水飲み場もあります。
村の方々がボランティアで植え込みの管理をしているのだとか。
少し距離があるので最近はあまり行けていませんが、この時期にでも何か植物に出会えるかも。
そう思うと、私の足は疼いて。
近頃時々感じる膝の痛みや軋みへの不安もどこへやら。
すっかり私の気持ちはあの小さな公園へと向いてしまいました。
幸い、早くに家事も済んだ事です。
今日のお料理のメニューを決めたら、行ってみる事にしましょう。
「今日は何を作ります?」
一文字も書いていないA4用紙を、こつ、こつ、と鉛筆の芯で叩きながら葉子さんが唸っています。
基本的に材料があれば何でも作りますよ、というのがうちのやり方ですが、唯一あるおにぎり定食というものは、その日のおススメ料理を作るという事になっているのです。
そして葉子さんが前にしているあの紙は、そのおにぎり定食のお料理を書くメニュー。
いつも葉子さんがメニューを書いて、その周りに可愛らしい絵を描いてくださるのです。
これが結構、お客様からも評判なんですよ。
「そうですねぇ」と冷蔵庫の野菜室を開けてみました。
エリンギ。バター炒めなんて良いかもしれません。
手で裂いて――ちょっと贅沢に大きめに裂いても良いですね。
あぁ、そうそう。子持ちししゃもがあるんですよ。
ししゃもはシンプルに焼くのが美味しいですね。
じゃあ、お味噌汁はじゃがいもと玉ねぎにでもしましょうか。
「良いですねぇ、ししゃも」
私が提案したメニューを書いてくださる葉子さん。
周りの余白には、柔らかな曲線のタッチでししゃもや、エリンギの絵を描いています。
あら、エリンギにもぱっちりおめめが。
おにぎりの絵と、ご飯を炊く土鍋の絵なんかも描いていますよ。
食堂の前の掃き掃除を済ませ、グレーのロングコートを羽織った私は、食堂脇から田んぼのあぜ道に降り、細くゆるやかに蛇行する道を進んで行きます。
朝いちは寒かったですが、これが十時も近くなると随分と暖かく、ついコートを脱いで腕にかけてしまいました。
冷涼な風が私のマスタードイエローのロングスカートをなびかせながらも、ぽかぽかとすら感じるお日様の光を背中に受けながら、次第に足取りも軽くなります。
膝の痛みなんて、これっぽちも感じません。
「あら、たんぽぽ」
空き地に入って真っ先に目に入ったのはたんぽぽ。
それも、白い綿毛のたんぽぽです。
ひとつ摘んで、空にむかって、ふぅ、と息を吹きかけると――
ふわり、ふわり
もうすぐ終わる秋の、束の間のぽかぽか日和の風に乗って。
どこまでも、どこまでも、天高く昇る綿毛が、時折陽の光を反射してきらり、と閃いています。
白く細長い花びらのノコンギク、ノコンギクよりも細い花びらをもつヒメジョオン、青い小さな二枚の花びらが可愛いツユクサ――実は青い花びらが目立つので二枚に見えるだけで、本当は三枚の花びらがあるというのは、先日植物図鑑で知りました。
白いビワの花、ハートの葉っぱのムラサキカタバミ……空き地をぐるりと一周歩くだけでも、名前のわからないお花も加えたら、優に十種類は咲いていました。
「ぽんすけ、ただいま」
食堂の前で尻尾を振っていたぽんすけの頭を撫で、ふと顔を上げると、食堂の脇に白い車の一部――黒い車体とヘッドライトが見えます。
「おばさん、こんにちは。おさんぽ?」
「まぁ奈子ちゃん、来てたのね。こんにちは。そうなの。ちょっとお散歩に行ってたのよ」
食堂の脇に停めてあったのは、佐野さんの車だったようです。
窓辺に身を乗り出している奈子ちゃんは、今日は首元から覗く白い丸襟にワインレッドのセーター。
ボブの黒髪は、以前よりもまた艶があるように見えます。
頬も唇もほんのり紅葉色。
