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第四章
[ 227 ] 横
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――海路よりも空路の方が断然速い。僕らを乗せた船は、予定より1日以上速くヘクセライ近郊へと近づいた。もう街の影も見えている。
「ロゼ、もう魔石のストックも無い?」
「無いです。店にあった魔石を半分も持ってきたんですが……」
「そっか……。船長、覚悟を決めてください」
「他に何か手はねぇのかよ!」
船の上では、僕らを最大のピンチが襲っていた。
まず、ピラートの魔力消耗が大きすぎて、回復してもすぐに枯渇するから、ロゼの持ってきていた魔石を飲ませて最大値を増やして誤魔化した。
ピラートが落ち着くと、今度はシルフィも魔力が枯渇した。こっちは船員の風魔法使いがいたから交代してもらうことで凌いで、アイテムは全てピラートに注ぎ込んだ。
しかし、アイテムが尽きた今、どうやってヘクセライまで辿り着くか、ここいらで不時着するか残り短い時間の中で、僕らは相談していた。
「とりあえずゆっくり高度を下ろして、海路で行くしかないだろう」
「船底の修理はどうなっています?」
「ほぼ全て直したと連絡は受けているが、道具も材料もその場しのぎだから、着水してみんとわからん」
後数分で船は飛べなくなるが、ゆっくり降下しても海を航行出来るか五分五分だった。
「では、着水して水が入ってこないことを祈るしかないですかね……」
「私の土魔法も、水に濡れたらすぐに壊れちゃうしねー」
もちろん他に方法が無いかいくつか検討はした。
例えば、テトラさんに船の周りを土で覆ってもらう作戦は、テトラさんの言うとおり水に弱くて無理。
ロゼの氷魔法も、塩水は凍りにくいらしく、思う通りにいかない可能性があるらしい。
「時間もない、着水させるぞ!」
「はい!」
「ピラート! 聞こえるか! これから船を着水させる! 重力魔法を弱めろ!」
船の中に張り巡らされた伝声管を使い、船長が船尾にいるピラートへ連絡した。
「りょ、りょうかい……」
なんとも頼りないピラートの声が帰ってきた。
「よし、降下開始!」
少しでも前進させるために、風魔法で船を押しながら重力魔法を弱めていると、だんだんと船の船尾が重くなり、船首が上がり始めた。
「ロ、ロイエ?! 船首が上がってきてけど!?」
僕は均一に重力を緩めている。きっとピラートに何か異変があったんだ。
「落ちるってー! やばいやばい!
「ぎゃぁあああああ!」
「ロイエさーん!」
そうこうしているうちに、どんどん船首は上がっていき、船尾は下がっていく。みんながあちこち掴まる中、ガクッと船尾が重くなりら船が完全に縦になった。
まずい! ピラートの魔法が解けたか!?
っていうか、僕の掛けてる魔法の向きはこれどうなってるんだ?!
僕は船に対して下方向へ重力をかけていたが、船が上を向いた事で、横方向へ重力を繰り出す形になった。
【重力魔法:ゼレンが解放されました】
……?!
何が起きた?! 重力魔法の練度★5が突然開放された。確かレーラさんが使ってた。横方向へ重力をかける魔法だった気がする。
となると、習得条件は横方向へ重力魔法を使う事? そんな簡単な条件で良いのかな。もちろんそれまでに使った重力魔法の使用時間も加味されるとは思うけど……。
それよりもこの状況をなんとかするには、これしかない! 発動していた重力魔法を解除すると船は本来の重さを取り戻して落下を始めた。
「ロイエ?! どーなってんだよ! 落ちてるぞ!」
ハリルベルが、船にしがみつきながら叫んでいるが、今はそれどころではない。
「ゼレン・オルト・ツヴァイ・ヴェルト!」
呪文を唱えた瞬間、船は横方向に飛んだ。
いや、正確には横に向かって落ちている。
ゼレンの魔法で、重力のかかる方向が横になったんだ。
はたから見れば、意味不明だと思う。船の船首は上を向いたまま、僕らを乗せた船はへクセライに向かって飛んでいる。いや、落ちている。
「ロイエさんこれは……?!」
「横に……落ちてる?!」
「うう、高いところはやめてくれ……」
「だから……。私の事を掴むなって、もー!」
店長がテトラさんに抱きついて殴られている。
ゼレンは元々の範囲がジオグランツより広いらしく、ヴェルト化させた範囲は船をすっぽり覆っている。
「小僧! このままヘクセライへ行くのか?!」
