真面目ちゃんの裏の顔

てんてこ米

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第十三章 学園祭二日目

28 用意周到 ※ちょっとR18

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 らしくない失態に気付くと余計に恥ずかしくなり、呉宇軒ウーユーシュェンは楽しげな眼差しから隠れるように両手で顔を覆った。手のひらに触れた頬は異様なほど熱を持っていて、さぞかし真っ赤に染まっていることだろう。
 指の隙間から幼馴染を覗き見ながら、彼は弱々しい声でそっと尋ねた。

「……今の、忘れてくれる?」

「動画に残っているから無理だ」

 すっかり忘れていたが、すぐ横でビデオカメラが回っていたのだった。呉宇軒ウーユーシュェンはちらりとカメラを見て自分の顔が写っているわけではないと確認してから、心底楽しそうに笑っている李浩然リーハオランに視線を戻す。
 いつもの優等生然とした態度はどこへやらで、今日の李浩然リーハオランは随分と悪ノリしている。まんまとしてやられた悔しさに歯噛みしたものの、呉宇軒ウーユーシュェンは強気な態度を取り戻して、笑顔の幼馴染をキッと睨みつけた。

「わ……笑っていられるのも、今のうちだからな!」

 恥ずかしさの滲んだ声には全く説得力がなかったが、ここで引き下がるわけにはいかなかった。悪戯の達人と名高い自分が、このまま真面目ちゃんにやられっぱなしで良いわけがない!
 深呼吸してどうにか心を落ち着かせると、何か言う前に李浩然リーハオランが静かに口を開いた。

「誕生日までひと月を切った」

 李浩然リーハオランの誕生日は十一月の二十三日で、確かにもうひと月を切っている。だが、それが今の状況と何の関係があるのだろう。

「……だな。それがどうした?」

「そろそろ準備を始めないと」

 彼の答えはどこか要領を得ない。考えても分からず、何の準備だと尋ねようとするも、エアーマットに背中を預けていた李浩然リーハオランが急に身を起こした。
 二人の体がまた密着して、呉宇軒ウーユーシュェンはまた彼が何か仕掛けてくるのではと思わず身構える。
 ところが、李浩然リーハオランは彼の更に後ろに手を伸ばし、何かを手に取ったようだった。それが何なのか確かめる間もなく尻の辺りに違和感を覚え、次の瞬間、腰に巻いているタオルがぺろりと捲られた。

「ちょっ、何してんだよ!」

 突然尻を丸出しにされ、呉宇軒ウーユーシュェンは抗議の声を上げる。向かい合わせだから相手からは見えないものの、先ほどまで尻を覆っていたものが無くなると変な感じだ。
 李浩然リーハオランは再び背もたれに体を預け、眉間にシワを寄せながら不満を訴えてくる幼馴染の腕をぐいと引く。そのせいで、呉宇軒ウーユーシュェンはまたしても彼の胸にもたれかかる形になってしまった。
 文句の一つでも言いたかったが、今日は彼にやられっぱなしで言いたいことがありすぎる。結局何も言えず、呉宇軒ウーユーシュェンは急に傍若無人になった幼馴染をジト目で睨むにとどめた。
 いつもの優等生は一体どこへ行ってしまったのだろうか。李浩然リーハオランは抗議の視線を涼しい顔で受け流し、まるで意に介していない。

「今日から少しずつ慣らしていこうと思って」

「慣らす?」

「うん。君の体を」

 先ほどからさっぱり話が見えなくて、呉宇軒ウーユーシュェンは眉をひそめた。のらりくらりとはぐらかされ、質問をしたとしても答えてくれそうにない雰囲気だ。
 散々弄ばれた上に仕返しもできず不貞腐れていると、不意に腰の辺りに生暖かい液体がつぅーっと垂れてくる。初めは天井の水滴が落ちてきたのだろうと思ったが、どうも様子がおかしい。
 水滴が落ちてきたにしては粘り気があり、ゆっくりと肌を撫でるように滴っていく。それも止まることなく、結構な量が垂れてきているようなのだ。
 その妙にとろみのある謎の液体は尾骨から尻の割れ目へと流れ落ち、まだ乾いたままの肌をしとどに濡らす。呉宇軒ウーユーシュェンの頭の中に、ふとある映画のワンシーンが蘇った。

