13 / 262
第一章
[ 012 ] 階段
しおりを挟む
ナッシュ門の厚みはおよそ五メートルほどで、途中に扉があった。恐らく先ほどの門番は賄賂を貰ってここで少しだけ休憩をしているのだろう。セキュリティとしては少し心配だった。
門を進むと出口にも門番がいたが、こちらの門番は門を通って来た者に対しては、確認等はしてないらしく「ナッシュの街へようこそ」とまで言われた。
この世界に来てから初めての街に、僕のワクワクは止まらない。どんな人がいて、どんな生活をしているのか、どんな出会いがあるのか。両親や兄さんがいるかもしれない……。
街に一歩入ると、ふわっと独特な土の匂いが漂って来た。あちらこちらからカツンカツンと何かを叩く音、蒸気が噴き出す音などが聞こえてくる。
人の流れが少ない通りとはいえ、九年間屋敷に隔離され、四年間洞窟にいた僕にとっては何もかもが新鮮でいろんな音があるだけで、夢のような光景だった。
「すごいね……人がこんなにいる……」
感動なのか砂埃が目に入ったのかわかないけど、なぜだか涙が止まらなかった。
「中央広場に行けばもっとすごいよ」
ハリルベルに付いてくと、どの家も煉瓦造りが基本らしく明らかに文明レベルが高い。国としても重要な街という話も納得だ。
「ロイエ、こっちこっち」
ハリルベルに呼ばれて振り向くと彼は階段の上にいた。そのまま視線を上げると階段に次ぐ階段! 大小様々な階段によって構成された街、それが炭鉱の街ナッシュ。
「はぁ――。足辛い……」
「が、がんばれ! としか言えない。ごめん」
人通りが少ない通りでよかった。狭い階段もあるからこんなゆっくり登っていたら後ろが詰まってしまう。
「俺の家も職場も街の上の方にあるんだ」
ハリルベルはスタスタと上がっていく。回復魔法を足に掛けながら進むと、やっと外壁の高さまで登ってきた。
「す、少し休ませてください」
「うん、なら後ろを振り向いてごらんよ」
言われて振り向くと眼下には、不規則に乱立した家々がまるでアートのように見えた。煉瓦造りの家が多いから規もしかしたらここに両親や兄さんがいるかもしれない……。そう思うとあの人影もあっちの人影も家族に見えて仕方ない。
「あそこが鍛冶屋で、あっちが道具屋! あ! そこの奥にある赤い煙突の店は食事処で、フライシュ焼きが有名だよ」
ハリルベルの声がいつもよりテンション高いことから緊張が解けたのが窺える。逆に僕はいつ盗賊団や王国騎士団に捕まらないかとヒヤヒヤだった。
しばらく横移動や縦移動を、繰り返し迷路のような道を進むともはや帰り道はわからなくなった。これも敵が攻め込んできた時に役に立つのかもしれないが、僕のような新参者にはキツイ。
「どこへ向かってるんですか?」
「まずは俺の家に行こう。流石にその匂いと服だと、採掘屋の一階が飲み屋だから衛生面がね。エルツに怒られちゃう」
言われて気付く。髪は伸びっぱなしのボサボサで、たまに着替えを貰えていたとはいえ着っぱなしの洋 服。風呂もたまにしか入れてもらっていなかった身体は、とても臭かった。
門を進むと出口にも門番がいたが、こちらの門番は門を通って来た者に対しては、確認等はしてないらしく「ナッシュの街へようこそ」とまで言われた。
この世界に来てから初めての街に、僕のワクワクは止まらない。どんな人がいて、どんな生活をしているのか、どんな出会いがあるのか。両親や兄さんがいるかもしれない……。
街に一歩入ると、ふわっと独特な土の匂いが漂って来た。あちらこちらからカツンカツンと何かを叩く音、蒸気が噴き出す音などが聞こえてくる。
人の流れが少ない通りとはいえ、九年間屋敷に隔離され、四年間洞窟にいた僕にとっては何もかもが新鮮でいろんな音があるだけで、夢のような光景だった。
「すごいね……人がこんなにいる……」
感動なのか砂埃が目に入ったのかわかないけど、なぜだか涙が止まらなかった。
「中央広場に行けばもっとすごいよ」
ハリルベルに付いてくと、どの家も煉瓦造りが基本らしく明らかに文明レベルが高い。国としても重要な街という話も納得だ。
「ロイエ、こっちこっち」
ハリルベルに呼ばれて振り向くと彼は階段の上にいた。そのまま視線を上げると階段に次ぐ階段! 大小様々な階段によって構成された街、それが炭鉱の街ナッシュ。
「はぁ――。足辛い……」
「が、がんばれ! としか言えない。ごめん」
人通りが少ない通りでよかった。狭い階段もあるからこんなゆっくり登っていたら後ろが詰まってしまう。
「俺の家も職場も街の上の方にあるんだ」
ハリルベルはスタスタと上がっていく。回復魔法を足に掛けながら進むと、やっと外壁の高さまで登ってきた。
「す、少し休ませてください」
「うん、なら後ろを振り向いてごらんよ」
言われて振り向くと眼下には、不規則に乱立した家々がまるでアートのように見えた。煉瓦造りの家が多いから規もしかしたらここに両親や兄さんがいるかもしれない……。そう思うとあの人影もあっちの人影も家族に見えて仕方ない。
「あそこが鍛冶屋で、あっちが道具屋! あ! そこの奥にある赤い煙突の店は食事処で、フライシュ焼きが有名だよ」
ハリルベルの声がいつもよりテンション高いことから緊張が解けたのが窺える。逆に僕はいつ盗賊団や王国騎士団に捕まらないかとヒヤヒヤだった。
しばらく横移動や縦移動を、繰り返し迷路のような道を進むともはや帰り道はわからなくなった。これも敵が攻め込んできた時に役に立つのかもしれないが、僕のような新参者にはキツイ。
「どこへ向かってるんですか?」
「まずは俺の家に行こう。流石にその匂いと服だと、採掘屋の一階が飲み屋だから衛生面がね。エルツに怒られちゃう」
言われて気付く。髪は伸びっぱなしのボサボサで、たまに着替えを貰えていたとはいえ着っぱなしの洋 服。風呂もたまにしか入れてもらっていなかった身体は、とても臭かった。
0
あなたにおすすめの小説
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる