魔法学校卒冒険者の学び直し~ホワイト企業に就職したいけど魔法力が貧弱で無理ゲーなのでロリに魔法教えてもらってます~

梅星さん太郎

文字の大きさ
1 / 15

第1話:面接

しおりを挟む
「では、タクヤ・シムラさん、早速ですが自己PRをお願いいたします」



(ぐっ、まただ……! この吸い込まれそうな感覚……)



 タクヤ・シムラと呼ばれた青年は、有名魔導企業の採用面接の真っ最中だ。



 相対する面接官はいい年した中年の男が3人。

 真ん中の3人の中では比較的若めな面接官がメインで応対し、左のオールバックのヘアスタイルの面接官はそっぽを向き退屈そうにペンをくるくる回しており、右の俗に言う“バーコードスタイル”な面接官は若干白目を剥き眠気ををこらえている。



(おい右のおっさん! お前の鼻の穴に細長く伸ばしたティッシュ突っ込むぞ!?)



 タクヤは内心少し苛立っているようで、それを紛らわせるかのようにふざけた想像をふくらませていた。



 着慣れないスーツをビシッと着こなすタクマは、今にもここから逃げ出したいという、チキンな気持ちをぐっと押さえ込み、正面の面接官に意を決し返答する。



「私は、現在タンク職のバイトをしているのですが、鎧を着ることができないのでバリア魔法で補いながらパーティの仲間を支援しています。バリア魔法に関しては他の誰にも譲れない精度と機能を持っていますので、それを活かし、御社の魔導セキュリティシステム構築・運用に大きな貢献ができると考えております。正社員としてどうか私を使ってはいただけないでしょうか? 正社員としてです!」

「ほう…………、なるほど。あなたは弊社の魔導師職を希望ということでよろしいですかね?」

「ええっ、はい!」

…………

(はっ――――!? 今俺、2回言っちまったか?念を押して“正社員”と二回言っちまったのか!?)



 現在魔法関係の正社員は危険な戦闘現場に駆り出される出されることもない業務が大半であり、安全でしかも高給取りな美味しい仕事なのだが、タクマは彼らへの羨ましさのあまりついボロが出てしまったのである。



(そう―――― 現状、俺は楽をして大金を稼ぎたいという大いなる夢を引っさげてこの面接に挑んでいるのだっ!)



「でも君タンクの経験しかないようだね?魔法学校を卒業しているようだから、一応魔法は使えるようだけど、実は今うちの会社は魔法を使える人はいっぱいいるんだよね~」

「いやでも、先日の御社の求人情報では魔導師(正社員)急募と書かれていたはずですが…」

「あ、言い忘れてた、ごめんね~。うち第2新卒の魔導師はとってないだよねぇ~。でも現場部門タンク職の枠はまだあるから、君、タンクの経験あるしタンク職でなら正社員で雇ってもいいんだけどどうかな~?」



(……えっ……?)



 タクヤの表情から営業スマイルならぬ面接スマイルはとうに消え失せ、額に脂汗が浮かび、眉は引きつり出し、無意識にひくひくと小刻みに動作させていた。



 希望職種の話から強引に彼が全く希望していない職種への勧誘に強引に切り替えをされ、動揺を隠しきれなくなっていた



 タクヤがここまでして現場系タンク職を拒む理由はある。



 そもそもタンク職とは戦闘任務におけるいわば“動く人間盾”の役割を指す。



 役割の特性上当然タンク職は命がけであり、更に加えてな割に労働単価が安い、しかも地味なので世間からの評価も過小評価である。

故にタンク職は人気がなく、人手不足なのである。

「う~ん、では今回はご縁がなかったことで…」

「…………」



 タクヤは糞、またか、という自身の心の叫びを隠しきれない表情を浮かべていた。



「そんなに露骨な表情浮かべないでくださいよ。そんな態度だから今まで魔法学校卒業してるのに魔導師として採ってもらわなかったんじゃないですか? シムラさん、だいたいあなたは正魔導師の職歴がないじゃないですか? 舐めてるの? あまり我々の業界を甘くみないでもらえないかなぁ~?えっ?」



「……すいません……」

 正面真ん中のやや若めな中年面接官はタクヤの弱気な態度に追い打ちをかけるかのように恫喝、いや逆ギレとも言える言動をタクヤに叩きつけた。

一方、両サイド、左のオールバックの中年面接官は“あ~あ、またやっちまったよ、あいつ(笑)”と他人事のようなリアクションを取りまるで他人事、右のバーコード中年面接官は上を向き大口を開けて、鼻からは鼻提灯を出して爆睡していた。



(おいっ! ハゲ! てめぇっ!その口にフリ○ク投下するぞ、コラッ!?)



 タクヤは面接官揃いも揃って三人三様で態度が悪かったので、彼の苛立ちはピークに達していた。

そのため彼の視界は中央にいる面接官を中心に時計回り、反時計回りを不規則に繰り返す、いわば“めまい”の感覚に襲われていた。



 さらに中央の面接官は、立て続けに、

「あ~い、すいまて~んっ! て、最近の若者は謝りゃ何でも許してもらえると思いやがって。んんっ! コホン! 失礼! 他に言いたいことはありますかね?」

「いいえ、ございません。すみません、私これからアルバイトのシフトの時間が迫っておりますので失礼します、本日は面接の機会を下さりありがとうございました」



 タクヤもここにいると怒りが暴発しそうであったので、なにか事件を起こすまいと面接会場を早々後にすることにしたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!

ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。 ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!? 「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」 理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。 これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

喪女だった私が異世界転生した途端に地味枠を脱却して逆転恋愛

タマ マコト
ファンタジー
喪女として誰にも選ばれない人生を終えた佐倉真凛は、異世界の伯爵家三女リーナとして転生する。 しかしそこでも彼女は、美しい姉妹に埋もれた「地味枠」の令嬢だった。 前世の経験から派手さを捨て、魔法地雷や罠といったトラップ魔法を選んだリーナは、目立たず確実に力を磨いていく。 魔法学園で騎士カイにその才能を見抜かれたことで、彼女の止まっていた人生は静かに動き出す。

処理中です...