求:回復術師 〜絶対見捨てない為に、僕が今できる事〜

猫鈴うみゃ

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第四章

[ 217 ] 精霊の化身

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「さぁさぁ! どうするー? もう私には重力も炎も水も土も物理攻撃すら効かないわよー? うふふ」

 先ほどの練度★8の魔法、レプンケレットメーアを警戒して僕らは事務所の屋上から動けないでいた。

 あれが来たらすぐに動き回らないと……。重力魔法が効かなくった今、もう同じようなチャンスは作れない。

「そっちから来ないなら、私から行こうかな?」

 とぷんっ。
 グロッサは突然、地面へ吸われるように消えていった。

「みんな気をつけるんじゃ!」

 マスターがそう叫んだ瞬間だった。慌ててその場を退くと、僕らのいた場所からグロッサが染み出してきたので、すかさずハリルベルが切り掛かった。

「ヴェルア・オルト!」

 ヴェルアを纏ったハリルベルの剣が、人の形になろうとするグロッサの頭を切り落と……せなかった。剣が当たる直前に、グロッサの頭の形が剣を避けるようにぐにゃりと変形して避けたのだ。

「くそ! バケモンかよ!!」
「……?」

 なんだこの違和感……。僕は今何を見た。
 何か大切なものを見たような気がしたが、すぐに親方の呼び声で意識を戻した。

「ロイエ! 手伝え! フェルスアウトファーラー!」

 親方が呪文を唱えると、グロッサの頭上に巨大な岩が集まる。その間もハリルベルの剣がグロッサを襲い、グロッサはそれを避ける。

「ジオグランツ・ツヴァイ・ジオフォルテ・オルト!」

 集まった岩を、僕の超重力で高速落下させてグロッサを押し潰す! ドン!と事務所の原型が無くなるほどの圧力がかかるが、飛び散ったグロッサにはダメージが無いようだ。

「ひゃはははははは!」

 狂ったように笑うグロッサが、再び集まり人の形になると、僕らが警戒していた魔法を唱えた。

「窒息の時間だよ。レプンケレットメーア!」

 警戒していた練度★8呪文。その言葉に反応し僕らは慌てて事務所の屋上から飛び降りたが、グロッサの魔法は発動していなかった。ブラフだと……?!

「アハ! もう回避不可能よ。メルクーアレッタ・オルト・ヴェルト!」

 僕らは事務所の屋上から飛び降りてる最中だ。このままでは狙い撃ちにされる。

 僕はすぐにグローリアヴァイトを唱えようとおもったが、あの魔法は発動時に地面に魔法陣が出る。つまり地面にいないと効果がないのかも知れない。

 そう思うとグローリアヴァイトは使えない。この場に最適な魔法……それはこれだ。

「ジオグランツ・オルト・ツヴァイ・クーア・ヴェルト!」

 巨大な重力場が発生すると、ジオグランツで着地までの時間を短縮させ、空中でも怪我が治るように範囲内をクーアで満たした。

 僕の狙いは正しく、みんなは落ちながら次々とメルクーアレッタに貫かれるが、撃たれた瞬間から回復していく。僕らは狙い通り、素早く地面に両の足をつける事が出来た。

 しかし、その瞬間を彼女は狙っていた。

「もう逃げられないわよ? レプンケレットメーア!」
「しまっ!」

 気付いた時には遅かった。精霊化しているからか、さっきよりも発動が速い……! 避けきれない。

 それでも一度食らってる僕らは最大限の抵抗として、無理やりにでも体を動かして、溺死を避けようとした。

 ハリルベルはヘルブランランツェでジェット噴射を、マスターは水の蛇を出して自身を移動させようとしたが、空中で霧散してしまった。

「うっ!」

 水の牢獄に体が埋まっていく僕を、親方の出したザントシルドが突き飛ばし、僕はその勢いを借りてグロッサの魔法から抜け出すことが出来た。

「あーらら。よく避けたね。でもね、君じゃ私には勝てないよ? ふふふ」
「あの、一つ……。聞いてもいいですか」
「ん? なに? 味方が死ぬまでお喋りする?! いいよいいよ! クズでいいね!」

 僕は気付いてしまった。
 マスターがグロッサに気付かれないように、先ほど空に向かって投げた水魔法の真意を……。マスターは以前も同じことをやっていたからだ。

「……どうして護衛班の貴方がここにいるんですか。王の護衛はしないんですか」
「そりゃ護衛する必要が無くな……。おっと君に教える義理はないねぇ。さて……お友達には溺死してもらおうかしら、そこで指を咥えて見てなさい!」

 グロッサが魔力を込めて水の牢獄を強化しようとした時だった。上空が光ったかと思うと、ゴロゴロと轟音が鳴り……無数の雷の剣がグロッサを襲った。

「くっ?!」

 とぷっん。と水になって上空からの攻撃を避けたグロッサは、少し離れたところに再度出現すると、その表情は恐怖で満ちていた。

「き、貴様……!」
「おい……ここはどこだ?」

 轟雷と共に現れたのは、黒フードを被りチラリと見える黄色いイヤリングが特徴の黒髪の男性。

「何故、貴様がこんなところにいる! ミア・ブリッツ!」
「それは俺が聞きてぇな……。俺は王都を目指してたはずなんだが……」
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