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婚活卒業しました
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最後に懇願するみたいにそう頼みながら、彼の方を向く。
そしたら犬塚さん、キレイな顔をグシャグシャにして泣いててびっくりした。
「いっ!? 犬塚さん!?」
思わずビックリして膝頭を回して身体そっちに向けたら、両腕が伸びてきて、骨が折れそうなくらい強く抱き締められて。
「ごめんね……湊《みなと》にそんな風にまで思わせて……本当にごめん……」
誰かの体温が、こんなにも優しく自分に触れてくれるのが余りにも久しぶりで、俺もその瞬間に何かがプツンと切れて、涙腺が壊れたみたいになった。
俺が勝手にしたことを拒絶されなかったことが、何より嬉しかったんだ。
身体の痛みも、精神的にキツイことも、初めて授かったヒトの命の余りの重さも……全部俺のワガママだから、ここ3ヶ月、一人で受け止めて頑張ってきたけど、本当は、すげぇ一杯一杯だったからかもしれない。
有難う、犬塚さん……。
そう思って、そっと離して貰おうとしたけど、でも彼は俺を抱いたまま離さなかった。
髪に頬ずりするみたいにされて、耳元で、あの大好きな甘い声で……ゆっくり言い聞かせるみたいに囁かれた。
「……俺は、最初からずっと、ーー今も、湊を大好きだよ。最後に会った時も、誤解して怒ってたけどやっぱりどうしようもないくらい好きだった……。湊は俺が好きって言ったらいつも引いてたし、そのせいで逃げられたんだとばかり思ってたから、言えなかったけど……」
一瞬、頭が真っ白になって、やがてその言葉の一つ一つの意味が胸の中に落ちてきた時、嬉しくて嬉しくて、全身がブルブル震えた。
「犬塚さ……」
「ちゃんと渚って呼んで」
注意されて、えづきながら何度も頷く。
涙があふれて濡れている頬を温かい手のひらで包まれて、上を向かされた。
犬塚さんの真っ黒な優しい瞳に、情け無ぇ顔で泣いてる俺が映ってる。
「抱けば抱くほどこの人しかいないって思って辛かった。……でも湊も俺のことずっと好きでいてくれたんなら……、もう俺、言ってもいい……? 湊のことを、誰よりも、愛してる。……こんな可愛い子を二人も産んでくれた湊が、もっと愛おしくなった……」
そんなこと言われたらもう、息が出来ないくらい泣いてしまうだろ。
情けないくらい嗚咽しているのに、犬塚さんは……渚《なぎさ》は俺に追い打ちをかけてくる。
「湊《みなと》は俺の運命のつがいだから、このままこの子達ごと一生離してあげられない。それでもいい……?」
頷いて、俺もやっと自分の口から言葉を紡いだ。
「うん……俺も渚《なぎさ》が大好きだ……渚以外、誰も好きになれなかった……」
もう一度抱き直すみたいにされて、頬や髪に沢山口付けられる。
ほんとは唇で受け止めたいけど……子供も見てるしな。
岬《みさき》と航《わたる》はさっきから俺たちの身体の間を出たり入ったりしてふざけてて、擽ったい。
何だか気の抜けたような感じになって、ぼんやりと幸福感に浸っていると、渚の身体から突然がっくりと力抜けたみたいになって、すがるような感じでよっかかってきた。
「な、渚……!? 大丈夫か!?」
「……良かった……。いつまでたっても電話はないし、湊の家の最寄り駅に行って匂いを探しても、何も感じられなくて……もうこの先、湊のいない世界でしか生きていけないかもしれないって思ったら、目の前が真っ暗だったから……」
そんな風に言われて、びっくりしてしまった。
夏美さんの言う通り、本当に俺のせいで引きこもってたんだなと思って。
俺には子供達がいたから、離れても何とか楽しくやれてたけど、この人は1人でそんなに思い詰めてたんだなぁ……。
何だか愛おしくて可愛い。
「ほんとごめんな。これからはちゃんと連絡途切れねぇようにするから。メッセージアプリももっかい繋がろうぜ。あと、殆ど使ってねぇけどメールアドレスも教えるしーー」
背中を叩いてやりながら必死に色々提案していたら、すっと離れて真面目な顔で正座されて、左右に首を振られた。
「そんなの、アテにならないよ。ちゃんと湊が毎日、確実に俺の所に帰ってくるようにしたい。だから、ちゃんと結婚して」
ギョッとした。一生離さないって、ホントにガチで今すぐ結婚しようって意味!?
