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第四章
[ 201 ] 目指せナッシュ
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「はぁ、本当に着の身着のまま出てきちゃいましたね」
アルノマールに指示されるまま、役所の裏口から街の外へ抜け出した。空は曇っているが、既に雨は止んでおり足元は泥にまみれている。
「飲み水はわしの魔法でなんとかなるが……」
「食料が問題ですね」
しばらく泥道を歩くと、街道の木影に人影がみえた。
「おう、ロイエ。待ってたぜ」
そこには、大きな風呂敷を抱えた店長が待っていた。こんなところで何をしているんだ?と思ったが、ナッシュに行くなら店長に声をかけ忘れたなと悩んでいたので安堵した。
「店長……。ここでなにしてるんですか」
「なにをしてるもなにも、宴会をするから調理器具と食料を持って街の出口で待ってろって、朝早く連絡があったからずっと待ってたんだよ」
宴会? ああ、これは市長の手引きだな……。こうなる事を見越して店長を移動させておいたのか。相変わらず大雑把な性格の割にケアが細かい……。
「で? どこで宴会やるんだ?」
「すみません。それは市長の嘘です。僕らはこれからナッシュへ向かいます」
「え? まじかー、うーん。もう少しフォレストの料理を堪能したかったが仕方ねぇな。うし!ナッシュへいくか!」
こうして僕らは、マスターのアテルを筆頭に、ハリルベル、ロゼ、店長と共にナッシュを目指すことになった。
――「しっかし、重力魔法ってのは便利だなー。歩く必要もないなんて」
泥道を歩くのは相当疲れる。普通に歩いたら予定よりも大幅に到着が遅れるだろう。僕以外の荷物を含めた全員を軽くして中に浮かせると、紐で引っ張って僕だけが歩くことにした。
疲れたら交代すれば、一人の体力でずっと歩き続けられる。馬車のない僕らにとってこれが一番早い移動方法だ。ピヨがいればさらに速かったんだけど……。
「ちげーなぁ。もう少し貯めのイメージでヴェルアだ。ほれもういちどやってみろ」
「わかりました」
「マスターさん、キーゼル採掘場と七福屋の話って何かご存知ですか?」
「ああ、例のあれなことか? テトとナルリッチが上手くやっているようじゃが」
「そうですか」
各々自由に過ごしているけど、ムードメーカーのピヨがいないだけで、なんだか静かに感じる。短い付き合いだけど、あれはいなければいないで寂しい。
「よし、ここらで飯にしようぜ。俺が作ってやるからよ」
「楽しみですわ」
「そうですね。あ、店長。隠密行動中なので、なるべく煙を出さないように料理を作ってくれませんか?」
「となると薪は燃やせねぇな。おいハリー、お前コンロの役割な。ロイエも手伝え」
――僕はフライパンを重力魔法で軽くして中に浮かせると、その下でハリルベルが両手からヴェルアを出して店長が調理した。
「おい!左手の火力が強すぎる! ここは弱火でじっくり炒めなきゃ行けねぇんだ」
「は……はい!」
店長いわく、ちゃんとコントロールすれば一つの魔法を二箇所から出す事が出来るらしい。当然威力は下がるが、料理をする上では便利だとかなんとか……。
僕がそれを出来るようになっても、範囲も効果も半分の重力魔法が二箇所同時……あまり効果は無さそうかな。
「よし、いいぞ! こっちは蒸らすから中火だ」
「くぅ……こう、かな」
「よし、じいさん水出してくれ」
「ほい」
「嬢ちゃん、冷やしておいた肉出してくれ」
「はいですわ」
――こうして、みんなの力を合わせて料理は無事に完成した。
「はぁ……疲れた」
「料理って疲れるんですね……」
「当たり前だろ! 全身全霊で作ってんだからな! 残したら承知しねぇぞ!」
汗だくになって作った昼食を、雨が上がって少し涼しい森の中で食べたが、格別においしかった。
「フォレストで取れた野菜や木の実を使ってみたんだ。俺の料理にも合うな」
「おいしいですわ!」
「ジジイの歯でも噛める優しさを感じられるのぉ」
「よしよし、これも新作としてメモしておこう」
