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第四章
[ 249 ] 護衛班の回復術師
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僕たちが向かった先では、信じられない光景が広がっていた。地面はあちこち陥没し、いくつもの竜巻が雷を纏って天を貫いている。
「なんだこりゃ……」
「ザイードはどこに……」
「ハァアアア!!」
その時、竜巻の隙間から人影が現れた。ゼクトが巨剣を振り下ろすとザイードが縦に斬られ……血が吹き出たが、次の瞬間、ザイードは完全に傷が塞がっていた。
「ちっ!」
「ハッハハー! 何度やろうが無駄だ! オラァ!」
「ザイードは風と雷のはずだぞ! 回復なんて……」
「護衛班には回復術師がいるんです! この近くにいるはずです!」
「なるほど。そいつを倒さない限りザイードは無敵ってわけか」
「ロイエとピヨ、ハリルベルとシルフィは回復術師の捜索、テトラとレーヴェ、アウスはゼクトの援護だ!」
アルノマールの指示でそれぞれが走り出すと、真っ先にアウスがザイードを岩で閉じ込めるも、ゼクトの風とザイードの風で場が荒れており、簡単に回避されてしまった。
魔力の少ない僕がいても足手纏いになるだけだ。
すぐに頭を切り替えて、回復術師の捜索に走った。
「ロイエ! その鳥、もう魔力が無いのか?!
「うん、僕も結構厳しい!」
「よし、ここは俺らに任せろ! あれか?!」
戦場の周辺を走っていると、ハリルベルの指さす方向――茂みの中にフードを被った人物がいた。だいぶ小柄だ……女性か?にしては小さいような。
「シルフィ!」
「おっけい! ヴィベルスルフト・オルト!」
並走していたシルフィがハリルベルをブーストさせた。
魔力の残量が少ないピヨと僕は無理は出来ない。ここはハリルベルに任せよう。
「回復術師だか知らねぇが! 先手必勝! ヘルブランランツェ・オルト!」
空中を滑空するハリルベルが、針のように細くして飛翔速度を上げたヘルブランランツェ投げつけると、フードの人物は氷魔法を放ってきた。
氷と回復のダブルか。しかも無詠唱となると、それなりの練度だろう。しかし、ハリルベルの魔法は一点集中型で水魔法ならともかく、氷魔法で防げるものではない。
氷魔法を貫通したヘルブランランツェはそのままフードの人物の左肩に突き刺さった。
「あぁぁあぁあ! うぐ……。クーア!」
やはり女性の声だった。しかしグロッサの時のような戦う意志を感じられないのは、なぜだ?
「よっしゃぁ! 貰ったぜ! 俺のオリジナル魔法だ! ヴェルア・ナックル!」
ヴィベルスルフトで加速したハリルベルは、そのままの勢いで拳にヴェルアを纏うと、フードの女に殴りかかった。
「待って! お兄ちゃん!」
「……っ!?」
その声を聞いて、ハリルベルの動きが止まった。
「嘘だろ……」
女がフードを少し上げると、ハリルベルと同じ青い髪をした幼い少女が顔を出した。
「ベルフィ……。お前、生きていたのか……。本当にベルフィなのか……?」
護衛班の回復術師は幼い頃、騎士団に連れて行かれたハリルベルの妹。ベルフィだった。
「そうだよ。お兄ちゃん。私だよ」
「ベルフィ……。よ”がっ”た”、ぐすん。本当に、本当に……ごふっ」
涙を流して近寄ったハリルベルを、ベルフィが剣で突き刺した。
「ああ! お兄ちゃん! やめてよ! 私のお兄ちゃんなのよ!」
「なん……で、ベル、フィ……」
「ハリルベル!」
「お願い!やめてください! やめねーよ!ナーデルフロワ!」
ベルフィが放った無数の氷の針がハリルベルを襲うが、それよりも早くシルフィがハリルベルを回収した。
「はぁはぁ、何よあいつ。ハリーの妹?!」
「お兄ちゃんごめんなさいごめんなひゃはははは!」
「なんだ、あれは……」
やっと追いついた僕はハリルベルを回復させると、フードが完全に取れたベルフィの後頭部に、もう一つ男の顔が付いていた。その顔だけの男が笑う。
「笑っちゃうよなぁ! お兄ちゃんだったのかよそいつ! まじ最高!」
「顔が二つ?!」
「キモ……」
「同時にご飯食べるれるピヨ?!」
「ジンテーゼ……」
「なにそれ」
「改造人間だよ。複数の脳を1人に混ぜたりして、魔力回路を改造するんだ」
「それで、珍しいダブル持ちがこんなにいるのね」
ミルトのように5つも合わせると練度が極端に低くなったり、知能指数が低下するが、リシトやザイードをみていると二つが限界っぽいな。しかし、なぜベルフィはこんな姿に……。
「お? この姿にびびってる?! ひゃーははは! 失敗作だよ! 失敗作! 生きてる人間の脳を開いて他人の脳を結合するんだがな、顔だけになった俺様がこの子の体を乗っ取っちまったってわけよ!」
「きさ、ま……。ベルフィから出ていけ!」
「お兄ちゃん! 逃げて! 死ねぇ! アッシュグランランツェ!」
ベルフィの放った氷魔法の練度★8の氷の槍が僕らを襲った。
「なんだこりゃ……」
「ザイードはどこに……」
「ハァアアア!!」
その時、竜巻の隙間から人影が現れた。ゼクトが巨剣を振り下ろすとザイードが縦に斬られ……血が吹き出たが、次の瞬間、ザイードは完全に傷が塞がっていた。
「ちっ!」
「ハッハハー! 何度やろうが無駄だ! オラァ!」
「ザイードは風と雷のはずだぞ! 回復なんて……」
「護衛班には回復術師がいるんです! この近くにいるはずです!」
「なるほど。そいつを倒さない限りザイードは無敵ってわけか」
「ロイエとピヨ、ハリルベルとシルフィは回復術師の捜索、テトラとレーヴェ、アウスはゼクトの援護だ!」
アルノマールの指示でそれぞれが走り出すと、真っ先にアウスがザイードを岩で閉じ込めるも、ゼクトの風とザイードの風で場が荒れており、簡単に回避されてしまった。
魔力の少ない僕がいても足手纏いになるだけだ。
すぐに頭を切り替えて、回復術師の捜索に走った。
「ロイエ! その鳥、もう魔力が無いのか?!