いやいや、そこはまずは「付き合ってください」からじゃねぇのか。
だって俺たち、まともなデートしたのはたったの2回だぞ。
本交際期間0日で結婚て、蛇の目さんとかですら「もうちょっと冷静になれ」って言うんじゃねぇーの……?
なーんて俺が言ったら、また「引いてる」って嘆かれることは目に見えてるよなぁ。
同じ過ちは繰り返さないぜ、俺。
ダメになったら、その時はその時だ。結婚なんてしてみなけりゃわかんねぇ、ギャンブルみてぇなもんだって言うしな。
「分かった。結婚しようぜ」
俺はみんな一緒に幸せになれる方に賭けて、渚の手を握った。
すると毛の感触がちくちく手にあたりだし、気が付いたらそれが前脚になっていて、服とかを散らばしながら彼は一頭の大きなゴールデンレトリバーになってしまって。
興奮し過ぎて人間の姿が保てなくなってしまったんだろうか、彼は千切れんばかりに尻尾を振って俺の身体を押し倒して、ベロベロ顔を激しく舐めてきた。
「あはっ、擽ったいって! ちょっ、何で犬になってんの!? くふふ……っ」
俺、子供産んですぐじゃなかったら絶対激しく発情してたぜ、あっぶねぇ。
こうしてちゃんと初めて冷静に話できたのも、きっと岬と航のお陰だな……。
温かな金色の毛並みに思う存分頬ずりして、その身体をギュッと抱き締める。
子供達はビックリしながらクンクン匂いを嗅いでは吠え立てていて、笑ってしまった。
その内に渚が、芝生に落ちてた円盤見つけてきて俺に押し付けてきて。
それで、四人で久しぶりに本格的なフリスビーをしたんだ。
全部渚がキャッチしてたけどな。
お手本を見た子供達は大興奮で、弾むみたいに跳ねながら喜んでいた。
そんな姿を見ると、一緒に暮らしてもぜんぜん大丈夫かな、なんて思った。渚は面倒見が良さそうだし……。
ーーそんな訳で、こうして俺はついに、念願の可愛い犬を三匹も手に入れたんだ。……まあ、旦那さんと子供達なんだけど。
そしたら犬塚さん、キレイな顔をグシャグシャにして泣いててびっくりした。
「いっ!? 犬塚さん!?」
思わずビックリして膝頭を回して身体そっちに向けたら、両腕が伸びてきて、骨が折れそうなくらい強く抱き締められて。
「ごめんね……湊《みなと》にそんな風にまで思わせて……本当にごめん……」
誰かの体温が、こんなにも優しく自分に触れてくれるのが余りにも久しぶりで、俺もその瞬間に何かがプツンと切れて、涙腺が壊れたみたいになった。
俺が勝手にしたことを拒絶されなかったことが、何より嬉しかったんだ。
身体の痛みも、精神的にキツイことも、初めて授かったヒトの命の余りの重さも……全部俺のワガママだから、ここ3ヶ月、一人で受け止めて頑張ってきたけど、本当は、すげぇ一杯一杯だったからかもしれない。
有難う、犬塚さん……。
そう思って、そっと離して貰おうとしたけど、でも彼は俺を抱いたまま離さなかった。
髪に頬ずりするみたいにされて、耳元で、あの大好きな甘い声で……ゆっくり言い聞かせるみたいに囁かれた。
「……俺は、最初からずっと、ーー今も、湊を大好きだよ。最後に会った時も、誤解して怒ってたけどやっぱりどうしようもないくらい好きだった……。湊は俺が好きって言ったらいつも引いてたし、そのせいで逃げられたんだとばかり思ってたから、言えなかったけど……」
一瞬、頭が真っ白になって、やがてその言葉の一つ一つの意味が胸の中に落ちてきた時、嬉しくて嬉しくて、全身がブルブル震えた。
「犬塚さ……」
「ちゃんと渚って呼んで」
注意されて、えづきながら何度も頷く。
涙があふれて濡れている頬を温かい手のひらで包まれて、上を向かされた。
犬塚さんの真っ黒な優しい瞳に、情け無ぇ顔で泣いてる俺が映ってる。
「抱けば抱くほどこの人しかいないって思って辛かった。……でも湊も俺のことずっと好きでいてくれたんなら……、もう俺、言ってもいい……? 湊のことを、誰よりも、愛してる。……こんな可愛い子を二人も産んでくれた湊が、もっと愛おしくなった……」
そんなこと言われたらもう、息が出来ないくらい泣いてしまうだろ。
