陽炎と裂果

かすがみずほ@3/25理想の結婚単行本

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夜明けのうたごえ

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「はあっ、もっ、これ以上……っ、がまん、できないぃ……っ、今すぐ、奥までお前のこれ入れて……っ、突かれたぃぃ……っ」
 イキ過ぎて震えている媚肉を相手の亀頭に押し付けて、誘おうとするのに……ちょっと擦れただけで、気持ち良過ぎて自分の方が泣きそうになってしまう。
「分かったから、落ち着け……、俺ももう限界だ……」
 オルファンは俺の目尻にキスしながら、竿に指を当て、焦ったい程ゆっくりとペニスを押し付けてきた。
「ンン……ッ、あー……入って……」
 トロトロの入り口がだらしなく蜜を垂らしながら拡がって、直ぐに赤黒い凶器を呑み込んでゆく。
「これ好き……っ、あっ、奥まで来る……っ、あ、ぁっ」
 犯される悦びに満たされたそこは、勝手にびくびくと締まって、身体の上のオルファンが呻いた。
「早く……動いて、突いて、欲しい……っ」
 急かすのに、相手はなかなか動かない。
 それならと膝を開いて彼の腰に絡め、密着させながら腰を小刻みに前後させた。
「ンッ、気持ちい……っ、おくっ、硬いの当たって気持ちい……っ」
「ちょっ、勝手に動くな……イアン……っ」
「ンア……っ!」
 締め付けたペニスがドクッ、ドクッと拍動して、俺の腹の奥に熱いものが溢れ出す。
「ん、……っ、中に、出て……、」
「っだから、言っただろうが……」
 よほどプライドに来るのか、汗の浮かんだ怒った顔で視線を逸らされた。
 でも、配慮してやれる余裕はこっちにもない。
「……いっぱい、出していいから……っ、ちゃんとしたい……っ」
「分かってるから、そうしがみつくな」
 言われて、渋々と両脚を緩めると――その途端、イッたばかりの筈なのに太く硬いままの雄が、俺の奥までズンと強く捩じ込まれた。
「っ! あっ!」
 一瞬息が止まって、同時に目も絡むような――子宮で感じる、痛みにも近いような快感が迫り上がる。
「ん、う……!」
 無意識に締まる奥をグリグリとこじ開けられて、気がおかしくなってしまいそうな悦びで身悶えた。
「はあっ、あぁ……っ、好き、オルファン、愛してる……っ、はあっ、もっと……っ」
「愛してる……、イアン……っ、」
 逞しい腕で抱きしめられながら再び奥まで貫かれて、頭が真っ白になるような、膣の快感の極地に落ちてゆく。
「あ、……っん……っ」
 再び深い口づけを交わしながら迸る精を受けて、終わっても快楽にトロトロに溶かされたままの、雌の性に浸った。
「はあっ、……はあっ……っ」
 ヒクヒクしている肉びらからずぽんと性器が抜け、ぬらぬらと白い液体を纏った亀頭が跳ね上がる。
 同時に、俺のそこからどろりと精が溢れ出して、尻の穴の方に垂れ落ちた。
「……や、抜くなんて……っ、嫌、だ……っ」
 首を振って強請ると、オルファンは俺の身体を横に倒して抱き、背中から包み込むような体勢で抱き締めてきた。
「じゃあ、今度は後ろから入れる……」
 天井側の片脚の腿を腹側に折られ、拡げられた陰部に、再度挿入されていく。
「う、ん、……」
 密着して抱き締められながらのそれは、快楽と一緒に強い安心感も湧いて、フワフワと甘美な心地よさに包まれた。
 眠気に襲われながら、ふっと大事なことを言うのを忘れていたのを思い出す。
「オルファン……。そういえば……」
「何だ……?」
 普段ならとても恥ずかしくて打ち明けられなかったであろう、それが、つるりと唇を滑った。
「それまでは一度も無かったのに、マウラカに帰ってから……その……時々……」
「うん?」
「血が、出るようになって……」
「どこからだ。怪我でもしたのか」
 声色が急に厳しくなり、酷くバツが悪くなった。
「ち、違う……。今、お前の入ってる所……」
 後ろを振り向いてふにゃっと笑って見せたが、相手は青くなったり赤くなったりして、最後は怒り出してしまった。
「……イアンお前……っ、そういう大事なことは――早く言え!」
「……っ、悪かった……でも、本当にそういう身体になったのかは、分からないし……」
 流石に恥ずかしくなってきて言葉を濁すと、抱き締めた手のひらが滑り、俺の腹に触れた。
「……お前、そんな身体でこんなことしたら……元に戻りたかったんじゃないのか」
 頬に口づけながら、穏やかな声に聞かれて、俺は首を振った。
「お前が今の俺でいいなら、もうずっとこのままでいい……」
 振り向いたまま口づけされて、舌を絡めながらゆるゆると雄が動き始めた。
「ん、っ……う」
 優しく奥を小刻みに突かれて、すぐに硬く逞しいペニスにメロメロにされていく。
「……遠慮なく孕ませちまうぞ……良いのか」
「ん、いぃ……っ、もっと、オルファン……っ」
 自分でも腰を後ろに押し付けて貪ると、益々中の怒張が大きくなった。
「んぁ……っ、あっ、凄い、奥まで来る……っ、はぅ……っ」
 唇が外れるほど乱れる俺を、オルファンがしっかりと抱いて下半身を固定した。
「……お前の子宮が下がってんだよ……このまま、全部注ぎ込んでやる。孕め、イアン……」
 奥まで強く突き込み、ゆっくりと抜き出される、焦ったい程ゆっくりとした抽挿が、水音と共に繰り返される。
 精液と膣液でやわやわに崩れた入り口と、受け入れる奥とがその度にキュンと震えて悦び、孕まされる性を植え付けられた事を自覚した。
「はあっ……っ、気持ちい、もっと……早くぅ……っ」
 強請っているのに、スローピストンは相変わらずのままだ。
 焦れた蜜壺が勝手に細かい収縮を始め、絶頂が近くなり始めると、腹を撫でていた手が下りてきて、痛いほど張り詰めた花芯を柔らかく弄り始めた。
「あぅん……っ! くぅ……っ!」
「なるべくお前の締め付けだけで吸い取れ。……その方が孕みやすいだろ……」
「や、……はっ、……ンン~~ッ……」
 直後に、ゆっくりと焦らされ続けた後の、脳が蕩けそうな程激しい絶頂が下半身を襲った。
 キュウキュウと激しく締め付けるのに合わせ、オルファンが吐精し、俺の中を種で満たしていく。
 暫くの間イくのが止まず、ぐったりと毛布に身体を投げ出していると、オルファンが腕の中に俺を閉じ込めたまま、囁いた。
「……イアン、お前はもう、俺のものだな……」
 ふっと笑って、振り向く。
 濡れた黒曜石の瞳に、俺は言い返した。
「そうじゃない。オルファンが俺の男になったんだろう……?」


