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第43話 母親
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「ごふぉああぁ」
ラリアの一撃を受けたアロンは、喉の奥から粘り気のある低い呻き声を上げ、ブクブクと赤い泡を吹きながら白目を剥き、その場に蹲った。
嫌な静寂が辺りを包む。
ラリアはアロンから右脚を下ろすと、ゆっくりと振り向き、ヘイトへ向けてニヤニヤと不気味な笑みを浮かべた。
「おい、ラリア……お前、まさか……」
「ツギハ……ツギハ、オマエノバン」
ラリアはそう言うと、ゆっくりとした足取りで、ヘイトへと歩を進めた。
「ラリア、お前……マジでどうしちまったんだよ?……」
ラリアから発せられる禍々しい魔力に圧倒されながらも、ヘイトは精一杯に口を開き、彼女へ問いかけた。
そんなヘイトの言葉に応える事なく、ラリアはその不気味な笑みを保ったまま、ヘイトへと歩み寄ると彼に危害を加えるべく、その狂気に満ちた右拳を振りかぶった。
「くそぉっ……何でだよ……」
ラリアの攻撃に身構えながら、ヘイトが悔しそうに呟く。
ラリアが振りかぶった拳をヘイトへと繰り出そうとしたその瞬間ーー
「ラリア!!!」
マザー・グリスの声が響き渡った。それに呼応して、ラリアの動きがピタリと止まる。
「ラリア!お願い、目を覚まして!私の声、分かるでしょ⁈」
「マザー……グリス……」
そう呟き、ゆっくりとマザー・グリスの方へと振り向くラリア。そんな彼女をマザー・グリスは包む様に優しく抱きしめた。
「ラリア、もう大丈夫よ。怖がらなくていいの。さあ、戻ってらっしゃい。大丈夫だから」
「マザー・グリス……ワ、私……」
ラリアの瞳が紅玉色を取り戻す。
「私……一体、どうしたの?マザー・グリスが斬られそうになってからの記憶が無くて……何で、勇者達が倒れてるの?何で、ヘイトは怯えた顔をしているの?」
困惑した表情で尋ねるラリアへ、マザー・グリスは優しく応えた。
「大丈夫。ラリアはね、あの勇者達から私を守ってくれたのよ。だから、何も心配しなくていいの」
「私が?本当に?」
「ええ、本当よ」
「そう……それなら、良いんだけど……」
マザー・グリスの言葉に、幾分落ち着きを取り戻し、ラリアが少し微笑んだその時ーー
「ふざけるナァ!!!」
アロンが叫びながら、フラフラと立ち上がった。口から大量の血を垂れ流しながら、ギョロリとラリア達を睨みつけるその顔付きは勇者の面影など微塵も感じられず、怨恨に満ちたその表情は地獄から這い出した亡者を思わせるものであった。
「こ、このクソ共がァ。ゆ、許さんゾォ。この勇者アロンに向かって、この様な仕打チ……殺す……殺す、殺す、コロス!殺してやル!!」
アロンは床に落ちている長剣を拾い上げると、マザー・グリスへと向かって、飛び掛かった。
「マザー・グリス!」
マザー・グリスへ殺意を剥き出しにして飛び掛かるアロンを見て、落ち着きかけていたラリアの気持ちが昂りを見せ、再び彼女の両眼は漆黒に塗り潰された。
「マザー・グリスニ、テヲダスナァ!」
そう咆哮しながら、ラリアは右の手刀をアロンの腹部目がけて突き出した。
そして、彼女の攻撃は、マザー・グリスごとアロンの腹部を貫いた。
瞬間、ラリアの両眼が紅玉色へと変わり、本来の意識が彼女に戻った。
腹部から血を流しながら、ゆっくりと崩れ落ちる。マザー・グリスとアロン。
ラリア自身、今何が起こったのか理解する事が出来ないでいた。スローモーションに映る倒れゆくマザー・グリス。その映像に刹那遅れて、右手に感じる嫌な感触が、ラリアに残酷な真実を突きつけた。
ーーえ?ウソ?だって、今さっきまで、マザー・グリスは私を抱きしめてて……
ー一意識が飛んで
ーーマザー・グリスのお腹から血が……
ーーこの右手に残る嫌な感触は何?
ーーまさか、そんな……
ーーいや、そんな筈ない
ーーでも、だって……
ーー私の右手、血塗れだ
ーーそんな、嘘だ、嘘だ、嘘だ
ーー私……
ーーマザー・グリスを殺したの?
