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私はメノウ シーザルタル家の娘
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メノウは漂っていた。それは水の中の様な。
温かくて、落ち着く。
…「これが時の流れか…」
メノウは流れに身を任せて漂っていた。
目を開けることはしてみたが何も見えず真っ暗で。
だが恐れてはいなかった。むしろ安心しているくらい。
どれ程そうしていたか、メノウの意識は遠退いて、眠りにつくように消えていった。
「奥方様!おめでとうございます。愛らしい女の子にございます!」
メノウはその声でハッと目を覚ました。
目の前は白い天井。そして眼鏡をかけた初老の女性が優しい瞳でこちらを見つめていた。
初老の女性は心配そうに、
「お嬢様、声を聴かせてはくれませんね…どうしたのかしら?」
メノウを見てそう言う。メノウの体は反射的に声を上げた。
「ふッッおぎゃあッッおぎゃあッッぎゃぁあッッ」
突然泣き出した自分。
メノウ自身は戸惑って、それはもう羞恥で顔が赤くなる程恥じていた。自分が赤ん坊などとは…
未来の自分はとうに成長してから冥界に生まれ落ちたのに、再び生前のように赤子から始めるのか…
しかし、今のメノウは赤ちゃんなのでそんな思案をしているなど誰も気付かない。
そんなメノウの目の前に彼女と同じ黄緑の髪の女性が顔を近づけて微笑み言った。
「私の可愛い子、初めまして。私が貴女のママよ♪」
メノウは突然のママ発言に泣くことを忘れてポカンと口を開けたまま固まった。
メノウのママは続ける。
「あらあら、この子泣き止んだわ。ママが解るの?解るのね!凄いわ。いい子でちゅねー♪」
と嬉しそうにメノウの頬っぺたを掌で優しく包み、幸せそうに笑った。
メノウは満更でもないと感じた。と同時に自分が生きている、まだ人であった頃にこんな風に親に接してもらっていたのか、それを思い出そうとするも思い出せなかった。
周りが幸せムードのほんわかとしていた時、突然大きな音で部屋のドアが開いた。
「産まれただって!!」
ドアを蹴破るように茶色の髭の男が部屋へ入って来た。男はメノウを見つけると、涙目の顔をメノウに近づけてきたのだ。
メノウは赤ちゃんの反応なのか涙がポロポロと溢れ出てきた。メノウのママが困ったように笑い、
「貴方、いきなりそれはありませんでしょう?
この子が怖がっています。少し離れてあげてくださいな。」
どうやらこの茶髭のおっさんは私の父親ということらしいな。
メノウは涙をママに拭かれながら思った。
メノウのパパ、名をアレクサンドラー・シーザルタルというらしい。赤ん坊のメノウに深々とお辞儀をして自己紹介してきた。ちなみにママはアニタという。メノウのパパは胸を張って高らかに言った。
「この子の名はもう決まっているよ。…メノウ…だ!!」
……え?
冥界での名前がそのまま今の私の名に??どういうこと?
困惑するメノウを抱いていたママは
「素敵な名前!ね、メノウ。これから貴女はメノウよ。メノウー♪」
幸せそうに自分の名前を呼ぶ。
それがやけに嬉しいのだ。
葛藤の末に、メノウはくらりと目眩がした。
あぁ、ペルセポネ様、どうやら私、間違った所に来てしまったみたいです。
呆然とするメノウを余所にメノウの両親と初老の女性、他数名の女性たちはやれ、宴の準備だ!!、御披露目会は何日に??等々の話し合いを和気あいあいと論じていたのだった。
温かくて、落ち着く。
…「これが時の流れか…」
メノウは流れに身を任せて漂っていた。
目を開けることはしてみたが何も見えず真っ暗で。
だが恐れてはいなかった。むしろ安心しているくらい。
どれ程そうしていたか、メノウの意識は遠退いて、眠りにつくように消えていった。
「奥方様!おめでとうございます。愛らしい女の子にございます!」
メノウはその声でハッと目を覚ました。
目の前は白い天井。そして眼鏡をかけた初老の女性が優しい瞳でこちらを見つめていた。
初老の女性は心配そうに、
「お嬢様、声を聴かせてはくれませんね…どうしたのかしら?」
メノウを見てそう言う。メノウの体は反射的に声を上げた。
「ふッッおぎゃあッッおぎゃあッッぎゃぁあッッ」
突然泣き出した自分。
メノウ自身は戸惑って、それはもう羞恥で顔が赤くなる程恥じていた。自分が赤ん坊などとは…
未来の自分はとうに成長してから冥界に生まれ落ちたのに、再び生前のように赤子から始めるのか…
しかし、今のメノウは赤ちゃんなのでそんな思案をしているなど誰も気付かない。
そんなメノウの目の前に彼女と同じ黄緑の髪の女性が顔を近づけて微笑み言った。
「私の可愛い子、初めまして。私が貴女のママよ♪」
メノウは突然のママ発言に泣くことを忘れてポカンと口を開けたまま固まった。
メノウのママは続ける。
「あらあら、この子泣き止んだわ。ママが解るの?解るのね!凄いわ。いい子でちゅねー♪」
と嬉しそうにメノウの頬っぺたを掌で優しく包み、幸せそうに笑った。
メノウは満更でもないと感じた。と同時に自分が生きている、まだ人であった頃にこんな風に親に接してもらっていたのか、それを思い出そうとするも思い出せなかった。
周りが幸せムードのほんわかとしていた時、突然大きな音で部屋のドアが開いた。
「産まれただって!!」
ドアを蹴破るように茶色の髭の男が部屋へ入って来た。男はメノウを見つけると、涙目の顔をメノウに近づけてきたのだ。
メノウは赤ちゃんの反応なのか涙がポロポロと溢れ出てきた。メノウのママが困ったように笑い、
「貴方、いきなりそれはありませんでしょう?
この子が怖がっています。少し離れてあげてくださいな。」
どうやらこの茶髭のおっさんは私の父親ということらしいな。
メノウは涙をママに拭かれながら思った。
メノウのパパ、名をアレクサンドラー・シーザルタルというらしい。赤ん坊のメノウに深々とお辞儀をして自己紹介してきた。ちなみにママはアニタという。メノウのパパは胸を張って高らかに言った。
「この子の名はもう決まっているよ。…メノウ…だ!!」
……え?
冥界での名前がそのまま今の私の名に??どういうこと?
困惑するメノウを抱いていたママは
「素敵な名前!ね、メノウ。これから貴女はメノウよ。メノウー♪」
幸せそうに自分の名前を呼ぶ。
それがやけに嬉しいのだ。
葛藤の末に、メノウはくらりと目眩がした。
あぁ、ペルセポネ様、どうやら私、間違った所に来てしまったみたいです。
呆然とするメノウを余所にメノウの両親と初老の女性、他数名の女性たちはやれ、宴の準備だ!!、御披露目会は何日に??等々の話し合いを和気あいあいと論じていたのだった。
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