【コミカライズ単行本発売中】理想の結婚~俺、犬とお見合いします

かすがみずほ@理想の結婚二巻発売中

文字の大きさ
51 / 82
俺、犬と結婚します

51

しおりを挟む
 その後、渚はすぐに職場に復帰したらしい。
 心配だったけど、同族企業だからそこまで風当たりも無かったみたいだ。
 今までの仕事の穴は、二人の弟さんで埋めてたとか……何だか申し訳なかった。
 俺は相変わらず育児休暇中。
 子供達を寝かせた後、毎晩電話して、今まで話せなかった分を取り戻すみたいに沢山のことを渚と話し合った。
 住む場所のこと、挨拶と両親顔合わせの日程、どこで保育園を探すかと、俺の復職計画、お袋のこと……。
 今まであれだけ拗れていた割には、俺たちの結婚計画はたいした議論もなく着々と固まった。
 家は、引っ越したばっかりだけど、そこに渚も入るとなると手狭なので、やっぱり犬塚家のマンションの一室を貸して貰うことにした。
 二人が保育園に通いだして、同時に熱出したりした時に預ける事を考えると、両親がどっちも近い方がいいし、職住近接がやっぱり望ましかったので。
 そういや職場にも結婚の報告をしたんだけど、俺のことは出産も含めやっぱり結構な噂になってるみたいだった。俺がオメガだってこと自体知らない同僚も結構いたもんな。
 復帰しづれぇなぁと思うけどまあ仕方ない。その内に菓子折り持って大学に挨拶に行こう。
 まあそんな感じで順調ではあったんだけど、ーー話し合いが進んで、お互いの両親への挨拶を始めると、今度はなかなかに波乱と緊張の連続だった。
 いや、反対されたとかそんな訳じゃねぇんだけど……。
 まず犬塚さんがウチに来てくれたのは良かったんだが、いきなりお袋に土下座始めちまってさ。
 突然目の覚めるような金髪のハンサムがやってきたと思ったら、唐突にフローリングに頭擦り付けて「順番が逆で本当に申し訳ないけれど、息子さんをください」みたいなことやり始めちまったもんだから、お袋も目が点だし、やめさせるの大変だった。
 俺はもうすぐ35のオッサンだし、そもそもこっちが勝手に産んだのであって渚は一ミリも悪く無ぇじゃん。
 渚はちょっと不安になる程に根が真面目なんだなーと改めて思ったよ。
 そして鳩羽家側の挨拶を済ませた後は、今度は俺が犬塚さん側に挨拶に行く番で。
 こっちはこっちで何故だか一族総出の大歓迎パーティーが用意されてたのが俺的には驚愕だった。
 むしろ俺は、大事な息子を引きこもりにしたり、勝手に子供二人も産んでみたり、殆ど殺される覚悟で行ったんだ。それこそ渚ばりに土下座でもしようかって思ってたから。
 ところが逆におめでたいムードで、恐縮しつつも、出だしはポカーンとなった。
 マンションの壁をぶち抜いて繋いだ広大過ぎるリビングに、可能な限り全員、人身人面で集まった犬塚一族に歓迎されながら、すっかり圧倒されて……。
 美人で品の良い癒し系のお母さんも、渚を年取らせたみたいな優しそうなお父さんも、俺や連れてった子供達を温かく迎えてくれて、突然孫が増えたにも関わらず大喜びで、凄ぇ有難かった。
 それと、犬塚さんの真面目な方の弟さん、いかにも「家長」て感じの厳格なお祖父さん、洋楽好きらしい夏美さんのお父さんにあたる犬塚さんの叔父さん、他にも親戚複数人とその家族がウワーッと出てきて、しかも全員顔が似てるもんだから、主要人物以外はとても一発で覚えられる気がしなくてさ。
 そうそう、渚をキリッとさせたような顔の、革ジャン着たパンクな感じの美青年に突然、「あはっ、美人さん久しぶりだねー!」なんて言われて、その人だけは直人さんだと分かったくらいかな。
 あと、綺麗で活発そうな彼の奥さんは、やっぱり橋で会ったあの飼い主の女性で、「あらあら!」と驚かれた。
 その奥さんーー恵《めぐみ》さんだけは普通の人間で、「大変だけど頑張ってね! なにか困ったことがあったら相談して!」と励まされて、連絡先を貰えた。
 獣人ハーフの子育ての先輩だし、これから気軽に相談できる相手ができて、それは凄ぇ心強かったなー。
 そうそう、それから夏美さんは……来ていなかった。
 聞いた感じだと、まだ渚と顔合わせ辛くて、今回も自粛したらしい。式の出席ももしかすると、難しいかも……って話だった。
 ある意味彼女がいなかったら俺たち再会することもなかったかもしれないし、何というか……複雑な気持ちだ。
 いつか、わだかまりなく会える日が来ると良いんだけどな。岬と航も彼女によく懐いてたし……。
 そして夕方、賑やかな歓迎会が終わり、俺が渚に送られながら子供達連れてお暇しようとした時、お母さんに呼び止められたんだ。
「渚が引きこもりやめてから、一度もちゃんと二人で会えていないんでしょう。式場探しとか指輪の用意とか色々あるでしょうから、今度ウチで子供達を預かるわ。新婚旅行の時も預かるんだし、今から少しずつ慣らしてあげないとね」
 ーーそんな優しい提案に、とんでもないと俺は遠慮したんだけど、渚に、獣人は一族みんなで協力して子育てするんだよ、とやんわり説得されてお言葉に甘えることになった。
 確かに、夏美さんも秀人くんの面倒みたりしてたけど……。普通なら未婚の女性が従兄弟の子を預かるとかあんまり無ぇもんな。
 本当に良いのかなって思ったけど、結局、俺と渚はその日から毎週日曜、数時間ずつ犬塚家に子供を預けて結婚の具体的な準備をすることになった。
 ……それにしても新婚旅行なんて、行く気すら全く無かったけどなぁ。
 赤ちゃん放って遊びに行くなんて、と世の中の人には叩かれそうだけど、どうやら獣人の一族ではちっちゃい内から預けあって同世代の子供をみんな兄弟みたいに育てるの、ごく普通のことらしい。
 俺は物心ついた時から親戚全然居なかったし、こういうの、慣れねぇけど……純粋に嬉しくて有難かった。
 いつか、俺も恩返し出来ると良いんだけどな……。


 そしてーー次の週から、子供二人を少しずつ犬塚家に慣らしていきながら、俺たちは結婚へ向けたタスク・リストを一つ一つこなし始めた。
 まず最初に実行したのは、蛇の目さんのいるBLネット池袋に寄って、結婚報告をすること。
 成婚料取られるシステムの会社じゃねぇけど、縁結びの神だから一応な。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

いい加減観念して結婚してください

彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話 元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。 2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。 作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。

【完結】この契約に愛なんてないはずだった

なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。 そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。 数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。 身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。 生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。 これはただの契約のはずだった。 愛なんて、最初からあるわけがなかった。 けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。 ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。 これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。

処理中です...