□□□

 ――数日の後、マウラカは雨季に入った。
 家畜が育ち、花の咲く季節だ。
 毛皮を敷いた寝床で、静かに目が覚めた。
 俺の快適なテントは引き払われ、無くなってしまったけれど、オルファンの腕の中はもっとずっと居心地がいい。
 外から、遠く伸びる優しげな歌声が聞こえる。
 うつらうつらとしながら、赤銅色の逞しい腕の下を這い出した。
 テントの入り口を塞ぐ布をめくりあげると、眩しい朝日が広大な草原を白く焼き始めている。
 遠くに腰の折れたジュマリの姿が見えた。
 強い風と、光の中を歩きながら、途切れ途切れに歌っている。

 ……山の神にかいなに抱かれし赤い髪の子
 眠れ、安らかに 星はお前のもの……

 そのマウラカ語の断片的な単語から、急に気づいた。
 ……彼女の歌っているのは、子守唄だ。
 ……きっと、赤ん坊だった頃のオルファンも聞いたに違いない歌だ。
 一体、どんな未来が見えているのかは分からない。
 でも、坑道の中で初めて出会った彼女には、今の俺とオルファンが見えていたに違いない。
「ジュマリ。……その歌を、俺にも教えてくれ」
 声を掛けると、珍しく、彼女はしわくちゃの顔に笑顔を浮かべ、頷いた。
 気付くと、オルファンがいつの間に起きたのか、眩しい光に目を細め、背後に立っている。
 肩から毛皮のコートを掛けられて、ぎゅっと強く抱き寄せられ、口元が綻んだ。
 太陽が昇り、夜の向こうから戻ってきた群青色の空が大地を包む。
 草のたなびく音に混じって、さざめくような幼い笑い声が、俺の耳にも聞こえたような気がした。

(終)
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