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御披露目会の夜の夢
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メノウがアニタとアレクサンドラーの間に産まれてから一月後のこと。宴が開かれて、近しい友人や立ち会った産婦人科の看護師や女医を中心とした人々が招かれた。飲めや歌えやの大宴会だった。
目の前の大宴会の模様にメノウは、再度目眩を覚えたが、幸せそうに笑う父アレクサンドラーと母アニタの姿に自身も心が温かくなり、自然と目眩は消え、目を細めて笑みが溢れた。
「こういう平穏が世界を変えるのかもしれないな。」
心の中でメノウは思った。
未来の自分は冥王ハーデスとペルセポネのもとで平穏にその身を捧げて仕えていた。とても幸福だった。しかし、父母の愛情には触れていなかった為かこの状況は些かくすぐったい。
「だが、私には任務がある。このまま幸せに溺れる訳にいかない。一刻も早く強くなりたい。…早く大きくならないものか…」
そう考えていたら自然と言葉が出た。
「あーだっ。」
「あら?メノウどうしたの?疲れた??」
メノウを抱いていた母のアニタがメノウの言葉に反応した。
「少し夜遅くまで起こしていたみたいね。貴方。メノウと私は先に休ませて頂きますね。」
アニタがそう言ってアレクサンドラーを見るとアレクサンドラーは目を輝かせて、
「今晩はパパと寝ようか!?メノウ!
子守唄を歌ってあげよう。」
と意気揚々と答え、メノウを抱き上げた。
しかし、アレクサンドラーはシーザルタル家の当主の役目として宴に最後まで参加しなければならないので早々にアニタが却下したのだった。
結果、アニタとメノウは皆より早めの就寝を許されたのだった。
アニタとメノウの部屋にたどり着くとそれまでアニタを先導していた侍女が扉を開けてアニタとメノウを部屋の中に入るまで見届けた。侍女は深々とお辞儀をして、
「おやすみなさいませ。奥方様。メノウお嬢様。」
と優しく穏やかに云うと退室した。
「さぁ、メノウ。ベッドに行きましょうね♪寝る時間よー♪」
アニタが歌うように言うとメノウを優しくベッドに寝かせ子供用に作られ羽毛布団を掛けた。
アニタは子守唄を歌い始めた。
唄はメノウの耳より脳内に入り込み、頭の中がふわふわ、とろとろとし始め、意識が包まれて消えた。
メノウは夢の中へと旅立った。
夢の中では、父アレクサンドラーと母アニタが笑って踊っている。その横には懐かしくなりつつあるペルセポネと冥王ハーデスが微笑んで語り合っていた。メノウは近づいてみたが、何を話していたかは聞こえなかった。
それでも、とても幸せな夢だった。
眠るメノウの目尻から涙が零れ、落ちる前にアニタはメノウの頬を優しく撫で拭った。
「メノウ、おやすみなさい。私の可愛い子♪」
目の前の大宴会の模様にメノウは、再度目眩を覚えたが、幸せそうに笑う父アレクサンドラーと母アニタの姿に自身も心が温かくなり、自然と目眩は消え、目を細めて笑みが溢れた。
「こういう平穏が世界を変えるのかもしれないな。」
心の中でメノウは思った。
未来の自分は冥王ハーデスとペルセポネのもとで平穏にその身を捧げて仕えていた。とても幸福だった。しかし、父母の愛情には触れていなかった為かこの状況は些かくすぐったい。
「だが、私には任務がある。このまま幸せに溺れる訳にいかない。一刻も早く強くなりたい。…早く大きくならないものか…」
そう考えていたら自然と言葉が出た。
「あーだっ。」
「あら?メノウどうしたの?疲れた??」
メノウを抱いていた母のアニタがメノウの言葉に反応した。
「少し夜遅くまで起こしていたみたいね。貴方。メノウと私は先に休ませて頂きますね。」
アニタがそう言ってアレクサンドラーを見るとアレクサンドラーは目を輝かせて、
「今晩はパパと寝ようか!?メノウ!
子守唄を歌ってあげよう。」
と意気揚々と答え、メノウを抱き上げた。
しかし、アレクサンドラーはシーザルタル家の当主の役目として宴に最後まで参加しなければならないので早々にアニタが却下したのだった。
結果、アニタとメノウは皆より早めの就寝を許されたのだった。
アニタとメノウの部屋にたどり着くとそれまでアニタを先導していた侍女が扉を開けてアニタとメノウを部屋の中に入るまで見届けた。侍女は深々とお辞儀をして、
「おやすみなさいませ。奥方様。メノウお嬢様。」
と優しく穏やかに云うと退室した。
「さぁ、メノウ。ベッドに行きましょうね♪寝る時間よー♪」
アニタが歌うように言うとメノウを優しくベッドに寝かせ子供用に作られ羽毛布団を掛けた。
アニタは子守唄を歌い始めた。
唄はメノウの耳より脳内に入り込み、頭の中がふわふわ、とろとろとし始め、意識が包まれて消えた。
メノウは夢の中へと旅立った。
夢の中では、父アレクサンドラーと母アニタが笑って踊っている。その横には懐かしくなりつつあるペルセポネと冥王ハーデスが微笑んで語り合っていた。メノウは近づいてみたが、何を話していたかは聞こえなかった。
それでも、とても幸せな夢だった。
眠るメノウの目尻から涙が零れ、落ちる前にアニタはメノウの頬を優しく撫で拭った。
「メノウ、おやすみなさい。私の可愛い子♪」
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