右の耳のすぐ上には、ベージュのチェックのヘアピンが、奈子ちゃんの表情に、落ち着いた秋らしさを添えています。
パチッ パチッ
網の上で銀色の皮が焼けて、こんがり色がついて。
芳ばしい香りで食堂が一杯になります。
卵でぱんぱんに膨らんだししゃも。
美味しいこと間違いなしです。
「奈子ちゃん、本当にメニュ―変えなくて良かった?」
食器棚からお皿を取り出しながら、葉子さんが訊きます。
「うん、初めてだけど食べてみたい」
「まぁ、ししゃもは骨も気にしなくて良いし食べやすいからね――」
「違うよ、ししゃもだけじゃなくて今度から他の魚も食べるの。鮭も鯖も。奈子、もうお十歳だもん。もう姉さんでしょ」
「そうよ、雅紀君、いつまでも子ども扱いしちゃ駄目よ。女の子はあっという間にお姉さんになるんだから。今度から、家でもお魚料理しようか」
「うん、ありがとう。私、ママのお手伝いする」
その言葉に、葉子さんもハッとしたように盛り付けていた手を止めて顔を上げ、同じく顔を上げた私と視線が合いました。
――ママ。
美香さんをママと呼んだ奈子ちゃんは、とても自然で。
そんな奈子ちゃんに対して、美香さんも雅紀さんも、彼女を「奈子」と呼んでいて。
私も葉子さんも何も言わないまま、でもとても暖かいものに心が満たされながら、おにぎり定食の準備をしていました。
「おばさん、これって頭は取れば良いの?」
「取っても良いけど、頭も食べられるのよ。尻尾もね。どっちでも良いわよ、好きなように食べてみて」
「頭から食べてみる――美味しい。ねぇ、このお魚美味しい。私、これ好き」
「わぁ、良かったね、奈子。沢山食べて。ほら、私のもあげるから」
「あ、僕のも。でもこれ、ほんと美味しい。卵がいっぱい詰まってて。エリンギもこりこりしてて良いですね」
「ありがとうございます。ししゃも、まだ焼けますから言ってくださいね」
「そうなんですか、嬉しいな。奈子、ししゃもまだあるって」
雅紀さんが言うと奈子ちゃんは「やった」と短く言って胸の前でガッツポーズを作りました。
「そうだ奈子ちゃん。今日もクッキー作らない?この前は何の準備も出来てなかったから、今回はいつ来ても良いように材料も用意してたのよ」
「良いの?えー、嬉しい」
「子供用のエプロンも準備してるんだよー。ほら、これ。ハルさんが刺繍もしてくれてたんだよ。どう?奈子ちゃんの好きな猫。なんかね、こういうロゴの喫茶店があったんだって。前に来たお客さんの男性がお店のカードを見せてくれてね。本が沢山置いてあるお店で、その栞代わりのカードだったんだよ」
葉子さんが「ね、ハルさん」とエプロンを広げました。
「えぇ。とても素敵なデザインだなぁって思って、覚えていたの。今はもう無いお店なんですって」
カウンターの下に仕舞ってあったパステルブルーのシンプルな子供用エプロン。
胸の所には、私が刺繍した黒猫。
黄色い玉状の花を付けたミモザを見上げている、春らしい落ち着いたデザインです。
「わぁ、可愛い。凄い、こんなの出来るんだ。おばさん、ありがとう」
「いえいえ、気に入って貰えて良かったわ」
薄力粉や粉ふるいを準備している私の隣で、奈子ちゃんがエプロンを頭からかぶり、葉子さんが腰紐を結んであげます。
「さっき食事したナプキンの刺繍もハルさんのなんだよ。凄いよねぇ、私のこのカーディガンもハルさんが編んでくれたものなの。良い色でしょ?柄も凄い凝ってるんだよ」
「うん、明るい青色が葉子ちゃんに似合ってる。あ、型増えてる。買い足してくれたの?」
食器棚の小さな引き出しから道具を出していた奈子ちゃんが、後ろ足で立ち上がった猫の型を顔の前に掲げました。
