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第一章
[ 040 ] バレてしまった
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「マスターいますか?」
千鳥足になってるリュカさんを連れて、なんとかギルドまで到着すると、カウンターではフィーアが書類の山に囲まれていた。
「およ? ロイエ君、いらっしゃいませ。こんな時間に来るなんて珍し……女連れ!」
「ち、違います! 捕虜です!」
「捕虜?! べろべろに酔わせて何をする気ですか! うちをホテル代わりに使う気ですか?!」
「もう! 違うんですって!」
「どう違うんですか!」
押し問答の末、なんとかフィーアを落ち着かせることに成功。諸事情があって彼女がヘクセライ魔法研究所の職員を名乗っているが、本当なのかマスターに確認したいという話をすると。
「マスターですか? いないですよ。リンドブルムの件でずっと役所に行ってますから」
「そうですか……」
困ったな。ここまでリュカさんを連れてきたけど、フィーアには僕が回復術師だと明かしてないから話が出来ない。ただ、僕的にはフィーアになら話しても問題ない気がするけど……。よし。
「フィーア、ちょっと相談があるんだけど……」
「? いいですよ」
リュカさんは、僕とフィーアが話してる間に店のカウンターで寝てしまったので、フィーアと二人でギルドの管理室へ移動した。
「僕の事を計測器で測ってみてくれる?」
「わかりました。ピッとな」
すぐに結果が属性測定器に反映される。
「ななななな! か、回復ぅうう!!」
案の定、フィーアは驚いてその場で腕立てを始めたりスクワットをして、部屋の中を走り回った。
「声が大きい!」
「騒がずにいられますか! すごい事なんですよ! なんで黙ってたんですか!」
「わかってるよ! で、本題はここから!」
僕はフィーアに、回復術師だとリュカさんにバレてしまった事。リュカさんが王国に連絡しないか心配している事を話すと、意外としっかりした回答が返ってきた。
「魔法研究所が、国へ回復術師発見の連絡? あー、ないですね」
「なんで言い切れるの」
「まず前提の話なんですが、国は回復術師をなぜ集めてると思いますか?」
「え、それは回復術師を組み込んだ騎士団を作る事で、国の安定化のために?」
「誰ですかそんなこと言ったのは、国は回復術師を大切にしているんです。そんな戦場は行かせるわけないじゃないですか」
確かに……。 でも、ハリルベルは回復術師を編成した騎士団で、国安定化って言ってた気がするけど。
「国に保護された回復術師は、国の研究機関でなぜ回復魔力回路持ちが減ったのかを、一緒に安全なところで研究しています」
「そうなんだ……」
「それに意を唱えてるのが研究所です。国が回復術師を独占しているーとか、我々にも研究の権利があるーと騒ぎ立てているんですよ」
「という事は、研究所が回復術師を発見したら……」
「言いませんね。隠したら回復術師隠匿罪で全員逮捕されますが、せっかく手に入った研究材料を手放すはずがありません」
それを聞いて複雑な気持ちだけど安心した。とりあえず王国騎士団に連絡される事は無さそうだ。
「じゃあ、魔法研究所の人に捕まったら人体実験みたいな事をされたりは?」
「仮に彼らに捕まった場合、例えば明日にでも研究所にロイエ君が連れてかれたら、私が国に報告して保護してもらうことが可能です」
「なるほど……つまり魔法研究所も拉致や監禁などをして、国に攻撃させる口実を与えることになるから、迂闊な事は出来ない……と?」
「正解です。なので、ロイエ君はなるべく、さっきの研究職員に協力して満足させれあげれば、普通の問診みたいなことしかされないと思いますよ? 国と法律がロイエ君を守ってるんです」
フィーアの話を聞いてすごく納得したし安心出来た……。話してよかった。
しかし、ナッシュに来る途中、ハリルベルから聞いたけど、国が回復術師で人体実験していると言う、話もあったし本当に回復術師を保護しているのか確認してから名乗り出たい……。
「ロイエ君が自主的に国に名乗り出れば、そんな心配もないですし、衣食住が保証されますよ?」
「国は回復術師を捉えて、人体実験をしてると言う話を聞いた事があります。火のないところに煙は立たないと言いますし」
「あはっ、その噂ですか? 本当のわけないじゃないですかー。敵対してる魔法研究所の人が流した根も葉もない噂だと思いますけど」
「……真実が明らかになるまで、僕は名乗り出るつもりはありません」
「そうですか、わかりました。私も誰にもいいません! 安心してください」
ドンと無い胸を叩いてウサ耳を揺らし、ニッコリと微笑んでくれるフィーアが頼もしく見えた。
話し終えて管理室を出ると、リュカさんは完全に寝ており、家に送って行くにもどこに住んでいるのかわからないため、フィーアに任せてギルドに置いて帰ることにした。
「それじゃ、フィーアありがとう。リュカさんの事よろしくね」
「はーい、任せてください」
こうして、僕の長い一日がやっと終わった。
――ロイエが立ち去った後のギルドにて
ロイエを見送った後、フィーアはドアを閉めるとカウンターで眠るリュカに毛布をかけてあげ、管理室へ入った。
周囲を警戒しつつ、フィーアはポケットから何やら小型の道具を取り出すと、ボソッと呪文を唱え道具を起動させた。
「合言葉、国のために」
「確認した。所属と要件を言え」