「うん、僕も結構厳しい!」
「よし、ここは俺らに任せろ! あれか?!」
戦場の周辺を走っていると、ハリルベルの指さす方向――茂みの中にフードを被った人物がいた。だいぶ小柄だ……女性か?にしては小さいような。
「シルフィ!」
「おっけい! ヴィベルスルフト・オルト!」
並走していたシルフィがハリルベルをブーストさせた。
魔力の残量が少ないピヨと僕は無理は出来ない。ここはハリルベルに任せよう。
「回復術師だか知らねぇが! 先手必勝! ヘルブランランツェ・オルト!」
空中を滑空するハリルベルが、針のように細くして飛翔速度を上げたヘルブランランツェ投げつけると、フードの人物は氷魔法を放ってきた。
氷と回復のダブルか。しかも無詠唱となると、それなりの練度だろう。しかし、ハリルベルの魔法は一点集中型で水魔法ならともかく、氷魔法で防げるものではない。
氷魔法を貫通したヘルブランランツェはそのままフードの人物の左肩に突き刺さった。
「あぁぁあぁあ! うぐ……。クーア!」
やはり女性の声だった。しかしグロッサの時のような戦う意志を感じられないのは、なぜだ?
「よっしゃぁ! 貰ったぜ! 俺のオリジナル魔法だ! ヴェルア・ナックル!」
ヴィベルスルフトで加速したハリルベルは、そのままの勢いで拳にヴェルアを纏うと、フードの女に殴りかかった。
「待って! お兄ちゃん!」
「……っ!?」
その声を聞いて、ハリルベルの動きが止まった。
「嘘だろ……」
女がフードを少し上げると、ハリルベルと同じ青い髪をした幼い少女が顔を出した。
「ベルフィ……。お前、生きていたのか……。本当にベルフィなのか……?」
護衛班の回復術師は幼い頃、騎士団に連れて行かれたハリルベルの妹。ベルフィだった。
「そうだよ。お兄ちゃん。私だよ」
「ベルフィ……。よ”がっ”た”、ぐすん。本当に、本当に……ごふっ」
涙を流して近寄ったハリルベルを、ベルフィが剣で突き刺した。
「ああ! お兄ちゃん! やめてよ! 私のお兄ちゃんなのよ!」
「なん……で、ベル、フィ……」
「ハリルベル!」
「お願い!やめてください! やめねーよ!ナーデルフロワ!」
ベルフィが放った無数の氷の針がハリルベルを襲うが、それよりも早くシルフィがハリルベルを回収した。
「はぁはぁ、何よあいつ。ハリーの妹?!」
「お兄ちゃんごめんなさいごめんなひゃはははは!」
「なんだ、あれは……」
やっと追いついた僕はハリルベルを回復させると、フードが完全に取れたベルフィの後頭部に、もう一つ男の顔が付いていた。その顔だけの男が笑う。
「笑っちゃうよなぁ! お兄ちゃんだったのかよそいつ! まじ最高!」
「顔が二つ?!」
「キモ……」
「同時にご飯食べるれるピヨ?!」
「ジンテーゼ……」
「なにそれ」
「改造人間だよ。複数の脳を1人に混ぜたりして、魔力回路を改造するんだ」
「それで、珍しいダブル持ちがこんなにいるのね」
ミルトのように5つも合わせると練度が極端に低くなったり、知能指数が低下するが、リシトやザイードをみていると二つが限界っぽいな。しかし、なぜベルフィはこんな姿に……。
「お? この姿にびびってる?! ひゃーははは! 失敗作だよ! 失敗作! 生きてる人間の脳を開いて他人の脳を結合するんだがな、顔だけになった俺様がこの子の体を乗っ取っちまったってわけよ!」
「きさ、ま……。ベルフィから出ていけ!」
「お兄ちゃん! 逃げて! 死ねぇ! アッシュグランランツェ!」
ベルフィの放った氷魔法の練度★8の氷の槍が僕らを襲った。
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