求:回復術師 〜絶対見捨てない為に、僕が今できる事〜

猫鈴うみゃ

文字の大きさ
35 / 262
第一章

[ 033 ] 金貨集めは終わらない

しおりを挟む
 ミアさんがリンドブルムを全滅させた後、それからの事後処理は全てマスターにやってくれた。

 リンドブルムに破壊された街の被害状況や被害者の確認。魔石となったリンドブルムの処理、そもそももっと早くにリンドブルムの侵入を検知出来なかったのかなど、警備上にも様々な問題が浮き彫りになったようだ。

 僕も昨日はリンドブルムとの戦闘でそれなりに血を流した為、安静にしろとマスターに言われて、夕飯をご馳走してもらうと早めに ハリルベルの家に帰って寝た。

「ロイエ、おはよう」
「おはよう。ふぁ~」
「昨日はすぐ寝ちゃったね」
「うん、色々あったから疲れてたみたい」

  昨日マスターにご馳走して貰った夕飯の残りの硬くなったパンを齧りつつ、今日の予定をハリルベルと話してしいた。

「ジャックの店に思いっきり火炎弾当たったらしくて、修理のため休業らしいんだ」
「あらら」
「だから、今日は昨日良さげな募集してたAエリアの店を見て、ついでにBとCエリアも回ってみようかなと」
「おっけー、俺は昨日の騒ぎで採掘所にも火炎弾が飛んだから採掘所の安全確認やら行うって親方が」
「そうなんだ。気をつけてね」

 ギルドカード発行のための金貨五枚、納品期限まであと六日。

 現在の所持金
  ジャックの飲食店で稼いだ金貨一枚

  生活費にと、ハリルベルに借りた銅貨数枚はあるけど、同時にこうした生活費のチリ積借金も少しある。 ハリルベルはいつでも良いよと言ってくれてるから、甘える事にした。

「あと金貨四枚を六日。一日銀貨七枚は稼がないと間に合わないなぁ」
「せっかく重力魔法覚えたし、それなら堂々と使えるから何かピッタリな仕事があるといいね」
「そうだね」

 簡単な朝食を終えると、 ハリルベルと共に家を出て彼は山の方へ、僕は中央地区へ向かうことにした。

 テトはあの後、ミアさんの魔法の音で目が覚めた。どこも怪我は無かったけど、終始何かを考えているようで、怖かったんだと思いそっとしておいた。

 飲んでしまった魔石についてもロゼに話をしたかったし、一度西側を、南下してDエリアへと向かうことにした。

 途中ギルドの前を通ったけど、どうやら役所の人が来ているらしく忙しそうだったので、寄らずに通り過ぎた。

 Dエリアに入りロゼの魔石買取屋を目指して歩いていると、少しだけ焦げ跡のある家も何軒かあったが、ひどい被害というわけではなさそうだ。

 ロゼの店は火炎弾が当たらなかったらしく、昨日と同じ状態のままそこにあった。ただ、店に入ろうとドアに手を付けるも……開かない。

「留守かな……」

 親が貿易商で自身も携わっていると言っていた。昨日の件で色々と動きがあったのかもしれない。明日また訪ねてみよう。

 Dエリアを抜け、Aエリアへ到着するとここが一番被害が大きかったらしい。無傷な店を探すのが難しいくらい、どの家もどこかしら焦げ跡があった。

「あ! おい! あいつだ! 捕まえろ!」
「え、え? え?」

 身なりの良いでっぷりしたおじさんが、僕の方を指さしたと思ったら、店から横幅に巨大な警備員が出てきて捕えられてしまった。

「あのー、僕が何かしましたでしょうか……」

 思い出した。ここは昨日テトが盗みに入った店か、この二人がテトを追いかけてるを見た気がする。もしかして僕をテトの共犯か何かと勘違いしてらっしゃる?

「しらばっくれやがって! 目撃者も証拠も揃ってんだよ!!」
「いやー、きっと人違いだと思いますよ?」
「はぁー?! お前だろ! うちの宝剣をリンドブルムに刺して、こんなに血塗れのボロボロにしたのは!」
「はい! 僕です! 申し訳ございません!」

 その場で地に頭を擦り付けて、誠心誠意土下座した。

「謝ったって治らねぇんだよ! 手を出せ! ほら!これにサインしろ!」
「え、ちょっと何を……」
「買取同意書だ! こんなにしちまった宝剣は買い取って貰うしかねぇだろ? それとも王国騎士団に引き渡してもいいんだが?」
「はい! 買い取らせて頂きます!」

 王国騎士団は勘弁してください。その時点で僕の人生ジ・エンドしちゃう……。泣く泣く指にインクをつけて書類に拇印しようとして、手が止まった。

「え、金貨五十八枚……?!」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...