「王国騎士団、諜報員フィーアです。
ナッシュにて……回復術師を見つけました」
千鳥足になってるリュカさんを連れて、なんとかギルドまで到着すると、カウンターではフィーアが書類の山に囲まれていた。
「およ? ロイエ君、いらっしゃいませ。こんな時間に来るなんて珍し……女連れ!」
「ち、違います! 捕虜です!」
「捕虜?! べろべろに酔わせて何をする気ですか! うちをホテル代わりに使う気ですか?!」
「もう! 違うんですって!」
「どう違うんですか!」
押し問答の末、なんとかフィーアを落ち着かせることに成功。諸事情があって彼女がヘクセライ魔法研究所の職員を名乗っているが、本当なのかマスターに確認したいという話をすると。
「マスターですか? いないですよ。リンドブルムの件でずっと役所に行ってますから」
「そうですか……」
困ったな。ここまでリュカさんを連れてきたけど、フィーアには僕が回復術師だと明かしてないから話が出来ない。ただ、僕的にはフィーアになら話しても問題ない気がするけど……。よし。
「フィーア、ちょっと相談があるんだけど……」
「? いいですよ」
リュカさんは、僕とフィーアが話してる間に店のカウンターで寝てしまったので、フィーアと二人でギルドの管理室へ移動した。
「僕の事を計測器で測ってみてくれる?」
「わかりました。ピッとな」
すぐに結果が属性測定器に反映される。
「ななななな! か、回復ぅうう!!」
案の定、フィーアは驚いてその場で腕立てを始めたりスクワットをして、部屋の中を走り回った。
「声が大きい!」
「騒がずにいられますか! すごい事なんですよ! なんで黙ってたんですか!」
「わかってるよ! で、本題はここから!」
僕はフィーアに、回復術師だとリュカさんにバレてしまった事。リュカさんが王国に連絡しないか心配している事を話すと、意外としっかりした回答が返ってきた。
「魔法研究所が、国へ回復術師発見の連絡? あー、ないですね」
「なんで言い切れるの」
「まず前提の話なんですが、国は回復術師をなぜ集めてると思いますか?」
「え、それは回復術師を組み込んだ騎士団を作る事で、国の安定化のために?」
「誰ですかそんなこと言ったのは、国は回復術師を大切にしているんです。そんな戦場は行かせるわけないじゃないですか」
確かに……。 でも、ハリルベルは回復術師を編成した騎士団で、国安定化って言ってた気がするけど。
「国に保護された回復術師は、国の研究機関でなぜ回復魔力回路持ちが減ったのかを、一緒に安全なところで研究しています」
「そうなんだ……」
「それに意を唱えてるのが研究所です。国が回復術師を独占しているーとか、我々にも研究の権利があるーと騒ぎ立てているんですよ」
「という事は、研究所が回復術師を発見したら……」
「言いませんね。隠したら回復術師隠匿罪で全員逮捕されますが、せっかく手に入った研究材料を手放すはずがありません」
それを聞いて複雑な気持ちだけど安心した。とりあえず王国騎士団に連絡される事は無さそうだ。
「じゃあ、魔法研究所の人に捕まったら人体実験みたいな事をされたりは?」
「仮に彼らに捕まった場合、例えば明日にでも研究所にロイエ君が連れてかれたら、私が国に報告して保護してもらうことが可能です」
「なるほど……つまり魔法研究所も拉致や監禁などをして、国に攻撃させる口実を与えることになるから、迂闊な事は出来ない……と?」
「正解です。なので、ロイエ君はなるべく、さっきの研究職員に協力して満足させれあげれば、普通の問診みたいなことしかされないと思いますよ? 国と法律がロイエ君を守ってるんです」
フィーアの話を聞いてすごく納得したし安心出来た……。話してよかった。
しかし、ナッシュに来る途中、ハリルベルから聞いたけど、国が回復術師で人体実験していると言う、話もあったし本当に回復術師を保護しているのか確認してから名乗り出たい……。
「ロイエ君が自主的に国に名乗り出れば、そんな心配もないですし、衣食住が保証されますよ?」
「国は回復術師を捉えて、人体実験をしてると言う話を聞いた事があります。火のないところに煙は立たないと言いますし」
「あはっ、その噂ですか? 本当のわけないじゃないですかー。敵対してる魔法研究所の人が流した根も葉もない噂だと思いますけど」
「……真実が明らかになるまで、僕は名乗り出るつもりはありません」
「そうですか、わかりました。私も誰にもいいません! 安心してください」
ドンと無い胸を叩いてウサ耳を揺らし、ニッコリと微笑んでくれるフィーアが頼もしく見えた。
話し終えて管理室を出ると、リュカさんは完全に寝ており、家に送って行くにもどこに住んでいるのかわからないため、フィーアに任せてギルドに置いて帰ることにした。
「それじゃ、フィーアありがとう。リュカさんの事よろしくね」
「はーい、任せてください」
こうして、僕の長い一日がやっと終わった。
――ロイエが立ち去った後のギルドにて
ロイエを見送った後、フィーアはドアを閉めるとカウンターで眠るリュカに毛布をかけてあげ、管理室へ入った。
周囲を警戒しつつ、フィーアはポケットから何やら小型の道具を取り出すと、ボソッと呪文を唱え道具を起動させた。
「合言葉、国のために」
「確認した。所属と要件を言え」
「王国騎士団、諜報員フィーアです。
ナッシュにて……回復術師を見つけました」
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