「えぇ、こういうのって一度買うと、つい色々と可愛いものを集めたくなっちゃうのよね。ほら、蝶々もあったでしょう?あと何買ったかしら」
がさごそと金物がぶつかり合う音がして、
「蝶々あるよ。あと桜と、これは梅かなぁ。四つ葉もあるし。あっ、これ犬だ。ぽんすけだ」
真っ先に反応したのは、玄関のクッションで丸くなっていたぽんすけ。
耳をぴくっと動かし、切れの良い動きで顔を上げて、らんらんとした瞳でこちらを見つめて満面の笑みです。
「ふふっ、そうなの。なんとなく全体的にふっくらした体で、くるんと巻いた尻尾がぽんすけに似てて買っちゃったのよ。蝶々が好きだから、一緒に衝動買いしちゃったわ」
シルエットだけなのに、その空洞の向こうに円らな瞳と口角の上がった可愛い笑顔が見えてしまったのだから仕方ありませんね。
「今日はこれ全部使っちゃおう。ね、ママも一緒に作ろうよ」
まさかそう言われることを予想していなかったのでしょう。
雅紀さんとのんびりお茶を飲みながら私たちの様子を見ていた美香さんは「え――」と言葉に詰まってしまいました。
「あ、もしかして身体つらい?」
「ううん、そんな事ないの。凄く元気だけど、私、相変わらず料理は下手だし、お菓子なんて失敗ばかりで……」
「大丈夫だよ、奈子が教えてあげるから」
よほど嬉しかったのか、美香さんの白い頬がほんのり赤く色付いて「嬉しい。やりたい」と、まるで彼女の方が幼い子供のように無邪気な笑顔になって奈子ちゃんの隣に並びました。
「ママ、小麦粉計れた?」
冷蔵庫からバターを出しながら、奈子ちゃんが訊きます。
美香さんは「うん、出来たと思う」と、満足気に小麦粉の袋のチャックを指でつまみながら答えました。
「あれ、なんか少なくない?」
「そ、そうかな?ちゃんと言われた通りにしたと思うんだけど……」
「あ、もしかしてこの器の重さまで一緒に計ったんじゃない?」
「え――」
チチチッ
窓辺にやってきた、冬の羽毛を蓄えてふっくら丸々としたスズメが囀りながら小首を傾げています。
ぶしゅん
沈黙の中、盛大なぽんすけのくしゃみが食堂に一際大きく響き渡ります。
その時です。勢いよく玄関が開きました。
さっきのスズメも驚いて飛び立っていきました。
「おばちゃーん、葉子ちゃーん、ぽんすけーっ」
「あら、沙世ちゃん。いらっしゃい」
「すみません、騒々しくて。みなさん、こんにちは。ほら、沙世。手袋外して。あぁ、佐野さん達もいらしてたんですね」
佐野さんが「良かったらこっちのテーブルに一緒にどうぞ」と隣のテーブルから椅子を二脚、自分のテーブルへと運びました。
「ありがとうございます。奈子ちゃんにも会えて良かったなぁ、沙世」
「んーっ、お父さんチャック噛んでる。開けてぇ」
「あーあ、乱暴に閉めるからやん。ほら、じっとして」
「早く早く」
三島さんはテーブルの横にしゃがみこみ、奈子ちゃんの赤いジャンパーのファスナーを外して脱がせています。
「うんっ。あれ、もしかして何か作ってんの?沙世もやりたい」
「もちろん。一緒にやろう。ママ、小麦粉計り直そう。ほら、こうやって先に器を乗せておいてから、計量器のボタンを押すんだよ。そしたらほら、ゼロって表示されるでしょ。こうしないと器の重さも一緒に計っちゃうんだよ。はい、小麦粉」
「ありがとう。うん、もう間違ええない。大丈夫」
美香さんは再び小麦粉の袋からスプーンですくいながら、今度はきちんと器の重さを引いた計りの数字を見つめています。
「はい、沙世ちゃんのエプロンね」
葉子さんが沙世ちゃんにも着せて腰ひもを結ぶと「わぁ、奈子ちゃんとお揃い」と、はにかみながら胸元のミモザを見上げる黒猫の刺繍を指さしました。
奈子ちゃんを中心としたクッキー作り。
手際の良い奈子ちゃんに、私の出番は無さそうなので、雅紀さんと三島さんのテーブル席から見守る事にしました。
途中、生地を冷蔵庫で寝かせるという事で、二時間ほど二人はお外遊びに出ていました。
葉子さんと美香さんも、もちろんぽんすけも行かないわけがありません。
鬼ごっこに、けんけんぱ。だるまさんが転んだは、まさかのぽんすけも参加。
みんなが立ち止まるとぽんすけもちゃんと止まって、ちゃっかり遊びに参加する姿は思わず笑いがこみ上げてくるものでした。
「妻が――沙世の母親なんですけど。病気でずっと入院してて、もう駄目かもしれないってくらい悪かったんです。沙世には伝えませんでしたが、担当医ももう次の手術で回復できないと厳しいかもって。上手くいく可能性も五分五分、というか上手くいく可能性の方が低いって言われてたんです。体力的に手術に耐えられないかもしれないって。そうなったらもしかしたら……」
三島さんが、窓の向こうで走り回る沙世ちゃんを見つめて目を細めました。
佐野さんも私も、静かに次の言葉を待ちます。
「沙世が母親に言ったんです。元気になったら、一緒にそよかぜさんに行こうって。めっちゃ楽しい所で、可愛いわんちゃんもおって、お母さんにも見て欲しいって。わんちゃん好きやろ、美味しいご飯、一緒に食べよって。この前のクッキーは食べられへんかったけど、元気になったら焼きたてのクッキー食べさせてあげるって。泣きたくなるのを堪えるみたいに目もほっぺたも真っ赤にして。入院ベッドのシーツを握り締めながら言ったんですよ」
それはまるで願うように。
幼い女の子の小さな心で、難しい事はわからないなりにも、目の前のお母さんの姿を受け止めて。
それでも尚、願うように。
大好きなお母さんに、そんな姿を想像してしまって、私の心もぎゅっと締め付けられるようです。
「妻もずっと悩んでいたんです。上手くいくかわからない。最悪のケースもあり得る手術を受けて、万が一そのまま……なんて事になるのを怖がっていました。それなら残された時間を目いっぱい生きた方が良いんじゃないかって。でも、沙世のその言葉を聞いて、手術を受けたいって。それで――」
湯呑のお茶を口に含み、ゆっくりと息を吐きました。
「上手くいったんです。担当医も、正直驚いたって言ってました。術後、かなりしんどかったはずなんですけど、食事も少しずつとれるようになって、今は筋肉が落ちてしまって歩行も難しいですがリハビリも頑張っています。沙世と私と一緒に来たいって」
「わぁ、良かったですね。その時はお祝いに色んな食材持って来ますから、ここでパーティしましょうよ。ね、ハルさん」
「えぇ、そうですね。沙世ちゃんとお母さまと三島さんの大好きな物、たくさん作りましょう。葉子さんも大賛成だと思いますよ」
元気になったお母さんと一緒にお店に来る沙世ちゃんは、きっと今よりもずっと幸せな笑顔でしょう。
以前来た時は、どこか頑張って背伸びをしていた沙世ちゃん。
そう言えば、今日はどことなく無邪気というか、年相応の子供らしさが垣間見れるような気がします。
「あぁ、転んだ」
鬼ごっこで逃げる途中、慌てて方向を変えた途端に足が絡まって、盛大に転んでしまった沙世ちゃん。
むくっと起き上がると、みるみる表情が歪んでいきます。
「冬用の厚手のズボン履いてるから、大したこと無いと思うんですけど……。すみません、ちょっと行ってきます」
窓を閉めていても聞こえてくる沙世ちゃんの泣き声に、三島さんが席を立ちました。
心配そうにぽんすけが沙世ちゃんの周りを右往左往。
どうしよう、と不安そうにこちらを見つめ、やってきた三島さんに嬉しそうに尻尾を振っています。
「おっ、沙世ちゃん良いね。何か職人さんみたい」