こうして僕らは店長の持ってきた料理で飢えを凌ぎ、交代で歩くことで通常より相当早いペースで、ハイネル村まで辿り着くことが出来た。
アルノマールに指示されるまま、役所の裏口から街の外へ抜け出した。空は曇っているが、既に雨は止んでおり足元は泥にまみれている。
「飲み水はわしの魔法でなんとかなるが……」
「食料が問題ですね」
しばらく泥道を歩くと、街道の木影に人影がみえた。
「おう、ロイエ。待ってたぜ」
そこには、大きな風呂敷を抱えた店長が待っていた。こんなところで何をしているんだ?と思ったが、ナッシュに行くなら店長に声をかけ忘れたなと悩んでいたので安堵した。
「店長……。ここでなにしてるんですか」
「なにをしてるもなにも、宴会をするから調理器具と食料を持って街の出口で待ってろって、朝早く連絡があったからずっと待ってたんだよ」
宴会? ああ、これは市長の手引きだな……。こうなる事を見越して店長を移動させておいたのか。相変わらず大雑把な性格の割にケアが細かい……。
「で? どこで宴会やるんだ?」
「すみません。それは市長の嘘です。僕らはこれからナッシュへ向かいます」
「え? まじかー、うーん。もう少しフォレストの料理を堪能したかったが仕方ねぇな。うし!ナッシュへいくか!」
こうして僕らは、マスターのアテルを筆頭に、ハリルベル、ロゼ、店長と共にナッシュを目指すことになった。
――「しっかし、重力魔法ってのは便利だなー。歩く必要もないなんて」
泥道を歩くのは相当疲れる。普通に歩いたら予定よりも大幅に到着が遅れるだろう。僕以外の荷物を含めた全員を軽くして中に浮かせると、紐で引っ張って僕だけが歩くことにした。
疲れたら交代すれば、一人の体力でずっと歩き続けられる。馬車のない僕らにとってこれが一番早い移動方法だ。ピヨがいればさらに速かったんだけど……。
「ちげーなぁ。もう少し貯めのイメージでヴェルアだ。ほれもういちどやってみろ」
「わかりました」
「マスターさん、キーゼル採掘場と七福屋の話って何かご存知ですか?」
「ああ、例のあれなことか? テトとナルリッチが上手くやっているようじゃが」
「そうですか」
各々自由に過ごしているけど、ムードメーカーのピヨがいないだけで、なんだか静かに感じる。短い付き合いだけど、あれはいなければいないで寂しい。
「よし、ここらで飯にしようぜ。俺が作ってやるからよ」
「楽しみですわ」
「そうですね。あ、店長。隠密行動中なので、なるべく煙を出さないように料理を作ってくれませんか?」
「となると薪は燃やせねぇな。おいハリー、お前コンロの役割な。ロイエも手伝え」
――僕はフライパンを重力魔法で軽くして中に浮かせると、その下でハリルベルが両手からヴェルアを出して店長が調理した。
「おい!左手の火力が強すぎる! ここは弱火でじっくり炒めなきゃ行けねぇんだ」
「は……はい!」
店長いわく、ちゃんとコントロールすれば一つの魔法を二箇所から出す事が出来るらしい。当然威力は下がるが、料理をする上では便利だとかなんとか……。
僕がそれを出来るようになっても、範囲も効果も半分の重力魔法が二箇所同時……あまり効果は無さそうかな。
「よし、いいぞ! こっちは蒸らすから中火だ」
「くぅ……こう、かな」
「よし、じいさん水出してくれ」
「ほい」
「嬢ちゃん、冷やしておいた肉出してくれ」
「はいですわ」
――こうして、みんなの力を合わせて料理は無事に完成した。
「はぁ……疲れた」
「料理って疲れるんですね……」
「当たり前だろ! 全身全霊で作ってんだからな! 残したら承知しねぇぞ!」
汗だくになって作った昼食を、雨が上がって少し涼しい森の中で食べたが、格別においしかった。
「フォレストで取れた野菜や木の実を使ってみたんだ。俺の料理にも合うな」
「おいしいですわ!」
「ジジイの歯でも噛める優しさを感じられるのぉ」
「よしよし、これも新作としてメモしておこう」
こうして僕らは店長の持ってきた料理で飢えを凌ぎ、交代で歩くことで通常より相当早いペースで、ハイネル村まで辿り着くことが出来た。
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