求:回復術師 〜絶対見捨てない為に、僕が今できる事〜

猫鈴うみゃ

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第三章

[ 146 ] レオラの残念話

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 レオラと雑談をしながら歩いていると、目的の依頼主の店『武器屋 シュタール』へと辿り着いた。

「レオラさん、ここですかね?」
「……ん? ああ、そうだね。地図だとここだね!」
「でも凄く防具屋っぽい店ですね……」

 武器屋シュタールは、店の外に籠手やら盾、鎧や兜が散乱している防具屋のような武器屋だった。とにかく色々なものが散乱しており、依頼じゃなかったら絶対入りたくない店構えだ。

「確か……依頼主はミネラさんでしたっけ、レオラさんは会った事あります?」

「うーん!」
「あの、レオラさん?」
「よし! やっぱり気持ち悪い!」

 ガーン! 目のと向かって気持ち悪いと言われたのは、前世含めても初めてだ。泣いちゃう。

「あ! ロイエのことじゃ無いよ? 私さ、港では男共にレオラって呼び捨てされてるから、さん付けで呼ばれるのがどうにもしっくりこなくてね。さん付けで呼ぶのやめてもらってもいい?」

 裏表のない性格。見た目もボーイッシュだけど、性格もサバサバしているレオラが男ばかりの港で仕事をやっていけてる理由が、よくわかった気がする。

「わかりました。レオラって呼びます」
「うんうん、その方が私っぽい」

 荒くれ者達にこき使われてきた影響だろうけど、レオラにとってはこれが自然なんだろう。

「で、話を戻すとミネラって人には会った事ないかな。実はこの街に来て最初に武器を新調してからは、武器屋には入ってないんだよねぇ」
「新調したっていうのは、そのナックルですか?」
「そう! 見てこよこれ! かっこいいでしょー? ゴールドソードって店で買ったんだけど」

 レオラが両拳にはめたナックルを、くるくると回して見せてきた。確かに高級な装いだ。

 拳の部分にはダイヤモンドのような大粒の宝石が四つ、装飾には金を贅沢に使ったナックルは武器というより、美術品に近い。

「……ゴールドソード」

 どこかで聞いたな……。ふと、レオラが視線を上げたので同じ方向に視線を向けると、一際目立つ三階建ての建物と、その屋上に取り付けられた金色の剣のオブジェが目に入った。

 あれか……。シュテルンさんに案内されて入った、自称ナンバーワンの武器屋だ。

「確か……ヘンドラーさんっていう強引な押し売りする人がオーナーだったような」
「あ、すごい! 良く知っていたね!」
「あそこで買ったんですか? 正直あまり実践向けの武器はなかったように思えますけど」
「この街に来て迷子になってたら、ヘンドラーさんに声かけられてね。来たばかりなんだって話したら、まずは武器を買うべきだって言われて」

 ここまで聞いた時点で、レオラさんがカモにされているのがヒシヒシと伝わってる。

「それで、そのナックルを?」
「普段は剣しか扱ってないけど、たまたま没落貴族の家から質流れしてきた一級品があるって話で特別に売ったもらったんだー」
「……おいくらでした?」
「えっとね。金貨二千枚」
「え? ええええぇええ!」

 高すぎる! 家が建つレベル!

「高……かな?」
「いやいやいや! 高すぎですよ! ぼったくりもいいところでは?!」
「やっぱりそう思う?」
「思うも何もお金はどうしたんですか?」
「私も最初は、そんな金額払えるわけないと断ったんだよ。そしたら分割払いでも良いって言われて」

 前世でも良くある手だ、高価なものを買わせて分割払いへ誘導、毎月の負担は少ないように見せるという詐欺の常套手段だ。

「毎月いくらの支払いですか?」
「毎月金貨ニ十枚で、百回払い……」
「ひゃっ、百回……八年くらいですか?」
「うーん、そうかな?」
「そんなに使ったら壊れそうですね……」
「でもでも! 使わなかったら勿体無いじゃない?!」
「それはそうですけど……」

 返品出来ないだろうか? 無理だろうな……。あのオーナーの事だから抜け道を残すようなヘマはしてないだろう。

「返済は間に合ってるんですか?」
「ギリッギリかな~、その分このナックルで稼いじゃえばいいんだよ!」

 バンッ!!

 レオラの残念話を聞いていると、突然店のドアが力強く開かれた。

「うっさいわ! さっきから店先でくっちゃべってる奴は誰じゃ!!」
「す、すみません……」

 店の中から現れたのは、白髪だらけの老婆だった。
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