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第二章
[ 064 ] 旅立ち
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西門を抜けると、一台の馬車と荷台が待っていた。
思ったよりも大型で馬も二頭。馬車は四人乗り、荷台にも商品と思われる貿易品が多数載っている。
確かにこれはモンスターは愚か、野党に襲われても不思議ではない。お金の山が人目のない森を走っているなんて、野党からしたら絶好の獲物だ。護衛が必要なのも頷ける。
「トラスポルト。お待たせしましたわ」
「お嬢様。そちらの方は?」
「ギルドで契約してきた冒険者のおふたりと、同行させて欲しいという、ヘクセライ魔法研究所の方ですわ」
「申し訳ありません……フォレストまでの食料は四分しか積んでませんが……」
トラスポルトと呼ばれた男性は、四十歳ほどの見た目で茶髪に左目が隻眼、ハンチング帽子を被っていた。筋肉のつきからして元冒険者か何かだと思わせる力強さを持つ行者だった。ルント湖を突っ切るなんて事に同行する男だ、それなりの腕っぷしも必要なのだろう。
「困りましたわね。積荷を増やしに戻る時間をはありませんわ……リュカさん、馬車の運転は可能でしょうか?」
「いい考えですね。可能ですよ。私が運転しましょう」
なるほど。リュカさんがフリーレン商会の専属行者として馬車を運転すれば、乗っているのはお嬢様であるロゼと護衛騎士の僕らという、無理のないパーティとなる。
「お嬢様っ。運転は私がやりますが……」
「いいえ、大丈夫です。トラスポルト。あなたはもう一台馬車を用意して、いつも通り貿易品の輸送を行なってください」
「……かしこまりました」
トラスポルトは、少し悔しそうな顔をするとそそくさと門の中へ戻っていった。そんなに運転したかったのかな。そりゃいきなり仕事奪われたらね……。
「皆様、乗ってください。すぐに出発しましょう」
それにしてもロゼは肝が据わっているというか、なんというか、さすが大手貿易商の娘ともなると、これくらいの度胸は勝手に付いてしまうのだろうか。
積荷の最終確認やら、馬の状態をテキパキとこなすロゼを見て、少し見惚れてしまった。いけない。自分の目的を見失うな。自分の頬を叩く僕は気合を入れ直した。
「では、出します」
ロゼを含む三人で馬車に乗り込み、リュカさんが手綱を、引くと馬はゆっくり歩き出した。
馬車の中で拳を作る僕を見て、隣に座るハリルベルが声をかけてくれた。
「ロイエ、大丈夫か?」
「う、うん。ハリルベルにナッシュに連れてきて貰ってからの二週間。本当にいろんな事があったけど……いざ街を出てみると、こんなにも出たくないって気持ちが強くなるなんて思わなくて」
「そうだな。ずっと家で育って、その後監禁。やっと人の生活に触れたのがナッシュか」
「うん、僕にとってはあの街が家族みたいなものだよ」
ナッシュを離れたくない。それは初めての一人暮らしをした時のような、ホームシックみたいな気持ちだった。でも家族の手がかりの無いナッシュに、いつまでもいるわけにはいかない。それはわかっていた事だ。
「大丈夫。行こう、深緑都市フォレストへ」
「おう」
ガタゴトと揺れる馬車の中、僕は新たに決意した。いつか全て終わらせて、ナッシュに戻ってこよう、と。
「あの監禁って何の話ですの? ロイエさんが悪い事して捕まりそうだって話しなら、マスターさんに聞きましたけど……」
「え……ロゼさん事情を知らないで、一緒に逃亡してるんですか?!」
「はいっ! わたくし、ロイエさんの為なら例え火の中水の中!ですわ」
その疑う事を知らない無垢な笑顔に、少し心配になってハリルベルと顔を見合わせた。
思ったよりも大型で馬も二頭。馬車は四人乗り、荷台にも商品と思われる貿易品が多数載っている。
確かにこれはモンスターは愚か、野党に襲われても不思議ではない。お金の山が人目のない森を走っているなんて、野党からしたら絶好の獲物だ。護衛が必要なのも頷ける。
「トラスポルト。お待たせしましたわ」
「お嬢様。そちらの方は?」
「ギルドで契約してきた冒険者のおふたりと、同行させて欲しいという、ヘクセライ魔法研究所の方ですわ」
「申し訳ありません……フォレストまでの食料は四分しか積んでませんが……」
トラスポルトと呼ばれた男性は、四十歳ほどの見た目で茶髪に左目が隻眼、ハンチング帽子を被っていた。筋肉のつきからして元冒険者か何かだと思わせる力強さを持つ行者だった。ルント湖を突っ切るなんて事に同行する男だ、それなりの腕っぷしも必要なのだろう。
「困りましたわね。積荷を増やしに戻る時間をはありませんわ……リュカさん、馬車の運転は可能でしょうか?」
「いい考えですね。可能ですよ。私が運転しましょう」
なるほど。リュカさんがフリーレン商会の専属行者として馬車を運転すれば、乗っているのはお嬢様であるロゼと護衛騎士の僕らという、無理のないパーティとなる。
「お嬢様っ。運転は私がやりますが……」
「いいえ、大丈夫です。トラスポルト。あなたはもう一台馬車を用意して、いつも通り貿易品の輸送を行なってください」
「……かしこまりました」
トラスポルトは、少し悔しそうな顔をするとそそくさと門の中へ戻っていった。そんなに運転したかったのかな。そりゃいきなり仕事奪われたらね……。
「皆様、乗ってください。すぐに出発しましょう」
それにしてもロゼは肝が据わっているというか、なんというか、さすが大手貿易商の娘ともなると、これくらいの度胸は勝手に付いてしまうのだろうか。
積荷の最終確認やら、馬の状態をテキパキとこなすロゼを見て、少し見惚れてしまった。いけない。自分の目的を見失うな。自分の頬を叩く僕は気合を入れ直した。
「では、出します」
ロゼを含む三人で馬車に乗り込み、リュカさんが手綱を、引くと馬はゆっくり歩き出した。
馬車の中で拳を作る僕を見て、隣に座るハリルベルが声をかけてくれた。
「ロイエ、大丈夫か?」
「う、うん。ハリルベルにナッシュに連れてきて貰ってからの二週間。本当にいろんな事があったけど……いざ街を出てみると、こんなにも出たくないって気持ちが強くなるなんて思わなくて」
「そうだな。ずっと家で育って、その後監禁。やっと人の生活に触れたのがナッシュか」
「うん、僕にとってはあの街が家族みたいなものだよ」
ナッシュを離れたくない。それは初めての一人暮らしをした時のような、ホームシックみたいな気持ちだった。でも家族の手がかりの無いナッシュに、いつまでもいるわけにはいかない。それはわかっていた事だ。
「大丈夫。行こう、深緑都市フォレストへ」
「おう」
ガタゴトと揺れる馬車の中、僕は新たに決意した。いつか全て終わらせて、ナッシュに戻ってこよう、と。
「あの監禁って何の話ですの? ロイエさんが悪い事して捕まりそうだって話しなら、マスターさんに聞きましたけど……」
「え……ロゼさん事情を知らないで、一緒に逃亡してるんですか?!」
「はいっ! わたくし、ロイエさんの為なら例え火の中水の中!ですわ」
その疑う事を知らない無垢な笑顔に、少し心配になってハリルベルと顔を見合わせた。
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