流しの前で、私がいつも座っている丸椅子に腰かけた葉子さんが感心して言います。
「怪我してなくて良かったね」
奈子ちゃんがそう言うと、雅紀さんと三島さんも顔を見合わせて「本当に」と苦笑い。
派手に転んだようでしたが、ふかふかの手袋と、分厚い生地のズボンに守られていた沙世ちゃんは傷ひとつ無かったみたいです。
踏み台に乗った沙世ちゃんが、綿棒を手に生地を伸ばし、美香さんは見守りながら「沙世ちゃんも上手」と優しい笑顔を浮かべました。
沙世ちゃんが伸ばした生地を、今度は三十分冷蔵庫で冷やします。
その間、私たちは皆でテーブルを囲んでお茶にしました。
「今のお家に来る前、クッキー作った事あるって言ったでしょ?最初にクッキーの作り方を教えてくれた喫茶店の店長さんが凄く上手でね。昔、高校の家庭科の先生だったんだって。だから教えるのも凄く上手で、本当に学校で教わってるみたいで楽しかった。あ、オーブンの予熱しなきゃ。あれ――」
オーブンの前に立った沙世ちゃんが、隣の棚のガラス戸の向こうを見つめて手を止めました。
「おばさん、これ。このお店知ってるの?」
ガラス戸を開けて、手にしたのは「雨の日珈琲店かたつむり」のドリップ珈琲が入った紙袋です。
店名とかたつむりのデザインのスタンプを見て、私を見て。信じられない、と言った表情です。
「それは葉子さんが見つけたお店なのよ。私は行った事無いんだけど、その珈琲凄く美味しいの」
葉子さんに視線を送ると「うんうん」と頷いています。
「私にクッキーの作り方を教えてくれた人、チトセさんって言うんだけど……その人のお店なんだよ、ここ。えー、すごい。こんな事あるんだ。ここでこのマーク見られると思わなかった」
沙世ちゃんが「もう型抜いちゃうでっ」と、わくわくした瞳で犬のクッキー型を手にしています。
美香さんも「私も」と、蝶々とうたた寝猫の型を手にしています。
「あ、うん。ごめんごめん。予熱するから、抜いちゃって良いよ」
沢山の生地が出来たようで、三回にわけてクッキーを焼き、そのあいだ甘く香ばしい匂いが食堂をたっぷりと包み込みました。
バターと、お砂糖。甘くて、しあわせな香り。
こんがりと焼き上がったクッキーは心躍るほどの出来栄え。
「うん、美味しい。これからは家でもクッキーが焼けるね」
雅紀さんも、もちろん三島さんも大絶賛。
食べきれるかと思うほどのクッキーは、あっという間に温かいミルクティーと一緒に皆さんのお腹と心を満たしました。
「ほんと、世間って狭いって言うけど。こんな事もあるんですねぇ」
お湯を沸かしている間、葉子さんがキッチンにもたれかかって雨の日珈琲店かたつむりの紙袋を裏、表と返してしみじみ呟きました。
「そうですね。奈子ちゃんの作るクッキーは、甘すぎず優しい味わいで、珈琲や紅茶にも合いますから、納得ではありますね。ありがとうございます。クッキーの残りも一緒に頂きましょうか」
沢山作った残りのクッキーをお供に、葉子さんと一日の終わりの珈琲です。
今日も一日お疲れさまでした、と口を揃えてカップを掲げて――ほろ苦くもコクの深い珈琲が、喉を通り、身体をじんわりと温めてくれます。
「でも家族って良いですねぇ。私、子供が産めない身体だったけど、ああやって養子を迎えたりすれば、今頃はもしかしたら……」
そこまで言った葉子さんは「いや、それは無いか」と自嘲気味に顔をしかめました。
「前の夫と私の関係じゃ、迎えた子供がもっと可哀相な事になっちゃいます。でも、奈子ちゃんは、佐野さん夫婦の元なら、絶対この先も幸せに過ごせますよ。沙世ちゃんも、お母さんとお父さんと一緒に、これからもずっと。うん、絶対そう。そうに決まってます」
「えぇ、そうですね」
