人探し探偵

第二話

事後報告

次の日、依頼人が事務所を訪れた。
依頼を取り消して欲しいとのことだった。
「見つかったんですか、お母さん。」
「いえ、お母さんはやっぱりいませんでした。」
彼女は全て話してくれた。
デパートで見かけたお母さんに似た人は、お母さんの姉だったらしい。
「え？行方不明の？」
「はい。」
比佐子さんの姉の美佐子さんは、中校生の頃から自分より出来の良い比佐子さんと比べられ、それに耐えられず高校の頃、家出を決意したらしい。
しかし、そのことを知った比佐子さんは姉の家出を止めようとした。
「お母さんたちは、お姉ちゃんのことを本当は大切に思ってるはずだよ。」
なんとか姉を引き留めようと、比佐子さんが思い付いたのは、誘拐ごっこ。
「誘拐ごっこ？」
「はい。自作自演の誘拐をするんです。そうすれば、さすがにお母さんたちも焦るだろうって。」
でも、計画は失敗した。
誘拐されたってことにして、美佐子さんには一週間の間旅行に行ってもらうことにしたらしい。
「そこまでは、良かったんですけど。」
美佐子さんが家に帰ると、比佐子さんが泣きながら抱きついてきたらしい。
「ごめん。ごめんなさい。って、泣いて謝ったらしいんです。」
「え？何でですか？」
「あなたの居場所を奪ってしまってごめん。っていう意味だと思うって言ってました。」
美佐子さんが誘拐されても旅行に行っても、家の中では何も変わらなかったらしい。
それどころか、失踪届けまで出そうとしていたらしい。
その事実を聞いた美佐子さんは、もう家に帰ろうとは思わなかった。
その後高校を辞め、バイトをしながら、一人で暮らしてきたらしい。
保険証も身分証も全て家に置いて出てきた。
そのため、いつの間にか失踪届けが受理され、美佐子さんは戸籍上では死んでるも同然の存在になった。

大人になり、結婚を約束した相手ができた。
しかし、戸籍に自分の名前はない。
そんな時、妹が死んだ。
これは、利用するしかない。
私が妹として生きよう。
そう思ったらしい。
そこで、比佐子さんの旦那さんに頼んで、死亡届けを出すのを辞めてもらった。

「これが全てです。」
「わかりました。では、キャンセル料のお支払をお願いします。」
「あ、はい。」
依頼人は、依頼のキャンセル料を払うと、事務所を出ていった。
よし、これで依頼終了だな。