求:回復術師 〜絶対見捨てない為に、僕が今できる事〜

猫鈴うみゃ

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第二章

[ 065 ] 馬車にゆられて

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 揺れる馬車の中、僕とハリルベルはロゼさんにこれまでの話を説明していると、ロゼさんは泣き出してしまった。

「ぐす。そんな……そんな過去をお持ちだったなんて……ロイエさん、よく頑張りましたね。ぐす」
「な、泣かないでください」
「だっで……!」

 まだ監禁されたところまでしか話してないのに……。なんとかロゼさんを慰めつつ、現在に至るまでの説明を終えるとロゼさんから質問があった。

「あの……気を悪くさせてしまったら申し訳ありません。マスターさんが色々規律を無視してロイエさんを助けたのはわかりました。でも、ロイエさんをリッターガルドの王国騎士団に保護して頂くのは、ダメなのでしょうか?」
「それは……」

 フィーアにも言われたことだ。王国騎士団側から見たら、マスターは回復術師を不当に隠し……逃した、ただの犯罪者でしかない。僕がハリルベルと盗賊団の洞窟から逃げなければ、誰にも迷惑が掛からなかったのかもしれない。

「国は、保護した回復術師で使って、回復魔法の遺伝など様々な人体実験が行なっているからです。彼らに捕まればロイエ君は一生出てこれないでしょう」

 僕の代わりに、馬車を操っているリュカさんがロゼに答えてくれた。ガタゴトと揺れる馬車の中、リュカさんが声を張り、王国の悪逆非道を説明していく。

「……そ、そんな事がこの国の裏では行われていたんですね。わたくし、全然知らずに……申し訳ありません」
「俺も噂では聞いていたが……ちなみにリュカさん。その情報はどれくらい正しいんだ?」

 リュカさんが手綱を引いて、馬車の速度を少し落とすと、会話が聞こえやすくなった。

「実は、ヘクセライでは実験場から逃げてきた回復術師を匿っています」
「当事者からの声なのか……」
「ロイエ君には是非、彼女の話を聞いて頂きたいと思ってます」
「待て……彼女だと? その人の名前は?!」

 そうだ。親に売られたハリルベルの妹も回復術師だ。もしかして……。

「名前はマローネという四十代の女性です」
「違った……。ベルフィじゃないのか……」

 ハリルベルは、ハァとため息を吐いた。無理もない。

「ベルフィというのは?」
「たぶん回復術師として親に売られた。ハリルベルの妹です」
「そうですか……。回復術師同士の接触は出来なかったと言っていたのでわかりませんが、捉えられている可能性はありますね」

 しかし、実験場から逃げて来た。とは、どうやって逃げたんだろう。戦闘に不向きな回復術師が単独で逃げられるとは到底思えないが……。思考を巡らせていたら突然男の声が届いた。

「そこの馬車! 止まれ!」
「ヒヒーン!」

「うわっ」
 
 馬車は急に止まり、僕はその反動で前に座っていたロゼの胸に飛び込んだ。二つのエアバックが僕を包む。

「もうロイエさんたら、こんなところで……」
「ご、ごめんなさい」

 外を見たハリルベルが、ボソリと呟いた。

「……王国騎士団だ」

 慌てて馬車の外へ視線を向けると、白銀の鎧に兜をつけた騎士が五人。馬に乗り進路を塞いでいた。
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