これから続く毎日を必ず。大切な人の隣で、笑顔で過ごしていて欲しい。
私にはもう叶えられない家族との道。
その幸せの道は閉ざされてしまったけれど、優しいそよ風が流れる穏やかな道を、こうして葉子さんやぽんすけ、村の方々やお客様たちと歩いているのですから。
「ごちそうさまでした」
最後のひと口となった珈琲を口に含み、空になったクッキーのお皿に手を合わせました。
「後片付け、私がやりますから。ハルさんはお風呂、お先にどうぞ。そろそろ沸いてると思いますから」
「ありがとうございます。お言葉に甘えて、先に入らせて貰いますね」
珈琲カップと空いたお皿を流しに置いて、お風呂の支度をする為に二階への階段を上っている時、葉子さんが「そうそう」と思い出したように洗い物をしながら声を上げました。
「かたつむりって珈琲店ね、不思議なポストがあるんですよ」
「ポストですか?」
階段の半ばで足を止め、手すりに身体を預けて葉子さんを見下ろす形で訊ねました。
「普通のポストとは違うんですって。亡くなった人に手紙を届けてくれるって言われてるみたいです」
「亡くなった人……」
私の呟きは、勢いよく流れる水の音にかき消されてしまいました。
葉子さんは泡の付いたお皿を流し、カップを流し、水切りラックに次々と逆さまに置いて行きます。
「私が行った時も、年配の紳士がポストにお手紙を入れてました。何だか良いですよね、そういうの。お店も結構空いてて、っていうかはっきり言うとガラガラで。店主のチトセさん曰く、このお店は心に穴を抱えている人にしか見つけられないって話です。私には難しくてよくわかんなかったですけど、凄くお店の雰囲気は素敵だったので、ハルさんも一度行ってみると良いですよ」
丁寧に拭いた食器を片付けながら、葉子さんが「ね」と笑顔で私を見上げました。
「えぇ、そうですね。教えてくださってありがとうございます」
階段を上り、自室のドアを開け、正面の文机の前に座って、これまでに書いた手紙を取り出しました。
先日、ようやく書く事が出来た手紙も一緒に。
暗い部屋に、薄いカーテンから漏れる優しい月明りが、手紙をぼうと照らしています。
心に穴を抱えている人に見つけられるお店。
亡くなった人に手紙を届けるポスト。
行き場を失って、ただ溜まっていくだけだった家族へ宛てた手紙。
私の心が僅かに震えて、封筒の端に小さな皺が寄り。
一番上の白い封筒に丸い染みがひとつ。
指でそっと触れると、それはひとつの涙で、無意識に私の頬を伝い落ちたものだったようです。
「駄目ね。もう、本当。歳を取ると涙腺が緩むっていうけれど――」
ここ最近は酷いものです。呆れるほどに、酷いものです。
以前、日下部さんは、悲しみは時間だけでは解決できない。
抱いた感情を噛みしめながらでしか、人は自分の心と向き合えない。
そうすればまた一歩前に進めると教えてくださいました。
「本当に。時間だけではどうにもならないのね」
もう十一年にもなるというのに、悲しみは薄れるどころか増すばかり。
ここに私の居場所がある。
それだけで充分だというのに、ふと気が緩むとこうです。
泣いたり、また前を向いたり、また落ち込んだり。
抑えきれない感情と、溢れ出る哀しい想いと、だけど、これをもしかしたらあの人たちに届けられるかもしれない希望と喜びと。
小さな額縁の中のもう逢えない人たちにそっと触れながら。
「私の、十一年の想いを込めた手紙。あなた達に届けられるかもしれないのね」
か細く震える声は、時計の針の音に流れて、たゆたい、消えてしまいました。
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