浩然ハオラン、風呂場にエイリアンがいる!」

 そう叫ぶなり、呉宇軒ウーユーシュェンは幼馴染に体当たりするように抱きついた。
 その液体はまさしく、エイリアンの口から垂れてきた唾液のようだったのだ。ところが、李浩然リーハオランは彼の悲痛な訴えにぷっと吹き出し、肩を震わせて笑い始める。

「なっ、なんだよ! 笑うなって!」

阿軒アーシュェン、エイリアンはいない」

「じゃあ何なんだよこれ! タマの裏まで流れてきてるんだけど!」

 体勢のせいで、滴り落ちる液体はあらぬ所まで濡らし始めている。慌てふためく呉宇軒ウーユーシュェンに、李浩然リーハオランは笑いを堪えながら自分の手の中にあったものを見せた。
 それは、中に白濁色の液体が入った透明なボトルだった。ご丁寧にもボトルの表面に『ラブローション』と片仮名で文字が書かれている。
 謎の液体の正体がただのアダルトグッズだと分かってほっとしたものの、呉宇軒ウーユーシュェンは書かれている日本語を改めて見て首を傾げた。

「なんで日本語?」

「国産のは信用できないから輸入した」

「輸入って、いつ買ったんだよ」

 海外の物を買う時、注文してから届くまでにかなりの時間がかかるはずだ。ということは、彼はずっと前からこうすることを計画していたのだろう。それこそ、呉宇軒ウーユーシュェンが彼のプロポーズを受ける前だった可能性もある。
 色々なことがあって下半身の昂りは落ち着いてきたものの、李浩然リーハオランの方はまだまだ元気いっぱいだ。呉宇軒ウーユーシュェンはやっと一矢報いるチャンスが来たと口の端を吊り上げ、彼の手からボトルを奪い取った。

「これって、まだ他にもあんの?」

「うん。君のためにたくさん買っておいた」

 彼の答えを聞いて、呉宇軒ウーユーシュェンはますます笑みを深める。たくさんあるのなら、ちょっとくらい贅沢に使っても大丈夫だろう。
 ボトルを傾けると、中の液体は粘度が高いのかゆっくりと動き始める。何をするのか不思議そうに見ている李浩然リーハオランの目の前で、彼はこれ見よがしに高い位置から二人の密着した下半身に向かってローションを垂らした。
 腰に巻いたタオルがローションを吸ってずっしりと重くなる。ボトルの中身をほとんど使い切る頃には、呉宇軒ウーユーシュェンのタオルだけでなく、その下にある李浩然リーハオランのタオルまでぐっちょりと濡れていた。

然然ランラン、お前へのご褒美もまだだったよな?」

 執事の格好をした李浩然リーハオランをからかった時に、ご褒美をあげる約束をしていたのだ。悪戯っ子の顔をした呉宇軒ウーユーシュェンは、彼の目を真っ直ぐに見つめて微笑み、すり寄るように身を寄せた。すると、二人の間でぐちゅりと卑猥な水音がして、余裕ぶっていた李浩然リーハオランの表情が僅かに強張る。
 たっぷり垂らしたローションは見事にその役目を果たしていた。呉宇軒ウーユーシュェンがゆっくりと腰を揺らすと、潤滑油で滑りの良くなった体は引っかかることもなく滑らかに動く。

「こういうのは好き?」

 下半身を擦り付けるような動きを繰り返しながら、呉宇軒ウーユーシュェンは誘惑するように甘やかな声で尋ねた。
 李浩然リーハオランは小さく息を呑んだものの、押し黙ったままだ。ただ、今日はいつものように止めるように言う気はないようだった。
 答えはなくとも、呉宇軒ウーユーシュェンには彼の心が手に取るように分かった。覗き込んだ瞳の奥に欲望の炎が燃えている。下敷きにした李浩然リーハオランのものは、返事の代わりにどんどん硬さを増していった。

「どう? 気持ちいい?」

 ぬるぬるとした布の感触は、治まりかけていた呉宇軒ウーユーシュェンの体にも再び火を点けた。擦れるたびに柔らかな刺激が敏感な部分を包み込み、何とも言えない甘い痺れをもたらす。いつしか彼の口からは甘い吐息が漏れ始めていた。
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