マザー・グリスが床に倒れ込むと同時に、ラリアは全てを理解した。
「マザー・グリス!!!!!ああ……わ、私、私なんて事を……」
大粒の涙を流しながら、混乱するラリア。そんな彼女の頬にマザー・グリスが掌で優しく触れた。
「ご、ごめんなさいね、ラリア。こんな事になってしまって……」
「マザー・グリス!どうしよう⁈だって私……」
泣き噦るラリアにマザー・グリスは優しく微笑む。
「泣かないで、ラリア。私ねあなた達と暮らせて、とっても幸せだったの。私ね……昔、子供を捨てた事があるの」
「えっ?」
「私の子供も転生者でね……村の掟だからって……三つになる男の子をね、山の中に置き去りにしたの」
「……」
「最初は、村の掟だから〝仕方ない〟。〝仕方ない〟って自分に言い聞かせたの……でも、直ぐにそれが間違いだと気付いたわ。だって、自分の子供だもの。〝転生者〟である事なんて、〝背が高い〟〝足が遅い〟と同じ、ただの個性に過ぎないって。転生者である事なんて、些細な事なのに……当時の私は村の掟に惑わされて、本当に大切な事が見えていなかったの」
「……」
「それから毎日、後悔の念に苛まれたわ……何度も何度も、死のうと思った。我が子を捨てた自分を呪ったわ……。そんな時、教会からこの孤児院の仕事を頼まれたの。私は誓ったわ。もう二度と、私は自分の子供を手放さないと……」
マザー・グリスが涙を浮かべながら、ゆっくりと、優しくラリアに向かって声を掛けた。
「ありがとう……私を、また母親にしてくれて、本当にありがとう……」
「マザー・グリス……」
ラリアの瞳から涙が溢れ出す涙を、マザー・グリスが優しく拭う。
「ごめんね、最期にこんな事になっちゃって……」
「嫌だ、嫌だよ。マザー・グリス……最期なんて言わないで……」
「私……あなた達と一緒に暮らせて、とても幸せだった。だから、あなた達も……これから……幸せに……」
ラリアの頬を撫でていたマザー・グリスの手が、力なくポトリと地面に落ちた。
「えっ、マザー・グリス?ねぇ、返事してよ。ねぇってば!」
まるで心地良い夢を見て眠っているかの様に穏やかな顔で眼を閉じるマザー・グリス。しかし、幾ら声を掛けても、幾ら体を揺すっても、彼女は眼を覚ます事は無かった。
「わ、私……マザー・グリスを……。うっ、うああああああぁぁぁぁ!!!、」
ラリアの悲痛な叫び声響き渡った。
「それから数日後だ。ラリア・バスターオーガが孤児院から姿を消したのは」
ヘイトが真っ直ぐに俺の目を見ながらそう言った。
「そんな事が……でも、それはラリアのせいじゃないだろ」
「そんな事はオレ達だって分かっている。だが、ラリア・バスターオーガ自身が、自分を許せないでいるのさ」
「……」
俯き黙る俺に、ヘイトが続ける。
「どうした?さっきまでの勢いは何処へ行った?それとも、先程言っていた『仲間だから一緒に歩む』と言う台詞が、如何に陳腐で下らないものなのかが身に染みて、返す言葉もないか」
「……」
「フン。図星の様だな」
ヘイトはそう言うと、踵を返し歩き始めた。
「ちょ、ちょっとヘイト。帰るのですか?コイツからラリア・バスターオーガの居処を聞き出す手筈では?」
困惑しながら尋ねるヴァリーへ向けて、ヘイトが応える。
「そう焦るな。コイツらグランドフェスに出るんだ。なら、其処を狙えば良い。どうせなら、大きな舞台で仕掛けるのも、また一興だ。それに……」
ヘイトは俺を一瞥しながら、続けた。
「この程度の男からラリア・バスターオーガを取り戻す事など、造作も無い」
「何だと……」
「〝自己覚知〟もろくに出来ず、安っぽい言葉を並べて満足している。実に滑稽な男だ」
「テメェ……」
「何も知らない〝仲間ゴッコ〟のお前には負ける気がしない。ラリア・バスターオーガはオレ達の下へと必ず戻る。必ずだ」
そう言い残して、ヘイトとヴァリーは路地裏を後にした。一人残された俺は、ヘイトの言葉を反芻する。
(〝陳腐な言葉〟か、確かにな……だが……)