「近くまで来たらゆっくり下ろしますけど、初めての操作だか失敗したらごめんなさい」
船長へ謝ると、僕らを乗せた船はどんどんヘクセライへ向かって落ちていく。
「ロゼ、もう魔石のストックも無い?」
「無いです。店にあった魔石を半分も持ってきたんですが……」
「そっか……。船長、覚悟を決めてください」
「他に何か手はねぇのかよ!」
船の上では、僕らを最大のピンチが襲っていた。
まず、ピラートの魔力消耗が大きすぎて、回復してもすぐに枯渇するから、ロゼの持ってきていた魔石を飲ませて最大値を増やして誤魔化した。
ピラートが落ち着くと、今度はシルフィも魔力が枯渇した。こっちは船員の風魔法使いがいたから交代してもらうことで凌いで、アイテムは全てピラートに注ぎ込んだ。
しかし、アイテムが尽きた今、どうやってヘクセライまで辿り着くか、ここいらで不時着するか残り短い時間の中で、僕らは相談していた。
「とりあえずゆっくり高度を下ろして、海路で行くしかないだろう」
「船底の修理はどうなっています?」
「ほぼ全て直したと連絡は受けているが、道具も材料もその場しのぎだから、着水してみんとわからん」
後数分で船は飛べなくなるが、ゆっくり降下しても海を航行出来るか五分五分だった。
「では、着水して水が入ってこないことを祈るしかないですかね……」
「私の土魔法も、水に濡れたらすぐに壊れちゃうしねー」
もちろん他に方法が無いかいくつか検討はした。
例えば、テトラさんに船の周りを土で覆ってもらう作戦は、テトラさんの言うとおり水に弱くて無理。
ロゼの氷魔法も、塩水は凍りにくいらしく、思う通りにいかない可能性があるらしい。
「時間もない、着水させるぞ!」
「はい!」
「ピラート! 聞こえるか! これから船を着水させる! 重力魔法を弱めろ!」
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「りょ、りょうかい……」
なんとも頼りないピラートの声が帰ってきた。
「よし、降下開始!」
少しでも前進させるために、風魔法で船を押しながら重力魔法を弱めていると、だんだんと船の船尾が重くなり、船首が上がり始めた。
「ロ、ロイエ?! 船首が上がってきてけど!?」
僕は均一に重力を緩めている。きっとピラートに何か異変があったんだ。
「落ちるってー! やばいやばい!
「ぎゃぁあああああ!」
「ロイエさーん!」
そうこうしているうちに、どんどん船首は上がっていき、船尾は下がっていく。みんながあちこち掴まる中、ガクッと船尾が重くなりら船が完全に縦になった。
まずい! ピラートの魔法が解けたか!?
っていうか、僕の掛けてる魔法の向きはこれどうなってるんだ?!
僕は船に対して下方向へ重力をかけていたが、船が上を向いた事で、横方向へ重力を繰り出す形になった。
【重力魔法:ゼレンが解放されました】
……?!
何が起きた?! 重力魔法の練度★5が突然開放された。確かレーラさんが使ってた。横方向へ重力をかける魔法だった気がする。
となると、習得条件は横方向へ重力魔法を使う事? そんな簡単な条件で良いのかな。もちろんそれまでに使った重力魔法の使用時間も加味されるとは思うけど……。
それよりもこの状況をなんとかするには、これしかない! 発動していた重力魔法を解除すると船は本来の重さを取り戻して落下を始めた。
「ロイエ?! どーなってんだよ! 落ちてるぞ!」
ハリルベルが、船にしがみつきながら叫んでいるが、今はそれどころではない。
「ゼレン・オルト・ツヴァイ・ヴェルト!」
呪文を唱えた瞬間、船は横方向に飛んだ。
いや、正確には横に向かって落ちている。
ゼレンの魔法で、重力のかかる方向が横になったんだ。
はたから見れば、意味不明だと思う。船の船首は上を向いたまま、僕らを乗せた船はへクセライに向かって飛んでいる。いや、落ちている。
「ロイエさんこれは……?!」
「横に……落ちてる?!」
「うう、高いところはやめてくれ……」
「だから……。私の事を掴むなって、もー!」
店長がテトラさんに抱きついて殴られている。
ゼレンは元々の範囲がジオグランツより広いらしく、ヴェルト化させた範囲は船をすっぽり覆っている。
「小僧! このままヘクセライへ行くのか?!」
「近くまで来たらゆっくり下ろしますけど、初めての操作だか失敗したらごめんなさい」
船長へ謝ると、僕らを乗せた船はどんどんヘクセライへ向かって落ちていく。
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