情けないくらい嗚咽しているのに、犬塚さんは……渚《なぎさ》は俺に追い打ちをかけてくる。
「湊《みなと》は俺の運命のつがいだから、このままこの子達ごと一生離してあげられない。それでもいい……?」
頷いて、俺もやっと自分の口から言葉を紡いだ。
「うん……俺も渚《なぎさ》が大好きだ……渚以外、誰も好きになれなかった……」
もう一度抱き直すみたいにされて、頬や髪に沢山口付けられる。
ほんとは唇で受け止めたいけど……子供も見てるしな。
岬《みさき》と航《わたる》はさっきから俺たちの身体の間を出たり入ったりしてふざけてて、擽ったい。
何だか気の抜けたような感じになって、ぼんやりと幸福感に浸っていると、渚の身体から突然がっくりと力抜けたみたいになって、すがるような感じでよっかかってきた。
「な、渚……!? 大丈夫か!?」
「……良かった……。いつまでたっても電話はないし、湊の家の最寄り駅に行って匂いを探しても、何も感じられなくて……もうこの先、湊のいない世界でしか生きていけないかもしれないって思ったら、目の前が真っ暗だったから……」
そんな風に言われて、びっくりしてしまった。
夏美さんの言う通り、本当に俺のせいで引きこもってたんだなと思って。
俺には子供達がいたから、離れても何とか楽しくやれてたけど、この人は1人でそんなに思い詰めてたんだなぁ……。
何だか愛おしくて可愛い。
「ほんとごめんな。これからはちゃんと連絡途切れねぇようにするから。メッセージアプリももっかい繋がろうぜ。あと、殆ど使ってねぇけどメールアドレスも教えるしーー」
背中を叩いてやりながら必死に色々提案していたら、すっと離れて真面目な顔で正座されて、左右に首を振られた。
「そんなの、アテにならないよ。ちゃんと湊が毎日、確実に俺の所に帰ってくるようにしたい。だから、ちゃんと結婚して」
ギョッとした。一生離さないって、ホントにガチで今すぐ結婚しようって意味!?
いやいや、そこはまずは「付き合ってください」からじゃねぇのか。
だって俺たち、まともなデートしたのはたったの2回だぞ。
本交際期間0日で結婚て、蛇の目さんとかですら「もうちょっと冷静になれ」って言うんじゃねぇーの……?
なーんて俺が言ったら、また「引いてる」って嘆かれることは目に見えてるよなぁ。
同じ過ちは繰り返さないぜ、俺。
ダメになったら、その時はその時だ。結婚なんてしてみなけりゃわかんねぇ、ギャンブルみてぇなもんだって言うしな。
「分かった。結婚しようぜ」
俺はみんな一緒に幸せになれる方に賭けて、渚の手を握った。
すると毛の感触がちくちく手にあたりだし、気が付いたらそれが前脚になっていて、服とかを散らばしながら彼は一頭の大きなゴールデンレトリバーになってしまって。
興奮し過ぎて人間の姿が保てなくなってしまったんだろうか、彼は千切れんばかりに尻尾を振って俺の身体を押し倒して、ベロベロ顔を激しく舐めてきた。
「あはっ、擽ったいって! ちょっ、何で犬になってんの!? くふふ……っ」
俺、子供産んですぐじゃなかったら絶対激しく発情してたぜ、あっぶねぇ。
こうしてちゃんと初めて冷静に話できたのも、きっと岬と航のお陰だな……。
温かな金色の毛並みに思う存分頬ずりして、その身体をギュッと抱き締める。
子供達はビックリしながらクンクン匂いを嗅いでは吠え立てていて、笑ってしまった。
その内に渚が、芝生に落ちてた円盤見つけてきて俺に押し付けてきて。
それで、四人で久しぶりに本格的なフリスビーをしたんだ。
全部渚がキャッチしてたけどな。
お手本を見た子供達は大興奮で、弾むみたいに跳ねながら喜んでいた。
そんな姿を見ると、一緒に暮らしてもぜんぜん大丈夫かな、なんて思った。渚は面倒見が良さそうだし……。
ーーそんな訳で、こうして俺はついに、念願の可愛い犬を三匹も手に入れたんだ。……まあ、旦那さんと子供達なんだけど。
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