路地裏を抜ける冷たい風が俺を撫でる。
「それでも、俺はラリアの仲間だ……仲間なんだよ……」
俺はヴァリーが残した地面の穴を見つめながら、ポツリとそう呟いた。
ラリアの一撃を受けたアロンは、喉の奥から粘り気のある低い呻き声を上げ、ブクブクと赤い泡を吹きながら白目を剥き、その場に蹲った。
嫌な静寂が辺りを包む。
ラリアはアロンから右脚を下ろすと、ゆっくりと振り向き、ヘイトへ向けてニヤニヤと不気味な笑みを浮かべた。
「おい、ラリア……お前、まさか……」
「ツギハ……ツギハ、オマエノバン」
ラリアはそう言うと、ゆっくりとした足取りで、ヘイトへと歩を進めた。
「ラリア、お前……マジでどうしちまったんだよ?……」
ラリアから発せられる禍々しい魔力に圧倒されながらも、ヘイトは精一杯に口を開き、彼女へ問いかけた。
そんなヘイトの言葉に応える事なく、ラリアはその不気味な笑みを保ったまま、ヘイトへと歩み寄ると彼に危害を加えるべく、その狂気に満ちた右拳を振りかぶった。
「くそぉっ……何でだよ……」
ラリアの攻撃に身構えながら、ヘイトが悔しそうに呟く。
ラリアが振りかぶった拳をヘイトへと繰り出そうとしたその瞬間ーー
「ラリア!!!」
マザー・グリスの声が響き渡った。それに呼応して、ラリアの動きがピタリと止まる。
「ラリア!お願い、目を覚まして!私の声、分かるでしょ⁈」
「マザー……グリス……」
そう呟き、ゆっくりとマザー・グリスの方へと振り向くラリア。そんな彼女をマザー・グリスは包む様に優しく抱きしめた。
「ラリア、もう大丈夫よ。怖がらなくていいの。さあ、戻ってらっしゃい。大丈夫だから」
「マザー・グリス……ワ、私……」
ラリアの瞳が紅玉色を取り戻す。
「私……一体、どうしたの?マザー・グリスが斬られそうになってからの記憶が無くて……何で、勇者達が倒れてるの?何で、ヘイトは怯えた顔をしているの?」
困惑した表情で尋ねるラリアへ、マザー・グリスは優しく応えた。
「大丈夫。ラリアはね、あの勇者達から私を守ってくれたのよ。だから、何も心配しなくていいの」
「私が?本当に?」
「ええ、本当よ」
「そう……それなら、良いんだけど……」
マザー・グリスの言葉に、幾分落ち着きを取り戻し、ラリアが少し微笑んだその時ーー
「ふざけるナァ!!!」
アロンが叫びながら、フラフラと立ち上がった。口から大量の血を垂れ流しながら、ギョロリとラリア達を睨みつけるその顔付きは勇者の面影など微塵も感じられず、怨恨に満ちたその表情は地獄から這い出した亡者を思わせるものであった。
「こ、このクソ共がァ。ゆ、許さんゾォ。この勇者アロンに向かって、この様な仕打チ……殺す……殺す、殺す、コロス!殺してやル!!」
アロンは床に落ちている長剣を拾い上げると、マザー・グリスへと向かって、飛び掛かった。
「マザー・グリス!」
マザー・グリスへ殺意を剥き出しにして飛び掛かるアロンを見て、落ち着きかけていたラリアの気持ちが昂りを見せ、再び彼女の両眼は漆黒に塗り潰された。
「マザー・グリスニ、テヲダスナァ!」
そう咆哮しながら、ラリアは右の手刀をアロンの腹部目がけて突き出した。
そして、彼女の攻撃は、マザー・グリスごとアロンの腹部を貫いた。
瞬間、ラリアの両眼が紅玉色へと変わり、本来の意識が彼女に戻った。
腹部から血を流しながら、ゆっくりと崩れ落ちる。マザー・グリスとアロン。
ラリア自身、今何が起こったのか理解する事が出来ないでいた。スローモーションに映る倒れゆくマザー・グリス。その映像に刹那遅れて、右手に感じる嫌な感触が、ラリアに残酷な真実を突きつけた。
ーーえ?ウソ?だって、今さっきまで、マザー・グリスは私を抱きしめてて……
ー一意識が飛んで
ーーマザー・グリスのお腹から血が……
ーーこの右手に残る嫌な感触は何?
ーーまさか、そんな……
ーーいや、そんな筈ない
ーーでも、だって……
ーー私の右手、血塗れだ
ーーそんな、嘘だ、嘘だ、嘘だ
ーー私……
ーーマザー・グリスを殺したの?
マザー・グリスが床に倒れ込むと同時に、ラリアは全てを理解した。
「マザー・グリス!!!!!ああ……わ、私、私なんて事を……」
大粒の涙を流しながら、混乱するラリア。そんな彼女の頬にマザー・グリスが掌で優しく触れた。
「ご、ごめんなさいね、ラリア。こんな事になってしまって……」
「マザー・グリス!どうしよう⁈だって私……」
泣き噦るラリアにマザー・グリスは優しく微笑む。
「泣かないで、ラリア。私ねあなた達と暮らせて、とっても幸せだったの。私ね……昔、子供を捨てた事があるの」
「えっ?」
「私の子供も転生者でね……村の掟だからって……三つになる男の子をね、山の中に置き去りにしたの」
「……」
「最初は、村の掟だから〝仕方ない〟。〝仕方ない〟って自分に言い聞かせたの……でも、直ぐにそれが間違いだと気付いたわ。だって、自分の子供だもの。〝転生者〟である事なんて、〝背が高い〟〝足が遅い〟と同じ、ただの個性に過ぎないって。転生者である事なんて、些細な事なのに……当時の私は村の掟に惑わされて、本当に大切な事が見えていなかったの」
「……」
「それから毎日、後悔の念に苛まれたわ……何度も何度も、死のうと思った。我が子を捨てた自分を呪ったわ……。そんな時、教会からこの孤児院の仕事を頼まれたの。私は誓ったわ。もう二度と、私は自分の子供を手放さないと……」
マザー・グリスが涙を浮かべながら、ゆっくりと、優しくラリアに向かって声を掛けた。
「ありがとう……私を、また母親にしてくれて、本当にありがとう……」
「マザー・グリス……」
ラリアの瞳から涙が溢れ出す涙を、マザー・グリスが優しく拭う。
「ごめんね、最期にこんな事になっちゃって……」
「嫌だ、嫌だよ。マザー・グリス……最期なんて言わないで……」
「私……あなた達と一緒に暮らせて、とても幸せだった。だから、あなた達も……これから……幸せに……」
ラリアの頬を撫でていたマザー・グリスの手が、力なくポトリと地面に落ちた。
「えっ、マザー・グリス?ねぇ、返事してよ。ねぇってば!」
まるで心地良い夢を見て眠っているかの様に穏やかな顔で眼を閉じるマザー・グリス。しかし、幾ら声を掛けても、幾ら体を揺すっても、彼女は眼を覚ます事は無かった。
「わ、私……マザー・グリスを……。うっ、うああああああぁぁぁぁ!!!、」
ラリアの悲痛な叫び声響き渡った。
「それから数日後だ。ラリア・バスターオーガが孤児院から姿を消したのは」
ヘイトが真っ直ぐに俺の目を見ながらそう言った。
「そんな事が……でも、それはラリアのせいじゃないだろ」
「そんな事はオレ達だって分かっている。だが、ラリア・バスターオーガ自身が、自分を許せないでいるのさ」
「……」
俯き黙る俺に、ヘイトが続ける。
「どうした?さっきまでの勢いは何処へ行った?それとも、先程言っていた『仲間だから一緒に歩む』と言う台詞が、如何に陳腐で下らないものなのかが身に染みて、返す言葉もないか」
「……」
「フン。図星の様だな」
ヘイトはそう言うと、踵を返し歩き始めた。
「ちょ、ちょっとヘイト。帰るのですか?コイツからラリア・バスターオーガの居処を聞き出す手筈では?」
困惑しながら尋ねるヴァリーへ向けて、ヘイトが応える。
「そう焦るな。コイツらグランドフェスに出るんだ。なら、其処を狙えば良い。どうせなら、大きな舞台で仕掛けるのも、また一興だ。それに……」
ヘイトは俺を一瞥しながら、続けた。
「この程度の男からラリア・バスターオーガを取り戻す事など、造作も無い」
「何だと……」
「〝自己覚知〟もろくに出来ず、安っぽい言葉を並べて満足している。実に滑稽な男だ」
「テメェ……」
「何も知らない〝仲間ゴッコ〟のお前には負ける気がしない。ラリア・バスターオーガはオレ達の下へと必ず戻る。必ずだ」
そう言い残して、ヘイトとヴァリーは路地裏を後にした。一人残された俺は、ヘイトの言葉を反芻する。
(〝陳腐な言葉〟か、確かにな……だが……)
路地裏を抜ける冷たい風が俺を撫でる。
「それでも、俺はラリアの仲間だ……仲間なんだよ……」
俺はヴァリーが残した地面の穴を見つめながら、ポツリとそう呟いた。
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